警視庁ファイル流出、被害者が激白「勝手にテロリストにされ…」

2010.11.02


警視庁の機密文書とみられる資料【拡大】

 警視庁の機密文書とみられる資料がインターネット上に流出した事件。テロ対策や情報収集にあたる「警視庁外事3課」の機密情報が丸裸にされたことで、日本のイスラム社会に動揺が広がっている。文書に、テロ関係者や「協力者」などとして多くの外国人イスラム教徒の名前が挙がっているからだ。名指しされた外国人は「勝手にテロリストにされ、命の危険さえある」と怒りをあらわにしている。

 「私はテロ組織とは何のつながりもない。でもこうなった以上、一生テロリストと誤解されて生きていかなければいけなくなってしまった」

 都内に住む北アフリカ出身のイスラム教徒の30代男性はこう憤る。1997年に来日し、現在はレストランを経営。一般市民ながら、流出文書の中でテログループの「事件関係者」としてリストアップ。氏名や年齢、現在の居住地や携帯電話番号などの個人情報が詳述されたことから、ネット上で「テロリスト周辺者」との烙印が押されてしまった。

 「5−6年前、所属を名乗らない警察官が『友だちになろう』と声を掛けてきた。それから、月に数回電話があって会食するようになった。が、まさかテロ関係者として監視対象になっているとは思いもしなかった」

 文書にはこの男性以外にも、準大手ゼネコンに勤務する男性やイスラム教の宗教施設職員など、確認できただけで十数人のイスラム教信者の外国人男性が、テロ周辺者として名指しされている。なかでも目を引いたのが「協力者」の存在。テロ組織に内通する“スパイ”の個人情報までもが明らかになっているのだ。前出の男性は「彼らはもちろん、意図せず情報を流していた私たちまで命の危険にさらされる。警察は責任を取ってくれるのか」と吐き捨てる。

 さらに、文書には警戒対象とする都内のイスラム教関連施設や団体のリストも。「イスラムコミュニティー」の1つとして名指しされた中には、中国からの新疆ウイグル自治区の独立を求める団体「日本ウイグル協会」もあった。

 代表をつとめるイリハム・マハムティ氏(41)にも、デモや集会を開くたびに外事3課の警察官が接触を図ってきていたという。

 「『なぜテロ対策にあたる課が来るんだ』と疑問に思っていた。こんな文書が出回ると、ムスリム(イスラム系)社会への差別意識が助長される危険性がある」(イリハム氏)

 警視庁はいまだに文書の真贋について公式な発表をしていないが、元公安調査庁調査第2部長の菅沼光弘氏は「内容からいって、本物であることはほぼ間違いない」と断定。その上で、「『協力者』保全という捜査機関の最大の責務が果たせなかった責任は重い。文書には米空軍の捜査機関の名前も上がっているが、こうした名前が出ること自体、国家間の信用にかかわる。今後のテロ捜査に与える影響は甚大だ」と指弾する。

 一部の警視庁関係者からは「内部の権力闘争で、意図的に流された可能性もある」と指摘する声もあるが真相は藪の中。警視庁最大のスキャンダルにまで発展しそうな今回の“事故”。余波は今後も広がりそうだ。

 

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