核兵器に転用可能なウランやプルトニウムの多くが追跡不能に

所在が分からない高濃縮ウランと分離プルトニウムが数千パウンド存在する。それは時代の変化で片付けられる問題なのだろうか。

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Photo: Wikimedia


大統領が繰り返し述べていることだが、オバマ政権の対テロ対策の最大の目標は、テロリストに核爆弾や放射性を撒き散らす爆弾を作らせないことにある。 2009年4月、オバマ大統領は新たな国際的な取組みを発表し、「4年以内に世界中で危険に曝されている核物質すべてを管理下に置く」と述べた。それ以来、アメリカのエネルギー省は科学者を世界中に派遣し、これまでに数百パウンドを回収している。

しかし、9月9日遅くに政府監査院(GAO)が発表した報告によると、所在が分からない高濃縮ウランと分離プルトニウムが数千パウンドあるという。アメリカ政府は、安全の確保ができないかもしれない。

アメリカは、「核兵器に転用可能な」核物質を過去に5,900パウンド海外に出荷したが、そのすべての所在を把握しているわけではない。むしろ、この恐るべき物質は「我が国で安全に管理されている」といった、各国政府の保証を頼りにせざるをえないのが現状だ。アメリカの政府関係者は、時折、核物質が保管されている場所を訪問するが、議会の調査部門であるGAOによれば、その半数近くは「国際原子力機関(IAEA)の安全指針を満たしていませんでした」とのことだ。

「エネルギー省がこれほど軽率だとは、まったくもって驚きです。日々の業務で誰も気にかけていないのですから」と、モントレー国際大学の核兵器アナリスト、ジェフリー・ルイスは述べている。

エネルギー省は、当然のことながら、異なる考えを持っている。各国政府は、自国で管理する核分裂性物質の安全性についてレポートを提出することになっている。国際査察官は、各国政府が嘘の報告をしていないかチェックする。GAOは、ウランやプルトニウムが行方不明になっているとの報告をしていない――単にガイドラインがなかっただけかもしれない、と。

「IAEAによる査察とその報告要件の間を埋めるものとして、こういった予防策が効果的であり、国際的にも認められていると考えます」と、エネルギー省の国家核安全保障局の報道官であるジョシュ・マッコナハはWired.com/Danger Roomに語っている。

事はアイゼンハワー政権に始まる。当時、主に民生用原子力エネルギープログラムを支援するため、アメリカは各国に17,500kg(38,500パウンド)の核分裂性物質を売却した。しかしながら、その販売には次の条件が付けられていた。すなわち、各国はこの危険物質を安全な状態に保たなければならず、武器に転用してはならない。アメリカはこの放射性物質を――いずれ何らかの方法で――取り戻すことができる。

しかし、17,500kgのうちの12,400kgはアメリカに返却されることはない。というのも、ドイツやフランス、日本といった友好国の管理下――加えて原子炉――にあるからだ。残りの5,100kgのうち、 1,160kgの所在は分かっており、1,240kgは、エネルギー省の「地球規模脅威削減イニシアティブ」により確保されている。この「地球規模脅威削減イニシアティブ」とは、原子力発電所を改造して危険度が高い高濃縮ウランから低濃縮型に置き換えるための取組みである。

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