●防衛戦隊レンレンジャー
『第一話:ショック!? 今明かされる、レンレンジャーの正体!!』

/*/

【~あらすじ~】

時は第七世界歴40508002、

不況、内戦の予兆、なりそこない事件、差別問題――

ニューワールド中に今、不穏な風が吹きつつあった。

それはここ、平和を愛し、愛を愛するレンジャー連邦でも変わらず、犯罪発生率は増加の一途をたどっていた。

国策により観光業促進が命ぜられ、さらに大量の旅行者が流入することで、それはさらに加速するだろうとも。

だがそんなレンジャー連邦を救うべく、今、一つの正義が立ち上がろうとしていた――――。

/*/

?「よろしいのですか、博士」

(呼びかけにくるりと回る椅子、白衣を着たシルエットが頷きを見せる)

?「わかりました。では、現時刻をもって計画の承認を得たものとして活動を開始します」

/*/

(一人の健康そうな若者が、薄暗い通路を歩いている。その表情は闇に戸惑っているかのようだ)
(やがて彼は手探りで進んだその先で、扉にぶつかる。おそるおそる扉を開ける若者。中から漏れ出る光――)
(室内には白衣を着たショートカットの女性が椅子に座っていた。隣には秘書らしい男性が立っている)

「君が、~~くんかね」
「はい」

(うっそりと口を開いた白衣の女性。若者、緊張しながら答える)
(秘書から女性に書類が手渡された。手元のそれと、目の前の若者とを吟味し見比べるかのように女性は視線を交互に移す)
(若者、そろりと手を挙げる。女性、答える)

「何かね」
「質問です」
「許可する」
「あの、これは国が募集した新しい形の雇用形態のお仕事、なんですよね……?」
「いかにも」

(女性、秘書に書類を返して腕組みしながら頷く)

「なんでこんな怪しげな手順を踏んでるんですか?」
「怪しげとは心外だな。機密保持のための適切な手段を講じているのだが」
「っていうか、一体僕はこの面接受かったら何の仕事をさせられるんですか?!」
「――――」
「いや、答えましょうよ!」

(女性、良いだろうと立ち上がる)
(若者の周りをぐるりと一周、二周、三周……上から下までまるで品定めでもするかのように視線があからさまに動く)
(さわ、さわ。若者の肩や腰を女性の手が掴んだ。若者、照れて飛び退る)

「せ、せくはら!?」
「何を言ってるのかね――――ふむ、主な病歴もなし、至って健康そうだ」
「それだけが取り柄ですから」
「代わりに少々勉強が苦手だそうだな。それで不況の今、なかなか思うような職が見つからなかった、と」
「はっきり言いますね……圧迫面接か何かですか?」
「いや」

(女性、やにわに手を差し出す)

「?」

(若者、その手を見て、女性の顔を、意図をうかがうように見やる)

「握手だよ、握手」
「あ、はい」

(言われるがままに握手を交わす若者。にっこりと笑う女性)

「今日から君がこの国を守る正義の味方だ、よろしく頼むよ」
「ええー!?」
「説明が遅れたが、うん、君なら大丈夫だろう。私達はこの国の治安を守る、そう、正義の味方でね。私がいわば長官だ」
「ヒーローものなのに女性長官!?」
「管理職への女性の社会進出という奴だな。正義に性別は関係ないだろう、安心したまえよ」
「っていうか、業務、業務説明をまずはしてくださいよ!」

(若者、面食らって憤慨する。長官、ふむ、と頷き椅子に戻り着席)
(長官、秘書に手でジェスチャーして書類を出させる。頷いた秘書、離席。しばらくして分厚い冊子を持って出てくる)

「これが我が社の業務内容だ」
「厚っ!! いや、厚っ!!」
「勉強が苦手だというから適当なところではしょって面接合格だけ伝えたのだが」
「はしょりすぎです!!」
「ふむ。しかしはしょらず言っても業務内容は変わらんぞ」
「ですから、一体何なんですか!?」
「正義の味方だ。言ったろう」

(若者、愕然としてよろめく。長官、平然とその様子を頬杖突きながら眺めている)

