【第八話(最終話)-12/11】
 
 ハルヒ失踪から始まった一連の宇宙人・未来人・超能力者の失踪事件は
この星の許しを得るという形で幕を降りた。俺はこの星でただ一人この
事件の真相を知る者となった。と同時にこの星の寿命を背負ったものに
なってしまった。まあ、今までいろいろなものを背負わされてきたし、
これからも背負わされるんだろう。そう思いつつ月曜日を迎えた。
 
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 全てが終わった。俺は朝になり久しぶりに気持ちのよい寝覚めと
なった。
もっとも、妹によってたたき起こされたことを除けば……だが。俺は
朝食をとり学校へ向かった。家を出るときお袋がインフルエンザが何
とかと言っていたが、まあ、この時期だから気をつけろといいたかった
のだろう。俺は学校へつき、クラスに入るとすでにハルヒが席に座って
いるのを確認した。
 
「おはよう、ハルヒ」
「おはよう、キョン。大変だったわね」
「ん?何がだ?」
「あんた妹ちゃんからインフルエンザを移されてこの1週間寝込んで
休んでいたじゃない」
「インフルエンザ……?」
「あんたが倒れて携帯電話に出ないから直接自宅に連絡したらそう
言われたわよ。それで治るまで移ると大変だから見舞いも遠慮して
下さいって言われたのよ」
 
「そうか……」
「まったく、心配かけるんじゃないわよ。まあ、昨日の夜の電話で元気
そうだったから今日は出てくると思ってたけど」
「心配かけてすまなかったな、ハルヒ」
「な、なによ。団長が団員を心配するのは当たり前でしょ。キョンも
復活したことだし、今日から活動をまたビシビシやるわよ」
「へいへい」
 
 そういうとHRが始まり、岡部がやってきた。
 
「今日は……お、キョンも来てるな。全員揃っていいことだ。どうだ
キョン、ハンドボールで体を鍛えるといいぞ」
「考えておきます」
「ははは。それじゃ午前中の授業みんなしっかりな」
 
 そう言うと岡部は教室から出て行った。やがて午前中の授業が始まった。
相変わらず授業の間時折ハルヒがシャーペンで背中を突っついてくるが。
しかし、俺が1週間インフルエンザで寝込んでいた?まるで俺が1週間いなく
なっていたようじゃないか? そんなことを考えているうちに午前中の
授業も終り、昼休みになった。谷口と国木田と一緒に弁当を食うことにした。
 
「インフルエンザなんて災難だったな、キョン」
「ほんと、涼宮さんなんか毎日心ここにあらずって感じだったよ」
「ハルヒはいつも何かに興味を持ってるからそう見えるんだろ」
「わかってないなぁ、キョン。涼宮さんはキョンが心配だったんだよ」
「まったく果報者だぜ、お前はよ」
「果報者ねぇ……」
 
 俺は弁当を食べ終わるとなんとなく屋上に行ってみたくなった。いつも
通り誰もおらず閑散としていた。俺はフェンスに寄りかかるとこの1週間の
ことを思い出していた。
 
「あれは俺がインフルエンザで寝込んでいたときに見た夢だったのか?」
 
 そうつぶやいた時、俺の頭のなかに声が響いた。
 
”夢などではない、現実だ”
 
 消えたはずの俺の分身の声だ。
 
”この一週間、君以外のものの記憶では何事もなくまさに普通の日常
そのものとなっている。だが、君には真相を知っていてもらわねば困る。
そこで俺はお前が1週間寝込んでいることで外界と一切を遮断したことに
したのだ”
「そういうことか……じゃあそれに話をあわせておかないとな」
”そうだ。そうしてくれ。わたしはもはやこの星の一部となった。これ
以上君に話しかけることは出来ない。これが最後となるだろう”
 
 もはや頭のなかに響く声は小さくなっていった。
 
”最後に……この星が認めたこと。それをハルヒに伝えてやってくれ”
「ああ、わかった」
”それじゃあな……”
 
 そういうと頭から声が消えた。俺がこの星に認めてもらったこと、
それはハルヒを愛しているということ。それを伝えなければこの星の
期待を裏切ってしまう……そう考えながら俺はクラスへと戻った。
 
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 放課後、俺は部室へと向かった。ドアには”SOS団”のプレートが
張ってある。中に入ると既に俺を除いた全員が集まっていた。
 
