少し遅い(後編)◆JZARTt62K2
結局のところチアキの目的は、太一が持っていた首輪探知機だった。
参加者の居場所を知ることができるレーダーは、チアキにとってあまりにも有用すぎたのだ。
探知機を奪うためだけに『利用価値があるかもしれない参加者』を一人殺しても、十二分にお釣りがくるほどに。
だからチアキは、太一が不審者の確認のために席を立ったとき、目の前にあった太一のペットボトルに青酸カリを入れた。
それは、これ以上ないチャンスであり、幸運であり、不運であった。
もしも、直前のやり取りから、チアキが首輪探知機の存在に勘付いていなければ。
もしも、食事が終わっており、机の上に飲みかけの飲料水がなければ。
もしも、チアキが青酸カリをポケットに入れていなければ。
チアキの目の前に、太一の死体が転がることはなかっただろう。
参加者の居場所を知ることができるレーダーは、チアキにとってあまりにも有用すぎたのだ。
探知機を奪うためだけに『利用価値があるかもしれない参加者』を一人殺しても、十二分にお釣りがくるほどに。
だからチアキは、太一が不審者の確認のために席を立ったとき、目の前にあった太一のペットボトルに青酸カリを入れた。
それは、これ以上ないチャンスであり、幸運であり、不運であった。
もしも、直前のやり取りから、チアキが首輪探知機の存在に勘付いていなければ。
もしも、食事が終わっており、机の上に飲みかけの飲料水がなければ。
もしも、チアキが青酸カリをポケットに入れていなければ。
チアキの目の前に、太一の死体が転がることはなかっただろう。
「……うぷッ」
チアキは、喉の奥に込み上がる胃液を必死で飲み込んだ。
胃酸による独特の苦味が、チアキの舌を麻痺させる。
死体を見るのは、初めてではない。顔がどす黒く変色したよつばの死体は、今でも頭に焼き付いている。
人を殺したのも、初めてではない。陸の上で溺死させたあのバカ野郎の顔は、今思い出しても腹が立つ。
だけど、無関係の人間を殺すのは、直前まで普通に話をしていた人間が“自分のせいで”絶命する瞬間を見るのは、初めてだった。
(これが見たくなかったから、出て行くつもりだったのにな……)
その場で太一の死を待ったほうが効率がいいにも関わらず、タワーを離れようとした理由の一つがこれだ。
少しの間でも交友を持った人間が――笑いながら、自分を受け入れてくれた太一が死ぬ場面を、見たくなかったから。
八神太一が死ぬ場面に遭遇することと比べれば、時間を置いてからタワーに戻ることなど、些細な手間だった。
結局、選択肢などなかったのだけれど。
チアキは、喉の奥に込み上がる胃液を必死で飲み込んだ。
胃酸による独特の苦味が、チアキの舌を麻痺させる。
死体を見るのは、初めてではない。顔がどす黒く変色したよつばの死体は、今でも頭に焼き付いている。
人を殺したのも、初めてではない。陸の上で溺死させたあのバカ野郎の顔は、今思い出しても腹が立つ。
だけど、無関係の人間を殺すのは、直前まで普通に話をしていた人間が“自分のせいで”絶命する瞬間を見るのは、初めてだった。
(これが見たくなかったから、出て行くつもりだったのにな……)
その場で太一の死を待ったほうが効率がいいにも関わらず、タワーを離れようとした理由の一つがこれだ。
少しの間でも交友を持った人間が――笑いながら、自分を受け入れてくれた太一が死ぬ場面を、見たくなかったから。
八神太一が死ぬ場面に遭遇することと比べれば、時間を置いてからタワーに戻ることなど、些細な手間だった。
結局、選択肢などなかったのだけれど。
「……まあ、いいか。目的は、達成できたんだし」
レーダーは、手に入ったんだ。良しとしよう。
そう、擦り切れた声で無理矢理自分に言い聞かせたチアキは、机の上の首輪探知機に手を伸ばす。
運よく血で汚れていなかった首輪探知機を掴んだチアキは、その拍子に、見開かれた太一の瞳を見てしまった。
「…………ッ」
居眠りでもしているかのように机に突っ伏した太一の死体は、虚ろな目でチアキを見つめていた。
その顔に、苦痛はないように見える。ただ、『何が起こったかわからない』といった表情を、死貌に貼り付けているだけだ。
