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高校の卒業パーティ、といえば「謝恩会」とか「偲ぶ会」なんて重々しいタイトルがついていて、それなりの内容のモノが一般的に多いとされているが、我が北校の卒業パーティは市民文化センターを借りきっての至って盛大なものだ。
去年、初めて参加した時は圧倒されるばかりだったが、今年は俺も雰囲気を楽しめる位の余裕を持てる様になった。
まあこの場合の余裕ってのは・・・

「キョン君!」
-朝比奈さん、気を付けて!ドレスの裾を自分で踏まない様に・・・
「ふふっ、ありがとう!キョン君のエスコートなんて、夢の様ね?」

・・・て事だ。
しかも、今日はハルヒ含むその他3名は何故か欠席・・・幸運!と呼ぶべき事態だな。

「・・ョン!おい、キョン!何ニヤついてんだ?気持ち悪いっ!」
あ、隣に谷口が居るのを忘れてた。

「涼宮からさ、おまえを見張っとけ!って言われたんだが?
その理由が今の面で瞬時に理解できたっ!
大方、朝比奈さんの事でも考えてたんだろ。」
-・・・谷口よ、的確な指摘は時に殺意すら生むぞ?
「まあまあ、そうムキになるなって!ほら、そろそろ卒業生入場だ・・!
直前朝比奈情報よろしくっ!」
-情報・・・ってもなぁ、黒でシックに決めるって昨日言ってたな・・・。
「黒!魅惑の黒か?素敵だ!素敵過ぎる!」
-黒が「魅惑」なら他の色には如何なる二文字が付くのか是非答えて欲しいものだ。全色な。
「うおっ!始まったぞ?ああっ!先頭の辺りに鶴屋さんが居る!
和服だ!和服!」
-へえ、綺麗だな・・・
先輩であることは理解していたが、こう見ると『年上』である事を実感させられる・・・。
「あ!朝比奈さん!キョン!朝比奈さんだぁ!すげえっ!すげえよ!」
-お前の取り乱し加減もな。

朝比奈さんは、黒色の体にフィットするタイプのロングドレスを纏い現れた。

多少、メイクも変えているんだろうか。
いつもとは・・・別人に見える・・・。

やがて、ちょっとした式典が終わり会食が始まった。
会食が始まるや否や、谷口は某アメフト漫画の21の如く鶴屋さんを目指して消えた。

なんで、ハルヒは俺の目附役にあんなのを選んだんだ?全く・・・

「キョン君っ?」
-うぁっ?

突然声をかけられて振り替えると、朝比奈さんがクスクスと笑っていた。

「楽しんでる?」
-ええ、今朝比奈さん来た途端に楽しくなりましたよ!
「ふふっ、馬鹿ねぇ。それよりさ、抜け出さない?」
-えっ?
「ちょっとだけ!ね?良いでしょ?」
-あ、はい!勿論・・・

スタイリッシュ極まりない朝比奈さんに誘われて、断る理由が世界中のどこにあろうか。
もちろん行くべきなんだろうが・・・なんだか朝比奈さん、様子が変だ。
俺の知ってる朝比奈さんじゃ無い気がする・・・。

俺は、朝比奈さんに手を引かれ中庭へ出た。朝比奈さんが悪戯っぽく笑う。


「ふふっ、ごめんね?私、『私らしくない』よね?」
-え?どういう事です?
「でもね、これが本当の私なの!」
-朝比奈さん?
「最後に、キョン君と二人で逢えて良かったな・・・」

-朝比奈さん!!

「きゃっ!キョン君?」

俺は朝比奈さんの手を掴み走りだした。
このまま何処かへ消えてしまいそうだったから・・・。
多分、その予感は当たっている。
なんとなく雰囲気で解った・・・
でも、嫌なんだ!

「ど、どうしたの?キョン君?」
-朝比奈さん、こんな消えかた許しませんよ?
「キョン君?」
-もしここで消えるのが朝比奈さんの運命なら、俺はその運命を欺いてやる!
「キョン・・・君」

俺は朝比奈さんをバイクに乗せると、前輪が浮くほどの加速で飛び出した。
街の景色が瞬間を残して、背中の方へ飛んで行く・・・

-いつか・・・いつか居なくなるのは解ってた・・・でも、こんなのは・・・許さない・・・

「キョン・・・君・・」

朝比奈さんが背中に頭を押し付けている・・・泣いているのだろうか・・・
そして、俺の腰に回した腕に力を込める。


「キョン君、大好きよ。」


やがて、海が見えた。
俺は、このままエンジンが吹っ飛ぶまで走ろうと思う。

何処までも何処までも・・・・

-いいよね、朝比奈さん・・・朝比奈さん?





見知らぬ海岸線・・・
バイクを停め振り返ると、そこに彼女はもう居なかった・・・

不意に、優しい南風が吹く



さようなら、みくるさん・・・

俺は空を見上げ呟いた。

おわり
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