いつも通りのSOS団室。居るのは俺と大好きな朝比奈さんの二人だけ。あとは紅茶の甘い香りが漂う。
「いつもながら美味しいです」
この時間が俺は一番好きだ。朝比奈さんと二人きりだから。いつか帰ってしまう大好きな人となるべく長い時間一緒に居たいから。
「ありがとうございます。あ、そうだ。えっとぉ・・・はい、遅れたけど」
朝比奈さんが鞄から包みを取り出す。女の子らしい可愛い包装紙にくるまれたそれ。
「チョコですか?」
「はい、手作りなんですよ」
「食べても良いですか?」
「はい」
俺は包装紙を丁寧に剥がした。中から可愛らしい箱が現れる。
朝比奈さんを見ると、凄く緊張したように、かつ恥ずかしそうに顔を赤くしてこちらを見ていた。
開けると、ハート型のチョコにホワイトチョコで「キョンくん大好き」と書かれていた。
「えっとぉ・・・そのぉ・・・」
「とりあえず、まずチョコを頂きます」
パクッと口に入れる。甘いけど少し紅茶の風味が混じった大人と子供の味を楽しめる優しい美味だ。
「美味しいですか?」
「はい、とても」
「よかったぁ・・・急いだから味見してなくて不安だったんです。少しだけ貰えますか?」
「良いですよ。はい、あ~んして下さいね」
「え?は、はい・・・はぅ~恥ずかしいです・・・あ~ん」

俺は開いた朝比奈さんの可愛らしい口にチョコを入れず自分の口に入れた。
朝比奈さんはポカンとしている。少しして拗ねたような顔をした。
「ひ、酷いですよ~!あ~ん、てするの恥ずかしか―――」
大丈夫です。チョコならあげます。
大きく見開かれた朝比奈さんの瞳に俺が揺れている。その顔を長い間見つめていたかったが、離れる事にした。
「ふ、ふぇ~~!?」
顔を真っ赤にして朝比奈さんはあわあわと慌てた様子で口をパクパクしている。
「チョコはどうでしたか?」
俺は感想を平静を装って訊いた。
「ビックリしちゃって解らなかったですよぉ~!!えっとぉ・・・そのぉ・・・あのキス、の意味は?」
「俺の気持ちです。俺も愛してます、朝比奈さんを」
「ふぇ?本当に?本当に本当にですか!?」
「はい。世界で一番愛しています」
朝比奈さんは涙を浮かべ始めた。
「嬉しいです・・・ありがとうございます、キョンくん」
「ハルヒ達が邪魔しても明日居なくなっても貴女が一番大好きです」
我ながら臭い台詞を言うなと思いながら、また臭い台詞を思いつく。
「朝比奈さん」
「次は貴女の口でチョコを味わいたいんですが、よろしいですか?」
朝比奈さんは紅い顔をさらに赤くする。

夕映えの陰が見守る部室で俺達はチョコが無くなるまで口づけを交わした。美味しいキスだった。

 

 

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最終更新:2020年05月18日 07:11