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● 武藤正敏



■ 在日韓国人は架け橋になれるか 「なんでもブログ(2016.10.19)」より
/
武藤正敏 、前・在韓国特命全権大使が、

雑誌に寄稿している。

結論から言えば、無理。

架け橋になるためには、まず、双方の国民から

信頼される存在でなければならない。

日本側からは、本名すら名乗れない人間、

日本人のフリをして生きている韓国人

として見られている限りは、信頼などとは

ほど遠い。

韓国側からは、日本に逃げ込んで、韓国人

としての義務も果たさない卑怯者と

思われているようでは、どうにもならない。

双方から圧力を受け、耐え切れず日本で

「事件」を起こす。

日本人からは恨まれ、韓国人はまったく擁護しない。

むしろ「もっとやれ」と催促するだろう。

架け橋どころか、逆効果。

日韓抗争の火種として効果的に「活躍」するだろう。

(※mono.--以下略、詳細はブログ記事で)


外患罪
■ 1212 告発準備進行中⑫ 「余命三年時事日記(2016.10.19)」より
(※mono.--当ページ関連記事のみ転載)
/
ななこ
武藤正敏・前在韓国特命全権大使。売国奴冠祭りにこの方をいれなくてはいけないと思いましたので、投稿いたします。川崎デモの中止は「日本人の良識が勝ったということであろう」とのご高説であります。全文だと長いのですが、「在日韓国人は日本人的側面も韓国人的側面も合わせ持った人々である。むしろ、日韓の橋渡し役として日韓関係の増進に貢献しうるのである」。という論調であまりにもひどい在日擁護ですので全文引用いたしました。武藤正敏・前在韓国特命全権大使に、素敵な冠お願いしまあす!

日韓で差別される在日韓国人は両国の架け橋になれるか
武藤正敏 [前・在韓国特命全権大使] 【第11回】 2016年10月18日
ttp://diamond.jp/articles/-/104771
ttp://diamond.jp/articles/-/104771?page=2
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■日韓関係が悪くなるとしわ寄せは在日韓国人にくる
私は、2002年から05年までハワイの総領事をしていた。その時、ハワイ出身の故ダニエル・イノウエ上院議員に再三お目にかかる機会があった。同氏は2012年12月17日に88歳で亡くなったが、ロバート・バード上院議員が死去した後に上院で最古参の議員となり、上院仮議長に選出された(議長は副大統領)。同氏は日米関係の改善に貢献したことに対し、2011年に日本政府から桐花大綬章を贈られている。

しかし同氏は、1980年代に日米間の貿易摩擦が政治問題化した際には、リチャード・ゲッパート下院議員などと共に、対日批判の急先鋒であった。
そのイノウエ氏が日米関係の安定のために尽力するようになった経緯に関して、生前私に「若いころは日米関係に関与して来なかったが、日米貿易摩擦の際、日米関係が悪化すると、もっとも影響を被るのは在米の日系人であることを痛感した。それ以来、日米関係の安定のため尽力するようになった」と述べていた。
2007年に中国や韓国が「慰安婦強制連行説」を主張して米議会で審議された時も、日本の首相と衆議院が謝罪を行ってきたとして、日本の立場を擁護している。同氏は晩年、自分がいなくなった時、上院で日米関係を擁護してくれるのは誰かとしきりに心配していた。
日韓関係が悪くなると被害を受けるのは在日韓国人も同様である。いや、在米日本人以上だろう。
日韓関係は、昨年末に慰安婦問題で合意して以降改善の方向にある。しかし、2012年8月に李明博大統領(当時)が竹島に上陸してから、朴槿恵大統領の前半を通じ、政治関係ばかりでなく、国民同士までギクシャクする雰囲気が続いた。その間は首脳会談も全く行われず、朴大統領は中国の習近平国家主席と声をあわせ日本の歴史問題への対応を非難し続けた。
この間、日本では日韓関係は史上最悪との見方が広がり、嫌韓感情が高まった。私に、韓国について意見を述べる人は、ほぼ一様に「韓国は一体どうなっているのか」との疑問を投げるか、「韓国なんか放っておけ」と無視するかのどちらかであった。

