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ハルヒ!おい、ハルヒ!ハルヒ!
俺はまた校庭にいた。またこのパターンだ。つまり夢だろうな。
違うのはハルヒが近くに横たわっていたって事だ。
ハルヒ!起きろって!
そして俺は今そのハルヒを起こそうとしている。聞こえてればいいんだが。
ハルヒ!
「…キョン!?」いきなりぱっちりと目を開けたかと思ったら大声だ。
やっと起きたか…やれやれ
聞こえていて良かった。だがとりあえず何て言おうか。
ハルヒに不自然な事を言うわけにはいかないからな。
いきなり寝るもんだから驚いたぞ。これで誤魔化せるだろう。
「キョン!あんた本当にキョンなの!?
ああ、どうしたんだ?いきなり?これは正直な感想だ。
「あ、いや…なんでもないわ…」
どうしたんだ?悪い夢でも見たんじゃないか?実際にはここが夢なんだけどな。
「そうね…ちょっと悪い夢を見てただけよ!」
俺が居ない間、ハルヒは本当に悪夢を見ていたのかもしれない。
だが、とりあえず今はこの場を取り繕う事を考えるか。
早く教室に戻らないと、授業が始まるぞ?
ハルヒに言うべき事はあるが、できるだけ自然にしなければならないってのも大変だ。
「…ねぇ、キョン」
ん?なんだ?
「このままサボってどこかに行かない?」
本当にどうしたんだ?ハルヒ。お前らしくないじゃないか。
「…いいから!」
そう言うとハルヒは俺の手を引っ張った。

お、おい!俺はハルヒに向かって話しかけている。
いきなり訳のわからない事を言い出したと思ったら走り出すとは。
いや、思えば最初もそうだったか。その辺は変わらないな。
そうこう考えている間に校庭にまで来ていた。
随分走ったなぁ俺…だがいい加減体力が限界だ。
おいハルヒ!一回止まれって!実際息は切れてるし疲れた…。
やっと俺の言葉がわかったのかハルヒはゆっくりペースを落とし、
校庭の真ん中でやっと足を止めた。やっと開放された…。
「まったく!これくらいでへばってどうすんの!」
いきなり走り出す奴があるか・・・まったく…
見るとハルヒも少し大きく息をしている。
ここは校庭の真ん中か…。
あの時にキスしたのもこの辺りだったな。
一体どういうつもりだ?ハルヒ。いきなりサボろうなんて
ハルヒは呼吸をもう整えていた。相変わらずの体力だ。
「いいじゃない!サボりたかったのよ!それに…あんたと居たかったの!」
はぁ?
改めて聞くと流石に驚く。これがただの夢オチだったら死ぬほど恥かしいな。
「言い訳は無し!あんたはSOS団を無断でサボったんだから!本来なら死刑よ!」
サボったってお前…
俺が死んだと思いながら表向きにはしっかりサボった事にしてたのかよ…
「いいから!あたしがどれだけあんたの事心配したと思ってるのよ!
本来なら死刑よ死刑!!」
一方的にハルヒにまくしたてられる。どうやらいつものハルヒだ。
なんだかんだ言って、やっといつものハルヒに会えたんだ。謝っておこう。

すまない、ハルヒ
俺としてはこれが本音だった。しょうがないとは言えサボったのは事実だしな。
「何よ!その程度の謝罪で許されると思ってるの!」
本当にすまない
「いくら言葉で言ってもダメよ!あんたは重罪なんだから!」
いやはや、本当にお厳しい。実は俺が勝手に見た夢じゃないかと思えてくる。
「どうしても許して欲しいって言うなら…何か誠意を見せなさいよ!」
そうは言われてもなぁ…どうすればいいんだ?
「それは自分で考えるの!ふん!」
そう言ってハルヒはそっぽを向いてしまった。
やれやれ…こう見ると世界を崩壊させたくなるほど落ち込んでいたとは見えないんだが。
だが、さっきの中庭といい、意識がしっかりしている事といい、今までと同じ夢のはず。
つまりハルヒもこの夢を見ている。夢の中で一足早く再開か、ロマンチックなもんだ。
しばらく何も言わずに考えていたら気になっていたのか、ハルヒがすこしこっちを見る。
今言ってしまおう…俺の気持ちを。
どうせハルヒはこの出来事を夢と思うだろうし、
現実で言う事になった時の為に練習できると思えばいい。
だが、そこでふと意識が薄くなった。夢が終わろうとしている?
なんてタイミングだよ。引き合わせたら満足なのか?
だが俺は精一杯言葉を告げる。どうやらもうハルヒには届いていないらしい。
何か口を動かしているが何も聞こえない。
せめて夢が完全に終わってしまう前に…ひとつだけ…。
ハルヒはまだ何かを言っている。今なら…いいよな?

