“滅びのことば”



1.
 第二紀における「バルバドの書」の研究者のなかには、解読の手がかりすらない謎がいくつかある。「バルバドの書」に記されている“聖剣の魔法”および“英雄の魔法”に関する謎である。とくに“英雄の魔法”のことば〈AVNOR〉については、すべてが不明である。
 一方で、フュダーインたちの間では“滅びのことば”という魔法についての伝承がある。“滅びのことば”は、その名の通り、すべてを終末に導くひとつのことばだといわれる。フュダーインによるバルバド魔法の研究では、そのような究極のことばが必ず存在するはずだという。フュダーインは、「バルバドの書」における“英雄の魔法”がこれに何らかの関係を持っているということを導き出したが、それ以上のことはわかっていない。“滅びのことば”は“破壊のことば” とはまた異なる。“破壊のことば”も確かにひとつの究極ではあるが、“滅びのことば”は“破壊のことば”を成立させるその根底すらも揺らがせるものである。
 “滅びのことば”が過去に使用されたことがあるのかどうかは、議論が分かれている。“バルバドの禍いアウバスを消滅させた原因がこのことばだというものと、ザウノン・シェイアが混沌の世界を平定するときに用いたものであるというふたつの有力な説がある。“真王”ザウノン・シェイアが“滅びのことば”を知っていたであろうということは、ほぼ確実とされている。“真王”はバルバド魔法体系をいわば完成させた者であり、“聖剣の魔法”と“英雄の魔法”という謎を後生に投げかけた張本人だからだ。











最終更新:2009年10月25日 13:11