イベント05:冒険開始! 砂浜ミサゴ&マグノリアの女だけの記憶探し


 にゃんにゃん共和国、わんわん帝国両国内で
国を豊かにするための冒険が行われようとするほんの少し前。

『え、ちょっと待っ…!ペロ防衛戦っていうか、八神?!大場??
 留守にしたくないことばっかりなのよ!
 うわぁーん、ヤーガァァァァッ………!!(ぱたん/扉の閉まる音)』

 レンジャー連邦の今代藩王・蝶子は学生時代の友人達と冬のバカンスへ旅立った。
上の叫びを見る限りは攫われたような気もする。


 そういえば藩王が旅立つ1日前。尚書省へ出仕していた吏族・小奴が帰国した。
『ごめん、ちょっとだけ寝る……』
そう言い残して彼女も姿を消した。
噂によると帰国途中に喜多方ラーメンを食べ過ぎて体を壊し、入院していたらしい。


「はい、年女コンビ戦線離脱…っと。ここは私がしっかりしなきゃダメね。」
 ふぅ、と小さく嘆息しながら連邦摂政・砂浜ミサゴは眼鏡を上げた。
摂政執務室の窓からは黄色のレプリカジャンパーに身を包み、
大きな荷物を持った藩王が楽しそうに笑いながら車に乗り込むところが見えた。
 小さく微笑むミサゴ。藩王があんなに笑うの見るのは久しぶりだった。
思えば年末から彼女は働き詰めだった。正月にだってロクに休みを取っていない。


 でも、公休がないのは摂政であるミサゴも同じこと。
最近は政庁と自宅の往復ばかりで、少々辟易していたところである。
「最近は国内開発もあまり進んでいないし……
よし、私自ら冒険に打って出よう!」

 思い立つとどこまでも突っ走るのが連邦民の性である。
摂政殿は相変わらずだと言うように猫士ドランが足元で小さく鳴いた。

 コンコン。と執務室のドアを叩く音がする。
諾を得て入ってきたのは技族のマグノリアだった。
「ミサゴさん。今日もお仕事ご苦労さま。お茶休憩しません??」
トレンチに急須と湯のみ、特産品のさくらんぼを乗せて
にっこりと微笑むマグノリア。
気心知れた友人と故郷の温かいお茶を飲むのが彼女のなによりの楽しみである。
「わぁ、ありがとう。座って座って。ちょうど相談したいことがあったんです」
窓辺の応接セットにマグノリアを通しながらミサゴは神妙な顔で切り出した。
背の低いテーブルに2人で茶器を並べながら向かい合う。
「あら、困りごとでもあるんですか??」
「女だけのひみつです」
ミサゴ秘蔵のお菓子缶がぱかっと開いた。



「ミサゴさーん!本当にここで合ってるんですか?!」
「はい、たぶん!でもおかしいな、見当たらない……」
 数時間後、2人は砂漠のど真ん中にいた。
藩都から北西へ1kmほど行った一面の砂景色の中である。
「たぶんこの辺りなんだけど………
どうしよう。なにせ10年は前の事だからなぁ…」
ざくざくと砂を掘り分けながらミサゴはつぶやいた。
気候に慣れているとは言え、砂漠の中での作業は厳しく、そして果てしない。

「10年前の記憶探し、か。なんだかロマンティックですね」
 マグノリアが額に汗を浮かべながら言った。
ミサゴも汗で頬に張りついた灰髪を軍手で払う。
「10年前にね…あ、10年前はまだこの藩に越してくる前で。
でも旅行をしていてこの藩に来る機会があったの。
その時にこの国のことがすごく気に入って、結果今に至るんだけど」
 少しずつ昔のことを語り出すミサゴ。
摂政になってからというもの他人に自分の話をすることはごく稀だった。
そのことに気付いて小さく苦笑するミサゴ。
自分は今日のこの『冒険』を楽しんでいる。
「当時良くしてもらった女の子に『内緒だよ』って教えてもらったの」
「歴代王家の遺産が埋まってる、かぁ。なんでしょうね。」


 場面変わって、そのころの藩都。
「なにやってるんだろう?あの2人…」
「さぁ…油田でも当てようとしてるとか」
「女のすることに立ち入るとひどいことになるよ」
藩都政庁の塔の屋上で一休みしていたアスカロン、青海正輝、楠瀬藍は
小さな蜃気楼として浮かび上がる2人のゆれる尻尾を見ていた。
「ま、倒れたら迎えに行こうか」


「あ、物質反応アリ。ここのあと1.5m下……」
 マグノリアの操作する砂漠内物質捜索システム、
通称『ここ掘れにゃんにゃん』のレーダーに反応が出た。
画面を見れば一辺5000mmほどの小さな何かが埋まっている。
「今度は岩じゃなきゃ良いなぁ…がんばろう」
「お手伝いします」
 長時間の作業にもう日も暮れかけている。
過ごしやすくはなってきたが、如何せん時間がない。
最後の機会だからと祈るように砂をかき分け、反応部分を探す。

