ながとぅーみー 第四話「夕焼けより血液色な」
学校内で戦い続けてもう一ヶ月を軽く過ぎた。Hom-Okabeの無差別攻撃によってだいぶ人は減ってきた。奇跡的に帰ってきた生徒会長曰く、「あそこは地獄の地獄の地獄の地獄の地獄だ」との事。映像がフラッシュバックする度に、生徒会長は発狂した。相当やばい所だったらしい。そんなこんなで確かにもう一ヶ月、もしかしたら二ヶ月過ぎたかもしれない。なのに、何故だ。一向に学校外から人が来る気配がしない。少しは心配しても良いだろうに。それに喉も渇かないし、腹も空かないのだ。凄く走り回ってるのに。とりあえず、疑問を長門に話してみた。「風景は進んでも時間は進んではいない。涼宮ハルヒがそういう風に時間を止めた」「なんてこった・・・」ええい、ややこしい。「・・・ただ、改変を保っている力が弱くなっている」「どういう事だ?」「元に戻りつつある」「やっとか・・・」「このまま戻ると危険」「何故?」俺が問うとしばらく長門は可愛らしく小首を傾げて考えていた。そして、言葉が纏まったのか元に戻る。「コップの中にある水を捨て、中に醤油を入れるとする。これを改変と例える」なんつうたとえ方だそれは。「本来、戻る場合はこれが逆になる。でも、今はそのコップの中にある醤油に水を足しているような状態」「・・・で?」「薄まってはいるけど、醤油は残る。これと同じ事が起きる」普段使わない頭にそんな例え話をされても困るな。俺はしばらく話を整理して、結論を導くように脳をフル回転させた。そして、結論。「つまり、多少は改変の影響が残るって事か?」「そう。改変された状態と元の状態が入り混じる」「・・・・・・」そいつは危険過ぎる。マジで危険過ぎる。日常を思い描く。そこに薄口の現在を注ぐ。・・・げっ。その想像図に恐ろしい物が映りこんで、思わず訊いた。「まさか・・・岡部も?」「多少Hom-Okabeのままになる可能性あり」ワォ!それは勘弁して欲しいね!!「ど、どうすれば良い?」「なんとか涼宮ハルヒに今すぐ私達を認めて貰うか、別れるか」「後者は却下。お前とは離れない」「・・・ありがとう」「どう致しまして」しかし、このまま戻るとどうなるんだろうか。多少なり興味は湧く。だが、岡部をあのままにすると何人の生徒の[禁則事項]が掘られるか解ったもんじゃない。それにあいつは俺のクラスの担任だ。恐ろしいにも程がある。ちなみに今俺達は体育館のステージ下に逃げ込んでいる。埃っぽくて物が多いがそれ故に良い隠れ場所になる。「・・・おかしいですね」いつの間にか俺の後ろに居た古泉が呟く。「・・・何がだ」「此処のところ、襲ってくる人が居ないんですよね・・・」「そう言われてみると、そうだな」「良い事なのですが・・・良からぬ事が起きているとしか、僕には思えませんね」珍しく笑顔の無い―――むしろ、眉を寄せている―――古泉はそう言って考え込む。「その意見には同意だ」そう言って、俺もとりあえず考え込む。そして、三秒。「古泉、一回様子見に外出てみないか?」「それが良さそうですね」俺はハルヒ達に様子を見てくるという趣旨を伝えてステージ下から出る。その後を長門が護衛役としてちょこちょこと追いかけてくる。校庭に出るとシーンとしていた。とてもつもない静けさだ。「・・・静かだな」「えぇ・・・」等と言葉を交わすや否や、「・・・涼宮ハルヒの新しい改変を確認。時間が動き始めたのを探知。前の改変の影響は残って無い事を確認した」突拍子も無い言葉。俺と古泉は顔を見合わせた。普段なら気持ち悪いと言いたいところだが今回ばかりはお互いに不安で仕方が無いので言わない。古泉の笑顔成分はどう見ても薄まっているのが古泉が不安がっているという証拠だ。しばらく校庭を歩く。あれだけ居た追いかけの姿が見当たらない。ここが閉鎖空間なのではと見間違いたくなるような景色だ。だが、色彩は確かに存在していてそうじゃないのだと教えてくれる。っていうか、コップの水と醤油の話は結局意味なかったのかよ。―――。ふと、どこからか声がした。「・・・なんだ?」した方向を見ると由良と成崎が走ってこちらに来る様子が見えた。