長門の日々 第一話『右手が恋人』
 
退屈な学園生活を楽しく送るには、みんなは何が必要だと思う?
打ち込めるスポーツ?
夢中になれる趣味?
まぁそれも確かにアリだが……。
 
俺にはもっと大切なものがある。
 
それは……     恋人。
 
俺はキョン。
高校1年生。
彼女イナイ歴15年と……どれくらいだろう?
 
まぁ、彼女がいないといったら嘘になるな。
じゃあ、俺の彼女を紹介しよう。
 
……俺の右手…だ。
 
毎晩のように、俺を慰めてくれるこの右手を彼女と呼ばずしてなんと呼ぶ。
なんて、悲しいことを考えながら床につく。
 
虚しい…
虚しすぎる…
もしかしたら俺は、このまま高校3年間、
彼女もできず、「右手が恋人」で終わるなんて事は無いだろうな。
そんな暗い青春なんて、嫌だ!
 
「あぁ、どうすればいいんだ!
もう誰でもいいから俺の彼女になってくれ!」
 
――――そう。
 
……!?
長門の声だ!
「どこにいるんだ!長門!」
 
俺の右腕が勝手に動き、顔の前で止まる。
「……ここ」
 
俺の……俺の右手が……長門になってる……。
 
「うわああぁぁぁぁぁぁ!!!」
「落ち着いて。これは涼宮ハルヒの仕業。」
「これが落ち着いてられるか?!」
「落ち着いて。」
……とりあえず、落ち着いて長門の話を聞こう。
「……フゥ……これはどういうことだ?」
「涼宮ハルヒはあなたのことを気にしている。
だからあなたの考えも世界に反映させてしまう。
つまり、あなたの願いも叶う。
そしてこうなった。」
「なんで長門なんだ?」
「……分からない。ただ……」
「……?」
「私があなたにさりげなく好意を寄せていたことは確か。」
 
「そ、そうか、長門。今の状況は分かったんだが……」
長門は素っ裸だ。上半身だけだが。
「とりあえず、隠すところは隠そうぜ・・・…。」
俺は自分が赤面になっているのを感じつつ、言った。
「……乳首の情報をブロック」
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(「禁則事項ですキョン君(はあと)に行ってきました」より)
「ちゃんと両手で隠してくれ……」
うぅ、やばい。この可愛さはやばい。
「……布」
「布を持ってくればいいのか?……ほれ。」
ポケットに入ってたハンカチを渡す。
「……物質情報を解除、再構成」
うぉ、お前は錬○術師か!
「って……服?」
「……そう。パジャマ。」
チェック柄の少し上が長いパジャマだ。簡単に言えばワンピース…か。
「なんでパジャマなんだよ。」
「……制服を着る必要は無い。」
「……まぁ、いい。で、今回は何をすれば元に戻るんだ?」
「分からない。」
即答かよ。
「ただ……私が右手だということを他の人間に知られないほうがいい。」
「だろうな。」
それにしても右手が恋人だとはよく言ったもんだ。
まさか本当になっちまうとは、想像もしなかった。
「それじゃ、おやすみ」
「……おやすみなさい。」
電気を消し、眠りにつく。
 
――――翌朝。
俺は妹からバレると大変なのでいち早く起きる。
さて、学校に行く際に一つ問題が発生するわけだが。
とりあえず右手に包帯巻いてりゃよくないか?
適当に「昨日包丁で切っちまった、ハッハッハ」くらい説明すれば、
ハルヒくらいなら騙せそうだ。
「さて、朝食でも食うか。」
「ん……」
朝食というワードに反応して長門が起きた。
寝ぼけた顔が可愛いからやましいところは許す。
「お前も食うのか?」
「食べる」
とんとん、と階段を降りると、母さんがそこにいた。
朝食の準備は整っている。
いつもこんな時間から準備していたのか。ちょい感動。
「あら、今日は早いわね」
「……おはよう」
いつも自分が座っている椅子に座り、
いただきます、と呟き食べ始める。つもりだったが……右手が使えん。
仕方が無い。左手で食うか。
そう考えていた瞬間―――
「おいしい」
(おい、長門!バレたら困るぞ!)
(バレない。あなたの母親はあと16分37秒こっちを向かない。)
(そ、そうか。じゃあ……いいのか?)
(いい)
俺は左手でフォークを巧みに使い食べる。
長門は素手でハムッハフハフ、ハムッ!と音が聞こえそうな勢いで食べている。
はたから見れば左手で食べて右手は皿の上で何かゴソゴソしてる感じだろうな。
 
ん?右手の動きが止まったぞ?
(……いっぱい)
(もう食えないってことか。)
(そう)
(さすがにそんな小さな体じゃあなぁ。)
(あなたを手伝う。)
長門は玉子焼きの一部を箸を使って見事切り取り、素手で俺の口に運ぶ。
(いや、いいって。)
(……はい、あーん)
(…………あーん)
ちくしょう。可愛くてついつい……。
そんなこんなで朝食終了。
 
制服に着替えようとする……が、しかし、またもや問題が。
「長門……見るなよ」
「私は気にしない」
「俺は見られたくないんだが」
「……そう」
俺はハンカチで目隠しをする。
パジャマを脱ぎ、制服を着る。
「もういいぞ。」
「……そう」
パッとハンカチを取る。
っとトイレに行きたくなってしまった。
どうしよう。長門に言うか?
 
「……トイレに行きたいんだが。」
「……そう。」
「また目隠し、な。」
「……そう」
ハンカチで目隠しし、トイレに直行。
チャックを開け、小便をしようとするのだが……
「左手じゃやりにくい……。」
「……私が」
ハンカチを取り、俺のパンツのボタンに手をかける。
「おい!やめろって!」
「私なら、いい」
「俺がよくないって!」
「……見たい」ボソリ
長門が何か言ったが、無視して阻止しようとする。
あぁ、漏れそうだ!どうにでもなれ!
俺の阻止から免れた長門は、ボタンを外し、俺のち○こを取り出し、構える。
「……大きい」
あぁもう、言葉責めか。恥ずかしい。顔真っ赤だ。
「出るぞ」
シャー。もう駄目だ。お婿にいけねぇ。
「……消防士」
言われて見ればそんな感じで構えてるな。遊ぶな、人のちん○で。ん、止まった。
「……あとはいいよ、ありがとな、長門……。」
「……どういたしまして……」
顔真っ赤な長門。初めて見た。
左手でふるふる、と振り、それをしまう。
 
さて、学校に行くか。
俺と長門は学校へと向かって歩き出した。
歩くのは俺だけだが。
 
第1話『右手が恋人』~終~


 
キョン「次回予告!
 俺の右手の長門がある人物にバレる?!」
長門「私は悪くない」
キョン「どっちもどっちだけどな」
長門「第2話『秘密な関係』」
キョン「乞うご期待!!」
 

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最終更新:2020年03月15日 18:32