すべては妹のために(後編)◆CFbj666Xrw
「……泣いてなんていない」
レミリアは涙を流してはいない。
顔を歪めているのは全てを嘲笑っているからだ。全てを嗤っているからだ。
「うそ……レミリア、泣いてる…………」
アルルゥはその嘘を穿つ。
根拠は無い。理屈なんて知らない。心に映り込んだ光景をありのままに語るだけ。
「…………レミリア、すごくかなしそう」
それは限りなく純粋な刃だった。
レミリアは煩わしげにアルルゥに剣を向ける。
「うるさいわね。おまえから殺すわよ」
「させない」
立ち上がったレックスがその間に割り込んだ。
例え勝つ自信はなくとも、時間を稼ぐ自信ならまだ有った。
(レミリアは……動揺している)
レミリアの言葉に含まれた僅かな焦りにその場の誰もが気付いていた。
レミリアは涙を流してはいない。
顔を歪めているのは全てを嘲笑っているからだ。全てを嗤っているからだ。
「うそ……レミリア、泣いてる…………」
アルルゥはその嘘を穿つ。
根拠は無い。理屈なんて知らない。心に映り込んだ光景をありのままに語るだけ。
「…………レミリア、すごくかなしそう」
それは限りなく純粋な刃だった。
レミリアは煩わしげにアルルゥに剣を向ける。
「うるさいわね。おまえから殺すわよ」
「させない」
立ち上がったレックスがその間に割り込んだ。
例え勝つ自信はなくとも、時間を稼ぐ自信ならまだ有った。
(レミリアは……動揺している)
レミリアの言葉に含まれた僅かな焦りにその場の誰もが気付いていた。
「図星突かれて焦ってんのか? ほんとバカだな」
だからレベッカ宮本も立ち上がる。アルルゥは目を丸くして驚いた。
「ベッキー……起きてたの?」
「ああ、そこのレックスって奴が名乗った辺りからな」
レックスが思い返す。それは確か……
「…………殆ど最初じゃないか」
「うるさい。起きても何もできなかったんだから仕方ないだろ」
レベッカは恐らく、この場で最も無力だった。
確かにひらりマントという盾は有る。だがそれすらも破る手段は有るのだ。
レミリアとレックスの戦いに至っては速すぎて殆ど反応できなかった。
そんなレベッカをレミリアが睨む。
「今なら何か出来るとでも言うのかしら?」
「おまえにそいつらを殺させないくらいはできるよ」
レベッカは軽くそう言った。
その表情は青い。魔槍の余波で刻まれた全身の傷口は血を流し、刻一刻とレベッカの体力を奪っていく。
「無理しちゃダメだ! いま、僕が回復するから……」
「なあ、レミリア」
レックスの言葉を遮ってレベッカは言葉の槍を投げ放つ。
「私達に投げたあのなんか凄い槍……なんでマイハートブレイクなんだ?」
「え…………?」
戸惑いはレミリア自身。
レベッカはレミリアが他にどんな技を持っているか、一つしか見ていない。バッドレディスクランブルだけだ。
だから推測の材料はあまりに少なく、これは半ばカマ掛けに近かった。
だけどもう確信した。
「my heart break……『私の心は砕け散る』。必殺技っぽくない名前だぞ」
「別に……前から付けていた名前よ」
それは事実だ。だが。
「じゃあなんであの時、それを選んだんだ?」
「………………」
レミリアは押し黙る。
あの時にはそれが有効だったから。言い訳は通る。
だけど有効なスペルカードは他にも有った。その中からレミリアはあれを選んで使用した。
そしてレベッカは核心を貫いた。
「それに……さっき気付いたんだ。レミリアはまだ一回も答えてないぞ。
『本当にレミリアは妹が死んだ事を悲しんでないのか?』」
「そんなの二度も答えて……」
「おまえが答えたのは二度。返答は『どう悲しめばいい?』に『妹が死んで泣けない姉も居る』だ」
誰もが息を呑む。並べればその意味する所は明白だった。
「だ、だまれっ!」
次の瞬間、レミリアはこの島で初めて心底から激情を爆発させた。
矢のように放たれた突撃は神速中の神速。
レックスに向けた如何なる攻撃よりも速く正に雷撃の速度で突き進む。
レベッカの命を狙って。
だからレベッカ宮本も立ち上がる。アルルゥは目を丸くして驚いた。
「ベッキー……起きてたの?」
「ああ、そこのレックスって奴が名乗った辺りからな」
レックスが思い返す。それは確か……
「…………殆ど最初じゃないか」
「うるさい。起きても何もできなかったんだから仕方ないだろ」
レベッカは恐らく、この場で最も無力だった。
確かにひらりマントという盾は有る。だがそれすらも破る手段は有るのだ。
レミリアとレックスの戦いに至っては速すぎて殆ど反応できなかった。
そんなレベッカをレミリアが睨む。
「今なら何か出来るとでも言うのかしら?」
「おまえにそいつらを殺させないくらいはできるよ」
レベッカは軽くそう言った。
その表情は青い。魔槍の余波で刻まれた全身の傷口は血を流し、刻一刻とレベッカの体力を奪っていく。
「無理しちゃダメだ! いま、僕が回復するから……」
「なあ、レミリア」
レックスの言葉を遮ってレベッカは言葉の槍を投げ放つ。
「私達に投げたあのなんか凄い槍……なんでマイハートブレイクなんだ?」
「え…………?」
戸惑いはレミリア自身。
レベッカはレミリアが他にどんな技を持っているか、一つしか見ていない。バッドレディスクランブルだけだ。
だから推測の材料はあまりに少なく、これは半ばカマ掛けに近かった。
だけどもう確信した。
「my heart break……『私の心は砕け散る』。必殺技っぽくない名前だぞ」
「別に……前から付けていた名前よ」
それは事実だ。だが。
「じゃあなんであの時、それを選んだんだ?」
「………………」
レミリアは押し黙る。
あの時にはそれが有効だったから。言い訳は通る。
だけど有効なスペルカードは他にも有った。その中からレミリアはあれを選んで使用した。
そしてレベッカは核心を貫いた。
「それに……さっき気付いたんだ。レミリアはまだ一回も答えてないぞ。
『本当にレミリアは妹が死んだ事を悲しんでないのか?』」
「そんなの二度も答えて……」
「おまえが答えたのは二度。返答は『どう悲しめばいい?』に『妹が死んで泣けない姉も居る』だ」
誰もが息を呑む。並べればその意味する所は明白だった。
「だ、だまれっ!」
次の瞬間、レミリアはこの島で初めて心底から激情を爆発させた。
矢のように放たれた突撃は神速中の神速。
レックスに向けた如何なる攻撃よりも速く正に雷撃の速度で突き進む。
レベッカの命を狙って。
* * *
――反芻する。
「フランが死んだから、最強の証明でもしてみようかと思ったのよ」
それがレミリアの新たな行動方針だった。
フランドールが死んだから選んだ新たな目的。
「どういう事だよ、それ。フランドールって、おまえの妹なんだろ」
「ええそうね、フランドール・スカーレットは私の妹よ。どこかで死んだみたいだけど」
だけどその目的はそっけなく、冷たい。
「それじゃ、悲しくないのか?」
「悲しい? 私が?」
「そうだよ、妹が死んだんだろ! お姉ちゃんなんだろ!