「……苦しんだ、かな」
よつばを殺したバカ野郎と違って、太一に恨みはない。ただ、首輪探知機のために殺しただけだ。
苦しんで死ぬことなど、望んでいなかった。
レーダーは、手に入ったんだ。良しとしよう。
そう、擦り切れた声で無理矢理自分に言い聞かせたチアキは、机の上の首輪探知機に手を伸ばす。
運よく血で汚れていなかった首輪探知機を掴んだチアキは、その拍子に、見開かれた太一の瞳を見てしまった。
「…………ッ」
居眠りでもしているかのように机に突っ伏した太一の死体は、虚ろな目でチアキを見つめていた。
その顔に、苦痛はないように見える。ただ、『何が起こったかわからない』といった表情を、死貌に貼り付けているだけだ。
「……苦しんだ、かな」
よつばを殺したバカ野郎と違って、太一に恨みはない。ただ、首輪探知機のために殺しただけだ。
苦しんで死ぬことなど、望んでいなかった。
(って、何を言ってるんだよ。私が殺したことに、変わりは無いじゃないか)
そうだ、何も変わらない。
こんな思考の理由は、きっとただの罪悪感。単なる言い訳だ。
死に方如何に関わらず、自分が太一を殺したことは変わらない。
南チアキが『ひとごろし』であることに変わりは――
(あれ?)
おかしいな。
私は、『ひとごろし』にならないために戦っているはずなのに。
どうして、人を殺しているんだろう。
(なんでだっけ。なんでだっけ。なんでだっけ)
思考の迷路に嵌り始めたチアキは、必死で記憶を探った。
太一と出会ったせいで忘れかけていた目的を、記憶の底から引きずり出す。
二人の人間の死によってチアキの価値観が崩壊した、最悪の記憶を。
(変な広間からこの島に飛ばされて、パタリロと出会って、よつばと出会って、パタリロと別れて、よつばと別れて、それから……)
よつばが死に、チアキは人を殺した。
だから、地獄で決意した。
「……思い出した。私が『ひとごろし』だと知っている人間を、残さないためだった」
そのために、優勝する。そのために、他の参加者を殺す。
何か致命的に間違っているような気もするが、関係ない。
だってもう、戻れないのだから。完全に、戻れなくなったのだから。
八神太一を、殺したのだから。
……………………………………。
そうだ、何も変わらない。
こんな思考の理由は、きっとただの罪悪感。単なる言い訳だ。
死に方如何に関わらず、自分が太一を殺したことは変わらない。
南チアキが『ひとごろし』であることに変わりは――
(あれ?)
おかしいな。
私は、『ひとごろし』にならないために戦っているはずなのに。
どうして、人を殺しているんだろう。
(なんでだっけ。なんでだっけ。なんでだっけ)
思考の迷路に嵌り始めたチアキは、必死で記憶を探った。
太一と出会ったせいで忘れかけていた目的を、記憶の底から引きずり出す。
二人の人間の死によってチアキの価値観が崩壊した、最悪の記憶を。
(変な広間からこの島に飛ばされて、パタリロと出会って、よつばと出会って、パタリロと別れて、よつばと別れて、それから……)
よつばが死に、チアキは人を殺した。
だから、地獄で決意した。
「……思い出した。私が『ひとごろし』だと知っている人間を、残さないためだった」
そのために、優勝する。そのために、他の参加者を殺す。
何か致命的に間違っているような気もするが、関係ない。
だってもう、戻れないのだから。完全に、戻れなくなったのだから。
八神太一を、殺したのだから。
……………………………………。
「……私は、戻りたかったのかな」
多分、戻りたかったのだろう。
戻れなくなった今だから、はっきりとわかる。
自分は、利用するために近づいたはずの太一に、いつの間にか魅せられていた。
真っ直ぐに人の目を見ることができる太一に、勇気に溢れた太一に、光の道を歩いている太一に。
人を殺してしまったチアキは、嘘を吐き続けているチアキは、影の道を歩もうとしているチアキは、魅せられた。
あまりにも日常的な太一の態度は、血に塗れたチアキの思考を徐々に洗い流していったのだ。
だから、ほんの少しだけ思ってしまった。