俺はハルヒを抱きしめた。
ハルヒが不思議そうな顔をする。
俺は今まで溜め込んでいた言葉を吐き出していた。
どうやらハルヒも俺を抱きしめているらしい。だが感覚が無い。
気が付けば俺がハルヒに触れている感覚も無くなっていた。
どうやら本当に終わりが近いらしい。
俺は自分の気持ちを全て言い終えると、あの時と同じ覚悟を決めた。
ハルヒの唇が近づいていく。
そして…唇が重なった。
何故かこの感覚だけは残っていたらしい。
唇の触れる感覚が伝わってくる。
ハルヒ…俺は今幸せだよ…こうしてお前と居られて…
その思考を最後に、目の前が真っ白になった。

意識が戻ると、朝だった。
まだ車は走っているらしい。これだけ揺れているのに随分眠れたもんだ。
もうすぐ家に着くらしい。着いたら直ぐに学校に向かおう。
車の時計を見ると9時半だった。ハルヒはもう起きているだろう。
携帯があればかけたいところだが、そもそも携帯が無いからこんな事が起きたんだしな。
様々な思いが頭を巡っている間に家に着いた。
急いで部屋に戻る。たぶん携帯は…枕の下だろう。…あった。
電池は切れている。きっと何度も電話があったんだろうな…。

俺は急いで家を出た。学校に向かって早朝から自転車を全力で走らせている。
まったく、人騒がせだよ。お前は。
だが俺はそんなハルヒを何時しか必要としていた。
あいつの放つエネルギーは俺にも影響が出ていたらしい。
正直言うと世界の崩壊で不安だった事を抜きにしてもこの6日間は
全然落ち着かなかった。俺もずいぶん変わったな。
最初はあちこち連れまわされて迷惑だと思っていた。
だが、何時しかクラスの連中からの目線を受けることも苦では無くなった。
俺は毎日ハルヒと話すのが楽しかったのだ。
そして、俺はこれからもそうしたい。
だから今俺は走っている。

駐輪場に着いた。ここからは坂道だ。
さすがに今の俺でも一気に走り抜けるのは無理だろう。
少しずつペースを速めて確実に上っていく。
駐輪場に合った時計は10時半過ぎ程度だった。
このペースで行けば11時くらいには学校に着くだろう。
それまでに世界は崩壊するかもしれない。古泉の話によれば
この何の変化のない世界の中で密かに新しい世界が構築されていて、
ハルヒの絶望と共にこの世界を押しつぶしてしまうらしいからな。
それだけはさせるわけには行かない。
世界のため、なんて大それた事を言うつもりはない。
ただ、俺がハルヒと居たい。それだけだ。
もうすぐだ…、今に建物が見えてくる…。

今、俺は部室の前に居る。
6日も空けていた部室だ。いつもの様にノックをする。
少しの間沈黙があった。
「は、はぁぃ…どうぞ」と朝比奈さんの声がする。元気がないな…。
どうやら朝比奈さんは相当不安だったみたいだな。あの場に居たはずだが。
俺は意を決してドアを開ける。
「あ…え…?」と朝比奈さんが驚いている。
この人は…本当に何も知らなかったのか、それとも他の理由があるのか…
だが、まずは日常を取り繕った方がいいだろう。