それなら……悲しくなったり、怒ったりするだろ。そういうもんだろ……」
その目的に激情は篭もらず、あっさりと感情を押し隠す。
当然だ。これは妹の復讐とかそういったものではないのだから。
レミリアは嗤った。
別に楽しくはなかったけれど、今の自分が滑稽でたまらなかった。
「495年間地下に閉じこめて一緒にいてやった時間すら殆ど無い妹の死に、どう悲しめというんだ?」
悲しみ方は判らなかった。
そして怒る事も出来なかった。
「フランを殺した奴も別に恨んで何かいないよ。
フランはこの島でも弾幕ごっこで遊んでいたみたいだし、その結果の生き死にを気にする理由は無いな。
弾幕ごっこで死んだなら、それはフランの行為の結果に過ぎないんだし」
――何故ならそれが彼女達のルールだからだ。
「フランが死んだから、最強の証明でもしてみようかと思ったのよ」
それがレミリアの新たな行動方針だった。
フランドールが死んだから選んだ新たな目的。
「どういう事だよ、それ。フランドールって、おまえの妹なんだろ」
「ええそうね、フランドール・スカーレットは私の妹よ。どこかで死んだみたいだけど」
だけどその目的はそっけなく、冷たい。
「それじゃ、悲しくないのか?」
「悲しい? 私が?」
「そうだよ、妹が死んだんだろ! お姉ちゃんなんだろ!
それなら……悲しくなったり、怒ったりするだろ。そういうもんだろ……」
その目的に激情は篭もらず、あっさりと感情を押し隠す。
当然だ。これは妹の復讐とかそういったものではないのだから。
レミリアは嗤った。
別に楽しくはなかったけれど、今の自分が滑稽でたまらなかった。
「495年間地下に閉じこめて一緒にいてやった時間すら殆ど無い妹の死に、どう悲しめというんだ?」
悲しみ方は判らなかった。
そして怒る事も出来なかった。
「フランを殺した奴も別に恨んで何かいないよ。
フランはこの島でも弾幕ごっこで遊んでいたみたいだし、その結果の生き死にを気にする理由は無いな。
弾幕ごっこで死んだなら、それはフランの行為の結果に過ぎないんだし」
――何故ならそれが彼女達のルールだからだ。
弾幕ごっこは一種の決闘である。
ルールを決め、戦い、その結果として『死んでしまっても仕方がない』という部分まで約束事の一部だ。
その枠内には結局の所、決闘の当事者だけが存在する。
そうやってルールを決めて戦いの規模を制限しておく事が必要だった。
弾幕ごっこが行われていた幻想郷は狭い世界なのに、その中に住まう妖怪達の力は剰りに強大だったからだ。
もしも感情に任せて無分別に争えば、小さな幻想郷はすぐに滅びてしまっていただろう。
だから弾幕ごっこでついた決着には当人が口出す事は出来ないし、部外者も同じ事だ。
加えてレミリアは絶対に『約束事』を破る事が出来ない。
それがレミリアの種族、悪魔の一種である吸血鬼の種族的特徴の一つなのだ。
約束をしたならそれがなんであれ絶対的拘束力を持ってしまう。
即ちこういう事だ。
フランドールが弾幕ごっこの結果として死亡したなら、レミリアはその事について一切の手出しが出来ない。
仕方のない事故なのだから。
例え目の前でそいつが幸せに笑って居ようとも、多くの仲間達と共に安息を得ていても。
レミリアはその相手に対し、『妹を殺した仇』として接することが許されない。
絶対に。
…………だけど、その事を恨む事すらできなかった。
ルールを決め、戦い、その結果として『死んでしまっても仕方がない』という部分まで約束事の一部だ。
その枠内には結局の所、決闘の当事者だけが存在する。
そうやってルールを決めて戦いの規模を制限しておく事が必要だった。
弾幕ごっこが行われていた幻想郷は狭い世界なのに、その中に住まう妖怪達の力は剰りに強大だったからだ。
もしも感情に任せて無分別に争えば、小さな幻想郷はすぐに滅びてしまっていただろう。
だから弾幕ごっこでついた決着には当人が口出す事は出来ないし、部外者も同じ事だ。
加えてレミリアは絶対に『約束事』を破る事が出来ない。
それがレミリアの種族、悪魔の一種である吸血鬼の種族的特徴の一つなのだ。
約束をしたならそれがなんであれ絶対的拘束力を持ってしまう。
即ちこういう事だ。
フランドールが弾幕ごっこの結果として死亡したなら、レミリアはその事について一切の手出しが出来ない。
仕方のない事故なのだから。
例え目の前でそいつが幸せに笑って居ようとも、多くの仲間達と共に安息を得ていても。
レミリアはその相手に対し、『妹を殺した仇』として接することが許されない。
絶対に。
…………だけど、その事を恨む事すらできなかった。
「結局こうなる運命だったのよ、あの子は」
避けた筈の運命だった。判っていた筈の運命だった。
フランの運命は何れその行く先を破滅に繋げる事が判っていたのに。
「久しぶりに外に出されて、はしゃいで遊んで殺されて。まあそれだけの事よ、大した事じゃないわ」
結局、レミリアは妹を破滅の運命から逃しそこねた。
フランは殺され、もう戻ってくる事は無い。
(――――違う)
「遊びの時間が終わっただけ。
冥界でも地獄だろうとフランの魂を捜し出して、引きずってでも家に連れ戻せば一件落着。
まあちょっぴり面倒くさいか」
(そう、遊びの時間はもう終わりだ)
それは無謀に等しい可能性だ。理屈で考えれば万に一つも成功しない。
だが、それがどうした。
「だからフランの死はそれだけの事」
レミリアは自らを嗤う。
「私の戦いにはこれっぽっちも関係無いわ」
吸血鬼は目の前にある苦難を嗤う。
「私はこれから最強を証明する」
悪魔の姉は過ぎ去った運命を笑い飛ばす。
避けた筈の運命だった。判っていた筈の運命だった。
フランの運命は何れその行く先を破滅に繋げる事が判っていたのに。
「久しぶりに外に出されて、はしゃいで遊んで殺されて。まあそれだけの事よ、大した事じゃないわ」
結局、レミリアは妹を破滅の運命から逃しそこねた。
フランは殺され、もう戻ってくる事は無い。
(――――違う)
「遊びの時間が終わっただけ。
冥界でも地獄だろうとフランの魂を捜し出して、引きずってでも家に連れ戻せば一件落着。
まあちょっぴり面倒くさいか」
(そう、遊びの時間はもう終わりだ)
それは無謀に等しい可能性だ。理屈で考えれば万に一つも成功しない。
だが、それがどうした。
「だからフランの死はそれだけの事」
レミリアは自らを嗤う。
「私の戦いにはこれっぽっちも関係無いわ」
吸血鬼は目の前にある苦難を嗤う。
「私はこれから最強を証明する」
悪魔の姉は過ぎ去った運命を笑い飛ばす。
レミリア・スカーレットは最強などではない。
喩え地獄の底に居ようとも妹を見つけて連れ戻すと宣った。
だが単純な実力で言えば、地獄の閻魔の力はレミリアの力を大きく上回っている。
そこに確実な勝機なんてものはない。
喩え地獄の底に居ようとも妹を見つけて連れ戻すと宣った。
だが単純な実力で言えば、地獄の閻魔の力はレミリアの力を大きく上回っている。
そこに確実な勝機なんてものはない。
レミリア・スカーレットは無敵などではない。
人でありながら博麗の巫女には何度もしてやられた。
幻想郷に訪れていなや仕掛けた侵略戦争でも強大な妖怪に破れた。
敗北の数は少なくない。
いや、そもこの島に来てからの事を考えてみれば良い。
何度傷付き、何度死にかけ、陽の光から隠れ何時間を城で過ごした事か。
これで無敵など笑い話にすぎない。
人でありながら博麗の巫女には何度もしてやられた。
幻想郷に訪れていなや仕掛けた侵略戦争でも強大な妖怪に破れた。
敗北の数は少なくない。
いや、そもこの島に来てからの事を考えてみれば良い。
何度傷付き、何度死にかけ、陽の光から隠れ何時間を城で過ごした事か。
これで無敵など笑い話にすぎない。
レミリア・スカーレットは勝者などではない。
そもそもレミリアは生まれて数年で敗北を喫したとなった。
レミリアは妹の力を超えられなかった。
ありとあらゆるものを破壊する力を抑えこむ事が出来なかった。