■コリアタウン・大久保を襲ったヘイトスピーチ
日韓関係がこのように悪化した時、在日韓国人の立場はどうだったのか。
東京・新宿区の大久保はコリアタウンとして20年の歴史がある。いまその中心は、職安通りに直角に交差し、大久保通りに向かって伸びる通称「イケメン通り」に移っている。ここでは2002年の日韓共催サッカーワールドカップのころから、韓流ブームに乗り、韓国系の店が増加した。しかし、2012年に李明博大統領が竹島に上陸すると、ヘイトスピーチ、ヘイトデモが頻繁に行われるようになり、韓国系の店の大半は売り上げが最盛期に比べ半減し、数十の飲食店、雑貨販売店などが閉鎖した。これに代わって、中国や他のアジア系店舗が新大久保に進出してくるようになっている。
日韓の政治的関係の悪化は、在日韓国人の生活に直結しており、その端的な例がヘイトスピーチである。2015年1月13日に放送されたNHK「クローズアップ現代」では、右派系市民グループによるデモが年間100件以上あり、そのヘイト行動の一端を紹介している。
「おまえら朝鮮人は腐れ朝鮮人なんだよ、腐れ朝鮮人。ゴキブリ、うじ虫、朝鮮人」
「殺せ、殺せ、朝鮮人。出てけ、出てけ、朝鮮人」
 こうしたスローガンには韓国人を殺せ、韓国人女性をレイプせよなど、犯罪行為を助長するものもある。放送では、韓国など周辺国との関係悪化がデモ参加者の心理に大きな影響を与えていると指摘し、「あり得ないような論理を使って、排斥するような動きが出てきたのが、新たな特徴」だとの識者の声を紹介している。
ヘイトスピーチやデモに対しては2016年6月に「本邦外出身者に対する差別的言動の解消に向けた取り組みの推進に関する法律」(以下「ヘイトスピーチ対策法」)が成立施行された。この法律は、ヘイトスピーチ防止に向けた啓発・教育活動や被害者向け相談体制の充実などが柱であり、罰則は設けていない。その意味で不十分な法律であろう。
しかし、同対策法が施行された直後の週末、川崎と渋谷で在日コリアン排斥を訴えるデモを巡り、主催者側とデモを阻止しようとするグループがもみ合いとなり、川崎市のデモは中止され、渋谷のデモは反対派が進路に座り込むなど騒然となった事件があった。日本人の良識が勝ったということであろう。この対策法がヘイトスピーチやデモを終わらせることを願わんばかりである。

■韓国でも生じた在日韓国人に対する嫌がらせ
雑誌「SAPIO」(小学館)の11月号に「韓国の『在日差別』が酷すぎる」と題する記事があった。韓国で(慰安婦合意以降の)「反日封印」で恐ろしいことが起こっている。“在日企業”ロッテが叩かれ、血祭にあげられている、韓国が苦況に陥り、日韓合意の「反日封印」で捌け口を失った不満の矛先が在日韓国人に向けられていると報じている。
在日韓国人は日本で教育を受け、韓国語をほとんど話せない者も多い。韓国語を話せても発音は日本的になってしまう。私の知る在日韓国人で、韓国で音楽活動をしていた人は、自分の名前も正確に韓国の発音ができなかった(音楽家で耳はいい筈なのに、である。それだけ韓国語の発音は複雑である)。韓国本国の人々は、在日が韓国人でありながら韓国語ができないことに違和感を感じている。したがって親しみも半減するのであろう。
加えて、韓国の若者はいま不況に苦しんでいる。韓国の統計庁の2016年2月の調査によると、韓国の若年失業率は12.5%、首都ソウルでは3割が失業中とのデータもあるようである。韓国では「7放世代」ということが言われている。韓国の若者は、恋愛、結婚、出産、マイホーム、人間関係、夢、就職を諦めたというのである。それは要するに人生を諦めたと同意でもある。
それだけ社会に対する不満が鬱積する中で、在日は2012年に兵役法が改正されるまで、兵役が免除され、祖国に貢献しないで、与えられた特権に安住する者との見方が残っている。在日韓国人が長年日本社会の中で就職や社会保障などの面での差別に苦しんできたことは知らず、現在の自分たちの置かれた状況より在日の方が恵まれているとして、在日を叩いている面もあろう。