よつば殺しの犯人を“撃退”しただけの自分は、まだ戻れるかもしれないと、傲慢にも思ってしまった。
そうでなければ、『誰でも殺し合いに乗り得る』といった、自らの首を絞める主張を、大声で叫ぶことなどしなかっただろう。
(だいたい、お前を信じて弥彦だけを疑う理屈はないだろう……。よく、考えろよ)
チアキが自分の姿を見せたくなかった理由は、『南チアキが八神太一と一緒にいた』という情報を、誰にも漏らしたくなかったから。
太一殺しの疑いがかかる危険を避けるために屁理屈を並べて。
そのまま、溢れる感情に飲み込まれた。
(自分の言葉で興奮するなんて……まったく、恥ずかしい)
もし、あのとき太一が、言葉の真意に気付いていたら。
疑心暗鬼の否定などせず、南チアキが作り出した殺人装置を看破していたら。
今頃どんな事態になっていたかはさっぱりわからないが、少なくとも、太一が死ぬことはなかったと思う。
――けれど、太一は最後まで気付いてくれなかった。
多分、戻りたかったのだろう。
戻れなくなった今だから、はっきりとわかる。
自分は、利用するために近づいたはずの太一に、いつの間にか魅せられていた。
真っ直ぐに人の目を見ることができる太一に、勇気に溢れた太一に、光の道を歩いている太一に。
人を殺してしまったチアキは、嘘を吐き続けているチアキは、影の道を歩もうとしているチアキは、魅せられた。
あまりにも日常的な太一の態度は、血に塗れたチアキの思考を徐々に洗い流していったのだ。
だから、ほんの少しだけ思ってしまった。
よつば殺しの犯人を“撃退”しただけの自分は、まだ戻れるかもしれないと、傲慢にも思ってしまった。
そうでなければ、『誰でも殺し合いに乗り得る』といった、自らの首を絞める主張を、大声で叫ぶことなどしなかっただろう。
(だいたい、お前を信じて弥彦だけを疑う理屈はないだろう……。よく、考えろよ)
チアキが自分の姿を見せたくなかった理由は、『南チアキが八神太一と一緒にいた』という情報を、誰にも漏らしたくなかったから。
太一殺しの疑いがかかる危険を避けるために屁理屈を並べて。
そのまま、溢れる感情に飲み込まれた。
(自分の言葉で興奮するなんて……まったく、恥ずかしい)
もし、あのとき太一が、言葉の真意に気付いていたら。
疑心暗鬼の否定などせず、南チアキが作り出した殺人装置を看破していたら。
今頃どんな事態になっていたかはさっぱりわからないが、少なくとも、太一が死ぬことはなかったと思う。
――けれど、太一は最後まで気付いてくれなかった。
結局太一は、チアキの錯乱を、ただの恐怖によるものと思ってしまったのだ。
だから最後まで、人を信頼することの重要性を主張し続けた。
“人はそう簡単に殺し合いに乗らない”とでも、信じていたのだろうか。
だとしたら、この島に来てから、よほど“まともな”人間ばかりに出会ってきたようだ。
一度でも惨劇を経験していれば、人の善性を信じることがどれほど愚かしい行為なのかわかっただろうに。
自分が言えた義理ではないのだけれど――本当に、失望した。
(私を信用しちゃ、いけなかったのに)
最も疑うべき人間に向かって『仲間を信頼すること』を勧めるなんて、あまりにも馬鹿馬鹿しい。
ひどく笑えて、泣けてくる。
だから最後まで、人を信頼することの重要性を主張し続けた。
“人はそう簡単に殺し合いに乗らない”とでも、信じていたのだろうか。
だとしたら、この島に来てから、よほど“まともな”人間ばかりに出会ってきたようだ。
一度でも惨劇を経験していれば、人の善性を信じることがどれほど愚かしい行為なのかわかっただろうに。
自分が言えた義理ではないのだけれど――本当に、失望した。
(私を信用しちゃ、いけなかったのに)
最も疑うべき人間に向かって『仲間を信頼すること』を勧めるなんて、あまりにも馬鹿馬鹿しい。
ひどく笑えて、泣けてくる。
「きっと、全部、遅すぎたんだ」
自分自身が『戻りたい』と思っていたことに気付いたのは、ついさっきのことだ。
太一の飲み水に青酸カリを入れたときは、突然やってきたチャンスに思わず乗っかってしまった。
自分の気持ちの変化など考えず、決めていた方針に従ってしまった。