すまんハルヒ、寝坊しちまった

そこの声に反応したのか今までパソコンの画面を凝視していたハルヒは、
ふとこちらの方を見た。目が合った。
…心底驚いている様だった。
本当に古泉たちは何も言わなかったのか…
「……・・・キョン?」
すまなかったな。一週間も空けたりして。いろいろと事情があってだな…
「……………この、バカァ!!!!!」
俺の言葉はその叫びに掻き消された。

あまりにハルヒが大声を出したからか、他の3人は固まっていた。
正直俺も固まっていた。意外と元気じゃないか。
おいおい、いきなり怒鳴ることはないだろ…
「うるさい!このバカ!今まで何やってたのよ!」
それがだな…まだ若かった叔父が急に亡くなったんだ。それで…
とりあえず事実は説明しなきゃな。
ハルヒは困惑していた。そりゃそうだよな。俺が死んだと思ってたんだ。
葬式で一週間ほど家を空ける事になってな。
連絡しようと思ったんだがうっかり携帯を忘れたんだ。それで…
俺は説明を続ける。直ぐにでも気持ちを伝えたかったが、
いきなり言い出してもおかしくなったと思われるだろう。
「もういい!!」
俺の説明はまたしてもハルヒの一喝で消された。
「何今頃になって説明してんのよ!これまで音信不通で!!」
だから携帯を…
「うるさい!!!」
ハルヒは突然走って部室から飛び出していった。
弁解も聞いてはもらえんのか。3人を見ると皆それぞれに同じ事を訴えていた。
そうだな、行ってやらんとな。

ハルヒの足は速いから普通に追いかけたって無駄だろう。
だが、ハルヒは校庭に向かうはずだ。あの時にそうしたのだから。
おい!ハルヒ!待てって!
思っていた通りハルヒは校庭に向かって走っている。
無意識にそうしているのか、あの夢を知っているのかはわからない。
だが、気のせいかスピードが落ちている。
次第にハルヒとの距離は縮まっていた。
ハルヒ!
俺はハルヒの名を呼び続ける。
ハルヒのペースがどんどん落ちている。校庭の真ん中ほどで遂に足を止めた。
だが、俺もこれには疲れた。
どうしたんだよいきなり
ハルヒはその言葉で向きなおしたが、顔は俯いていた。
「うるさいわね…。どうして今まで連絡ひとつしなかったのよ」
帰ってきたのは今日の早朝だ。携帯を見たら電池は切れてるし、直ぐ充電したが間に合わなかったんだ
「あんたが居なくて…あたしがどれだけ心配したと思ってるのよ…」
要らない心配をかけてしまったのは誤るよ。すまない
「要らない心配ですって!?あたしの気持ちも知らないで!」
ハルヒは泣いていた。あぁ、俺はとことん口下手だな…。
ハルヒが震えている。俺が心配をかけたばかりに。
「あんたの家に行った時、喪服のお母さんと妹さんが出てきて、それで…
あたし…あんたが死んだと思って…毎日辛かったのよ!」

ハルヒ……
俺はハルヒの名を呼ぶ。
「あんたにあの時のあたしの気持ちがわかるの!?あたしがどんな思いだったか…」
それ以上を言う前に俺はハルヒの背中に手を回していた。
そのままハルヒを抱きしめる。
すまない、ハルヒ
…本当にすまない
心配かけたな…
俺は精一杯思いつく言葉をハルヒに告げていく。
「あたしがどんな思いだったか……キョン…キョン…」
ハルヒも俺にすがりついている。
ハルヒ…
俺達はお互いの名を何度も繰り返して呼んでいた
あの夢は…本当に予知夢の一種だったらしいな。
ハルヒがあの時のようにここに居て、体温が伝わる。
ハルヒは俺の胸に顔を埋めてひたすら泣いていた。
あとは言うだけだ。俺の気持ちを…
少し体を動かしてハルヒの顔をあげさせる。
別に泣き顔が見たいわけじゃない。
言って良いんだよな?俺が正しいと思うことを。

