【恐慌コラム】世界に躍進する韓国のさらなる野望2010年3月22日 21:49

 

0322samsun2.jpg最近来、米国内でサムスン電子が業界シェアトップに立つなど世界的に脚光を浴び、日経新聞で採り上げられている韓国経済であるが、17日付の英FT(フィナンシャル・タイムズ)紙でも報じられていたので、以下にそれを抜粋しよう。

 

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世界に躍進する韓国のさらなる野望

自動車や電子製品、そして船舶の製造における効率の高さで以前から知られていた韓国企業が、原子力や高速鉄道などほかの分野でも急速に台頭していることに、日本だけでなく欧米諸国の多国籍企業も慌てている。

  0322nps.jpg金融サービス分野でも韓国の変化は明らかだ。これまで保守的な運用を続けてきた韓国国民年金(NPS)は、2014年までに外国資産の保有残高を現在の4倍に当たる1000億ドルに増やそうとしている。世界で5番目に大きな年金基金であるNPSは、既にロンドンでその意思をはっきり表明しており、カナリーワーフにあるHSBCの本部ビルを12億ドルで買収したほか、ガトウィック空港の株式の12%を取得している。

 

北朝鮮では経済が以前にも増して危険な状況にあるように見えるし、現体制が崩壊すれば韓国は大変な人道的・財政的問題に直面する。また韓国のさらなる成功は、1980年代後半に終わったばかりの軍事独裁政権時代に作り出された経済モデルを刷新できるかどうかにかかっている。

外国人投資家は既に、韓国の法制度が自分たちに不利であることに気づいている。そのため外国からの投資は年間110億ドル程度にとどまっており、900億ドルを受け入れる中国に大きく水をあけられている。

 一方、韓国では日本と同様に、社会の高齢化が急速に進んでいる。従って経済の停滞を避けるためには、生産性を高めるとともに、高い国際競争力を誇るサービス産業を育成しなければならない。今年のGDP(国内総生産)成長率は4〜5%と見込まれるが、これをさらに高めるためには、バリューチェーンを猛スピードで上っていく必要がある。それができなければ、製造コストの低い中国勢に仕事を奪われたり、先進国の企業にイノベーション(技術革新)で先を越されたりしかねない。

 

0322kepco.jpgしかし、少なくとも韓国企業からは、政治指導者と同じく自信を深めた様子がうかがえる。例えば韓国電力公社(KEPCO)を中心とする企業連合は昨年、フランスのアレバ、トタル、GDFスエズなどで構成される企業連合を土壇場で退け、アブダビの民生用原子炉建設事業を200億ドルで受注した。韓国政府の関係者らは、これを機に原子炉建設の仕事が増え、今後20年間で計4000億ドルを受注することもあり得ると発言している。

 

 サムスンや現代(ヒュンダイ)をはじめとする韓国企業は、インドでも優位に立っている。中国に次ぐ規模のビジネスチャンスがあると言えるインド市場にも多額の投資を行い、存在感を強めているのだ。

  0322samsun.jpgインドの著名な経済学者、ラジブ・クマール氏は「韓国はインドの香港になり得る」と指摘している。香港が中国本土に早くから投資して経済成長を促したように、インドについては韓国がその役目を果たすかもしれないという意味である。それと並行して、天然資源に乏しい韓国の企業は必要なコモディティー(商品)の調達源を確保するために、多くの場合、中国やインドと競合しながら、中央アジア、アフリカ、中南米諸国を駆け巡っている。

 

世界第5位の原油輸入国である韓国の政府は現在、国営企業が外国企業を買収する資金として120億ドルを用意している。先日もカザフスタンで原油採掘権を取得しており、カナダの石油会社ハーベスト・エナジー・トラストを41億カナダドル(40億米ドル)で買収して日量5万バレルの原油と天然ガスを手に入れた。

 

しかし、韓国企業はコスト削減圧力にさらされており、クリーンエネルギー技術など最先端の分野に手を伸ばしている。例えば現代重工業は、造船から風力発電用タービンの生産、ハイブリッド電気自動車向け部品の製造などに事業を急速にシフトしつつある。原子力発電所建設の受注に成功したKEPCOも、総額60億ドルのカナダの風力・太陽光発電施設プロジェクトの受注に成功した企業連合に参加している。

 

世界で作られるリチウムイオン電池の5分の1が韓国製であることから、アナリストらは、この国が低炭素産業における一握りの技術的リーダーの一角を担う可能性があると指摘する。だが、高度な技術インフラがあることを考えれば、可能性はそれにとどまらないだろう。何しろここは、インターネットが世界で最も普及している国だ。ブロードバンドの世帯普及率は95%に達しており、ドイツの58%に大きな差をつけているのだ。

 

とはいえ、利益の大きな部分が計上されるのは外国市場であり、韓国の有名企業は外国での存在感を着実に高めつつある。昨年、売上高で米ヒューレット・パッカード(HP)を抜き去って世界最大のハイテク機器メーカーに上り詰めたサムスンは、今年は利益が日本の電機メーカー大手15社の利益合計をも上回る可能性が高い。

0322samun.jpg もしサムスンの台頭がソニーやシャープ、パイオニアといった有名企業の衰退にも影響を及ぼしてきたのであれば、自動車業界でも同様なことが起きるかもしれない。韓国の自動車メーカーは現在、米国市場で約8%のシェアを獲得している。トヨタ自動車の評判ががた落ちなため、現代自動車が世界市場で同社のシェアを一部奪って業容をさらに拡大することは、ほぼ間違いないだろう。

 

しかし、コンサルティング会社マッキンゼーのリチャード・ドブズ氏によれば、韓国には専門性の高い分野で外国企業と競争できる中堅企業がない。もしそういう企業を育てて経済に強さと奥行きを持たせたければ、韓国経済を支配している「財閥(チェボル)」は、比較的効率の悪い部門をスピンオフ(分離・独立)しなければならないと同氏は言う。

 

韓国はまだその段階には達していない。だがこのような話が出てくるのは、さらなる高みを目指す野心の反映でもある。韓国はもう、先進国に追いつくことを目標とする国ではない。韓国企業も、どの国のライバルとでも互角に戦える力があることを示す場面が増えてきた。

JB pressより】

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バランスの取れた内容であるが、産業構造が国内の経済規模の小さゆえ、産業構造が輸出中心となっている点や海外に拠点を置く企業が牽引している点で日本と同様である。ただ、外交面においては、G20の議長国になるなど率先してイニシアチブをとろうとしており、日本に水をあ 0322kita.jpgけようとしている。

 

それでも、私が懸念するのは、やはり北朝鮮の体制崩壊による経済の混乱である。かつてのベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一されたように、近い将来、それは"作意的"なタイミングで起きるであろう...。