気付いたときには、もう手遅れ。
「……あと、ほんの少し早く気付いていれば良かったんだけどな」
最後に太一の名前を呼んだとき、自分は“ペットボトルの水を飲ませないようにしよう”としていた。
――結局それも、間に合わなかった。
自分自身が『戻りたい』と思っていたことに気付いたのは、ついさっきのことだ。
太一の飲み水に青酸カリを入れたときは、突然やってきたチャンスに思わず乗っかってしまった。
自分の気持ちの変化など考えず、決めていた方針に従ってしまった。
気付いたときには、もう手遅れ。
「……あと、ほんの少し早く気付いていれば良かったんだけどな」
最後に太一の名前を呼んだとき、自分は“ペットボトルの水を飲ませないようにしよう”としていた。
――結局それも、間に合わなかった。
「…………」
……過ぎたことを考えるのは、やめよう。
ただ、後戻りできる最後の機会を逃しただけ。
元々存在していなかった希望が、改めて潰えただけ。
優勝するという方針が、変わらないだけ。
それよりも今は、一刻も早くこの場を離れなければならない。
太一が言っていた『仲間』が、いつやって来るかも知れないからだ。
レーダーを片手に持ち、タワーの入り口に向かいかけたチアキは、最後にもう一度だけ振り返る。
口元を赤く染め、陰鬱に目を見開いた太一の死体が、場違いなほど鮮やかに存在していた。
(本当に、変なやつだったな)
見知らぬ参加者を平然と信じ、本気で励まし、快活に笑う。殺し合いの参加者とは、とても思えなかった。
だが、一番驚いたのは、何の見返りもなくコンチュー丹をくれたこと。
想定外すぎて、自分と同じように毒殺を狙っているとしか考えられなかった。
譲渡の理由も、『人を頼ろうとしないところが妹と似ていた』といった、どう考えても納得できないもので――
(そういえば、妹がいたんだっけ)
死ぬ直前に太一が語っていた、八神ヒカリ。
太一の帰りを待っている、家族。
ただ、いつものように家族の帰りを待っている、ひと。
八神ヒカリの話を聞いたとき、チアキが真っ先に思い浮かべたのは、二人の姉の姿だった。
それが、太一に毒を飲ませまいと動くための、最後の引き金になったのだ。
決して間に合わない、引き金の。
(……なにが、『待っている家族が、いるんだろ?』だ。
他人の家族より、お前の家族のことを、お前の命を第一に考えるべきだろう。
私にかまって、死んでいる場合じゃないだろうが……!)
唇を噛みながら、しばらく死体を見つめていたチアキは、やがてぽつりと呟いた。
……過ぎたことを考えるのは、やめよう。
ただ、後戻りできる最後の機会を逃しただけ。
元々存在していなかった希望が、改めて潰えただけ。
優勝するという方針が、変わらないだけ。
それよりも今は、一刻も早くこの場を離れなければならない。
太一が言っていた『仲間』が、いつやって来るかも知れないからだ。
レーダーを片手に持ち、タワーの入り口に向かいかけたチアキは、最後にもう一度だけ振り返る。
口元を赤く染め、陰鬱に目を見開いた太一の死体が、場違いなほど鮮やかに存在していた。
(本当に、変なやつだったな)
見知らぬ参加者を平然と信じ、本気で励まし、快活に笑う。殺し合いの参加者とは、とても思えなかった。
だが、一番驚いたのは、何の見返りもなくコンチュー丹をくれたこと。
想定外すぎて、自分と同じように毒殺を狙っているとしか考えられなかった。
譲渡の理由も、『人を頼ろうとしないところが妹と似ていた』といった、どう考えても納得できないもので――
(そういえば、妹がいたんだっけ)
死ぬ直前に太一が語っていた、八神ヒカリ。
太一の帰りを待っている、家族。
ただ、いつものように家族の帰りを待っている、ひと。
八神ヒカリの話を聞いたとき、チアキが真っ先に思い浮かべたのは、二人の姉の姿だった。
それが、太一に毒を飲ませまいと動くための、最後の引き金になったのだ。
決して間に合わない、引き金の。
(……なにが、『待っている家族が、いるんだろ?』だ。
他人の家族より、お前の家族のことを、お前の命を第一に考えるべきだろう。
私にかまって、死んでいる場合じゃないだろうが……!)