だから、レミリアには妹を地下に閉じこめておく事しか出来なかった。
妹の側に居た時間すら短くて、遊んでやった事なんて数える程だった。
フランドールはそれすらも享受し、レミリアを慕い続けてくれた。
それ以外を知らなかったから、それ以上を望む事もなかった。
――間違っていたとは思わない。
そうしなければやがて、フランドールの破滅の運命はありとあらゆる全てを呑み込んでいただろう。
だけど495年に渡ったその在り方は、フランドールに一つの餓えをもたらした。
そもそもレミリアは生まれて数年で敗北を喫したとなった。
レミリアは妹の力を超えられなかった。
ありとあらゆるものを破壊する力を抑えこむ事が出来なかった。
だから、レミリアには妹を地下に閉じこめておく事しか出来なかった。
妹の側に居た時間すら短くて、遊んでやった事なんて数える程だった。
フランドールはそれすらも享受し、レミリアを慕い続けてくれた。
それ以外を知らなかったから、それ以上を望む事もなかった。
――間違っていたとは思わない。
そうしなければやがて、フランドールの破滅の運命はありとあらゆる全てを呑み込んでいただろう。
だけど495年に渡ったその在り方は、フランドールに一つの餓えをもたらした。
吸血鬼が血に餓えるように。
悪魔の妹は絆に餓えた。
悪魔の妹は絆に餓えた。
レミリアはフランドール殺しの共犯を一人知っていた。
装飾的に言えば――
あの決定的に封建的で独断的、かつ一意的なほど絶対的超越的な力が。
徹底的に刹那的遊戯的で、暴力的致命的悲劇的なまで盲目的な手に握られていたのに。
破壊的壊滅的破滅的に終末的で、猟奇的ですらなく無目的に虚無的で末期的な、
本能的に絶望的に病理的に暴力的に悲劇的な『破壊』が起こらなかった。
端的にたった一言に集約すればつまり――
『ありとあらゆるものを破壊する程度』の能力が使われなかった。
その事が意味するところを知っていた。
周囲の全て、つまりこの世界を壊す為に目的を持って使われなかっただけではなく、
誰かに殺されたのに、その誰かを撃退する為にさえ使われなかった理由。
それはフランドールが最後まで遊びを望むからに他ならない。
装飾的に言えば――
あの決定的に封建的で独断的、かつ一意的なほど絶対的超越的な力が。
徹底的に刹那的遊戯的で、暴力的致命的悲劇的なまで盲目的な手に握られていたのに。
破壊的壊滅的破滅的に終末的で、猟奇的ですらなく無目的に虚無的で末期的な、
本能的に絶望的に病理的に暴力的に悲劇的な『破壊』が起こらなかった。
端的にたった一言に集約すればつまり――
『ありとあらゆるものを破壊する程度』の能力が使われなかった。
その事が意味するところを知っていた。
周囲の全て、つまりこの世界を壊す為に目的を持って使われなかっただけではなく、
誰かに殺されたのに、その誰かを撃退する為にさえ使われなかった理由。
それはフランドールが最後まで遊びを望むからに他ならない。
別に遊び好きな事自体はレミリアだって変わらない。
レミリアも遊びにかまけて愚かな失敗を何度も冒した。
だけどレミリアは遊びを諦められる。約束事を抜きにすれば、レミリアにとって遊びはその程度のものだった。
フランにとっての遊びは約束事無しでもその程度のものではなかった。
フランドールの遊び場は暗い地下室だけで、遊ぶ相手は誰も居なかった。
だからこの異常な世界さえも貴重な遊び場として楽しもうとした。
形振り構わぬ殺意を抱いた者達すら遊び相手にしようとした。
――殺されたのはそのせいだろう。
フランはレミリアの与えた孤独により殺された。
レミリアも遊びにかまけて愚かな失敗を何度も冒した。
だけどレミリアは遊びを諦められる。約束事を抜きにすれば、レミリアにとって遊びはその程度のものだった。
フランにとっての遊びは約束事無しでもその程度のものではなかった。
フランドールの遊び場は暗い地下室だけで、遊ぶ相手は誰も居なかった。
だからこの異常な世界さえも貴重な遊び場として楽しもうとした。
形振り構わぬ殺意を抱いた者達すら遊び相手にしようとした。
――殺されたのはそのせいだろう。
フランはレミリアの与えた孤独により殺された。
だからレミリアは誓う事にした。
「立ち塞がる者は全て叩き潰す。
フランを殺した奴も、他の兵どもも、そしてジェダ・ドーマも、一切合切区別せず。
全て纏めて叩き潰すことで勝者となって、何者も怖れることない無敵の存在だと証明してやるわ。
その後で冥界の底からだろうとフランを引きずり出す。
たったそれだけの事」
「立ち塞がる者は全て叩き潰す。
フランを殺した奴も、他の兵どもも、そしてジェダ・ドーマも、一切合切区別せず。
全て纏めて叩き潰すことで勝者となって、何者も怖れることない無敵の存在だと証明してやるわ。
その後で冥界の底からだろうとフランを引きずり出す。
たったそれだけの事」
レミリアは最強ではないし無敵でもない。
これまでは勝者ですらなかった。
だからせめてこれからは最強である事を誓おう。
絶対無敵なる勝者として、フランの為にしてやれなかった事を今からでもしてやろう。
ありとあらゆるものを破壊する“程度”の能力が生みだした孤独を否定してやろう。
もしもフランの破滅が運命だったならば、新たな運命でその全てを取り返してやろう。
それが既に過ぎ去った運命で有ったとしてもだ。
その“程度”の事が出来なくてどうする。
「私を誰だと思っているのかしら。
私の名はレミリア・スカーレット。
『運命を操る“程度”の能力』を持つ吸血鬼よ」
これまでは勝者ですらなかった。
だからせめてこれからは最強である事を誓おう。
絶対無敵なる勝者として、フランの為にしてやれなかった事を今からでもしてやろう。
ありとあらゆるものを破壊する“程度”の能力が生みだした孤独を否定してやろう。
もしもフランの破滅が運命だったならば、新たな運命でその全てを取り返してやろう。
それが既に過ぎ去った運命で有ったとしてもだ。
その“程度”の事が出来なくてどうする。
「私を誰だと思っているのかしら。
私の名はレミリア・スカーレット。
『運命を操る“程度”の能力』を持つ吸血鬼よ」
フランを殺した奴は必ず叩き潰す。
なぜならそれがフランより強い事を証明する手段だからだ。
それはあくまで復讐ではない。
単に自らが最強である事を証明する過程に過ぎない。
そしてフランを生き返らせたら、今度は自由と未来の両方を与えてやる。
問題は無い。レミリアがフランより強いならば、フランを怖れる必要はないのだから。
その為に最強を証明しよう。無敵になろう。勝者となろう。
それはレミリアが自分とした約束事。
絶対に破れない、力の限り命の限り完遂しなければならない自らとの契約だ。
なぜならそれがフランより強い事を証明する手段だからだ。
それはあくまで復讐ではない。
単に自らが最強である事を証明する過程に過ぎない。
そしてフランを生き返らせたら、今度は自由と未来の両方を与えてやる。
問題は無い。レミリアがフランより強いならば、フランを怖れる必要はないのだから。
その為に最強を証明しよう。無敵になろう。勝者となろう。
それはレミリアが自分とした約束事。
絶対に破れない、力の限り命の限り完遂しなければならない自らとの契約だ。
* * *
「おまえが答えたのは二度。返答は『どう悲しめばいい?』に『妹が死んで泣けない姉も居る』だ」
「だ、だまれっ!」
だからレベッカのその言葉を許すわけにはいけなかった。
一欠片でも自らの弱さを認めるわけにはいかないのだ。
即座に自らを弾丸と化して撃ち放つ。
だが弾丸と等しい速度の突撃はねじ曲げられた。
レミリアのこれまでの小細工を弄さない突撃は何も考えない突撃ではない。
率直でありながら相手が何をしようと対応する備えを用意した上での突撃だ。
その備えすら無い突撃など撃たれるのが判っている銃弾と同じ。
ボロボロのひらりマントでも回避できる。
「おまえは本当にバカな姉だ! 私はおまえと妹の関係なんて知らない!
