――――。
気づいて、しまったか。
ああ、そうだ。
物語の中で誰かが告白する。
どうでもよかったんだ。
三人がこれからどうなろうが、三人がこれまでどう過ごしていようが、そんなもの。
どうでもよかった。
だから、描かなかった。
誰が嬉しい?
バグを狩る氏族の最後の末裔と、バグを守る氏族の筆頭と、ただの一介のバグとがじゃれあう物語なんて。
あいつらが友情を結ぶところなんて描いて、誰が嬉しい?
ありきたりの悲劇、喜劇、そんなもの。
私に何の関係もない。
忌々しい。
何度繰り返しても、あいつらが邪魔をする。
だから飛ばしたんだ。不快だったから。
N.O.A.Hの連中も同じだ。どんな奴がいて、どう殺されようが変わらない。
工夫したところで、せいぜいキリヒメの愚図が苦しむ度合いが増えるだけ。
それももう見飽きた。
この物語はハッピーエンドなんかじゃない。
何一つも終わっていない。
構成すらも成していない。
当たり前だ。
私がそうしたんだ。
私が。
言っただろう。
私は生きたかったんだ。
生きているってことは、愛されるってことなんだ。
私は言ったよね。
愛してますと。
どうして。
どうして応えてくれなかったの、あなた。
どうして応えてくれなかったのですか、マエストロ。
私の運命の前に何度も現れる小蝿たち。あんなものはどうでもいい。
どうして私を愛してくださらなかったのですか。
世界は。
運命は。
物語は。
何度。
何度、生き直そうとしてみても、駄目だった。
私は私であるがゆえに爪弾きにあい、
マエストロはマエストロであるがゆえに私を愛することがなく、
あいつらはあいつらであるがゆえに、
私に愛をおしつける。
私の愛はそれじゃない。
どいてくれ、真っ青な世界よ。
どうしてそんなにもお前はまぶしいのだ。
どうして、そんなにもお前は、これが唯一真実正しい愛だと、間違いを正そうとしてくるのだ。
私は、私、だよ?
私が生まれてきたこと、そのものが、間違っていたの――?
だとしたら。
だとしたら、ああ、なんて青い世界なのだろう――。
そんなものが青なのだとしたら、私はいらない。
愛より青い、青などいらない。
私はただ愛が欲しかった。
愛して欲しかった。
生きていてもいいよと、言われたかった。
生きるために他人を踏みにじるのがそんなにいけないことですか?
清廉潔白に生きなければ、存在価値は、ないですか?
みじめたらしくゴミクズのように生きる生き方は、認められませんか?
それでも私は生きています。
それでも私はここにいます。
私は私なんです。
許してくれなんていいません。
当たり前のことを認めてください。
私が生きているということを、認めてください。
どれだけ歪んでも、それでも、私は――――
歪むことでしか生きられないのなら、私は――――
…………………
そして物語は終わる。何もかもが、引きちぎれたまま。
最終更新:2018年02月15日 10:33