世の中、よくわからんことが突然起こったりするものである。
 
「ねぇ、キョンくん。実は私、男なんです!」
「…はぁ」
「あ、信じてないっていう顔ですね」
 
そりゃまぁ、そんなもん信じろと言われて「はい」と言えるほど単純な人間でもない訳で。
朝比奈さん、証拠でもあるんですか?
 
「証拠ですか?…えと、無いです!」
「無いって…」
「だから、私が男っていうのは嘘なんです」
「…はぁ」
「で、もう一つ話があるんですけど…」
「また嘘だとか、そういうオチじゃないでしょうね?」
「あれ、なんでわかったんですかぁ?」
 
いや、話の流れでなんとなくですよ。
というか、貴女はなんでそんなに楽しそうなんですか。
 
「エイプリルフールって知りませんか?」
 
ぱらり、と、長門が本を捲る音がする。
 
エイプリルフール、か。
 
「そりゃ知ってますよ。その日の間なら好きなだけ嘘を付けるっていう。でも──」
「鶴屋さんから聞いた時びっくりしました。今の時代にはそんな風潮があっただなんて」
 
だめだ、俺の言葉などまるで耳に届いちゃいない。
あれ?というか、朝比奈さんのいる時代ではエイプリルフールはなくなってるんですか?
 
「あ、えと…それは禁則事項というか…」
「いや、それなら大丈夫ですよ。何となくわかりましたし」
「流石キョンくん。異世界から来た人はテレパシーに長けてますね!」
「嘘なんですよね?」
「だから言ってるじゃないですか、エイプリルフールだって」
 
…あぁ、そうですか。
 
「あ、じゃあ私、お茶入れますね」
「ありがとうございます」
「これは嘘じゃないですからね?」
「わかってますよ」
 
軽く苦笑い。
 
悪戯っぽく笑う朝比奈さんの、なんとも可愛らしいことか。
 
「おまたせー!みんないるかしら!?」
「古泉が講習が長引いて、遅れるってさ」
「あら、そうなの。ま、今日は特にやることも無いんだけどね」
 
しかし、何も冬休みの間にも講習することもなかろうに。
こっちは課題だってまだ残ってるんだぞ。
 
「あんたまだ終わってないの!?もうすぐ始業式始まるってのに!」
「というか、いつぞやの夏ヨロシクで、お前が毎日予定を立てるからだろうが」
「あたしはちゃんと全部終わらせたわよ!みくるちゃんと有希だって終わってるわよね?」
「え?あ、一応終わらせました」
「………」
 
きちんと答える朝比奈さんに対し、顔を上げて頷く長門。
なんてこった。終わってないのは俺だけだったのか。
 
「なんなら明日、わからないところでも教えてあげよっか?」
「…すまん、助かる」
「はい、お茶どうぞ」
「ん、ありがとみくるちゃん」
 
しっかし、暇だなぁ。
 
「本当ね。何か不思議の一つや二つ、降ってこないかしら」
「いや、俺は普通の出来事で十分だからな」
「まーね、でも、何かあるならそのくらいあっても…」
「あ、涼宮さん!私、この前宇宙人見つけました!」
 
ピク、と長門の本を捲る手が一瞬止まる。
 
「損は無い…って、それ本当!?みくるちゃん!」
「はい!UFOも落ちてました!」
 
………。
 
「ちょ、ちょっとそれ、大ニュースじゃない!場所はどこ!?早速行きましょう!」
「はい!」
 
…二人して行っちまった。
 
「なぁ、長門」
「…何?」
「あれも、嘘なんだよな?」
「…恐らくは、そう。この近辺に地球外生命体の生体反応及び物質反応は無い」
「…もう一つ聞いていいか?」
「…いい」
「エイプリルフールって、何月何日だ?」
「…この国における基準で言うならば、4月1日」
「…だよな」
 
ん、相変わらずお茶が美味い。
 
「こんにちは。遅れてすみません」
「おぉ、古泉。思ったよか早かったな。ところで一つ質問があるんだがいいか?」
「えぇ、構いませんよ?」
「今日の日付を教えてくれ」
「日付ですか?…と、3月の26日ですが…それがどうかしましたか?」
「いや、別に。問題ないよな?長門」
「…無い」
 
 
 
 
「ちょっとみくるちゃん!嘘ってどういうことなの!?」
「え?ふぇ?だって、今日はエイプリルフール…」
「馬鹿言ってんじゃないわよ!…これはキツーイお仕置きが必要なようね…!」
「つ、鶴屋さぁん!どういうことですかぁ!?」
 
 
 
 
「あり?携帯電話の日付がおかしくなってるにょろ」
 
おわり
 

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最終更新:2009年03月26日 22:40