約一年ぶり、わたしはまた涼宮ハルヒやキョンくんたちの居る北高に帰ってきた。


ただし、条件付で。


情報操作能力は長門さんの許可を得て初めて使える。
涼宮ハルヒ及びキョンくん、その関係者に危害を加えた場合、情報結合解除されるようプログラムされている。


それでもわたしは、また長門さんのパートナーとして存在できる事に喜んでいた。

わたしは長門さんの部屋に一緒に住み、長門さんの世話をする。
コレは強制された事ではなく、わたしが長門さんにやらせて貰っている事だ。

「長門さん、今日の晩御飯は何がいい?」「必要ない」長門さんは本から目を離さずに一言そう言った
一人で食べるのも寂しいので晩御飯は抜きにした。そもそも食事を取る事に意味は無いので別に構わない。

する事の無いわたしは近くにあった本を手に取り読むことにした。

「朝倉涼子」

呼びかけられたわたしは顔を上げる。その瞬間、わたしの目に映ったのは長門さんの膝

ゴッ!と言う音と共に顔に鈍い衝撃が走った。


「ぐあ…う…」一瞬何が起こったのか、わからなかった。顔に激痛が走る。
恐らく長門さんに膝蹴りをされたんだろう。


「朝倉涼子、私は本を読む事を許可してはいない」
痛みの走る顔を抑えながら見上げると、冷たい目をした長門さんがわたしを見下していた。


「ご、ごめんなひゃい…」顔を蹴られたせいか上手く喋る事が出来ないけど、わたしは長門さんに謝罪した。


ガッ!「げひゅっ!」
長門さんはわたしのお腹につま先けりを勢い良く入れる。一瞬体が浮き、わたしは床に

倒れこむ。


「ゲホッ!ゲホッ!」上手く呼吸が出来ない。苦しい、痛い。

「それが貴女の謝罪する態度なのか?」長門さんの声が聞こえる。何がいけなかったのか、わたしには分からなかった。
床に這いつくばった状態で見上げ、もう一度謝罪する「うう…ご、ごめんな…!」

ガンッ

次は頭を踏まれた。床に思いっきり顔を打ち付けられたわたしは一瞬意識がとんだ。


「う…うう…ごめんなさい…ごめんなさい…」
次々に与えられる暴力と痛みに、わたしはただ謝ることしか出来なかった。


ばしゃ!「!!!」
突然掛けられた水の冷たさにわたしは目を覚ます。
しかし、体を起こそうにも動かすたびに激痛が走り、力が入らない。

窓から差し込む光から、今が朝なのが把握できる。
昨日の記憶が曖昧だけど、恐らく途中で気を失ったのだろう。
痛みを堪えて体を起こし、顔を上げるとコップを持った長門さんがいた。


「もう朝」
長門さんはわたしに一言そう言ってカバンを持って出て行ってしまった。

「今日は学校休もう…」
体中が痛いから、と言うのもあるけど見える範囲だけでもアザだらけの体で学校に行くわけにはいかなかった。
激痛の走る体を無理矢理動かして電話を手に取り、学校へ連絡する。


「あ…岡部先生ですか?体調が良くないので今日は休みます」
「そうか、分かったよ。お大事に」

電話はすぐに終わった。長電話できるほどの話題も無いけど。

連絡し終えたわたしは顔を洗おうと洗面所へと向かった。鏡に映る自分の顔は酷いものだった。
アザだらけで、鼻から流血した後もある。ところどころ腫れていて、とてもじゃ無いけど外には出られない。
うがいすると口の中が沁みた事から何処か切れたのだろう。
体中が痛い。少し動かすだけでも激痛が走り、泣きそうになる。でも

それでもわたしは、長門さんの事を嫌いにならない。


キョンくんを殺そうとし、長門さんに酷い事をしたわたしを、もう一度パートナーとして再構成してくれた。

だからわたしはどれだけ長門さんに酷い事をされても耐えられる。
長門さんを見ているだけでわたしは幸せになれるから。

わたしは救急箱を取り出し、傷の手当てをするために服を脱ぐ。
情報操作能力があれば一瞬で治る傷も、制限されているわたしには自然治癒に任せるしかない。
目の前にある鏡に映る自分の体はアザだらけで、普通の人なら目を背けたくなるような酷さだ。

「んっ!…くっ…」
湿布の冷たさと、動かすたびに痛む体に思わず声が出てしまう。治療が終了する頃にはお昼になっていた。

「ハァ…ハァ…」
痛みに耐えながらやっていた治療が終わった事に気が抜けたわたしはもう動けなかった。

 

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最終更新:2020年08月18日 15:29