だけど家族が死んだら悲しんだり泣いたりして良いんだ! 泣いちゃいけない理由なんて有るもんか!」
「この……! 黙りなさい!」
妹に孤独を与えた姉が? その中で死なせた姉が? 妹を殺した相手を恨む事すら出来ない姉が?
それに泣くものか。泣くのは弱さだ。弱さは不要だ。
弱くては例えフランドールを救えたところで同じ道しか選べない。
それではダメだ。そんな救いでは足りない。何にもならない。何の意味も有りはしない。
「おまえに私の何が判る!」
「おまえがバカだって事は判るさ!」
そして同情され憐憫を受ける事もレミリアには許せない。
それは上位の余裕を持った者がする事だ。この行為はレミリアの弱さを糾弾する挑発に他ならない。
レミリアからその様子を見て取ったレベッカが、にやりと笑った。
「だ、だまれっ!」
だからレベッカのその言葉を許すわけにはいけなかった。
一欠片でも自らの弱さを認めるわけにはいかないのだ。
即座に自らを弾丸と化して撃ち放つ。
だが弾丸と等しい速度の突撃はねじ曲げられた。
レミリアのこれまでの小細工を弄さない突撃は何も考えない突撃ではない。
率直でありながら相手が何をしようと対応する備えを用意した上での突撃だ。
その備えすら無い突撃など撃たれるのが判っている銃弾と同じ。
ボロボロのひらりマントでも回避できる。
「おまえは本当にバカな姉だ! 私はおまえと妹の関係なんて知らない!
だけど家族が死んだら悲しんだり泣いたりして良いんだ! 泣いちゃいけない理由なんて有るもんか!」
「この……! 黙りなさい!」
妹に孤独を与えた姉が? その中で死なせた姉が? 妹を殺した相手を恨む事すら出来ない姉が?
それに泣くものか。泣くのは弱さだ。弱さは不要だ。
弱くては例えフランドールを救えたところで同じ道しか選べない。
それではダメだ。そんな救いでは足りない。何にもならない。何の意味も有りはしない。
「おまえに私の何が判る!」
「おまえがバカだって事は判るさ!」
そして同情され憐憫を受ける事もレミリアには許せない。
それは上位の余裕を持った者がする事だ。この行為はレミリアの弱さを糾弾する挑発に他ならない。
レミリアからその様子を見て取ったレベッカが、にやりと笑った。
「じゃあ答え合わせするぞ。私がおまえにその二人を殺させない方法のな」
「なんだって?」
レベッカは小脇に抱えていた魔導ボードを宙に浮かべた。
先程調子が悪くなっていたそれだが、気絶したふりをしながら色々と弄る――叩いたりするとひとまずは再起動した。
またいつ止まるかも判らないが今はそれで充分だ。
レベッカは魔導ボードに飛び乗った。
「……そういう事。ジーニアスといいそういうのが好きだな、おまえ達は」
「ああ、やっぱりそういう事か。……だと思ったよ」
レミリアの忌々しげな呟きにレベッカは得心する。やはりそういう事なのか、と。
「ベッキー、それどういう……」
アルルゥの戸惑いにレベッカは笑みを作ってみせる。
レベッカの顔が青ざめているのは貧血のせいだけではなかった。
その表情は怯えていた。泣き出しそうになるのをこらえていた。
それでもなんともないという笑いを作ってみせて、言った。
「……私がこんな事できるのはきっと、翠星石とジーニアスに感化されたからだ。
あと貧血で怖いとかそういうのが鈍ってるせいかもな。
だからジーニアスの事も信じてくれよ。あいつ、ほんとうに良い奴だったんだ。きっと、最後まで。
……それから、レミリアの事も恨まなくていいぞ。こんなバカ、可哀想なだけだ」
「ベッキー……?」
アルルゥは戸惑う。レベッカは何をしようとしているのか。
「それからレックスっていったっけ。……おまえ、勇者っていうならアルルゥのこと頼んだからな!
絶対に守れよ!」
「君は……まさか!」
レックスは気付いた。レベッカは恐らく……。
「なんだって?」
レベッカは小脇に抱えていた魔導ボードを宙に浮かべた。
先程調子が悪くなっていたそれだが、気絶したふりをしながら色々と弄る――叩いたりするとひとまずは再起動した。
またいつ止まるかも判らないが今はそれで充分だ。
レベッカは魔導ボードに飛び乗った。
「……そういう事。ジーニアスといいそういうのが好きだな、おまえ達は」
「ああ、やっぱりそういう事か。……だと思ったよ」
レミリアの忌々しげな呟きにレベッカは得心する。やはりそういう事なのか、と。
「ベッキー、それどういう……」
アルルゥの戸惑いにレベッカは笑みを作ってみせる。
レベッカの顔が青ざめているのは貧血のせいだけではなかった。
その表情は怯えていた。泣き出しそうになるのをこらえていた。
それでもなんともないという笑いを作ってみせて、言った。
「……私がこんな事できるのはきっと、翠星石とジーニアスに感化されたからだ。
あと貧血で怖いとかそういうのが鈍ってるせいかもな。
だからジーニアスの事も信じてくれよ。あいつ、ほんとうに良い奴だったんだ。きっと、最後まで。
……それから、レミリアの事も恨まなくていいぞ。こんなバカ、可哀想なだけだ」
「ベッキー……?」
アルルゥは戸惑う。レベッカは何をしようとしているのか。
「それからレックスっていったっけ。……おまえ、勇者っていうならアルルゥのこと頼んだからな!