「昨今の治安の悪化は君も良く知るところだろう。そこで我がレンジャー連邦は策を講じることにした、正式にな。それが我が社、そう……」

(長官、ぱちんと親指を打ち鳴らす)
(秘書、カッ、と靴音も高らかに一歩前進、口を開く)

『防衛戦隊、レンレンジャー!!』
「――!?」

(若者、その早朝のヒーロー番組のタイトルコールの如き宣言に圧倒されてのけぞる)

「いやほらナレーション役だよ彼は。いい声してるだろう、それで雇ったんだ。ついでに秘書もしてもらってる」
『説明しよう!
 レンレンジャーは治安維持活動を行う正式な藩国認定の公務員である。
 数こそ力のアイドレスの法則にならい、多勢に無勢をモットーとし、敵を無血で取り押さえるためなら手段を選ばないという素敵なヒーロー戦隊だ!
 ただ、そのあまりの容赦もへったくれもない戦い振りを模倣する悪党の偽物が出ないよう、専用のヒーロースーツには国有のサイボーグ技術を利用した特殊な認証キーが組み込まれていて、活動時にはこれによって瞬時にナショナルネットに接続、近隣をパトロールしている私服レンレンジャー達と連携を取ることが出来るのだ!
 なお、スーツや装備は街の各所にこっそり隠してあるぞ! 備えあれば愁いなし、正義の味方は用意周到だ!』
「どんな公務員ですか正義の味方って!?」
「国家特別公務員だが」
「冷静に答えないで!?」

(長官、また指をぱちんと鳴らす。胸を張り手を後ろに組んで秘書がまた口を開く)

『レンレンジャーの身分は国家特別公務員だ!』
「秘書さんに答えさせないで!?」
「熱い返事が欲しいのだと思ったのだが」
「そういう意味じゃありません!!
 …っていうか、僕なんかで本当にいいんですか? 国を守る正義の味方が。
 こんな適当な選び方で!」
「応募書類も一次試験のデータも基準をクリアしてるから面接に呼んだんだ、大丈夫だ」
「僕、特別な武道とか習ってませんよ!? なんていうかこう、正義の味方っぽい奴!」
「柔道2段だそうだね、それで充分だ。我がレンレンジャーでは合気とサブミッションを正式採用することになっている、君の寝技の腕を今度是非私に見せてもらおう」
「微妙に言い回しが、なんていうかその、あれです!!」
「君の寝技の腕を今度是非鬼の戦闘教官との訓練で私に見せてもらおう」
「嫌すぎます!?」
「わがままだな君は。じゃあ立ち関節がいいのか。飛びつき腕ひしぎ十字固めとか、そういうの」
「そういうことじゃなくて!!」

(ふー、と若者、落ち着くために頭を振って大きく深呼吸)

「業務内容は職務の性質上、面接で説明されるとは確かに聞いてましたけど、もうちょっとこう……」
「なんだね」
「ふ、普通に話を進められないんですか!? ここまでの通路とか、演出無茶苦茶ですよ!!」
「しかしなあ……」

(長官、秘書と見交わす。若者、そのやりとりに何か事情があるのかと思い、ちょっと気後れ)

「せっかくヒーロー戦隊を組むんだから、それらしくしたいじゃないか」
「 た だ の 雰 囲 気 作 り じ ゃ な い で す か ! ! 」

(長官、若者が張り上げた大声にちょっとぎょっとする。若者、それでハッとなって少し小さくなる)
(長官はその様子に笑って口を開く)

「機密レベルが高いのは本当なんだ。みんなで力を合わせて戦う正義の味方とは言っても、普段は一人だからね。素顔の時に襲われたらたまらんだろう。だから、わざわざ大袈裟に、工夫を凝らしてこうやって個別に面接しているというわけだ」
「あ、はい……」
「それで、どうなのかね」
「どう、とは」
「面接に合格したのだから、後は君のやる気があるかどうかの回答待ちだったのだが、こっちは」
「あー……」

(若者、走馬灯のように回想する。大学を卒業してから一人暮らしで住んでいる家での食生活の貧しさの数々が頭をよぎる。次いで、ついついツッコミを入れてしまうせいでなかなか面接に合格出来ない就職活動の苦い日々)

