翌朝、少し早く教室に着いたオレは、先に来ていたハルヒを見て驚いた。
どういう風のふきまわしか、ハルヒは中途半端な長さの髪を後ろでひとつにまとめていた。

キョン(あれもオレの願いだったのかな?)

席に着くと、ハルヒが話しかけてきた。

ハルヒ「ねえアンタ、昨日あれから有希となんかあったの?」
キョン「い、いや、特になんもねえよ」
ハルヒ「私気づいたら部室で寝てたんだけど、その間有希をどっかに
   連れまわしてたんじゃないでしょうね?」

なかなかするどいヤツだ。たしかに、つかの間のツーリングを楽しんだり、
倉庫の中を探検したり、異世界に飛ばされたりといろいろしていたことは事実だ。

キョン(別の長門だけどな)

キョン「そんなことしねえって」
ハルヒ「あ、そう。・・ところでアンタ、文芸部に興味あるんだって?」
キョン「どういうことだ?」
ハルヒ「有希がね。キョン君・・アンタを文芸部に誘えないかってね。前からずっと
   うるさかったのよ」
キョン(・・・・・)
ハルヒ「で、今ね。3年の先輩が卒業しちゃって、部員数が足りない状態なのよ。
   私と有希、2年の朝比奈先輩がたまに顔出してくれるから、今んとこ3人しか
   いないってわけ」
キョン(朝比奈さんも文芸部員だったのか)
ハルヒ「まあ今決めろっつっても難しいだろうから、ヒマだったら放課後ウチに
   来てみなさいよ。わ、私はどっちでもいいんだけどね・・有希が喜ぶと思うわ」
キョン「そ、そうか?」

はからずともSOS団のメンバーが大半集まってしまうことになるようだ。もしかしたら
古泉も・・・来るわけないか。

ハルヒ「・・・アンタ、少し雰囲気変わったわね」
キョン「・・どこがだ?」
ハルヒ「うまく言えないんだけど・・その、なんか数年ぶりに会ったって感じがするわ。
    ・・・まあそんだけよ。特に深い意味はないからね」

少し照れながらハルヒは言った。

少し教室を見渡すと、あの朝倉もいた。他の女子に囲まれて、にこやかに話をしている。
こっちは本物の朝倉だろうな・・・

本人は無関係とはいえ、何回も殺されそうになった相手が同じ教室にいるってのは
かなり違和感がある。まあ、もうしばらくの辛抱だ。

休み時間に教室を出ると、不意に声をかけられた。

「また会いましたね、キョン君」

声のする方向を見ると、そこには古泉が立っていた。いつもと変わらない微笑みは・・
っておい!どういうことだ!?本物の古泉は不良少年だったはずじゃ・・・

古泉「驚きましたか?いやあ、僕もいまだに信じられないんですが、気づいたら
  こうなっていましてね・・・昨日あなたにお別れを告げて実体を失った後、
  目を覚ましたら例の倉庫にいたってわけです」

キョン(倉庫にいたのは本物の古泉のはずだ・・まさか)

古泉「本物の僕はあなたによっぽど嫌われていたのかもしれませんね。
  まさか僕が本当に本物と入れ替わってしまうとは想定外でした。
  さて、これもあなたの願いってことになるんでしょうか」

キョン「・・お前、もしかして超能力も使えるのか?」

古泉「今のところ能力はないようです。またどこかで閉鎖空間が発生すれば、
  再び使えるようになるのかもしれませんね」

なんてことだ。昨日ハルヒと一緒に願ったことがいきなり実現してしまうとは・・・
オレは自分がかけた願いに、はやくも後悔しはじめていた。
超能力者だけでも除いておけばよかったかな・・・

古泉「放課後、僕も部室に向かいます。あ、そうそう。今の世界では僕は
  成績優秀の転校生ということになっていますから。よろしくお願いしますよ」

なんだそりゃ。自慢か?オレだって今や成績優秀者だぞ・・・一時的にだけど。
しかし、時空改変の結果がこうも早く現れるとは思わなかった。

・・・ちょっと待て。てことはもしかして、世界は今や宇宙人や未来人や超能力者が

そこらをうろついててもちっともおかしくない状態になってしまったのか?
いまさらながらオレはとんでもないことをしてしまったんじゃ・・・

放課後、オレは文芸部部室まで足を運んだ。部屋にいた長門はとびきりの笑顔で
オレを迎えてくれた。無表情の長門に慣れていたせいか、少し違和感があるが
笑顔の長門もなかなか可愛いじゃないか。

しばらくしてハルヒや朝比奈さん、そして古泉がやってきた。
ハルヒはオレと古泉にひとしきり活動の説明をした。その後、長門の強引な勧誘もあって
オレたちはうやむやのうちに文芸部へ入部することになった。

キョン(なんだかSOS団再結成って感じだな)

こうして、再びオレはハルヒたちと同じ時間を過ごすことになった。


やがて学校は春休みに突入し、しばしの休息の時間が訪れた。

キョン(今日は文芸部の集まりがある日だったな)

昼の1時に集合という予定だったがオレは早めに家を出たため、学校に着いたときは
まだ正午にもなっていなかった。
部室に入ると、長門がいつもの場所で本を読んでいた。

キョン「よっ、長門。今日はえらく早いじゃないか」

おもむろに顔をあげた長門は、じっとオレの顔を見た。
キョン(長門・・・?まさか!?)

長門「久しぶり」
キョン「長門!?お前どうして・・」
長門「緊急事態。あなたの力を借りたい」

そこにいたのは、なんと再び帰ってきた宇宙人、長門有希だった。

オレが唖然としていると、部室のドアが開いて古泉と朝比奈さんが入ってきた。

古泉「キョン君、大変です。この近くで再び大規模な閉鎖空間が発生したようです」
キョン「閉鎖空間って、またお前そんな唐突に・・じゃなくて、朝比奈先輩の前でわけのわからんことを言うな」

みくる「あれ?キョン君、もう私のこと忘れちゃったの・・?」
キョン「!!まさか、朝比奈さん・・?」
みくる「うん。長門さんから非常事態って聞いたもんだから、無理して出てきちゃった♪」

キョン(非常事態のわりにうれしそうなのは気のせいか・・・)

古泉「昨日の晩から僕の能力が復活していたんですよ。長門さんから話を聞いて
  納得しました。元時空改変能力者としてあなたの力が必要です」


そのとき、部室のドアが大きな音とともに勢いよく開かれた。まさか・・・!?

ハルヒ「キョン!大事件よ!!今からSOS団総出で調査しに行くわ!」
キョン(ハルヒ!?・・ハルヒまで戻ってきたのか)

ハルヒ「なにボケッと突っ立ってんのよ!はやくしなさい」

ハルヒはオレの手をつかんで強引に部室から出た。オレの顔を見ると、ハルヒは
満面に笑みを浮かべた。

ハルヒ「私たちの願い、ちゃんとかなったでしょ?」

キョン「・・ああ、そうだな」

ハルヒ「それじゃ、みんな行くわよ!覚悟はいいわね!」


どうやらオレたちの願いは完全に現実のものとなってしまったようだ。
世界は一体これからどうなってしまうのか。ひとつ言えることは、確実に面白い方向へと
進んでいくだろうということだ。・・・まあそういうことにしておこう。

まだまだオレたちSOS団の活動は終わりそうにない。



涼宮ハルヒの消失(偽) -fin-

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最終更新:2007年01月14日 01:14