絶対に守れよ!」
「君は……まさか!」
レックスは気付いた。レベッカは恐らく……。
「じゃあな! 二人ともまた会ったら承知しないぞ!」
レベッカは魔導ボードを走らせた。川を目指して。
「…………チッ」
レミリアは舌打ちと共にそれを追撃した。
レミリアにもレベッカの狙いは判っている。だけどそれでも、今はこうする他にない。
逆鱗を刺激したレベッカは今やレミリアにとって最重要目標なのだから。
あるいはそうしたくてそうした……レベッカの誘いに乗りたかったのかも知れない。
なんにせよレミリアはレベッカを追って、その場から去った。
アルルゥとレックスを置いて。
レベッカは魔導ボードを走らせた。川を目指して。
「…………チッ」
レミリアは舌打ちと共にそれを追撃した。
レミリアにもレベッカの狙いは判っている。だけどそれでも、今はこうする他にない。
逆鱗を刺激したレベッカは今やレミリアにとって最重要目標なのだから。
あるいはそうしたくてそうした……レベッカの誘いに乗りたかったのかも知れない。
なんにせよレミリアはレベッカを追って、その場から去った。
アルルゥとレックスを置いて。
「ベッキー…………?」
アルルゥは茫然としていた。まだ何が起きたのかを理解できない。
レベッカは何をしたのか。ジーニアスも同じというのがどういう事なのか。
判らない。
……レックスが口を開いた。
「……ずっと昔の事だ」
訥々とレックスが語り教える。
「お父さんが本来治めるべきだったグランバニアの国王になった戴冠式の夜。
僕とタバサが生まれた日でもある。……その夜、城に魔物達が襲撃してきたんだ。
僕とタバサを狙ってきたんだって」
自らも覚えていない過去。自らの生誕に関わる話。
「その時、お母さんは僕とタバサを隠して身代わりに捕まった。
魔物達は目的の僕達を見つけられなかったけれど、お母さんを捕まえて帰っていった」
その話でアルルゥは理解した。
「ジーニアスも?」
繋がらない文脈。通じる意志。
「…………多分ね」
アルルゥは殺されていない。梨々に捕まった時も、今この時も。
それが彼らの行動の意味する所。
アルルゥは茫然としていた。まだ何が起きたのかを理解できない。
レベッカは何をしたのか。ジーニアスも同じというのがどういう事なのか。
判らない。
……レックスが口を開いた。
「……ずっと昔の事だ」
訥々とレックスが語り教える。
「お父さんが本来治めるべきだったグランバニアの国王になった戴冠式の夜。
僕とタバサが生まれた日でもある。……その夜、城に魔物達が襲撃してきたんだ。
僕とタバサを狙ってきたんだって」
自らも覚えていない過去。自らの生誕に関わる話。
「その時、お母さんは僕とタバサを隠して身代わりに捕まった。
魔物達は目的の僕達を見つけられなかったけれど、お母さんを捕まえて帰っていった」
その話でアルルゥは理解した。
「ジーニアスも?」
繋がらない文脈。通じる意志。
「…………多分ね」
アルルゥは殺されていない。梨々に捕まった時も、今この時も。
それが彼らの行動の意味する所。
* * *
レミリアは幾度となくレベッカに突撃をしかける。
その攻撃は本来ならひらりマントが有った所でどうしようもないものだ。
直前で方向転換しマントとは逆側に回り込んで襲えばそれで済む。
だがレミリアの攻撃は激情からかあまりにも単純だった。
魔導ボードの上で後方に対応できる事も有ってか、攻撃の何れもが決定打となりえない。
(このままなら……もうちょっと足掻いてやる!)
レベッカの魔導ボードが川辺に飛び出す。
そしてそのまま水面に向けて滑り出そうとして。
「なんだ、結構判ってる奴だな、おまえは」
魔導ボードの真下から声がした。
最大加速状態から急停止。たまらず体が宙に浮いた。
「うわあ!?」
川辺のぬかるみに叩きつけられた。泥に柔らかく受け止められ、まみれる。
顔を上げたら、そこにはレミリアが立っていた。
彼女に死を告げる者が立っている。
「吸血鬼は流れ水を渡れない。合ってるわよ、少し前ならともかく今はね」
「……もう、冷静になったのか」
「何度も失敗してるのに熱いままでいるものか」
それが最後の足掻きだ。
もし川の上に出れば、もう追って来られないかもしれない。そうすれば逃げきれる。
傷だって止血をちゃんとすれば助かるかもしれない。
結局それはただの足掻きに終わった。……ベッキー自身あまり期待していなかったが。
「だけど私の弾幕はどうするつもりだったのかしら。そのボロマント如きで防げると思った?」
「じゃあなんで追っかけてるときに撃たなかったんだよ」
「余裕よ」
「……嘘吐け」
レベッカは無理矢理に笑った。
「おまえ、殆ど余裕無かっただろ」
「………………」
レベッカはずっと戦いを観察していた。そうすれば端々に感じられた。
最強であり無敵であるように振る舞うレミリアが、どこかしら余裕無く見える事に。
そしてそれはその通りだった。
レミリアは思う。
(……この剣を持ってる時のレックスはあの月を砕く鬼みたいに力強かった)
何故もっと強い力が無いのだろうか。
(最初のライデインを受けた時、あの傷じゃアイゼンで纏った服が無いと死んでいた)
どうして自分の強さはもっと圧倒的な物ではないのだろうか。
(あの騎士甲冑とかいう服を脱いだのはあそこで魔力が尽きたからだし、
ギガデインはこっちが与えた隙以外に撃たれたらどうなっていたか)
自分自身の強さは知っている。
総合的に見れば最も優れていると思うことにしているし、実際にも間違いなく強い。
(それにこいつの言葉が……)
だけどどうしてもっと、全て圧倒してねじ伏せるような力が無いのだろうか。
フランが何をしようと易々押さえ込めるような、何でもさせてやれる力がなかったのだろうか。
……レミリアはフランの姉なのに。
その攻撃は本来ならひらりマントが有った所でどうしようもないものだ。
直前で方向転換しマントとは逆側に回り込んで襲えばそれで済む。
だがレミリアの攻撃は激情からかあまりにも単純だった。
魔導ボードの上で後方に対応できる事も有ってか、攻撃の何れもが決定打となりえない。
(このままなら……もうちょっと足掻いてやる!)
レベッカの魔導ボードが川辺に飛び出す。
そしてそのまま水面に向けて滑り出そうとして。
「なんだ、結構判ってる奴だな、おまえは」
魔導ボードの真下から声がした。
最大加速状態から急停止。たまらず体が宙に浮いた。
「うわあ!?」
川辺のぬかるみに叩きつけられた。泥に柔らかく受け止められ、まみれる。
顔を上げたら、そこにはレミリアが立っていた。
彼女に死を告げる者が立っている。
「吸血鬼は流れ水を渡れない。合ってるわよ、少し前ならともかく今はね」
「……もう、冷静になったのか」
「何度も失敗してるのに熱いままでいるものか」
それが最後の足掻きだ。
もし川の上に出れば、もう追って来られないかもしれない。そうすれば逃げきれる。
傷だって止血をちゃんとすれば助かるかもしれない。
結局それはただの足掻きに終わった。……ベッキー自身あまり期待していなかったが。
「だけど私の弾幕はどうするつもりだったのかしら。そのボロマント如きで防げると思った?」
「じゃあなんで追っかけてるときに撃たなかったんだよ」
「余裕よ」
「……嘘吐け」
レベッカは無理矢理に笑った。
「おまえ、殆ど余裕無かっただろ」
「………………」
レベッカはずっと戦いを観察していた。そうすれば端々に感じられた。
最強であり無敵であるように振る舞うレミリアが、どこかしら余裕無く見える事に。
そしてそれはその通りだった。
レミリアは思う。
(……この剣を持ってる時のレックスはあの月を砕く鬼みたいに力強かった)
何故もっと強い力が無いのだろうか。
(最初のライデインを受けた時、あの傷じゃアイゼンで纏った服が無いと死んでいた)
どうして自分の強さはもっと圧倒的な物ではないのだろうか。
(あの騎士甲冑とかいう服を脱いだのはあそこで魔力が尽きたからだし、
ギガデインはこっちが与えた隙以外に撃たれたらどうなっていたか)
自分自身の強さは知っている。
総合的に見れば最も優れていると思うことにしているし、実際にも間違いなく強い。
(それにこいつの言葉が……)
だけどどうしてもっと、全て圧倒してねじ伏せるような力が無いのだろうか。
フランが何をしようと易々押さえ込めるような、何でもさせてやれる力がなかったのだろうか。
……レミリアはフランの姉なのに。
「おまえはバカだ」
「……まだ言うか」
レベッカはせせら笑う。
レミリアを嗤い、嘲笑い、心の底から真実の言葉を投げ放つ。
それがレベッカに与えられた最も鋭い槍だった。
「自分一人で何もかも抱え込んでどうするんだ。
誰とも一緒に笑えず世界中を馬鹿にし続けるのか。
誰にも叱られず傲慢になっていくのか。
それをする自分自身が一等バカなのに気付かずに!
