(四)

街の明かりが遠くに見える。豪邸とは言えないが新築のちょっとした高級住宅。そこの台所でシチューをグツグツ煮込む主婦。時計をチラチラと気にしている様だ。

「(ちょっと遅いわねー。大丈夫かしら?何があったのかしら?心配だわ)」

この家が建っている場所は言わばニュータウン的な場所である。これから住宅街となる予定なのだ。まだまだ土地代も安かったので新築のの家を建てるのに選んだのだ。ネックと言えば街まで少し遠い事。
もう一度時計を見る。

「(新しくここに住み始めてからこんなに遅くなる事はなかったわ。あの人は出張でいないし。なんだか不安になってきた)」

この心配と不安は取り越し苦労となる。すぐに玄関から元気な声が聞こえてくる。

「ただいまー!!」
「(ホッ)お帰りなさーい。
どうしたの?何か嬉しそうだけど?」
「えへへー。お母さん、私ね、お友達が出来たの!」

10歳位の女の子はとびきりの笑顔で母親に報告をした。

「まぁ!よかったわねー。あ、なるほどー!それで遅くなった訳ね?」
「あ、ごめんなさい」
「うふふ。まぁそうゆう事なら多目にみましょう」

母親も嬉しそうだ。実はこの子は昔から引っ込み思案で、人見知りしてしまう所があった。引っ越してから暫く誰か友達が出来たという話がまったくなかったので少し心配していたのだ。

「どの辺の子なの?」
「え?うーん、わかんない」
「そっかー。でも、折角出来た友達なんだから、仲良くするのよ?」
「うん!明日も遊ぶのー!一緒に絵本を読むの!」
「そう。いいわねー」
「えへへー」

幸せな時間を過ごす母子であった。




(空馬)

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最終更新:2010年04月25日 16:55