唇を噛みながら、しばらく死体を見つめていたチアキは、やがてぽつりと呟いた。
「そう、だな。――形見くらいは、届けてやるよ」
※ ※ ※ ※ ※
「ふむ。変化はありませんね」
展望台から、キルアと『のび太』が向かった廃墟群を眺めていたニアは、欠伸を噛み殺しながら目を擦った。
落雷があった付近をずっと観察し続けているのだが、何の変化もない。ニアはいい加減、諦めつつあった。
(しかし、尻尾すら掴ませてくれないのは異常、と言っていいでしょう。……私が見える範囲を考慮して動いているのでしょうか?)
溜息を零したニアは、気分転換でもしようと内線電話に手を伸ばした。
電話をかける相手は、八神太一。
レーダーによってタワー周辺の監視をしている人物である。
太一がいるから、ニアは安心して一方向だけを見ていることができるのだ。
なぜなら、もしタワーに何か異常が起これば、すぐさま連絡がくるはずだから。
連絡が来ないということは、何も問題が起こっていないということ。
もしくは、太一が『何の問題もない』と判断したということ。
(彼も馬鹿というわけではありませんし、まあ心配はないでしょう)
とはいえ、油断は禁物である。
あまり頻繁に連絡を取って機嫌を損ねるのも利口ではないが、完全に連絡を絶つのもいけない。
人は、逐一行動を管理されることを嫌がる。
だが、管理監督なしでは、もしもの事態には対応できない。
これからかけようとしている電話は、そういった意味も含んでいた。
「……しかし、どんな話で場を繋ぎましょうかね」
展望台から、キルアと『のび太』が向かった廃墟群を眺めていたニアは、欠伸を噛み殺しながら目を擦った。
落雷があった付近をずっと観察し続けているのだが、何の変化もない。ニアはいい加減、諦めつつあった。
(しかし、尻尾すら掴ませてくれないのは異常、と言っていいでしょう。……私が見える範囲を考慮して動いているのでしょうか?)
溜息を零したニアは、気分転換でもしようと内線電話に手を伸ばした。
電話をかける相手は、八神太一。
レーダーによってタワー周辺の監視をしている人物である。
太一がいるから、ニアは安心して一方向だけを見ていることができるのだ。
なぜなら、もしタワーに何か異常が起これば、すぐさま連絡がくるはずだから。
連絡が来ないということは、何も問題が起こっていないということ。
もしくは、太一が『何の問題もない』と判断したということ。
(彼も馬鹿というわけではありませんし、まあ心配はないでしょう)
とはいえ、油断は禁物である。
あまり頻繁に連絡を取って機嫌を損ねるのも利口ではないが、完全に連絡を絶つのもいけない。
人は、逐一行動を管理されることを嫌がる。
だが、管理監督なしでは、もしもの事態には対応できない。
これからかけようとしている電話は、そういった意味も含んでいた。
「……しかし、どんな話で場を繋ぎましょうかね」
※ ※ ※ ※ ※
トォルルル――
電話のベルが鳴っている。
静寂に包まれていた1階フロアに、耳障りな電子音が木霊する。
静寂に包まれていた1階フロアに、耳障りな電子音が木霊する。
トォルルル――
受話器を取る手は現れない。
唯一存在しているヒトガタは、一切の反応を放棄している。
唯一存在しているヒトガタは、一切の反応を放棄している。
トォルルル――
ヒトガタは動かない。
かつて八神太一だった塊は、置物のように鎮座している。
かつて八神太一だった塊は、置物のように鎮座している。
トォルルル――
ヒトガタの目は閉じられている。
まるで、眠っているように閉じられている。
――そして。その額に、ゴーグルはついていなかった。
まるで、眠っているように閉じられている。
――そして。その額に、ゴーグルはついていなかった。
【B-7/タワー内展望室/1日目/午後】
【ニア@DEATH NOTE】
[状態]:健康、冷静
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、
眠り火×9@落第忍者乱太郎、タワー内放送用マイク