レミリア、おまえはバカだ! おまえは裸の王様だ!!」
「黙れ!」
レミリアはレベッカの喉元を掴み血に叩きつける。
永劫埋まらない肉体の差がレベッカを押さえつける。絶対なる死の予感。
「死を怖れる人間のくせに意地を張っているのはどっちだ!」
「そうだよ! 意地張って暴走するおまえも、意地張って命捨てる私も!」
それでもこの瞬間、確かにレベッカはレミリアを圧していた。
「天才だの吸血鬼だの言っても、私達はただの大バカなんだ!!」
「この……!!」
レミリアはレベッカの喉笛に噛み付いた。
レミリアは自分を怖れる人間の血しか吸わない。
だから目の前に居るレベッカが自分を怖れるただの人間に過ぎないことを証明するために、
レミリアは彼女の血を吸い尽くして、殺した。
小食の彼女でも、既に大量に血を失ったレベッカは無理をすれば飲み干す事ができた。
……結局それは、ただの意地だった。
レミリアは回復した魔力で再び騎士甲冑を纏うと、逃げるようにその場を飛び去った。
「……まだ言うか」
レベッカはせせら笑う。
レミリアを嗤い、嘲笑い、心の底から真実の言葉を投げ放つ。
それがレベッカに与えられた最も鋭い槍だった。
「自分一人で何もかも抱え込んでどうするんだ。
誰とも一緒に笑えず世界中を馬鹿にし続けるのか。
誰にも叱られず傲慢になっていくのか。
それをする自分自身が一等バカなのに気付かずに!
レミリア、おまえはバカだ! おまえは裸の王様だ!!」
「黙れ!」
レミリアはレベッカの喉元を掴み血に叩きつける。
永劫埋まらない肉体の差がレベッカを押さえつける。絶対なる死の予感。
「死を怖れる人間のくせに意地を張っているのはどっちだ!」
「そうだよ! 意地張って暴走するおまえも、意地張って命捨てる私も!」
それでもこの瞬間、確かにレベッカはレミリアを圧していた。
「天才だの吸血鬼だの言っても、私達はただの大バカなんだ!!」
「この……!!」
レミリアはレベッカの喉笛に噛み付いた。
レミリアは自分を怖れる人間の血しか吸わない。
だから目の前に居るレベッカが自分を怖れるただの人間に過ぎないことを証明するために、
レミリアは彼女の血を吸い尽くして、殺した。
小食の彼女でも、既に大量に血を失ったレベッカは無理をすれば飲み干す事ができた。
……結局それは、ただの意地だった。
レミリアは回復した魔力で再び騎士甲冑を纏うと、逃げるようにその場を飛び去った。
* * *
「……う…………ひっく……う……うぅ…………えぐっ……」
童が泣いていた。
夜の森で泣いていた。
「う……みんな……みんな、死んじゃった……」
アルルゥは、泣いていた。
ぽろぽろと涙を零し、死を悼んでいた。
「プレセアおねーちゃんも……ジーニアスも…………ベッキーも。
アルルゥを守ってくれたひと、みんなみんな死んじゃった……」
レックスは聞いた。
「守ってくれる人が居ないのは、こわい?」
アルルゥは首を振った。
「アルルゥを守ってくれる人、アルルゥも好きになれる。
好きな人、好きになれる人が死んじゃうの、こわい……」
「…………そっか」
誰かに守られるのは嬉しくて、だけど守ってくれた人が死んでいくのは怖い事。
その人達は自分を守らなければ生き残ったのではないだろうか。
自分のせいで死んだのではないだろうか。
たとえ自分がその隣で精一杯戦っていたとしても、その思いは消えてくれない。
「でも……今度は僕が守るよ」
「え…………」
「ベッキーに頼まれたしね。勇者として約束するよ。僕は死なない」
アルルゥはレックスを見つめた。
「でもレックスも、何度も傷を受けて……」
「もう大丈夫だよ。ほら」
一番深い背中に受けた傷すらも、うっすら痕が残るだけ。ベホマで治したからだ。
(マジックポイントはもう限界近いけど……これだって睡眠さえ取れればなんとかなる。
ラグナロクは取られたけど、僕には父さんの杖が有る。
まだだ、まだ大丈夫だ。僕は戦える)
その意志が挫けない限り。
「それより……ごめんね。その手」
「う…………」
アルルゥは自分の手を見つめた。レックスに切り飛ばされた右手首。薄膜を張った断面。
レックスはそこに拾いあげた右手首を当てて、唱えた。
「ベホマ」
右手首が吸い付いた。……だけど。
「…………ダメ、うごかない」
「やっぱり無理か。ごめんね」
右手首は繋がったけれど、制限下ではここまでだった。
アルルゥの右手はもうなにも掴めない。
「……ううん。いい」
それでもアルルゥがそれを恨む事はなかった。だってレックスはもう敵ではないのだから。
だからそれがどんな相手でも恨むことはない。
元居た世界で和解した敵軍の将を恨まなかったように、悲しみと憎しみは別の物だ。
そしてレミリアに対してもまた、別な理由で憎まないでいた。
(ベッキー、レミリアをうらまなくていいって言った)
実を言うとその本質は単なる優しさではない。
それは、精神の余裕こそレミリアに抗する最大の武器になるからだ。
吸血鬼に限らず妖怪は肉体より信念に依存する。
肉の傷みより心の痛み。精神的なダメージが最も致命的な傷へと変わる。
だからレベッカは心の余裕や優しさを手放さない事で戦い抜いたのだ。
レベッカがどうやってその解答に気付いたのかは想像すらできない。
本人に言わせるならば天才だからという答えが返るに違いない。
童が泣いていた。
夜の森で泣いていた。
「う……みんな……みんな、死んじゃった……」
アルルゥは、泣いていた。
ぽろぽろと涙を零し、死を悼んでいた。
「プレセアおねーちゃんも……ジーニアスも…………ベッキーも。
アルルゥを守ってくれたひと、みんなみんな死んじゃった……」
レックスは聞いた。
「守ってくれる人が居ないのは、こわい?」
アルルゥは首を振った。
「アルルゥを守ってくれる人、アルルゥも好きになれる。
好きな人、好きになれる人が死んじゃうの、こわい……」
「…………そっか」
誰かに守られるのは嬉しくて、だけど守ってくれた人が死んでいくのは怖い事。
その人達は自分を守らなければ生き残ったのではないだろうか。
自分のせいで死んだのではないだろうか。
たとえ自分がその隣で精一杯戦っていたとしても、その思いは消えてくれない。
「でも……今度は僕が守るよ」
「え…………」
「ベッキーに頼まれたしね。勇者として約束するよ。僕は死なない」
アルルゥはレックスを見つめた。
「でもレックスも、何度も傷を受けて……」
「もう大丈夫だよ。ほら」
一番深い背中に受けた傷すらも、うっすら痕が残るだけ。ベホマで治したからだ。
(マジックポイントはもう限界近いけど……これだって睡眠さえ取れればなんとかなる。
ラグナロクは取られたけど、僕には父さんの杖が有る。
まだだ、まだ大丈夫だ。僕は戦える)
その意志が挫けない限り。
「それより……ごめんね。その手」
「う…………」
アルルゥは自分の手を見つめた。レックスに切り飛ばされた右手首。薄膜を張った断面。
レックスはそこに拾いあげた右手首を当てて、唱えた。
「ベホマ」
右手首が吸い付いた。……だけど。
「…………ダメ、うごかない」
「やっぱり無理か。ごめんね」
右手首は繋がったけれど、制限下ではここまでだった。
アルルゥの右手はもうなにも掴めない。
「……ううん。いい」
それでもアルルゥがそれを恨む事はなかった。だってレックスはもう敵ではないのだから。
