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★ コラム:「絶望死」が増加する米国社会の暗い闇 「ロイター(2017.4.3)」より
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Edward Hadas

[ロンドン 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 1世紀以上ものあいだ、戦争か疫病、あるいは自然災害でもなければこのような状況は発生しなかった。だが、ソ連が崩壊したときにそれは起きた。そして今、米国も同じ状況を迎えている。

米国の国民、特に白人で低学歴層の平均寿命が以前よりも短くなっているのだ。主な原因はドラッグ、アルコール、そして自殺だ。

プリンストン大学のアン・ケース教授とアンガス・ディートン教授は、これら「絶望による死」の背景にある統計を紹介している。ブルッキングス研究所のためにまとめられた両教授による最新の研究からは、25─29歳の白人米国民の死亡率は、2000年以降、年間約2%のペースで上昇していることが分かる。

他の先進国では、この年代の死亡率は、ほぼ同じペースで、逆に低下している。50─54歳のグループではこの傾向がさらに顕著で、米国における「絶望による死」が年間5%のペースで増加しているのに対して、ドイツとフランスではいずれも減少している。

米国社会の最底辺では特に状況が深刻だ。

学歴が高卒以下の人々の死亡率は、あらゆる年代で、全国平均の少なくとも2倍以上のペースで上昇している。また、低学歴の米国民のあいだでは、「健康状態が良くない」と回答する人が、以前に比べて、またより大きな成功を収めた米国民に比べて、はるかに多くなっている。

+ 続き
何か重大な問題が進行している──。単に経済云々ではなかろう。というのも、米国経済は成長しているし、失業や脱工業化は他の先進国にも共通する問題だが、そこでは「絶望による死」は増加していないからだ。米国の独自志向にこうした憂鬱なバリエーションが表われるには、何か別の理由があるに違いない。

ケース、ディートン両教授は、低学歴層の「累積的な不利」が、米国では他国よりも大きな問題になっているのではないかと指摘している。なるほどと思わせるが、米国の「3つの弱点」が、文字通り致命的に相互作用していると考えるほうが優るのではないか。

第1に、米国の福祉制度は不十分だ。オピオイド系鎮痛剤中毒の拡大は、どのような制度においても重大な問題になるだろうが、米国の各州による対策は、恐らくどの先進国に比べても整合性がなく、資金も不足している。

米国の福祉制度の貧弱さを擁護する人々は、民間・宗教団体による慈善活動の強力さを指摘することが多い。しかしこの薬物中毒の事例においては、そうした取り組みもやはり力不足である。

第2に、医療制度も混乱している。規制当局も医療関係者たちも、オピオイド系鎮痛剤の処方に関する監視を怠ってきた。鎮痛剤「オキシコンチン」を製造している米医療用麻薬最大手のパーデューファーマなどの企業によるロビー活動を責めることは簡単だ。同社は2007年、虚偽表示の容疑を認め、6億ドルの罰金を納めている。

だが、比較的小規模な企業によるロビー活動にさえ当局が抵抗しにくいというのでは、まるで開発途上国における状況のようである。オピオイド中毒は、もっと大きなパターンの一部にすぎない。米国民は、処方薬である鎮静剤や精神安定剤の利用について、異常なほど無頓着だ。

第3に、米国民は異常なほど自己破壊欲が強い。この国民性を理解するために、まず、現代世界の絶望をめぐる、研究者のあいだの長年の議論を振り返ろう。

ケース、ディートン両教授が実践している統計社会学の端緒となったのは、エミール・デュルケムの1897年の著作「自殺論」だ。デュルケムは、家庭や共同体、既成宗教により提供されてきた伝統的な指針が排除されたことに基づく、きわめて現代的な孤独を仮定した。

彼はこれを「アノミー(無規範状態)」と呼んだ。政治分野の識者は「疎外」、文化分野の批評家は「幻滅」という言葉を使うところだ。心理学者は孤立した個人の抑うつを臨床的に研究し、社会学者はいかに経済的な変化によって社会的な立場や自尊心が広範に失われたかに注目する。

専門家たちは恐らく正しいのだろう。共同体や信仰(哲学者がときに「意味」と呼ぶものを提供しやすくする)を衰弱させるような現代的要因はたくさんある。意味が失われれば、人生はすぐに絶望的な快楽の探求へと堕落してしまい、あるいは生きることそのものが拒否されてしまう。

アノミーや疎外、共同体の喪失が、現代のどの場所よりも米国に大きなダメージを与えつつあることは理解できる。厳格な個人主義を常に尊重してきた国においてこそ、孤独は容易に到来するからだ。

また、米国民のなかでも、非熟練労働が社会的に低く評価されるせいで最も疎外感を感じている人々に最も大きなダメージが生じているというのも筋が通っている。家族の分断が進むなかで、またかつてはこれも先進国中で米国の独自路線の好例であった敬虔(けいけん)な信仰が衰退するなかで、このグループの経済的な苦痛は倍加している。

この国で政治的な対応が遅れている理由も、オピオイド中毒と自殺に対する米国の脆弱(ぜいじゃく)性をもたらしている同じ国家的欠点によって説明できる。政府に対する本能的な不信感や、一枚岩の医療アプローチの欠如、国家的な失敗を認めることへの消極性、これらすべてが思い切った政策を妨げている。

とはいえ、かつては米国政府も積極的だった。1960年代の「貧困との戦争」、そしてこれに関連するリンドン・ジョンソン大統領による「偉大な社会」プログラムは、概ねその目標を達成した。

「絶望との闘い」は、もちろんもっと困難かもしれないが、公的部門の資金と専門能力が役に立つかもしれない。この問題への取り組みが成功しなければ、「米国が再び偉大に」なる可能性は大きくないだろう。

筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)


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★ 米国の白人中年、高死亡率の理由 「日本経済新聞(2017.3.29)」より
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 米国で学卒でない労働者が経済的に豊かになれないのは、昔から知られていることだ。だが最近、経済的困窮が命取りになりかねないことが明らかになった。(ノーベル経済学賞受賞者の)アンガス・ディートン氏と、妻でやはり研究者のアン・ケース氏は2015年に出した研究報告書で、1998年までの20年間、米国の白人中年の死亡率は毎年約2%ずつ低下したが、99年から2013年にかけては上昇したと指摘した。欧州では中年の死亡率が年間2%と同じペースで下がり続けただけに、米国の反転はとりわけ目を引く。13年には米国の白人中年の死亡率が、同年代のスウェーデン人の2倍となった。自殺や薬物の過剰摂取、アルコール中毒が原因だ。

+ 続き
 ディートン夫妻は23日、このいわゆる絶望死に関する最新研究を米ブルッキングス研究所で発表した。米国の白人中年の死亡率は14年と15年も上昇した。ほぼすべての州に共通の現象で、都市部と農村部の違いもない。状況は徐々に悪化しているように見える。1940年代以降に生まれた白人を5年ごとに分類すると、薬物や自殺、アルコールによる死亡が全てのグループで増えていた。

 死亡率の上昇は所得の低下と裏腹の関係にあるのかもしれない。50~54歳の白人を世帯主とする家庭では、1人当たりの中位所得の推移が世帯主の死亡率と逆相関関係にある。所得は90年代に増えたが、2000年代に入って減少し、以前とほぼ同じ水準に戻っている。ところが、学歴別にみると状況は異なる。学卒者の所得は全体と似た軌跡を描くが、死亡率は低下が続いている。黒人とヒスパニック(中南米系)も所得は同様に推移しているものの、絶望死の数は白人よりかなり少ない。

 両氏は、長期的により漠然とした力が働いているのではないかと推測する。根本的な要因としては、貿易の拡大と技術の進歩により、特に製造業の低技能労働者が豊かになる機会を失ったというおなじみの説が挙げられる。だが、社会的変化も見逃せないという。つまり、生活が経済的に不安定になるにつれ、低技能の白人男性の多くは結婚より同棲(どうせい)を選ぶようになった。彼らは昔から地域に根付き、同じ価値観を重視する宗教ではなく、個人の考え方を尊重する教会を頼り始めた。仕事や職探しも完全にやめてしまう傾向が強まった。確かに、個人の選択を優先した結果、家族や地域社会、人生から自由になったと感じる人は多い。半面、うまくいかなかった人たちは自分を責め、無力感から自暴自棄に陥ると両氏はみている。

 では、なぜ白人が最も強く影響を受けるのか。両氏は白人の望みが高く、かなわなかったときの失望がその分大きいからだと考える。黒人やヒスパニックも経済環境は白人より厳しいが、そもそも彼らは最初の期待値が白人より低かった可能性がある。あるいは、彼らは人種差別の改善に希望を感じているのかもしれない。対照的に、低技能の白人は人生に絶えず失望し、うつ病になったり薬物やアルコールに走ったりするとも考えられる。

 とはいえ、米国で経済的困窮がこれほど致命的な打撃となる理由を説明するには、この論理では十分ではない。製造業の雇用が失われ、社会構造が崩れているのは何も米国に限ったことではないためだ。オーストラリアや英国、カナダ、アイルランドなど他の英語圏諸国でも絶望死は増えたが、米国ほどではない。実態を正確に把握するにはさらなる研究が必要だが、米国人の絶望死が特に多い背景はいくつか考えられる。

 一つは鎮痛剤オピオイド(医療用麻薬)を利用しやすいことだ。オピオイドによる死亡者数は02年から15年にかけ2倍以上に増えた。もう一つは銃が容易に入手できることで、自殺の約半数で使われている。もっとも、どちらも絶望死の多さを完全には説明できない。アルコールも絶望死の引き金になるが、他の西側諸国でも簡単に手に入るからだ。

 より有力な要因として、多数の米国人には、とりわけ医療分野でセーフティーネットがないことがある。医療保険制度改革法(オバマケア)によって低所得者向け公的医療保険「メディケイド」が拡充される前は、扶養する子供のいない成人に多少なりとも公的保険を提供する州はほとんどなかった。病気になったときに医療保険がなければ、明らかに死亡率は上昇する。

 米国では広義の社会保険も十分ではない。失業者向けの支援は、彼らが失う生涯所得と比べると微々たるものだ。米国が労働者の教育訓練に充てている資金は、国内総生産(GDP)比で経済協力開発機構(OECD)の加盟国平均の2割にとどまる。失業者への金銭的支援はOECD平均の25%でしかない。ところが、米国人が自前でセーフティーネットを用意している様子もない。国民の46%が予定外の400ドル(約4万4200円)の出費に、何かを売るか借金をして対応すると答えた。経済的に危険な生活と、ほとんど事情を勘案せず、個人の置かれた状況を本人の責任とみる社会的風潮から、精神的に追い詰められる人は多い。

 低技能者の生活が安定する可能性は低い。絶望を減らすには、彼らに人生に高望みをしないでもらうしかないかもしれない。実際、余暇にビデオゲームができればいいという若年失業者もいる。しかし、米国はこの問題に間違いなくもっとうまく対処できるはずだ。

(c)2017 The Economist Newspaper Limited Mar. 25, 2017 all rights reserved.















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最終更新:2017年04月08日 22:21