「キョン君、インフルエンザだったんですってね。大変でしたね」
「ええ、まあ……」
「いやいや、この時期です気をつけないと」
「あなたはもっと体を鍛えることを推薦する」
「長門、それは俺がひ弱だというのか?」
「有希の言う通りよ!インフルエンザに負けるようじゃひ弱だわ!」
 
 確かにハルヒにはインフルエンザも逃げ出すだろうよ。そんなこんなで
色々いわれたあと、俺と古泉はいつものようにゲーム、長門は読書、
朝比奈さんは新しいお茶を入れる研究、ハルヒはネットサーフィンを
していた。長門が本を”パタン”と閉じると、
 
「よーし、今日の活動は終り!みんな解散!帰りましょ」
 
 とハルヒが勢いよく言った。そのとき俺は、
 
「ハルヒ、話があるんでちょっと2人で話したいんだが……」
「なによ、キョン。ま、いいわ聞いてあげるわ」
「では僕たちはお先に失礼します」
 
 そう古泉が言うと他の3人は部室を出て行った。その際、古泉の顔が
ニヤケ面だったような気がしたのは気のせいかね。
 
「さあ、みんなもいなくなったし、なんなの話って?」
「ハルヒ、これから言うことを真剣に聞いて欲しい」
 
 俺とハルヒの間に沈黙が訪れた。そして俺は、
 
「ハルヒ、俺はお前のことを愛している。この星以上に。誰よりも」
「キョン……」
「俺はお前を絶対にこれからも守る。何があっても永遠にだ」
 
 ハルヒは微笑みながら涙目で俺を見つめた。
 
「キョン……本当に私でいいの?」
「お前じゃなきゃダメなんだ。お前しかいないんだ」
「嬉しい……嬉しいよ、キョン。あたしもあなたを愛してる」
 
 ハルヒは俺の胸に飛び込んできた。俺はハルヒを力強く抱きしめた。
 
「ハルヒ、俺はお前を離したりはしない。この星にかけて誓う」
「絶対よ。絶対に離さないでね。離させたりするもんですか!」
 
 そう言うと俺とハルヒは口付けを交わした。長い長い口付けを……
そして、2人が1つに重なった影が部室の中に天井の電灯によって現れて
いた……
 
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 俺とハルヒは一緒に学校前の坂を下りていた。ハルヒは俺に腕を絡ませ
ながら。
 
「ところで、なんでこんなに急にあたしに告白したの?」
「さあな……この星との約束が出来たからってとこかな」
「よくわかんないわね……でもいいわ。キョンから告白されて、しかも
あんなに強く想っていてくれてたなんて……嬉しかった」
 
 ハルヒは顔を赤くしながら話した。と、前方を見ると帰ったはずの3人
が坂の下で待っているではないか!
 
「おめでとうございます、涼宮さん」
 
 朝比奈さんが言う。自分ごとのように喜んで祝福してくれている。
 
「おめでとう」
 
 長門もそれに続いて言った。でも、なんか無感情すぎやしないか、長門よ。
 
「いやいや、本当におめでとうございますお二人とも」
 
 古泉がニヤケ面に近いスマイルで言う。
 
「みんなありがとう。でも、SOS団の活動は今まで通りよ!!」
 
 ハルヒが満面の笑みを浮かべながら元気よく言った。この後、俺たち
全員は古泉の提案の元ファミレスで祝賀会を開くことになった。そこまで
することかね?
 
「いいじゃない、キョン。さ、いきましょ!」
 
 ハルヒは俺の手を引っ張り強引にみんなより先に進んで行った。その後、
俺とハルヒはファミレスで3人から色々とつつかれたことは言うまでも無い
だろう。でもハルヒはとても嬉しそうだったが。
 
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 ハルヒを家に送り、キスをしてわかれた後、俺は家へ帰ってきた。
寝る前、俺は今回の事件はハルヒが俺に告白させたいという意思から
生まれたものだったのではないかと思ったりもした。いや、そんな
ことは無粋な考えだ。第一、ハルヒを愛しているという想いには嘘偽り
は無い。これからも何があってもハルヒを守ってみせる。俺はそう誓う
と眠りについた。眠りつく直前頭の中に一言声が聞こえ、そして消えた。
 
”この星といえども愛する2人を無理に引き離したりは出来ないさ”
 
 
───Missing Ring -失われる7日間- 終
 

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