ただいま――――
そうは言っても反応は無かった。時間が時間なのもあるかも知れない。虚しく玄関をくぐり、リビングを通る。
そこのテーブルにいるのは、テーブルに突っ伏した状態で寝ている人影が二人。真っ暗な部屋の中で、寒いというのに布団にも入らずに。
電気を点けた。その二人の顔が見えてくる。二人とも幸せそうな笑顔で眠っている。
その寝顔に心を癒され、傷がみるみる無くなる。この笑顔は俺の薬箱だ。どんな時でも、どんな傷でも、その薬は俺を癒してくれる。
最初はずっと嘘をついていた。自分の気持ちに嘘を付き続けて、何となく日々を過ごしていた。見せかけの恋―――そうとも言える。
だけど、彼女は俺に本当の愛を教えてくれた。彼女を何度も傷つけて、失わせたものもあった。
彼女は泣いてくれた。泣いているから涙が出てきている。―――ありきたりだけど…どうかしちゃったのかな?こんなにも愛おしい…―――
俺は決めた。失ったものは全て埋めてやる。この俺に愛を…温もりを教えてくれたから。彼女が呆れてしまっても、いつまでも側に居てやるんだ。
俺は…君を守るため…君といるために…そのために生まれてきたんだ。
そのうち家族が増えた。どことなく…いやしっかりと彼女の面影が伺える。この彼女もきっといつか俺のように誰かと巡り会うんだね。
いつか俺は彼女に言うのさ。
―――あなたは世界で二番目に好きな人です―――と…
今、二人寝ている顔を見ると心が暖まって、決意が固められる。いつもどこか揺れてしまう。だけど、彼女達はしっかりと俺を固めてくれる。
彼女達の寝顔は俺が生まれてきた理由をしっかりと、何度も教えてくれる。君たちを守るため。側にいるために生まれてきたということを。
彼女達に暖かい毛布を掛ける。その顔は笑っている。ここにいるという安心感。それが俺の特効薬。そして睡眠薬でもあった。
気がついたら眩い光が目に入った。霞んだ目から見えてくる眩い光と二人の女の子。
一人は世界で二番目に大好きな彼女。もう一人は…
―――世界で一番大好きな彼女。―――
彼女は笑っている。もう一人の掛け替えのない人も笑っている。何一つ変わらない素晴らしい…とても大切な朝。
彼女は言う。―――お父さん―――
そうしてもう一人、愛おしく、愛を教えてくれた人が言う。
―――キョン!今日はいい天気よ!最っ高な一日になりそうね!―――
よし…今日は出掛けるか!久しぶりにお前たちとのデートだ!呆れてもつきあってやる!
変わらない朝。
変わらない想い。
変わらない明日。
それが今は愛おしい。
それが一番大切。
それが一番求めるもの。
なぁハルヒ…お前もそうだろ?
最終更新:2007年01月12日 13:55