だからそれがどんな相手でも恨むことはない。
元居た世界で和解した敵軍の将を恨まなかったように、悲しみと憎しみは別の物だ。
そしてレミリアに対してもまた、別な理由で憎まないでいた。
(ベッキー、レミリアをうらまなくていいって言った)
実を言うとその本質は単なる優しさではない。
それは、精神の余裕こそレミリアに抗する最大の武器になるからだ。
吸血鬼に限らず妖怪は肉体より信念に依存する。
肉の傷みより心の痛み。精神的なダメージが最も致命的な傷へと変わる。
だからレベッカは心の余裕や優しさを手放さない事で戦い抜いたのだ。
レベッカがどうやってその解答に気付いたのかは想像すらできない。
本人に言わせるならば天才だからという答えが返るに違いない。
というよりアルルゥも全く理解してはいなかった。
ただその本質だけを感じ取っていた。
「レックス。……アルルゥ、レミリア止めたい」
「……良いよ、行こう。僕はタバサを捜したいけど、どっちも手掛かりはないんだ」
レックスは右手を差し出した。
「あ、ごめ……」
すぐに気づき下げようとしたその手に右手が当てられる。
アルルゥは左手で自分の右手を掴んで、レックスの右手と握手した。
レックスは空いた左手でアルルゥの涙を拭ってやった。
「……うん。いこう」
こうして魔物使いの息子と魔獣使いの少女は手を組んだ。
ただその本質だけを感じ取っていた。
「レックス。……アルルゥ、レミリア止めたい」
「……良いよ、行こう。僕はタバサを捜したいけど、どっちも手掛かりはないんだ」
レックスは右手を差し出した。
「あ、ごめ……」
すぐに気づき下げようとしたその手に右手が当てられる。
アルルゥは左手で自分の右手を掴んで、レックスの右手と握手した。
レックスは空いた左手でアルルゥの涙を拭ってやった。
「……うん。いこう」
こうして魔物使いの息子と魔獣使いの少女は手を組んだ。
【E-4/川岸から移動/1日目/夜】
【レミリア・スカーレット@東方Project】
[状態]:魔力消費(中・吸血で回復)全身への魔力ダメージ(中・自然治癒中)飲み過ぎ胃のもたれ
[装備]:ラグナロク@FINAL FANTASY4
[道具]:グラーフアイゼン(待機フォルム)@魔法少女リリカルなのはA’s(多少ダメージを受けている)
[服装]:バリアジャケット・パチュリーフォーム
[思考]:………………。
第一行動方針:基本的に出会った奴は全て叩きのめす。
フランを殺した奴は=フランより強い=最優先目標。
基本行動方針:島の全て(含むジェダ)を叩きのめし最強を証明する。
※フランドールに関する情報、
『紙の束』『赤い宝石』『レイジングハートと遊ぶ』『喋る杖』『貴女自身の魔法、スペルカードを使ってください』『仮面の女』
を手に入れました。 レイジングハートについて大まかな情報を得ました。
※グラーフアイゼンはレミリアをあまり好いてはいません。
【レミリア・スカーレット@東方Project】
[状態]:魔力消費(中・吸血で回復)全身への魔力ダメージ(中・自然治癒中)飲み過ぎ胃のもたれ
[装備]:ラグナロク@FINAL FANTASY4
[道具]:グラーフアイゼン(待機フォルム)@魔法少女リリカルなのはA’s(多少ダメージを受けている)
[服装]:バリアジャケット・パチュリーフォーム
[思考]:………………。
第一行動方針:基本的に出会った奴は全て叩きのめす。
フランを殺した奴は=フランより強い=最優先目標。
基本行動方針:島の全て(含むジェダ)を叩きのめし最強を証明する。
※フランドールに関する情報、
『紙の束』『赤い宝石』『レイジングハートと遊ぶ』『喋る杖』『貴女自身の魔法、スペルカードを使ってください』『仮面の女』
を手に入れました。 レイジングハートについて大まかな情報を得ました。
※グラーフアイゼンはレミリアをあまり好いてはいません。
【E-4/森/一日目/夜】
【レックス@ドラゴンクエスト5】
[状態]:疲労、魔力大消費。
[装備]:ドラゴンの杖@ドラゴンクエスト5 (ドラゴラム使用回数残り2回)
[道具]:基本支給品、GIのスペルカード(『交信』×1、『磁力』×1)
[思考]:それじゃ、行こう。
第一行動方針:アルルゥを守りつつ、レミリアとタバサを捜す。
第ニ行動方針:余裕があったら、お城を調べてみたい。
第三行動方針:雛苺に対して対抗心。準備が整ったらリベンジする?
基本行動方針:勇者としてタバサの兄として誇れるよう生きる。でも敵には容赦しない。
[備考]:エンディング後なので、呪文は一通り習得済み
アルルゥや真紅はモンスターの一種だと思っています。
ベッキーは死亡したと考えています。
【レックス@ドラゴンクエスト5】
[状態]:疲労、魔力大消費。
[装備]:ドラゴンの杖@ドラゴンクエスト5 (ドラゴラム使用回数残り2回)
[道具]:基本支給品、GIのスペルカード(『交信』×1、『磁力』×1)
[思考]:それじゃ、行こう。
第一行動方針:アルルゥを守りつつ、レミリアとタバサを捜す。
第ニ行動方針:余裕があったら、お城を調べてみたい。
第三行動方針:雛苺に対して対抗心。準備が整ったらリベンジする?
基本行動方針:勇者としてタバサの兄として誇れるよう生きる。でも敵には容赦しない。
[備考]:エンディング後なので、呪文は一通り習得済み
アルルゥや真紅はモンスターの一種だと思っています。
ベッキーは死亡したと考えています。
【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中)、右腕の手首から先が動かない。
[装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:基本支給品(食料-1)、クロウカード『泡』
[服装]:普段着である民族衣装風の着物(背中の部分が破れ、血で濡れている)
[思考]:うん、いこう!
第一行動方針:レミリアを捜して止める。
第二行動方針:イエローを捜したい。
基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。
参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後
[備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。
ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。
サモナイト石で召喚された魔獣は、必ず攻撃動作を一回行ってから消えます。攻撃を止めることは不可能。
梨々のことは「怖くて嫌いなひと」です。
本能的に、アリス・イン・ワンダーランドに対して嫌悪を覚えています。
ベッキーは死亡したと考えています。
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中)、右腕の手首から先が動かない。
[装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:基本支給品(食料-1)、クロウカード『泡』
[服装]:普段着である民族衣装風の着物(背中の部分が破れ、血で濡れている)
[思考]:うん、いこう!
