(七)


「ここまで来れば大丈夫であろう」

ブラックはカナを連れて少し離れた所にあった防風林の所まで来ていた。カナを下ろし、すぐさま踵を返してレッドの元へ行こうとする。

「あ、あの・・・」
「隠れていろ。ここなら安全だ」
「え、ち、違くて・・」

怖い。上手く喋れない。でも、このままじゃオルロが!
伏せ目がちだった顔を起こすカナ。

「あ、あの子は私の友達なの!だから、乱暴しないで」

ブラックは目をパチクリさせる。何を言っているか理解できない、っと言った顔だ。
友達だと?

「馬鹿な。アレは恐らく【クラウデス】の怪人だ。お主に危害を加えるつもりだったのかもしれない」
「そんなことないもん!オルロはとっても優しい子なのよ!」

目に涙を浮かべて怒りを顕にするカナ。
本当に友達だと思っているようだな。友達を想うゆえにか。友達想いだな。しかし、アレは奴等の怪人なのだ。
構っている暇はない、っと言った感じで背を向けるブラック。

「奴は悪だ。故に我は戦う。危険だからついてくるでないぞ」

走り出すブラック。

「待って!オルロは友達なんだよー!私の、大・・友・・・・」

背中に声を受けながら走るブラック。
大切な、大切な、か。あの子は小さい頃の私に似ているな。
前方からは未だに激しい雷鳴が響いている。


─────────────────

バリバリバリバリバリバリドドーン

角から放出される電撃は容赦なくレッドに襲いかかる。瞬時に巻き起こる電撃は見切る事は困難であった。直撃を避け、接近し、肉弾戦に持ち込んでも手応えが悪い。さっきの膝への攻撃もそうだが、衝撃がそのまま反ってくる。このままでは攻撃している手足が持たない。
こいつは、今までとは格が違う。

「ぜぃぜぃ。博士!なんか弱点みたいのは無いのか!?」
『全身生体リアクティブアーマーと言ったところね。角はどう?』
「角!?あんなバチバチ言ってる所に攻撃するのか!?」
鼻先に電撃がかすめ思わず岩影に隠れる。

『弱点だからこそ電気で守られてるのかもしれないじゃない?』
「それもそうだな。よし、一か八か!」

岩影からバッと飛び出す。次の瞬間、待ち構えていたように電撃が直撃する。瞬時に体内の水分が沸騰し、派手に破裂する。しかし、破裂したのはサボテンであった。

「!?」
「ここだぁ!!!」

オルロの角に延髄切りならぬ角切りが炸裂する。

「オオオガァァァァ!」
「効いた!?」

角を押さえてぐらつくオルロ。

─イタイ─
─イタイ─

オルロはさらに胸が熱くなるのを感じた。角からはいっそう激しく電撃が放出される。すると、オルロの周りに光の珠が浮かび上がった。

『雷球!?まずいわ!レッド、あれに触れちゃダメよ!あの表面温度は私の作ったスーツの耐熱度数を遥かに超えてるわ』

す、す、っと不規則に揺れながらレッド目掛けて移動開始する雷球。ちぃ、と雷球に気を取られていたらオルロの放った電撃の直撃を喰らう。

「ぐああぁぁぁ!」

砂の上に倒れこむレッド。体はひきつって動かない。雷球はもう目の前まで迫ってきていた。
ちくしょう!これは、やべえ!
その時、ブラックが間に割って入ってきた。剣を砂に突き刺し、そのまま雷球と接触させる。ブラックは激しい光りに包まれる。光が収まるとブラックは膝をついていた。電流を地面に逃がす事は成功したが、何割か貰ってしまったようだ。

「くっ、お前の尻拭いは、疲れる、な」
「誰も、頼んじゃいねえ、や」

這うのがやっとの二人。その二人にオルロはゆっくりと近づいていった。

─カナハドコダ?─
─カナヲドコニヤッタ?─
「オォォォガァァァァ!!!!」

怒りの咆哮が響く。すると、どこからか笑い声が聞こえてきた。

「ふはははは!ようやく見つけたぞ!!」



(空馬)

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最終更新:2010年04月25日 16:57