はじめに





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 ここでは、ファンタジー系の架空世界として、“ウイリア”という名の世界の設定を記述しています。
 これはもともとオリジナルTRPGの舞台として考え始めたものだったのだけど、TRPGシナリオの構築に挫折し、世界設定のみが一人歩きして残ったものです。

 とはいえ、架空世界と物語は不可分一体のもの、と考えているので(世界があればそこに何らかの物語が自動的に付随するはずだし。)、もともと計画していたシナリオはひとつの軸として残っています。それを小説というかたちで具体化してもよいのだろうけど、そのような気力もなく、むしろ設定自体に興味がシフトしたため、物語の詳細な記述はあきらめて、単に世界設定のみをまとめることにしました。

 ここにまとめたもの以外に自分のメモやイラスト、あるいは地図など大量の残存資料が混沌と眠っているけれど、そのほとんどが、まとまったものではなく相互に矛盾したものであったりするため、公開しているのはかろうじて整合性を取ることに成功したもののみです。
 そのため本来あってしかるべき情報がなかったりして、客観的に理解しがたい部分が多々あるかと思います。
 これらについては今後改善するかもしれないけど、たぶん完全なかたちでまとめられることはまずないでしょう。

 公開しているものは断片的な情報のみ、しかも物語としての体裁にはこだわっていないので、小説やTRPGであればネタバレとみなされる核心部分についてもそのまま載せています。
 これらを熱心に構築していたのはだいぶ昔のことで、最近はほとんど手をつけずにいました。
 今になってこの不完全な設定を公開しようとしたのは、なんとなくこれをこのまま眠らせておくのももったいないかなと思ったから。
 もうこれをとりたててどうしよう、っていうのは何もないのだけど、せっかくつくったものなので誰かが何かの参考にしてくれればいいかな、でも著作権は放棄したくないので使うならそのまま使うんじゃなくアレンジして使ってね、という感じです。(クリエイティブ・コモンズ・ライセンスにしてるので、ここでのアイデアを何かに使いたい方がいたらどうぞ使ってください。この世界設定をまもった二次創作を誰かにつくってほしいとかいうのではなくて、どっちかというと、ファンタジーの世界設定を構築している人が設定アイデアだけ部分的に使いたい、というようなときにもし役立てればいいかな、ということを思ってCCLにしました。なお、CCL区分は表示-非営利-継承です。)

 というかRPG黎明期につくり始めた世界なので、もはや今ではかなり古いスタイルになっていて、格別に目新しい要素はないと思います。


どのような世界か

 ここでやりたかったことは、ひとことで言えば、もっとも王道なRPG構造を徹底的に突き詰めていったものをつくりたかった、ということ。
 つまり〈世界に侵攻してくる魔王がいて、それを倒す〉というプロット。最初は弱かった主人公たちがさまざまな地域を遍歴していくうちに強くなり、国家規模のイベントに関わるようになって、最終的には世界最強の敵を倒すに至る、というもの。

 王道というか何のひねりもないというか...。そもそもこのような物語構造は、現在ではあまり一般的ではなくて、もっといろいろひねられているし。

 でも自分はなんだかんだいってもそういう物語構造に惹かれるので、それにこだわっていました。なぜならば、この単純な形式こそが、最大のカタルシスをもたらすと考えていたので。
 圧倒的な戦力を持つ敵、絶望的な展開。でもそれに立ち向かう主人公たち。主人公サイドも修練を通じて成長し、その強大な敵に対抗する力を獲得する。

 この物語構造に対してどのような世界設定を用意すれば、それを最大限に生かすことができるだろうか。
 まず考えたのは、とにかく質よりも量を投入して肉付けしていこう、ということ。舞台をひたすら広大にし、そこにある文化は単一ではなく多様に、歴史も同様に長大なものに。そのような大きな舞台がまずあって、そこに圧倒的な敵が登場し、これだけ広く多様性に満ちた世界をすべて滅亡の危機にさらす。それほどの力を持った敵に立ち向かい、なおかつそれを倒してしまう。そこにこそ最大のカタルシスがあるだろうと。
 だから世界はきわめて広く、多数の国家が林立していて、それらは地域ごとには相互の交流が可能な状態にあるけれど、世界全体でみれば、互いに互いの存在を知らない方が多い。同様に、言語や文化も国家と同じぐらいの数があり、共通の価値観はない。たとえば、支配的な宗教がない。この世界では基本的に、世界に先行する神性は存在しないという設定にしているのですが、それは、もしそのような超常存在がいたならばそれを頂点に据える宗教体系が伴われ、世界における統一的な価値観を提供してしまい、多様な文化が遍在する世界、という方向を阻害するだろうと考えたからです。(超常存在が現存していたとしても、それを説明する体系は多数ある、というのはあり得る話だとは思うけど。)世界設定のなかで重要な位置を占める〈魔法体系〉については、また別の話があるけど、それでも魔法を説明する体系にはいくつかの流派があり、どれを選択するかはその人次第、としています。

 ただあくまでもこの世界は〈ファンタジー〉としようと考えていたので、たとえばある地域では科学が発達していて宇宙船だとか飛空艇が飛んでいる、とかはありません。また、ここで言う〈ファンタジー〉とはわりと狭義のものと捉えていて、指輪物語やD&D、およびここから派生したローズ・トゥ・ロードのユルセルーム世界、などから想起される一連の様式を意図しています。とはいえエルフやドワーフは(一応設定上は登場させてはいるけれど)あまり重要な位置を占めていません。龍は歴史上きわめて重要な役割を果たしているもののその登場は稀。歴史の、つまり世界の主人公はあくまで人間である、としています。歴史を紡いでいくのは神でも龍でもエルフ等他の知的種族でもなく、人間以外にはあり得ない。というスタンス。
 神やエルフ・ドワーフなど、ファンタジー一般で見られる特徴的な要素が重要でないとするならば、ファンタジーとしてのこの世界では、何が特徴となるのか?
 そこでフィーチャーしたのが、魔法。魔法はそんなに一般的ではないものの(歴史上では、魔法文明とも言えるほどに魔法が発達した時代はあったが)、魔法使いという存在は非常に重要で、世界の動向に大きな影響を与えています。
 また、魔法体系のなかで謎とされている部分があり、これらの部分が、世界に降りかかる滅亡の危機を回避するための大きな役割を果たすことにしています。魔法は世界原理と密接に関わっていて、人間が魔法を使えるのは、世界を観察するということにつながっています。この世界では「魔法の究極」と位置付けられるふたつの事柄があり、ひとつは“魔王”、もうひとつは“滅びのことば”と呼ばれていますが、どちらも、自我・観察という概念と関連しています。








最終更新:2009年04月12日 00:23