■日本での安定した生活基盤を 在日韓国人は求めている
在日韓国人は韓国では「在日同胞」と言われている。しかし、在日韓国人は文化的、心情的に日本により近い者が多く、生活習慣、モノの考え方が韓国人的ではないと見られている。こうした傾向は今後ますます助長されていくであろう。その結果、在日韓国人は必然的により日本に近づいていくことになる。
今後とも、日韓関係が悪化する場面はあるかもしれない。しかし、私は、在日韓国人は日本の韓国の政治に対する怒りの対象となるべきではない、と考える。在日韓国人は日本において安定した生活基盤を求める人々である。
日本は今後ますます少子高齢化が進んでくる。そうした中で、在日韓国人は日本人の生活文化や心情に最も近い人々である。将来、ともに協力していくべき人々であり、その多くは将来日本人ともなり得る人々である。
2015年の在日韓国・朝鮮人は45万7772人で、35年前の68万1838人から22万4066人減少している。反面、2013年9月末の韓国・朝鮮系日本人は34万5774人である。在日韓国・朝鮮系から日本に帰化する者の数は95年に1万人を超えたのを皮切りに年間で毎年9000~1万人に上っている。2006年、韓国・朝鮮籍所有者と日本国籍者の婚姻件数は2006年が8376人、2014年が4113人などとなっている。
在日韓国人の組織である大韓民国民団は、在日韓国人に対する地方参政権付与を求める運動を活発に行っている。
日本国内には、地方参政権といえども外国人に参政権を付与することに慎重論が多い。参政権が欲しければ帰化すればいいではないかとの議論がある。また、在日韓国人に地方参政権を与えたら、中国人はどうするのかという議論もある。
仮に地方参政権を与える場合にも、在日韓国人の中でも永住権を持ち、長年税金を納めている人々など、相当絞らざるを得ないであろう。こうした論点をクリアするには多くの困難も予想され、一朝一夕にはいかないであろう。ただ、日本が在日韓国人を社会の一員として受け入れるオープンな雰囲気が進めば、むしろ進んで日本社会の一員となり、日本国籍を取得しようという決意を抱かせよう。

■就職差別はかなり緩和 社会的活動も多岐に
在日韓国人の中でも年配の世代には、あるいは帰化は手続き的な国籍取得ではなく、民族的同化を求めるものであるといった過去の考え方がまだ残っており、心情的に日本国籍取得に抵抗があるのであろう。日本に帰化したら、韓国に残る親戚にどう思われるか気になる人がまだいるのかもしれない。
そうした抵抗のない在米韓国人の間では、米国籍への帰化がより気軽に行われている。以前は日本に帰化した者で韓国系と自認する者が少なく、日本人と自認する者しか帰化しない時代が長く続いた。しかし、1980年代以降は、日本国籍を取得しながら民族的出自を明らかにする者も増えつつあり、韓国系日本人を同胞視する在日韓国人も増えている。在日韓国人もその中心が3世、4世の若い世代に移っており、帰化に対する抵抗も少なくなっている。韓国でも帰化した韓国系であっても在日同胞と位置付けている。
こうした日韓の状況に鑑み、在日が将来どちらの方に向かっているか。確実に日本社会に溶け込み、日本人化する方向に向かっているのではないかと考える。
これまで在日韓国人に対しては、第二次大戦後に韓国・朝鮮人による犯罪が増加したという現実があり、山口組構成員のうち約10%が在日韓国・朝鮮人であるとも一部では言われている。また、従来、在日韓国・朝鮮人の職業としてパチンコ、不動産、焼き肉などの自営業が多いとされていた。何となく迷惑な存在という見方があったことも否定しない。
 しかし、それはある意味、日本社会において厳しい生活環境のもとにあった在日の状況を反映したものでもある。過去には在日に対する厳しい就職差別があったため、自営業の道に進まざるを得ず、場合によっては反社会的行動にも走ったのである。
現在は、こうした就職差別もだいぶ緩和されてきており、在日韓国人の社会的活動も多岐にわたっている。
もともと、韓国人は在日も含め教育に熱心である。日本の一流企業に就職している人々も多い。日本では労働人口が減少しつつあり、専門性や技能のある外国人の受け入れを増やそうという動きが広まっている。そうした時に、日本人に最も近く、今後ますます日本社会に溶け込もうとしている在日韓国人を真っ先に日本社会が歓迎しないというのは理に合わないことのように思う。今後日本が国際社会でより活発に活動していく上でも貴重な人材を提供してくれよう。

