始まりは気まぐれだった。
akiharu国。ゲーム性の高い企画を出すことで知られる、一味違う、国である。そこに立ち寄ろうと思ったのは一枚のちらしが風にはためきどこかから流れてきたからだった。

『どれが一番強いか分からないから、バトルロイヤルします』

「……」

にやり、と男は笑った。

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「エントリー受け付けは間もなく終了となっております、みなさんお早めに自機の確認をお願いします」

アナウンスがakiharu国のイベント会場控え室に流れる。既にエントリーを済ませていただろう各国の犬猫の猛者たちが、辺りにはたむろしていた。なにやらバトルロイヤルということで、独特の張り詰めた空気とお祭り騒ぎ特有の親しみやすさが、皆の間には漂っていた。

「おっ、来ましたね」
「うぃうぃ」

40名を数える参加者の中には見知った顔も当然多い。レンジャー連邦の城華一郎(じょう かいちろう)は、ついほんの先ほどエントリーを済ませたばかりらしい、法官仲間の都築つらねの顔を見るやにこりと笑って手を上げ挨拶をした。この挨拶、法官省で彼がまだ長官だった頃に初めて耳にして以来、なんとなく移ってしまった代物だ。新旧の法官長がこんなところで顔をあわせるというのも、面白い縁である。

都築はいまや一国の主。デイダラと名づけた巨躯の発掘兵器は、なるほど、ウォードレスに特化した彼の国らしい、シンプルで戦闘向きなデザインをしていた。古き神の名を抱く機体の偉容に華一郎は笑って見上げる。

「いやあ、でっかいですねえ」
「城さんのところのはなんという名前にしたので?」
「こいつですか」

巨大な剣を携えたデイダラの、隣のハンガーに運び込まれてきたのは、まるでどこかの孤高のヒーローでもあるかのようなベイビィフェイス(善玉顔)をした、いかつい、マント付きの素手の機体である。スカーフまで巻いている辺り、堂に入っていると言えなくもない。

「趣味の機体だなー」
「超愛絶機、ダイアイオー。超絶・愛・機だと、愛を絶しちゃうようにも読めるから、超愛絶機にしたんですよ。まあ、スーパーロボット系のイメージで、はい」

笑いながら見上げる。

100種500機にも及ぶ膨大な発掘兵器群の中で、この機体と目があった時、華一郎は感じたのだ。運命を、ではない。未起動のまま無造作に並べられたこの機体の面立ちの中に眠れる機魂を、である。

I=D乗りなら、いやさアイドレスプレイヤーなら誰でも知る、前代未聞の機体がある。撃雷号と呼ばれる、ヒーローユニットである。それは既に自律した意志を持ち、人々の呼び声により現れる、スーパーロボットの雄である。今、その出自であるフィーブル藩国では、どこかへ飛び立ってしまった撃雷号の設計図を元に、プロダクトネーム・自由号と名づけられた、改良型の開発に取り組んでいるはずだ。とりどりの参戦者の中に彼らの姿は見られない。専念しているのだろう。

「あっちに鴨瀬さんや嘉納さんも来てますよ」
「おっ、マジですか? 結構法官のメンバー集まってるんだ」
「鴨瀬さんは主催国の人ですから」
「なるほど」

運用のために最終調整に入っているハンガー内には、なるほど、それ以外にも、あらゆる戦場でSSを繰り出す文族の速射砲、龍鍋 ユウの姿があり、聞けばその名も勇龍王ドランナーベというそうだ。見るからに美しくたくましい、青龍を模したのだろうか、攻防一体の独特の兵装を携えたその姿は、まさに古代の発掘兵器という名に相応しいもの。

(みんな個性的な機体を選ぶなあ…)

『エントリー締め切りです、各選手の方々は集合してください。これよりルール説明をさせていただきます』

アナウンスが流れる。


(文責:城 華一郎)

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最終更新:2008年01月29日 00:06