第一行動方針:レミリアを捜して止める。
第二行動方針:イエローを捜したい。
基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。
参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後
[備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。
ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。
サモナイト石で召喚された魔獣は、必ず攻撃動作を一回行ってから消えます。攻撃を止めることは不可能。
梨々のことは「怖くて嫌いなひと」です。
本能的に、アリス・イン・ワンダーランドに対して嫌悪を覚えています。
ベッキーは死亡したと考えています。
飛翔の蝙也の爆薬(残十発)@るろうに剣心 が転がっています。
月が綺麗だった。
空に浮かぶ月はまん丸で、とても美しかった。
夜風は寒かった。
背中に浸る水の感触がすごく冷たかった。
だけど全身は震えていなかった。
(……ああ。死んだな、これ)
そう思う。体が正常な反応を示していないのだから、多分そういう事だ。
思えば無茶な事をしたものだと思う。
殺されて死ぬことが判っていたのに、体が勝手に動いていた。
……いや、今更言い訳はやめよう。心も動いていた。だから体も動いた。
アルルゥを助けたいと思った。この島に残る最後の仲間を死なせたくなかった。
同じように死んでいった翠星石とジーニアスの為にも。
「ははっ、ほんとバカだな。私もあいつも……」
思わず笑いがこみ上げた。
冷たく麻痺したはずの唇が動いていた。
「…………え?」
指を動かしてみた。確かに動いた。
足を動かしてみた。泥を踏みしめる感触を感じた。
上半身を起こした。
……目の前には静かな水面が広がっていた。
「私……生きてるのか?」
茫然となる。
あそこまで死を覚悟して生き残ったなんて笑い話だ。間抜けすぎる。
いや、生きてたなら万々歳だがそれにしたって理解できない。
「…………なんで?」
レミリアは自分を殺さなかったのだろうか。あれだけ怒り狂っていたのに。
有り得ない。そもそもレミリアが殺さなかったところであの傷で放置されたら直に死ぬ。
それなのに体にはむしろ力が漲るようだった。
そして無性に……喉が渇いた。
「………………水」
レベッカ宮本は水を飲もうと水面に顔を近づけて、気付いた。
自分が何に渇いているのかに。
空に浮かぶ月はまん丸で、とても美しかった。
夜風は寒かった。
背中に浸る水の感触がすごく冷たかった。
だけど全身は震えていなかった。
(……ああ。死んだな、これ)
そう思う。体が正常な反応を示していないのだから、多分そういう事だ。
思えば無茶な事をしたものだと思う。
殺されて死ぬことが判っていたのに、体が勝手に動いていた。
……いや、今更言い訳はやめよう。心も動いていた。だから体も動いた。
アルルゥを助けたいと思った。この島に残る最後の仲間を死なせたくなかった。
同じように死んでいった翠星石とジーニアスの為にも。
「ははっ、ほんとバカだな。私もあいつも……」
思わず笑いがこみ上げた。
冷たく麻痺したはずの唇が動いていた。
「…………え?」
指を動かしてみた。確かに動いた。
足を動かしてみた。泥を踏みしめる感触を感じた。
上半身を起こした。
……目の前には静かな水面が広がっていた。
「私……生きてるのか?」
茫然となる。
あそこまで死を覚悟して生き残ったなんて笑い話だ。間抜けすぎる。
いや、生きてたなら万々歳だがそれにしたって理解できない。
「…………なんで?」
レミリアは自分を殺さなかったのだろうか。あれだけ怒り狂っていたのに。
有り得ない。そもそもレミリアが殺さなかったところであの傷で放置されたら直に死ぬ。
それなのに体にはむしろ力が漲るようだった。
そして無性に……喉が渇いた。
「………………水」
レベッカ宮本は水を飲もうと水面に顔を近づけて、気付いた。
自分が何に渇いているのかに。
「…………ああ、そっか」
そうだ、そういえばレミリアは自分の事をそう言っていた。
つまりそういう事だ。この島ならそれが実在している事も今や納得できる。
「そっか、そういう事か。納得した」
レベッカは呻きをあげる。
そして、言った。
「台無しだよ、全部」
生き残って嬉しいはずなのに、溢れた涙は喜びの涙じゃなかった。
涙は水面に落ちて無数の波紋を作り、水面に映ったレベッカの顔を掻き消してくれた。
目が紅く染まり、犬歯を生やしたレベッカの貌を。
そうだ、そういえばレミリアは自分の事をそう言っていた。
つまりそういう事だ。この島ならそれが実在している事も今や納得できる。
「そっか、そういう事か。納得した」
レベッカは呻きをあげる。
そして、言った。
「台無しだよ、全部」
生き残って嬉しいはずなのに、溢れた涙は喜びの涙じゃなかった。
涙は水面に落ちて無数の波紋を作り、水面に映ったレベッカの顔を掻き消してくれた。
目が紅く染まり、犬歯を生やしたレベッカの貌を。
伝承は語る。
――曰く、吸血鬼に血を吸い尽くされて死んだ者は吸血鬼となって甦る……と。
――曰く、吸血鬼に血を吸い尽くされて死んだ者は吸血鬼となって甦る……と。
【E-4北部/川岸/1日目/夜】
【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:吸血鬼化(肉体強化、弱点他)、疲労(大)、全身傷だらけ(再生中)、血が不足
[服装]:普段通りの服と白衣姿(ただしボロボロ)
[装備]:木刀@銀魂、魔導ボード@魔法陣グルグル!(不安定)、ヒラリマント@ドラえもん(ボロボロだが一応使える)
[道具]:支給品二式、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
[思考]:ひどいオチだ……
第一行動方針:??????
基本行動方針:??????
参加時期:小学校事件が終わった後
【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:吸血鬼化(肉体強化、弱点他)、疲労(大)、全身傷だらけ(再生中)、血が不足
[服装]:普段通りの服と白衣姿(ただしボロボロ)
[装備]:木刀@銀魂、魔導ボード@魔法陣グルグル!(不安定)、ヒラリマント@ドラえもん(ボロボロだが一応使える)
[道具]:支給品二式、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
[思考]:ひどいオチだ……
第一行動方針:??????
基本行動方針:??????
参加時期:小学校事件が終わった後
【吸血鬼の共通能力@東方Project】
驚異的な身体能力と魔力を誇り、樹齢千年を越える大木を片手で持ち上げ、
瞬きする時間で人里を駆け抜け、一声掛けるだけで大量の悪魔を召喚し、
自らを大量の蝙蝠に分解し、更には霧状にまで細かくし何処にでも入り込み、
頭以外が吹き飛ぶ怪我を負っても一晩で元通りになるという。
ただ、その驚異的な能力故か弱点は多い。まず、日光に弱い為昼間は大人しい。
流れ水を渡れないので雨の日も大人しいし、河も渡れない。鰯の頭や折った柊の枝に近づけない。
炒った豆を投げられると皮膚が焼ける。(でも納豆は好きらしい)
(『東方求聞史記』(作中世界の登場人物が書いた手記)より)
驚異的な身体能力と魔力を誇り、樹齢千年を越える大木を片手で持ち上げ、
瞬きする時間で人里を駆け抜け、一声掛けるだけで大量の悪魔を召喚し、
自らを大量の蝙蝠に分解し、更には霧状にまで細かくし何処にでも入り込み、
頭以外が吹き飛ぶ怪我を負っても一晩で元通りになるという。
ただ、その驚異的な能力故か弱点は多い。まず、日光に弱い為昼間は大人しい。
流れ水を渡れないので雨の日も大人しいし、河も渡れない。鰯の頭や折った柊の枝に近づけない。
炒った豆を投げられると皮膚が焼ける。(でも納豆は好きらしい)
(『東方求聞史記』(作中世界の登場人物が書いた手記)より)
参考文献であり、ロワの制限に加えてレベッカは成り立てである。
また吸血鬼化について一見矛盾した設定がある為、解釈は後続の書き手の判断に任される。
また吸血鬼化について一見矛盾した設定がある為、解釈は後続の書き手の判断に任される。
以下『東方求聞史記』(後出だが、設定上内容に間違いが混ざっている設定集)
主な食事は人間の血液であり、血液を吸い尽くされた人間は、
死ぬ事も幽霊になる事も適わず、ゾンビとなって暫く動いた後に日光で消滅する。
死ぬ事も幽霊になる事も適わず、ゾンビとなって暫く動いた後に日光で消滅する。
以下『東方紅魔郷』おまけテキスト(原作者の地の文)
「彼女(レミリア)は少食で、多くの血を食べきれず残すため、吸われた人間も死なないで
貧血になるだけが多いのです。そのため、いつも同族を増やすことに失敗してしまいます」
貧血になるだけが多いのです。そのため、いつも同族を増やすことに失敗してしまいます」
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