 ガツン!
2人ほぼ同時に振るった採掘道具が音を立てた。顔を見合わせる2人。
今までにヒットした岩や巨大生物の骨とはどうにも異なる音と感触。
「あたり……?」
「かも」
 更に掘り進めていくと、出てきたものは小さな箱。
しかし藩王家の紋章がついた立派な箱だ。
「なんだか意外と新しそう。開きますかね」
「開きそう、堅いけど。…ちぇいっ!」
 良く分からない掛け声をかけながら、梃の原理で蓋をこじ開ける。
出てきたものは、大量の紙と写真……??
それを見たマグノリアの顔色が変わる。
「ややや、ヤガミーーーー!!!」
真っ赤になって叫ぶマグノリア。くらくらと足元の砂に倒れ込む。
もちろん写真はしっかりと握りしめて離さない。
「大丈夫、マグノリア?! …それにしても、これはなに??」
マグノリアにあまり砂がかからないように助け起こした後、
ミサゴは箱の中を漁っていく。
探れば探るほどヤガミという人物の写真や記録がばさばさと出てくる。
「……??」
なにかに気付きかけつつも、
箱の中に入っていた一冊のノートが気になって思考を止めた。
オレンジ色の可愛らしいノートだ。どうやら日記帳らしい。
ごめんね、と日記の主に頭の片隅で断りながら、ぺらぺらとめくっていくミサゴ。
少女特有の可愛らしい文字でそれは記されていた。


 ○がつ△にち
 目がわるくないとめがねはかけちゃいけないみたい。
 目をわるくするにはどうしたらいいのかな。
 たくさん本をよんでみよう。

 ○がつ□にち
 今日は火せいの海のおはなしを本でよみました。
 海の中でがんばってたたかうせん水かんのはなしがとてもすき。

 ■がつ○日にち
 わたしもほしになる!


どうやらただの個人の日記のようだ、と片づけようかと思ったが、
少し気にかかって先を探すことにする。
日付は自分がここへ来た10年前。


 ●月○日
 今日、北国から来たというご家族に会いました。
 みんなで旅をしているみたい。
 いいなぁ。私はあんまり国を出られないから羨ましい。
 特にミサゴちゃんという女の子と仲良くなりました。
 眼鏡の似合う可愛い女の子です!(ここ重要!)
 明日はもっといろいろ話せると良いな。

 ●月☆日
 今日もミサゴちゃんとたくさんお話しました。
 ずっと昔に読んだ火星戦争の話をミサゴちゃんも知ってて
 すっかり話が盛り上がりました。
 でも、今日で彼女ともお別れ。
 また来てねって約束したけど、また会えるかどうかはわからない。
 さよならの時に王家の遺産の埋まっているところと
 私のひみつ箱の隠し場所を教えてあげました。
 秘密を共有するのは女の友情の特権だからね。


 小さく息を一つ吐いて、ミサゴは小さなノートを閉じた。
気付けば頭上には無数に輝く細かな星のきらめき。

 日記の彼女は星になれたのだろうか。




 数日後。政庁。
「ただいまー!お土産買ってきたわよー」
すっかり気分転換できたらしい藩王・蝶子が歌うようにミサゴに声をかけた。
「世の中は広いのね、眼鏡島ってステキな場所があったのよ!」
大きな荷物の中から現像したばかりの旅の写真を取り出しながら
お土産の緑縁メガネを手渡す蝶子を、ミサゴは黙ったままじっとみつめる。
「どうしたの??」
その視線に気付いたらしい蝶子は、不思議そうな笑顔で首を傾げる。
その反動でオレンジの伊達メガネが少々ずれた。

ミサゴはなんでもないというように首を左右に振って、
輝くような笑顔を浮かべた。
「おかえり、蝶子さん」


*

○参加冒険: №29:女だけの記憶探し
○砂浜ミサゴ:4300:西国人+猫士+吏族
○マグノリア:2500:西国人+猫士+吏族
○冒険結果: 中間判定 :得たお宝: E 11愛情(スカ)それぞれ 根源力1000
:ユニークな結果:なし
コメント:記憶よりも大切なものを見つけました。

*****

おまけ。

後日。
ミサゴとマグノリアが留守中に二人だけで小冒険に出かけたことを知った蝶子は、頬を膨らませた。

「ずるいー!私も冒険行きたかった!行きたかった!!行きたかった!!」
「うーん、でも、蝶子さん藩王なんだし。何かあったら大変じゃないですか。」

地団駄を踏んで悔しがる藩王に苦笑いしながら、優しくなだめるミサゴ。
さてはマグちゃん、手に入れたヤガミの写真見せたわね、と傍らのマグノリアを見ると、
彼女はごめんなさい見せてあげたかったんですごめんなさいと手を合わせていた。
1つため息をついて、まあ浅葱ちゃんが居なかったのが不幸中の幸いか、と考える。
ヤガミ好きの国民・浅葱空がこの場にいれば、きっと藩王と二人して駄々をこねたことだろう。

「もう!いい!私一人で今から行ってくるもん!」
「ダメですよ。」
「いいの!行くったら行くんです!!」
「もう、仕方ないですねえ。」

ミサゴがすいませーん、お願いしまーす、と声を張ると、
どこからともなくアスカロン、青海正輝、楠瀬藍が現れた。
この状況を予測して、冒険から帰ってきた時にあらかじめ頼んでいたのである。

「まったく。」ため息をつくアスカロン。
「ワガママはだめですよ。」眼鏡を指で押して微笑む楠瀬。
「あんた、大将なんだから。」眉をしかめて笑う青海。

ミサゴがパン、と1つ手を叩くと、3人は蝶子を担いで王の自室へ放り込み、2重3重に鍵をかけた。
やだー、出せー、冒険に行くー、と叫ぶ蝶子の声を聞きながら、優しく微笑むミサゴ。

「どうやら星になるにはまだまだのようですね。」
「え、何か言いました?」
「いいえ、なんにも。さ、マグちゃん、執務に戻りましょう。」

こうして砂浜ミサゴ、マグノリアの小冒険は幕を閉じた。
ちなみにその後藩王は翌日の朝方まで放置され、休養から戻ってきた小奴に助け出された時には半泣きになっていたのであるが、それは余談の余談。

*******
文責:小奴(吏族)、蝶子(文族)



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最終更新:2007年01月29日 03:21