「もう一度だけ、聞いていいですか?」
「なんだい」
「どうして僕なんですか? 他にももっと、粒よりの凄腕格闘家とか、スーパーレーサーとか、そういう特徴のある人を選んだ方が良かったんじゃ……」
「ああ、その点は安心したまえ。レンレンジャーの採用予定は300名オーバーだ」
「ぶふぉー!!」

(若者、噴出してぶっ倒れる)

「な、なんなんですか、その人数は!?」
「解説入れたろう、最初の方で。レンレンジャーは数こそ力のヒーロー戦隊だと」
「それにしても限度ってものがありますよ、普通!!」
「国民の安全と平和を守るためならば、私達はいくらでも踏み越えるよ、そのような限度」

(う、と若者、長官の意外に真っ当な正論に、言葉に詰まらされる)
(長官、椅子にもたれかけ直す)

「さて、理由はわかったろう。君はまだ私達の基準では優秀な部類だ、他の隊員予定者には運動能力こそあれど武道の未経験者で要研修などのメンバーもいるのだからね」
「は、はあ……」

(若者、違う意味で大丈夫なのかと心配になる)

「それで、どうするのかね。辞退かね?」
「ええっと……色って、今なら選べますか?」
「無論だが」
「じゃあ、レッドで」

(若者、ちょっと格好をつけた了承の伝え方だったかな、と思うも、長官が椅子から立ち上がり再び手を差し伸べられる)
(若者、握手に応じる。長官、にっこりと笑う)

「おめでとう、今日から君はレンレンジャーバーミリオンサンダーレッドだ!」
「長いな!?」
「戦隊モノの宿命か、レッドが人気でね……他にもファイアーガランスレッドとか、ハイパーサンスカーレットとか、いろんなレッドがいるのだが」
「わかりました、バーミリオンなんとかでいいです」
「ちなみに変身している間や基地にいる時は互いにコードネームで呼び合うから、そのつもりでいたまえよ、バーミリオンサンダーレッドくん」
「本名じゃ駄目ですか?」
「あ、給与明細とかはそっちで出すよ。収支が不透明になったら困るのでね。緊急に現場に駆けつける時のタクシー代なども領収書もちゃんと取っておいてくれたまえ、でないと経費で落ちないから」
「妙なところだけお役所仕事なんですね……」
「基本的には24時間営業中みたいなものだから、その言われ方は心外だな。アフター5などという気楽な職種ではないのだよ、正義の味方は」
「そもそも正義の味方が公務員ってあたりが、ちょっと」
「何を言う。定義によれば公務員とは公共の奉仕者だぞ、まさにうってつけではないか。給料もちゃんと出るし、これほど優良な企業もあるまいに」
「む、無償じゃ駄目なんですか? 正義って」
「君らも生活かかってるだろう」
「あ、はい」
「ちゃんと基地来て訓練したら手当てがつくし、出撃待機したら拘束費も出るから安心したまえ。基本給は雀の涙だが、今流行の能力給という奴だ」
「労災、下りますか?」
「生命保険は一部微妙だなあ。以前ウルトラバイオレットブルーがその件で保険会社と揉めてたから。一応危険の伴う職場ってことになるから、契約は新しくし直した方がいいな。こっちで取り計らうので心配しなくていいよ」
「その人の担当、青なんですか、紫なんですか……」
「ゴッドレインボースパークとかいう隊員もいるぞ」
「うわあ……そんなのが今日から僕の同僚になるわけですか」
「とにかく」

(長官、にっこりと笑う。バーミリオンサンダーレッド、その笑顔の可憐さにどきりとする)
(長官、ぱちりと指を鳴らす)

『戦え、レンレンジャーバーミリオンサンダーレッド! 行け、正義のために!
 連邦の平和は君の肩にかかっている! 未来へ向かって、GO!!』
「なんかEDテーマにつながりそうなナレーションでシメた!?」

(満足げに頷く長官。舞台、暗転)

-続かないかも。

/*/

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年08月16日 18:01