[思考]:出ませんね……。
第一行動方針:太一と連絡を取りたいが……。
第二行動方針:キルアの帰りを待つ。
第三行動方針:弥彦、またはキルアたちが首輪を持ってくるのを待って、解析作業
第四行動方針:メロまたは、ジェダの能力を探る上で有用な人物と接触したい
基本行動方針:自分では動かず、タワーを訪れる参加者と接触して情報や協力者を集める
最終行動方針:殺人ゲームを阻止する
[備考]:
盗聴器、監視カメラ等、何らかの監視措置がとられていると考えています。
そのため、対ジェダの戦略や首輪の解析に関する会話は、筆談で交わすよう心掛けています。
ジェダを時間移動能力者でないかと推測しました。
キルアと太一の声・性格を大方理解しました。彼らが首輪探知機を持っていることを知りました。
カツオのことを「のび太」ではないかと誤って推測しています。
[備考]:タワーのエレベーターは、2機とも緊急停止状態で動きません。
【ニア@DEATH NOTE】
[状態]:健康、冷静
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、
眠り火×9@落第忍者乱太郎、タワー内放送用マイク
[思考]:出ませんね……。
第一行動方針:太一と連絡を取りたいが……。
第二行動方針:キルアの帰りを待つ。
第三行動方針:弥彦、またはキルアたちが首輪を持ってくるのを待って、解析作業
第四行動方針:メロまたは、ジェダの能力を探る上で有用な人物と接触したい
基本行動方針:自分では動かず、タワーを訪れる参加者と接触して情報や協力者を集める
最終行動方針:殺人ゲームを阻止する
[備考]:
盗聴器、監視カメラ等、何らかの監視措置がとられていると考えています。
そのため、対ジェダの戦略や首輪の解析に関する会話は、筆談で交わすよう心掛けています。
ジェダを時間移動能力者でないかと推測しました。
キルアと太一の声・性格を大方理解しました。彼らが首輪探知機を持っていることを知りました。
カツオのことを「のび太」ではないかと誤って推測しています。
[備考]:タワーのエレベーターは、2機とも緊急停止状態で動きません。
【B-7/住宅地/1日目/午後】
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:右腕に火傷(軽度だが悪化する恐れあり)、疲労(小)、精神的疲労、強い焦り
[装備]:楼観剣@東方Project、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)
[服装]:道着(ドロ塗れで血が結構隠れた。右腕部分が半焼け)
[思考]:どこにいるんだあっ!
第一行動方針:チアキを探し出して保護する。「犯人『バンコラン』」らしき人物と先に遭遇したら取り押さえる。
第ニ行動方針:パタリロを完全には信用できないが、信用したいとは思っている。
第三行動方針:ニアの力量は認めるが考え方には反対(強い不信感)。
第四行動方針:のび太とカツオがどうなったか不安。
第五行動方針:出来ればあの子たち(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:ジェダ達を倒す。一人でも多くの人を助ける。
[備考]:パタリロと簡単に情報交換済み。
よつばと藤木の死について、パタリロが語った最初の仮説をほぼ信じきっています。
C-7住宅街の西半分はある程度調べ終わりました。次はB-7住宅街を虱潰しに調べていくつもりのようです。
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:右腕に火傷(軽度だが悪化する恐れあり)、疲労(小)、精神的疲労、強い焦り
[装備]:楼観剣@東方Project、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)
[服装]:道着(ドロ塗れで血が結構隠れた。右腕部分が半焼け)
[思考]:どこにいるんだあっ!
