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とはいえ、核物質が友人の家にあるからといって、完全に安全であると考えてはいけない。今回の報告書に精通するある関係者によると、「旧ソ連に核物質があるとすれば、我々はすぐに駆けつけるでしょう」。アメリカの同盟国には、核セキュリティ対策が最も貧弱な国も含まれるからだ。

もう1つ別の問題がある。所在を把握しているものと確保済みのものを除いても、まだ2,700kg(約3トン)残っている。これは莫大な量であり、核兵器数十発分に相当する。

ウランとプルトニウムがどこにあるか、またはどこにあるべきか、GAOの報告書で言及はない。公開文書で開示するにはあまりにもセンシティブな情報だと考えたのだろう。その代わり、昨夏に議会に送付された機密報告にその情報が含まれている。ところで、アメリカが現在、中国、ウクライナ、コロンビアを含む27カ国といわゆる原子力協力協定を締結していることは覚えておいてよい。かつては、同様の協約をイスラエル、パキスタン、ベネズエラ、ベトナム、そしてイランなど11カ国と締結していた。

「理論的には、我々は[核物質が保管されている場所を]把握しています。しかし、実際はすべての所在を説明できるわけではありません。我々は各国政府に依存している状態にあります。言うなれば、信頼も検証もしてない状態です」と、先の情報筋は述べている。

アメリカの検査官は核物質の保管場所に赴き、安全に保つために必要なフェンスや監視装置が適切な方法で設置されているか、時折確認を行う予定である。過去にも追跡調査が行われたが、その記録は特に人を安心させるものではなかった。 1994年から2010年にかけて55回の訪問がなされたが、「核物質防護チームによれば、IAEAの安全指針を満たしている設備は27か所、満たしていない設備は21か所、残り7か所は場所を査定することができなかったか、または文書が紛失されていたため不明である」と報告書はまとめている。

不完全だが驚くべき内容を含むGAOのこの報告書は、時代のパラダイムが変わったことの副産物である。アメリカはより高度な安全保障と説明責任を各国に要求しており、テロリストが核への野心を持っている世界に対処しようとしている――実際、過去20年で20件の原子力の密輸が摘発されている。しかし、多くの国はこういった変化に対応できていない。

「かつてのビジネスは[あなたはそれを買ったが、我々はいくばくかの権限がある、しかしながら最終的にはあなたの問題だ]というものでした」と、ルイスは述べている。 「しかし、今や時代は変わっているのです」。

TEXT BY Noah Shachtman
TRANSLATION BY GMOスピード翻訳/鈴木真一



WIRED NEWS 原文(English)

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