(六)


「クラカイ君?反応?なんすかそれ?」
『私が【クラウデス】の怪人に反応するレーダーがあったら便利だなーって思って作ってみたのよ。名付けて【クラカイ君壱号】試作機なんだけどね。スイッチ入れたらさっそく反応があったってわけ。』
「その機械大丈夫なんすか?」
『私が作ったんだから大丈夫に決まってるでしょー。とにかく、村雲君偵察よろしく!絵斗さんも向かわせるし、都合がつけば他の3人も合流させるわ。バクアイレッド出撃よ!』
「りょ、了解!」

チン。受話器を置いてから唸る村雲。
大丈夫かー?アイアイ博士は凄い人なんだけど、あの人が訳わからんネーミングセンスで開発したモノってろくなモノ無いんだよなぁ。でもいたら大変だからいかなきゃな。
村雲は急いで身支度をして偵察に出掛けた。

『ちょっと準備中。ゴメンヨ!!』

扉についている看板はゆらゆらと揺れた。


────────────────


「レッド」
「おう!ブラック。早かったな」
「途中まで車で来たのでな」
「ブラック車なんて持ってたのか?」
「うむ。やはり何かと便利なのでな」

あれから一週間。なんとなくあったぎこちなさも消えつつあった。然したる事件も無かったのもあるが、絵斗がこの話題に触れなくなった、というのもある。しかし、彼女の悪人にたいする憎しみや怒りはまだあるだろう。 彼女がどういう運命を背負っているかはわからないが、ああいう事は彼女一人が背負うべきではない。そう思う村雲であった。

「偵察に来たのはいいけど、本当に居んのかねー」
「む?」
「ん?どうした?」
「足跡だ。
よくはわからないが、私達のよりは大きそうだ」

砂漠に残っている足跡はまだ新しいということを意味する。

「あの方角は東海岸の方だな」
「アイアイ博士。怪人の反応は今何処から出てる?」
『実は・・・、さっきから調子悪くなっちゃったのよねー』
「あらら。ブラック、どうする?」
「ここに何か居たのは確かであろう。この足跡を追おう」
「了解」

─────────────────

オルロは疲れが見えたカナを胸の所で優しく抱っこしながら歩いていた。だんだんと青い水溜まりの様なものは大きくなっており、潮の香りが強くなってきている気がする。

「オルロ。はい、水だよ」
「アリガト」

カナは水筒の水を飲ませてあげている。この行為はオルロにとって初めて会った時にされた行為であり、彼にとっては大事な儀式のようなものだった。オルロはもうカナ以外の他の誰からも飲食物は受け取らないであろう。

「もうちょっとで着くね」
「オルロ、ガンバル」

その時、二人の後方に二つの人影が現れたのだ。

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「発見した」
「見事なまでに怪人だなぁ。アイアイ博士?」
『モニターしてるわ。間違いないわね。他の3人にも緊急連絡しておくわ』
「ん!?。子供を抱いている!」

ブラックはすらりと剣を抜いた。

「何が目的かはわからんが、救出するぞ」
「わかった。ファーストアタックで俺が体勢を崩す。その瞬間に奪取してくれ」
「・・・」
「こ、子供を助けるの優先でいこう」
「解っている。行くぞ」

砂を蹴って一気に加速する。砂埃をあげて怪人に接近した。
何かが向かってくる気配がする。
オルロはなんだろうと振り向こうとした刹那、膝に衝撃。レッドが繰り出す低空ドロップキックが決まったのだ。思わず体制を崩すオルロ。宣言通り体制を崩すことに成功したレッド。次の瞬間にはブラックがカナをもぎ取り、抱えて距離を取っていた。

「(今の感じは?)ブラック!こいつは俺が引き受けた!その子を安全な所へ!」
「何を言っている?私も・・」
「バカヤロー!その子の安全が最優先だ!頼む!」

ブラックは女の子をチラリと見る。
くっ、確かにこのままでは危険か。

「直ぐに戻る。それまで耐えろ」

ブラックは急な展開で思わずキョトンとするカナを抱えたまま全速力でその場を後にした。
離れていくブラックを確認した後、怪人と向き合ってファイティングポーズを取る。
さっき蹴った感じ。かなりヤバそうな奴だ。

「さーて、やるかい」

─コイツラ、カナヲドコカニツレテッチャッタ─
─ヒトサライダ。ワルイヤツラダ─
─カナヲカエセ。カナヲカエセ─

「ゥゥオオオオオオガァァァァァァァァ!!!」

カナを返せ。代わりに出てきたのがこの咆哮であった。怒りで言葉を忘れたのだ。同時に胸の辺りが熱くなり、角の先端がジンジンしはじめる。

パリッ、パリパリパリパリ

角から放電が始まった。

『ほう。電気怪人の様だな』
「見ればわかるわ!」
『50~80万ボルトと言ったところか。レッド。そのスーツは絶縁してあるが、あまりもらうとシビレるぞ』
「へっ、上等」

絶好のピクニック日和の陽気に雷鳴がこだました。



(空馬)

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最終更新:2010年04月25日 16:56