第一行動方針:チアキを探し出して保護する。「犯人『バンコラン』」らしき人物と先に遭遇したら取り押さえる。
第ニ行動方針:パタリロを完全には信用できないが、信用したいとは思っている。
第三行動方針:ニアの力量は認めるが考え方には反対(強い不信感)。
第四行動方針:のび太とカツオがどうなったか不安。
第五行動方針:出来ればあの子たち(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:ジェダ達を倒す。一人でも多くの人を助ける。
[備考]:パタリロと簡単に情報交換済み。
よつばと藤木の死について、パタリロが語った最初の仮説をほぼ信じきっています。
C-7住宅街の西半分はある程度調べ終わりました。次はB-7住宅街を虱潰しに調べていくつもりのようです。
【C-7/裏路地/1日目/午後】
【南千秋@みなみけ】
[状態]:疲労小、顔面打撲(軽度)、額に切り傷(支障はない)、
人間不振&精神衰弱(見た目は普通)。
[装備]:ロングフックショット@ゼルダの伝説/時のオカリナ、
祝福の杖(ベホイミ残1回)@ドラゴンクエスト5、
首輪探知機、核鉄(シルバースキン)@武装錬金(展開せずポケットに)
[道具]基本支給品x2、ルーンの杖(焼け焦げている)@ファイナルファンタジー4、コンチュー丹(容器なし、2粒)@ドラえもん
青酸カリ(半分消費)@名探偵コナン、的の書かれた紙(5枚)@パタリロ!、太一のゴーグル(血がついている)
[思考]:今は、誰にも合いたくないな……。
第一行動方針:下がってしまった“殺し合い”のモチベーションを上げたい。
第二行動方針:パタリロとの合流はできれば避ける。
第三行動方針:自分を人殺しと疑う者がいれば排除したい。
第四行動方針:全て終わったら、八神ヒカリに形見のゴーグルを渡したい(自分が殺した事実は隠す)。
基本行動方針:誰も信用せず、いつもの自分を演じてみんなに殺し合いをしてもらう。
最終行動方針:このゲームを知るもの全員に死んでもらって家に帰る
【南千秋@みなみけ】
[状態]:疲労小、顔面打撲(軽度)、額に切り傷(支障はない)、
人間不振&精神衰弱(見た目は普通)。
[装備]:ロングフックショット@ゼルダの伝説/時のオカリナ、
祝福の杖(ベホイミ残1回)@ドラゴンクエスト5、
首輪探知機、核鉄(シルバースキン)@武装錬金(展開せずポケットに)
[道具]基本支給品x2、ルーンの杖(焼け焦げている)@ファイナルファンタジー4、コンチュー丹(容器なし、2粒)@ドラえもん
青酸カリ(半分消費)@名探偵コナン、的の書かれた紙(5枚)@パタリロ!、太一のゴーグル(血がついている)
[思考]:今は、誰にも合いたくないな……。
第一行動方針:下がってしまった“殺し合い”のモチベーションを上げたい。
第二行動方針:パタリロとの合流はできれば避ける。
第三行動方針:自分を人殺しと疑う者がいれば排除したい。
第四行動方針:全て終わったら、八神ヒカリに形見のゴーグルを渡したい(自分が殺した事実は隠す)。
基本行動方針:誰も信用せず、いつもの自分を演じてみんなに殺し合いをしてもらう。
最終行動方針:このゲームを知るもの全員に死んでもらって家に帰る
【八神太一@デジモンアドベンチャー 死亡】
※フライパン、コンチュー丹(7粒)@ドラえもん、は太一の死体が持っています。
※太一のランドセル(基本支給品、包丁、殺虫剤スプレー、着火用ライター、調理用白衣、水中バギー@ドラえもん、調味料各種(胡椒等))
は太一の死体の傍に放置されています。
※フライパン、コンチュー丹(7粒)@ドラえもん、は太一の死体が持っています。
※太一のランドセル(基本支給品、包丁、殺虫剤スプレー、着火用ライター、調理用白衣、水中バギー@ドラえもん、調味料各種(胡椒等))
は太一の死体の傍に放置されています。
≪163:Swan Song at Dusk (前編) | 時系列順に読む | 140:Firing line/火蓋≫ |
≪166:全ての終わり、一つの始まり――そして誰かいなくなった(前編) | 投下順に読む | 168:そして誰も東に行かなかった≫ |
≪163:Swan Song at Dusk (前編) | ニアの登場SSを読む | 173:キルア×傷心×踏み出す一歩?≫ |
太一の登場SSを読む | GAME OVER | |
≪162:現場検証 | 千秋の登場SSを読む | 175:第一回定時放送≫ 185:まっくら隧道≫ |
弥彦の登場SSを読む | 175:第一回定時放送≫ 195:刀銀十字路(前編)≫ |