●防衛戦隊レンレンジャー
『第三話:運命の戦い!! レンレンジャーよ永遠なれ!!』
【~あらすじ~】
時は第七世界歴72508002の夕刻、
早速計上された隊員達の訓練手当てを経理部のインクジェットブラックが処理する一方で、
レンレンジャー一同に、休む間もなく事件が再び降りかかる。
戦うべき本当の敵は誰なのか?
悲しみと共に、今、決戦の幕が上がる!!
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「きっつぅ……」
「教官たち、鬼だろ」
「鬼の方がまだ優しいんじゃないか? 鬼なら瀬戸口先輩だし」
「みんなのお耳の恋人っていうよりは、みんなの地獄の恋人って感じだよな、教官」
「なんで美人なのにうちの上司達は長官といいみんなああなんだろうな」
「なー」
(ヘタレた顔で休憩室のベンチに座り込んでいる面々。ただ1人、ポニーテイルの少女だけが快活である)
「何よ、だらしない。自分を鍛えてお金をもらえるなんて、最高の仕事じゃない!」
「そりゃ、元から体育会系な連中にはいいかも知れんけど……俺なんて前歴証券マンだぞ、おかげで保険も入りなおしになるし」
「ウルトラバイオレットブルーは線、細いもんなー」
「ウルトラバイオレットブルーは紫なのか青なのかはっきりしろよ」
「むしろウルトラバイオレットブルーは顔色が紫から青に変わりつつあるが大丈夫か、無茶しすぎなんじゃないのか」
「ウルトラバイオレットブルー、無理しないで横になったらどうだ」
(仲間達から口々に労われてベンチに横になるウルトラバイオレットブルー。ご愁傷様、といった顔でバーミリオンサンダーレッドはその光景を眺めている)
(もりもりと、その手元では食堂直売の牛丼が使われていた)
(隣にポニーテイルの少女がどすんと座る。お、とその顔を見るバーミリオンサンダーレッド、にこりと綺麗な笑顔にどきりとする)
「あれだけ訓練しておいて、やるじゃない」
「食べないと保たないからな」
「紅ショウガがないのは画竜点睛を欠くと思うけど……あなた、気に入ったわ!」
「紅ショウガはいらないだろー。男ならネギダクで充分だ」
「あたし、ゴッドレインボースパーク、よろしくね! バーミリオンサンダーレッドさん!」
「よ、よろしく」
(箸をくわえながら、求められて握手を交わすバーミリオンサンダーレッド)
(フラグか、フラグなのか!? と、激しくその脳裏で彼女いない歴20年の悲しい思考回路が回転する)
(ゴッドレインボースパーク、そんな隣の様子を無視して足をぶらぶら、天井を見上げながら語り出した)
「あたし、さ……」
「う、うん」
「ずっと昔から、戦隊物のリーダーになりたかったんだ。かっこいいじゃない?」
「そりゃーまあ、子供なら、憧れるしな」
(女の子はむしろ『LOVE諸島に代わっておしおきよ!』の、愛と無人島のラブラブ戦士レンジャースターズの方を視聴するもんじゃないかなー、と、バーミリオンサンダーレッド、疑問に思う)
「あたし、どーしてもレンジャースターズが好きになれなくってさ」
「? そりゃまた、どうして」
(タイムリーな話の流れにどきっとするバーミリオンサンダーレッド。注意深くゴッドレインボースパークを見守るが、彼女はきらきら握り拳でやおら力説し出した)
「だって、あの番組に出る美少女戦士って、みんな彼氏いるじゃない!」
(ぶふぉー!! とバーミリオンサンダーレッド、盛大に牛丼を噴く)
「真の正義の味方なら、男なんか作らずに黙って戦うべきだと思うのよ!!」
(最初主人公達4人だけだったのに、結局彼氏達4人まで仲間に加わって、今じゃほとんど8部衆じゃない!! だの、毎回デートスポットが舞台になるのはどうなのよ!? だの、不平不満を漏らし出すゴッドレインボースパーク)
(バーミリオンサンダーレッド、隣で、ああ、フラグじゃなさそうでよかった、と、そのたび密かに安堵を深めていく)
「あたしは違うわよ。絶対に男なんて作らないで、レンレンジャーで正義を貫くんだから!!」
「は、はは」
(ひきつれた愛想笑いをしながら、そそくさと牛丼をかきこむバーミリオンサンダーレッド)
(ゆらり、と、部屋の奥で、立ち上がる影)
「聞き捨てなりませんね」
「?」
(何よ、とゴッドレインボースパーク、反論に対してきっと睨みを投げつける)
(立ち上がったのは髪の長いたおやかな女性。いかにもなでしこと言った感じの、凛々しい顔立ちをしている)
「正義求めしは愛ゆえに。愛求めしは乙女がゆえに。
戦いを通じて育まれる愛情、何と甘美な響きでしょう!
正義を貫く傍らで、彼氏を求める事に、何のためらいがあるでしょう。
レンジャースターズ、わたくしは大好きですよ」
(バーミリオンサンダーレッド、レンレンジャーにまともな人材はいないのかと頭を抱えたそうな表情になる)
「わたくしの名はブリリアントフラワーピンク。ゴッドレインボースパークさん、あなたは間違っています!」
(びしいっ! と、ゴッドレインボースパークを指差すブリリアントフラワーピンク。決然としてその唇から言葉が放たれる)
「戦隊ものでも、ピンクとレッドが結ばれたりする事、珍しくないでしょう!!」
「ああー!?」
(ガーン! と、音も立てそうな勢いで膝をつくゴッドレインボースパーク)
(無視して部屋中に呼びかけるブリリアントフラワーピンク)
「さあ皆さん、このブリリアントフラワーピンクと一緒に、もう一汗、愛と正義の訓練で流す気はありませんか?」
(お、俺も俺も! と押し寄せた男子隊員を、なぜかゴッドレインボースパークが薙ぎ倒す)
(何をなさいますの、とブリリアントフラワーピンク、ゴッドレインボースパークと取っ組み合いに)
(俺は何も見なかったという顔で休憩室から逃げ出すバーミリオンサンダーレッド)
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「職場恋愛、禁止にしようか」
「うーん……一部の不純な面々のやる気にも関わるんじゃない?
それにほら、一応うちって、愛を掲げるレンジャー連邦の組織だし」
(休憩室で取っ組み合いが始まったとの報告を受け、教官と長官がしょうもなさそうに額をつきあわせている)
(ころん、と壁に立てかけられていた教官の竹刀が床に転がる)
『頑張れレンレンジャー!
負けるなレンレンジャー!
君らの青春はまだ、始まったばかりなのだから!!』
(秘書のナレーションと共に、舞台暗転、了)
-続かない方がいいのかもしれない。
最終更新:2008年05月27日 22:54