なぁ、ハルヒ。俺は口の上手い方ではないから良い言い方ができないんだが…
俺もお前と会えず、連絡も出来なかった一週間、辛かったんだ
「え…?どういう事?」
それなのにお前は心配しちゃいないだろうと思い込んでた。すまない
ハルヒにも随分心配をかけさせたんだな
ハルヒは俺の顔見て話を聞いてくれている。
俺はハルヒが傍に居るのが一番だ。これからもそうして欲しい
俺にとって今のお前は大切な存在なんだ
「キョン…それって愛の告白?」
ああ…そう受け取って欲しい
「キョンも…あたしの事が好きだったの…?」
そうだ。俺は……お前が好きだ
ハルヒは驚いている様だった。俺は真剣だぞ。
俺はハルヒの答えを待っていた。いや、解っていたのかもしれないが
それでも聞くまで不安になるのが人の心だ。
「あたしも…キョンが好き…もう離れたくない」
あぁ…これからは一緒に居よう
俺はいっそう力を入れてハルヒを抱きしめる。
ハルヒと完全に目線が合って数秒が経った。
確かあの夢の時は、どうしたんだっけ。
自分の記憶を反芻する。俺が告白して、抱きしめて、後は…
残っているのはひとつだけか。

だが、さすがにこれは戸惑った。一応俺だって男だ。
閉鎖空間と先の夢と2度も経験したとは言え、やっぱり照れる。
何の偶然か場所まで同じだ。
この反応を見るにあの夢はハルヒだって見ていたはずだ。この後の事も。
「キョン…」
ふとハルヒが俺の名を呼ぶ。
俺の決意が固まった。あぁ、これが正しいんだ。
ハルヒも目を閉じていた。
唇の触れる感覚がはっきりと解る。
これが夢なら教科書に載せられるな…フロイト先生も笑ってる事だろう。
だが、今しているキスは現実だ。初めて現実でするキス…

数秒間しか経っていないはずだった。だが体感的にはとても長かった。
ハルヒの体温が伝わる、ハルヒの鼓動を感じる。
自分の気持ちの中を伝っていたら、ふとハルヒが声を上げた
「…冷っ!」
とっさに唇が離れる。
あまりに突然だったので、俺は少し驚いた。
ハルヒは俺の後ろの辺りを見ている。
「……雪だ」
雪?いくら12月でもさっきまでそんなに曇ってたか?

雪が降ってきたのか。ここ1週間天気は良かったんだがな
俺も雪を見て呆然としていた。
「…綺麗」
ハルヒが小さいこれで呟く
そうだな、まだ朝だし、辺りが明るいから光を反射してるんだろ
だが、俺にはわかっていた。これが古泉達が言っていた事だったんだ。
この雪は構築されかけた新世界の破片。それは陽の光を反射し輝いていた。
―――まるで宝石のように―――
俺とハルヒはその美しい光景に見惚れていた。
この断片一つ一つが情報の塊なのだろうか。それとも別の何かか。
だが、この世界の破片はとても美しかった。
幻想的な輝きを放ちながら、心を通わせた俺達を祝福してくれている。
……行こうか、ハルヒ
俺はハルヒに向かって手を出した。
「……うん。行こう。キョン」
ハルヒはその手をしっかり握った。この手をもう離したくない。

そのままの状態で部室に戻ると、3人がそれぞれのリアクションをした。
古泉は「おや、おめでとうございます。お二人さん」と。こうなると知っていたのにな。
朝比奈さんは「わぁ~、やっとですね~」と言ってくれた。感謝いたしますよ。
長門は少し俺達を見た。気のせいか何かの感情が過ぎった様に見えた。
そして小さく「…おめでとう」と言った。ありがとうな、長門。

その日帰ると、ハルヒから電話がかかってきた。
用件は明日土曜日の予定についてだ。不思議探索も無いらしい。
だからデートに行こうという件で。
俺は直ぐに承諾した。どこに行こうかと話している内に時間は過ぎ、
大よその予定を決めて電話を切った。

どうやら世界は救われたらしい。そして俺も幸せだと思えるようになった。
今の俺の傍にはハルヒが居るからな…。
明日はどんな話をしようか…目を閉じて眠るまでの間でそれを考えた。
これから俺達はどうなるのだろう。それはわからない。
だが、俺とハルヒが一緒なら大丈夫さ。
だから、また明日。
―――おやすみ。ハルヒ


FIN...



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