『God knows』

~12章~

俺達は、部室に待機している。
特に何かやらかしたわけではないが、ハルヒが
「あたし達はみくるちゃんだけ祝えればいいんだから、部室でパーティーの準備をしとくわよ!!」と言い出したからしょうがない。
まあ、俺も式とかは苦手なんだがな。
「でも……ほんとにみくるちゃん、卒業なのね…。なんか、信じられない。」
「しょうがないさ。この日は、絶対に来るんだ。…俺達にもな。」
こう、答えるしかないよな。
「それより、俺達が最高の顔で送り出すことを、みくるさんも望んでいるはずさ。」

クサかろうが、なんだろうが、俺は、こいつらには笑顔で別れを告げて欲しい、そう願っている。
「ふ~ん……、そろそろ、終わる時間ね。みんな準備しましょっ!」
しばらくすると、みくるさんは鶴屋さんを連れてやって来た。
「いんや~!!めがっさ美味そうな匂いだねっ!鍋かなっ!?」
「鶴屋さん、いらっしゃいっ!みくるちゃんもお疲れ……それじゃ、3年生追い出し鍋パーティー、始めるわよっ!!」
そのネーミングセンスは如何な物かと思ったが、内容は楽しいもんだった。
と言っても、鍋を食いつつ、卒業生二人の苦労を労ったり、古泉の持って来たゲームをやったりといつもと変わらない物だったが。

俺は、隙をついて一人で屋上に出た。
特に意味はなかったが、一人になりたかったのだ。
風が暖かい、もう少しで春なんだろうな……。
「キョンっ!!あんた何してんのよっ!!」
やべっ、ハルヒだ。
「わ、わりぃ。ちょっと………ってあれ?」
そこに居たのは鶴屋さんとみくるさんだった。
「あっははは!そんなに似てたかいっ?」
まったくこの人は……。

「何なんですか?二人して、からかいに来たわけじゃ無いでしょう?」
「いんや~、あたしはからかいに来ただけっさ!みくるが話があるってさっ!」
みくるさんが?なんだ?
「あ、あの……ですね?この、パーティーが終わったら…デ、デートに…行きませんか?」
その、俺を誘ったときのみくるさんの顔は、まるで付き合う前の時のもののようだった。不安と、緊張と、期待の混じった顔だ。
「そう…ですね。でも、どうせなら今から行きましょう!!善は急げです!」
俺はみくるさんの手を引き、屋上を出ようとする。
「みくる~、めがっさ頑張ってくるにょろよっ!!ハルにゃん達にはあたしがよろしく言っておくっさ!」
鶴屋さんの声を聞きながら、俺達は走って屋上を後にした。


1時間後、俺達は初デートの時の遊園地に来ていた。
みくるさんたっての希望の場所だ。
「懐かしい……ですねぇ。」
「ん~、まぁ半年ぶりくらいですよね。」
少しの沈黙の後、みくるさんが口を開いた。
「き、今日は…ですね、高校……最後のお、思い出に…観覧車に…乗りたかったんです……。」
なるほど。いや、何がなるほどなのかはわからんが納得したな。

「……閉園まで時間も無いことですし、さっさと行きましょうか。」
俺は手を差し延べる。
その手を優しく握ってくるみくるさん。
こんな、なんでもないことがとても幸せに感じる。
……今日は平日でしかも、もう閉園まで一時間もないといい時間なだけあって、観覧車には並ばずに乗れた。
時間は夕方。今回も、前と同じく綺麗な夕焼けが街を染めている。
「ふわぁ……。幻想的、です…。」
「ですね、……前の時は全然景色に集中出来なかったですからねぇ。」
「あ、あれはっ!……しょ、しょうがない…じゃないですかぁ……。」
「へへへ、責めてるわけじゃないですよ。」
景色にも集中すると時間がたつのは早いもので、もうすぐ頂点というところまで来た。
「ほら、みくるさん。もう一番上ですよ。」
「わぁぁ…、すごぉい……です。」
「これが、俺が一番好きな場所って言った理由ですよ。メチャクチャ、綺麗でしょ?」
「うん……。ね、ねぇ…キョンくん。な、何か忘れて…ないですか?」
何か忘れたか?忘れたいことならたくさんあるが……。
「え?…………すいません、何でしたっけ?」
「………もう。わ、わたし、まだ…卒業祝いもらってない、です……。」

ああ、そうか。ゴチャゴチャしてたしな。
「す、すいません。……何が欲しい…ですか?」
みくるさんは少し俯き、頬を少し朱く染めながら言った。
「キョ、キョンくんの……《愛》、です。…そ、それも、とびっきり大きな《愛》がいい……です。」
観覧車はもう、頂点を少し過ぎた辺りだ。
俺はみくるさんを抱きよせ、言葉をかけた。
「大好きです、みくるさん。……これからも、ずっと、二人で一緒にいましょう。」

夕焼けに照らされる観覧車の中で、俺達は口付け、《とびっきり大きな愛》を誓いあった。

~12章・終~



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