■在日韓国人差別すら解決できないで 外国人受け入れ問題を進められるか
私は、外務省勤務当時、外国人の受け入れを担当する課長をしていたことがあり、技能労働者の研修制度の立ち上げに関与していた。現在、この技能労働者制度にいろいろ問題があると指摘されているが、もともと私が主張していたのは、日本にはこうした技能労働者の受け入れ制度が確立しておらず、将来人口減少の中で急に外国人労働者を受け入れざるを得なくなると、問題が多く発生する恐れがあるので、人数をコントロールしやすい仕組みを作り、試行錯誤しつつ制度の整備を図るべきだ、という点である。今問題があると騒いでいる人がいれば、今まで何をやってきたのか、と言いたくなる。
日本は今、人口減少で将来への不安を抱えている。日本は今後人口問題をどう考えていくのか。特殊出生率を改善していくのに越したことはないが、現代のわれわれの生活パターンからすると、それほど大きく改善はしないであろう。とすれば、外国人の受け入れを増やし、活力のある社会を維持していくのか、それとも小さいながらも幸せな国に変貌していくのか。外国人を受け入れるとすれば、それはいかなる外国人か。
そうした問題を考えるとき、まず、在日韓国人に対する差別――法的・制度的にはなくなっても実質的に残るものも含む――すら解決できないようでは、将来の外国人受け入れの仕組みを考えることさえ難しいのではないか、と思われてならない。
現在の在日韓国人はどっちつかずかずの状況で、日本からも韓国からも叩かれる存在になっている。しかし、別の視点から見れば、在日韓国人は日本人的側面も韓国人的側面も合わせ持った人々である。むしろ、日韓の橋渡し役として日韓関係の増進に貢献しうるのである。在日韓国人にはそうした役割を果たしてもらうことが日本にとっても韓国にとってもメリットとなるのである。
 在日韓国人の立場について、日本人が過去の偏見や日韓の政治関係を一旦捨てて、改めて客観的に見直す時期に来ているのではないか。
魚拓
https://web.archive.org/web/20161018083010/http://diamond.jp/articles/-/104771
https://web.archive.org/web/20161018083515/http://diamond.jp/articles/-/104771?page=2
https://web.archive.org/web/20161018083752/http://diamond.jp/articles/-/104771?page=3
https://web.archive.org/web/20161018084056/http://diamond.jp/articles/-/104771?page=4
https://web.archive.org/web/20161018084430/http://diamond.jp/articles/-/104771?page=5

.....この前在韓国特命全権大使武藤正敏という人物の異常さは、日本人の臭いがまったくしないところで、以前から注目されていた。今回も、独特のねつ造、すり替えテクニックで教宣、洗脳文書を書き上げているが、もうその手法は古すぎる。少なくとも余命の読者には通じない。
川﨑デモや大久保デモに関しては恣意的なねつ造とすり替えがあり、すでにこの人物の発言は日本人の不快感を通り越して次のレベルに達しているといってもいいだろう。
また、それとなく朝鮮人の在日特権や外国人参政権を容認しており、単純に言論の自由として放置するには政治臭がきつすぎる。
従前は、このような工作活動に対して手段がなかったが、現状では外患罪という万能ツールがある。たかが数ページの記述の中に赤字で示した箇所がいったい何カ所あるかで判断するならばいずれ告発ということになるだろうな。

}

■ 前駐韓大使がここまで語った韓国への諫言 「iRONNA(月刊正論2015年7月号)」より
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武藤正敏(前駐韓特命全権大使)
黒田勝弘(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)


憂国、憂韓の書

黒田 日韓国交正常化が今年6月22日で50年になります。しかし、両国関係は氷河期のごとく冷え込んでいて、この大きな節目を祝うような雰囲気ではありません。

 そんな中、2010年から12年に韓国大使を務められた武藤大使が、両国関係について考察した『日韓対立の真相』(悟空出版)という一冊を世に出された。李明博氏による韓国大統領として初の竹島上陸、天皇陛下に対する土下座要求発言、ソウルの日本大使館前の慰安婦像設置と、日本で嫌韓・反韓感情が燃え上がるきっかけとなった在任中の“事件”も取り上げておられる。

