『God knows』

~6章~

やっぱりか。
俺の予想通り、古泉は電話した後、3分後にはきた。
運転:新川さん
助手席:古泉
後部座席:ハルヒ、長門
…見事なおまけ付きだな。
「やっぱり覗いてやがったか。」
俺は古泉を鋭い目つきで睨む。
「そんなに怒らないでください。涼宮さんがどうしても心配だからと……「古泉くんっ!余計なことは言わないのっ!!」
古泉が肩をすくめる。
と、ハルヒの大声で朝比奈さんが起きたようだ。
「ん……、キョンくん?あ、ごめんなさい。わたし寝ちゃってまし………って、ふえぇ!?な、な、なんでみなさんがここにぃっ!?」
この混乱はもっともだろう。
「大丈夫ですよ、こいつらは覗いてたけど、バスが無くなったので迎えに来てもらいました。」
と朝比奈さんを抱きながら俺が答える。
何故抱いているかと言うと、後部座席は3人までしか乗らないから、俺の膝の上に朝比奈さんを乗せるしかなかったのだ。

「ふ、ふえぇっ!?…の、のの覗いてたんですかっ!?い、いつから、何処からぁっ!?」

俺の聞きたいことを全て聞いてくれたな……。
「………あなた達が遊園地に入った時点から、観覧車を降りるまで。」
………っておい。
つまり俺と朝比奈さんが号泣しながら観覧車から降りる場面は見られたわけだ。
「そういえばキョン!!」
ほら来た。
「あんた、みくるちゃん泣かしたわねっ!!あれだけ言ったのに……ってあれ?…目が……赤い?あんた、ま、まさか泣いてたの?」
「悪いか?」
俺は一言だけ言うと、窓の外を見た。
これ以上、顔を見られたくないからな。
「あ、あの……観覧車を降りた…あと、は?」
朝比奈さんがさらに質問している。
たぶん、公園で号泣したのを見られたかどうかが気になるのだろう。
「………あなた達が泣いて降りて来たので、監視をやめることをわたしが奨めた。」
「まぁ、涼宮さんはキョンくんを殴りに行こうとしていたので、無理矢理押さえましたがね。」
古泉が苦笑しつつ、肩を押さえている。
たぶん止めた時に殴られたのだろう。
「こ、古泉くん!……だって、みくるちゃんを泣かすような真似をキョンがしたんだ…って思ったらさ……。」
…こいつは実は優しいだけなんだろうな。


そろそろ、いつもの喫茶店だ。
解散場所は喫茶店になっているようだ。
「でさ、結局二人はどうなったの?」
ハルヒが口を開いた。
俺の膝の上の朝比奈さんは顔を真っ赤にして俯いている。
…やれやれ、俺が言うしかないのか。
「晴れて、付き合うことになったよ。」
ハルヒは安堵の表情、古泉はニヤけ、長門は無表情……の中で、少し嬉しそうにしている。という三者三様の反応を見ているうちに、喫茶店に着いた。

俺達は、新川さんに別れを告げ、それぞれ帰路についた。

今、俺は、朝比奈さんと手をつなぎ帰っている。
時間は、既に21時を回っているから送って行っているわけだ。

「キョンくん、今日は本当に楽しくて、うれしくて……ありがとうございました。」
深々と頭を下げられたので、深々と頭を下げかえした。
「いえいえ、俺の方がお礼を言いたいくらいですよ。」
「そんなこと、ないですぅ……。ほ、ほらずっとキョンくんの胸で…な、泣いてばっかりだったし……。」
俺は朝比奈さんにデコピンをした。

過去、ベスト3に入る威力のデコピンが出てしまった。
「い、いたぁい!な、なにするんですかぁ!?」
「謝るのは無しですよ。今日は二人とも満足!これでいいじゃないですか、ね?」
「………ん、そうです…ね。だけど……」
俺のデコに、ペシッという感覚が来た。
どうやらデコピンを食らったらしい。
「一回は一回ですっ!」
朝比奈さんがニッコリと微笑む。
俺は、幸せ者だ。明日にでも谷口に自慢してやるかな。


10分程歩くと、朝比奈さんが止まった。
「今日は、ここで良いです!あ、ありがとうございました!」
「そうですか…、なんか寂しいな。」
「うふふふ、わたしもです。……明日って、キョンくん達も午前中授業ですよね?」
明日は、教育委員会のなんとやらがあるらしい。
「そうですね、昼までです。」
「えへへ、じゃあ明日も部室で会いましょう?終わったら、すぐに部室に来てくださいっ!」
異論はない。
「わかりました!明日、部室で……。」
俺が後ろを向き、歩きだそうとすると、呼び止められた。
「どうしたんです?朝比奈さん。」

「キョ、キョンくん……あの、ね?『朝比奈さん』はもう…やめてください。」
俺は意味をわかりかね、疑問の表情を浮かべる。
「これからは、み、『みくる』って…よ、呼んでくださいっ!!」
あぁ、なるほど。
「わかりました。み、みくる……さん。」
ダメだ、呼び捨てになどは出来ないな。
「うふふふ。キョンくん…らしいです!……うん、『みくるさん』でも、うれしいです。よかった……。」
俺は恥ずかしさを隠すため、《みくるさん》に別れの挨拶を告げて、早足で家に帰って行く。

「あ、そうだ。」
俺は思いついたように、携帯を取り出した。
そして、アドレス帳を開き、《朝比奈さん》を《みくるさん》に変え、【SOS団】のグループから新たに作った、【恋人】のグループに移しかえた。

~6章・終~


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最終更新:2021年01月09日 19:00