「やばっ、逃げ―――」「待って下さい。様子がおかしいですよ」逃げようとする俺を制する古泉。走ってくる二人よりその後ろに視線を向けている事に気付いた。「それに、前の改変の影響は残ってないから大丈夫」そう言う長門も同じ方向をどうやら向いているらしかった。その線を追う。そして、見えた。赤い人間。いや、明らかに血まみれの生徒がふらふらと歩いているのだ。解っている。第六感が教えてくれる。こいつらは、「危険。あの二人を保護してこの場から退散すべき」あぁ、そうだ。その通りだ。だから、こっちに誘導して助けるべきだ。「由良!成崎!こっちだ!!」俺は大声で二人を呼ぶ。走る二人の後ろで後ろの血塗れの男子は走る気配を見せない。不気味だ。「―――」長門が小さく何かを呟く声が聞こえた。「二人ともこれを持って」「・・・これって」渡されたのは銃だった。色は金色で二挺渡された。この形状だと、ルガーP08だろうか。古泉はコルトガバメントか。いわゆる二人ともハンドガンだな。「こんなもの何に使うんだ?」「新しい改変は・・・恐ろしい事になるから」「恐ろしい事?」長門の手にはデザートイーグルが二つ。これの方が恐ろしいと思うんだが。ふと、由良と成崎の顔が真っ青になる。「キョンくん、後ろ!!」なんだ。俺は志村か。なんて心の中で言うと、―――――!!!!長門が俺と古泉の後ろに向かって銃を放った。俺と古泉は振り返る。そこには、古泉の後ろで腕をぶっ放された男子と俺の後ろで頭が吹っ飛んだ女子が居た。「これが今回の改変。今からこの周辺は、ゾンビが居る世界。世界中ではなく、この周辺が」「どうして・・・どうして、こうなるんだよ!!」俺は思わず愚痴った。そして、心で絶望する。・・・なんて事だ。腕が千切れかけてぶらぶらとしているのに痛いという素振り一つ見せない男子が古泉へと歩み寄る。それを古泉は慣れているのかそいつに二発ほど手馴れた手つきで撃ち込んでいた。「早く戻らないと涼宮さん達が危ないですね」「心配はいらない。喜緑江美里と朝倉涼子には連絡済み」長門は仕事が速くて助かる。ここでやっとこさ由良と成崎が追いつく。「キョンくん達、拳銃どこで手に入れたの?」「校長室で拾った」由良の問いに長門が即答で答える。なんだそのありがちな設定は。いや、正直これで納得してくれたようなのでホッと安心だけどな。「あれゾンビ、だよね?」成崎は泣きそうな目で尋ねてくる。「多分な」「とりあえず戻りましょう。ここに居ては危険です」「あぁ、そうだな。二人も連れて行ったほうが良いよな?長門はどう思う?」「連れて行ったほうが良い」由良と成崎と俺達は体育館へ戻るために歩きだした。「おい、長門」「ん」由良と成崎の声が聞こえないように会話をする。「大丈夫なのか?改変が終わった後、あーだこーだとかあるんじゃないのか?」「大丈夫。情報操作は得意」「あぁ、そうだったな」俺はふと思い出して後ろを見る。由良と成崎を追いかけていたらしい男子生徒もといゾンビは100m程向こうで獲物に向かって必死にのんびりと歩いていた。夕焼けが浮かぶ空。そこに浮かぶその姿は、夕焼けより紅い、血液色だった。そんな状況の中。やはりアイツは最強のクリーチャーと化していた。
「あ・・・・・あ゙ぁぁああ・・・・・なぁああああ・・・・・・るぅぅうううううううあぁあああああああッッッ!!!!!!」
《!WARNING!》次回予告《!WARNING!》突拍子も無く突如始まったバイオハザード。もちろん、俺達は追いかけっこ以上に危険な状況下に陥っていた。そんな最中にやはりというか、なんというかアイツは最強のクリーチャーとして現れる。。追いかけっこは捕食の為の鬼ごっこにその姿を変えた時、人はどう動くだろうか。人間だった者を撃つ恐怖。プリンとアナルの狭間を彷徨う物語はその立ち位置に定住した。次回、ながとぅーみー第五話「NHK(人間捕食協会)にようこそ!」 「WAWAWA忘れものー!」
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。