 大使が退官されてまだ2年半余り。外交官、特に大使を経験された方がそれだけ早い時期に、赴任国とのシビアな懸案事項について書かれるのは極めて異例です。ソウルの日本大使館関係者からは、「大丈夫か」「なにかまずい話は入っていないか」という声も聞こえてきますが、私はこの本は、大使の「憂国の書」であり、それ以上に韓国を心配し憂うる「憂韓の書」であると受け止めています。

 大使とも意見が一致しているのですが、いまは日本の嫌韓・反韓感情のほうが韓国側の反日感情よりも強くなっています。特にいわゆる親韓派といわれる人々の多くが韓国離れしていて、事態は深刻です。韓国と長く付き合って愛情を感じ、もっと韓国を知り、理解すべきだと提言してきた結果がいまの日韓関係であり、みんな韓国の現状に気落ちしている。大使も同じことを感じられ、このままでは大変なことになりますよと韓国に伝えたいという衷情がこの本に表れています。「勇敢な憂韓の書」ですよ(笑い)。

武藤 この本を書いたことで、日本でも韓国でも私は批判を浴びるでしょう。それも覚悟の上です。日韓関係が急速に悪化した今、私の意見を率直に述べ、皆さんの議論の出発点とすることが、必要なのではないかと考えました。日韓関係のルールを変えないともはや収まらない状況になってきていると思います。韓国には反日はやめ、日韓関係を客観的に見てもらう必要があります。日本に改めてほしい点も書いていますが、韓国からすると厳し過ぎると感じられる点は多々あるでしょう。

 韓国についていま感じていることから始めます。第一に、韓国は相変わらずだな、という点。「日本は歴史認識を改め、過去を反省せよ」「日本は右傾化、軍国主義化している」と言い続け、現実を理解しようとしない。

 第二は、行きすぎた反日です。たとえば2011年8月に出された慰安婦問題をめぐる韓国憲法裁判所の判決です。韓国政府が対日賠償請求問題に具体的に取り組んでいないのは憲法違反であるという内容で、これ以降、韓国政府が改めて日本政府の責任を問い始めました。日韓基本条約と同時に締結された請求権・経済協力協定で日韓間の賠償問題は完全かつ最終的に解決しています。にもかかわらず司法の最高機関が、国交正常化の合意を無視して、国民感情を体現した判断をしたのです。

 そして、ソウルの日本大使館前の慰安婦像です。つくったのは、慰安婦問題に長年取り組んできた「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)です。韓国政府は発足当初から挺対協に対して何も言えませんでした。

 朴槿惠大統領は就任以来2年余り、日本の取り組みによる慰安婦問題の解決、進展が日韓首脳会談を行う前提だと言ってきました。しかし、安全保障問題で鋭く対立している国と国との間でさえ首脳間の対話は続けています。友好関係にあるはずの日韓の首脳が、一つの問題のため対話しないのは国益に反する。李明博前大統領が竹島に上陸したり、陛下に極めて非礼な発言をしたりもしました。これも従来なら考えられなかったことです。


 三点目は、政治、メディア、一部NPOなど声の高い人の反日感情が、一般国民の意識から乖離してひとり歩きをしていること。一般国民の対日感情はそれほど悪くはありません。四点目は、今は韓国の反日よりも日本の嫌韓のほうが強くなっている、ということです。こちらも手当てしないと日韓関係は良くならない。

挺対協に振り回される韓国政府

+ 続き
黒田 二国間関係の最大の障害になっている慰安婦問題からみていきましょう。この問題は、日本政府が河野談話を出し(1993年)、元慰安婦の女性たちに償いと謝罪、支援をする「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)を官民共同で創設(1995年)したことで解決するはずでした。ところが、あくまで日本の国家としての謝罪と賠償を求める挺対協が納得せず、結果的に国民世論も同調し、それに押された政府も日本への非難、要求を蒸し返した。この本にも、韓国で日本のアジア女性基金の取り組みが挺対協によって後退させられていくプロセスが詳しく書かれていて、韓国政府が挺対協に振り回されてきたと指摘されています。

 なぜ挺対協という一運動団体に政府が振り回されているのか。そこには、韓国社会の変化、あるいは国家状況の変化があると私は考えています。韓国は“NGO国家”つまり“非政府国家”になってしまったということです。とくに左派系NGOが影響力を拡大した盧武鉉政権の時代から国家より個人が重要という社会的雰囲気になりました。官と民の力関係が変わって、官が民をコントロールできなくなってしまっている。

