~神聖巫連盟に伝わる「水薙島(みずなぎじま)」伝承




「昔はこの町は津波が来るたびに町のほとんどが洗い流され、そのたびに町を建て直していました。
これはその頃の話です。
それは津波がようやく引いて高台に避難していた人々が復興のために壊された家々を片付けていたときのことでした。
瓦礫の中から赤ん坊の泣き声がします。
あの津波の中、よく生き残ってくれたと助け出されましたが、結局その子の両親は見つかりませんでした。
そして、その子どもは津波で家族を失った男が引き取り育てることになりました。
家族を亡くした悲しみから逃げるように男は子どもに愛情を注ぎ、子どもはその愛情を一身に受けすくすく育っていきました。
あまりに大きくなりすぎて、男の働きでは二人が満足に食べていくことも出来なくなり、男が自分の食べる分まで子どもに食べさせるようになりました。
子どもは自分のせいで男がやせ衰えていくのを見て、自分のせいで男が死んでしまうのはいやだと町を出る決心をしました。
そして男が寝静まった後、子どもが旅の支度をしていた時のことです。
急に大きな揺れが何事かと思い家を出ると『津波が来るぞー』声が聞こえてきました。
男の家は家族のそばから離れたくないと皆が高台の方に家を引っ越させる中、いまだ海のそばにありました。
今から逃げ出してもここから、男の足では逃げ切ることはできないと考えた子どもは、男を守るために津波を止めようと子どもは津波へ向かっていきました。
男は衰弱した身体で子どもが海へ行くのを必死で止めようとしましたが、その声は届かず子どもは海へ行ってしまいました。
子どもは懸命に押し戻そうと一晩中津波と格闘しました。
翌朝、波も引き静けさを取り戻し、人々が戻ってきたときには子どもの姿は無く、ただそれまではなかった大きな島ができているのを、そして男が嘆く姿があるだけでした。
それ以来この町では津波がやってきても島が守ってくれるといわれています。
めでたしめでたし」

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最終更新:2008年04月09日 13:57