世界について

 ウイリアとよばれるこの世界は、南と北のふたつの巨大大陸からおもに構成されている。ふたつの大陸の西には、たちの棲む島があり、またはるか東には、アザリアという小さな島国がある。



歴史について

第一紀
 物語が展開する時代は、統一された暦の上では、第二紀とよばれている。第二紀の前には第一紀という時代があり、この時代は、第二紀におけるふたつの大陸をさらに凌ぐ大きさの古大陸を舞台としている。
 人類が魔法という能力を獲得したのは第一紀においてである。その能力は洗練を続け、やがてその集大成といえる体系「バルバドの魔法」が完成する。魔法文明を極限まで発展させた人類は、全世界を巻き込んだ巨大な戦乱を起こすことになる。魔法使いたちによるこの戦争は、“滅びの宴”とよばれている。長い戦争のなかで人類はさらに強大な魔法を追求し、あげく、「魔法の究極」とよばれる境地に到達する。この「魔法の究極」は“魔王アウバスとも“バルバドの禍い”ともよばれ、その名は第二紀にも伝わっているが、それが実際どのような存在だったのかは知られていない。いずれにせよこの謎の存在の出現により人類の戦争は終結し、全世界はアウバスの暗黒の支配下に置かれることとなった。“魔王”による恐怖の統治は一千年ほど続くが、あるときアウバスは突然その姿を消す。なぜアウバスが消え去ったのかは一切不明だが、いずれにせよ突然その絶対的支配者をうしなった世界は、巨大な混沌として放り出されることとなった。
 この混乱の世界を平定し、世界に再び秩序をもたらしたのが、ザウノン・シェイアというひとりの英雄である。ザウノン・シェイアは大陸全土を統一しその王となった。そして再びバルバドの禍いがおこらぬように、バルバドの魔法をひとつの書にまとめ、限られた者のみがこの書を読めるようにした。しかし彼が王の座についていたのはわずかの間だけで、ウイリア全域から混沌を一掃し統一王国の基盤を築くと、それ以上長く玉座につくことなく、ひとり東へ船出し、そのまま帰ることはなかった。
 そののち世界は500年にわたって平和が続くが、やがて世界は大変動を迎えることとなる。大陸の崩壊である。これは魔法使いたちには、世界に満ちる魔力が7000年という周期で巨大な変動を繰り返すからだと説明されている。この時期すべての魔法はその効力を失った。天空は妖しく幻のように狂い、大地は引き裂かれことごとくその姿を変えた。そしてウイリアは大混乱のまま、第二紀を迎える。


第二紀
 大陸変動のあと、ひとつの大陸はふたつの大陸に分かれて再び正常な時を刻み始めた。この混沌の時期を経て、第一紀のあらゆる文明はほとんど完全に失われたのだが、大変動を越えて伝わった第一紀の遺産がわずかにあり、そのひとつがバルバドの書であった。このバルバドの書をもとに人類は今一度魔法という力を手に入れ、第一紀の壮麗な魔法文明には到底およばないものの、再び発展の道をたどり始めたのだった。
 ウイリア世界は広大な世界であり、第一紀のような巨大文明に到達していない第二紀においては、世界の歴史は各地域ごとに独立して進行していくだけだった。もはや全世界規模で影響を及ぼすような大きな事件もほとんど起こることなく、世界のそれぞれで同じように人が争い、国を築き、子を成し、そして死んでいく繰り返しが続いた。しかし、そんな停滞した世界も、第二紀後半になって大きな変動を体験することとなる。暗黒帝国の発動である。
 第二紀の4000年頃、シーザの大神官デクネウンという賢者が、ひとつの予言をした。いわく、一千年の後に、“影”が興り、最強の種族を従えて世界を破滅に導くと。
 一千年の後、予言は果たされた。北大陸のほぼ中央、カロアという呪われた地に、闇の力が凝集し、暗黒の領域が誕生した。巨大な城砦が、海龍の棲まうという禁断の海岸から浮かび上がった。暗黒の玉座、アルド・バルン(“氷の城”)である。長い年月をかけてこの地に降り注いでいた闇の力は、ひとつのかたちを成した。氷の城の主であり、闇の帝国の王、そして暗黒の種族の神、すなわち“冥王”である。
 冥王を頂点に抱く暗黒帝国は、“闇のもの”という無敵の種族を中心として全世界へ侵攻を始めた。世界はあまねく蹂躙され、立ち向かう勢力はことごとく粉砕された。そして誰ひとりとして、冥王の玉座はおろか、闇の国に足を踏み入れることすらできなかった。
 しかし、大神官デクネウンは、ただ闇の侵略のみを予言していたわけではなかった。彼の予言によれば、闇は世界を覆い尽くすが、それに対抗しうる勇者たちがやがて現れるという。予言はそのどちらが最終的な勝利を収めるかについては触れていない。それは、ただその勇者たちに呼びかけているのみである。
 戦え、と。








最終更新:2013年04月14日 11:33