武藤 私も同じ問題意識を持っています。いわゆる「三金」、金泳三、金大中、金鍾泌氏のような実力者がいた時には、政府の野党対策も比較的容易だった。

 挺対協に話を戻しますが、彼らは、一部にあったかもしれないことが一般的であったかのように誇張し、慰安婦問題を国際社会にアピールしてきました。その事実関係の過ちが明らかになれば、問題解決の契機になると私は考えています。

 韓国内でもそのことを分かっている人はいますが、声を上げると社会的に抹殺されかねません。実際、『帝国の慰安婦』という本を読めば、挺対協の事実主張の誤りが分かりますが、この本は挺対協の支援を受けた元慰安婦の女性らの申請で発禁となり、著者の朴裕河・世宗大学校日本文学科教授が名誉毀損で刑事告発されています。朴裕河さんは真剣に日韓の和解を追求している学者です。その人の書が正当に評価されないのが今の韓国です。

 ただ彼らにも弱みがあります。彼らは、日本が元慰安婦の女性たちに償いと謝罪、支援をするため官民一体で1995年に立ち上げたアジア女性基金について、「日本政府の賠償責任を回避するためのまやかしだ」として全面否定し、元慰安婦の女性たちに受け取りを拒否させ、当初受け取った7人の元慰安婦たちに対して嫌がらせをしました。それが「元慰安婦を支援する組織」のやることですか。

 その後さらに54人がアジア女性基金の償い金を受け取りました。これは元慰安婦の立場を考慮し公表されませんでしたが、この時受け取っていれば、おばあさんたちにとって、より安らかな老後だった筈です。

 日本が、アジア女性基金のやり方や挺対協の妨害行為についてうまく情報発信をすれば、挺対協が盛んに運動しているアメリカでの評価も変わるでしょう。挺対協の主張する事実関係の誤りが理解され、挺対協に対する支持が弱まれば、彼らに扇動されている格好の韓国社会の状況も変わるのではないでしょうか。

黒田 しかし、アジア女性基金式の解決策は、本誌の読者には受け入れられないかもしれません(笑い)。その読者の怒りに火に油を注ぐようなことを敢えて申し上げますが、私自身は、慰安婦問題で改めて外交決着をすべきだと考えています。第一次が河野談話、第二次がアジア女性基金で、第三次外交決着です。

 そこで課題となるのは、NGO国家となった韓国が、もう一度国家としての権威を取り戻して、日本と外交決着を図る意志を持てるかどうかです。朴槿惠大統領は、世論の大反対を戒厳令を敷いてまでして押し切って日韓基本条約を締結した父親の朴正煕大統領のように「歴史が判定してくれる」と決断できるのか。

 慰安婦問題の解決に向けての一番の障害である挺対協ですが、日本は国家的、法的な責任を認めろというのが彼らのコアな主張です。韓国の外交当局者も本音では、それは無理だということは分かっていますが、猛烈な批判を恐れて声を上げることができない。

 しかし、その挺対協も韓国内で孤立しつつあるんです。アジア女性基金への妨害行為で、彼らの運動が本当に元慰安婦のおばあさんたちのためのものなのかと、朴裕河教授らが問題提起し運動を始めている。日本が受け入れられないような強硬な主張をすることでおばあさんたちの救済を遅らせているのではないか、という批判が出はじめているのです。

 そうした真っ当な考え方が挺対協の強硬な主張を押し切れば、韓国政府も、人道的、道義的責任において対処するという日本にも可能な範囲での取り組みを受け入れる名分が立ちます。朴大統領も「おばあさん方は余命いくばくもないから、早期に温かい配慮を」と言ってるわけですから。そうなれば、日本の外交当局者も頭がいいから、いろいろなアイデアを出してくると思います。

 日本の世論は新たな外交決着に簡単には納得できないかもしれません。河野談話にしてもアジア女性基金にしても、解決のためとはいえ事実でない強制連行を認めるような形になったり謝罪を繰り返したりしたことで、逆に事態の悪化を招いていると多くの日本人は見ています。今回改めて謝っても、さらに事態を悪化させるだけではないかという懸念は消えない。

武藤 私は挺対協の主張は論外だと思います。彼らの言うラインでの解決などあり得ません。韓国は、日本との関係においては、倫理的、道徳的に優位に立とうとします。しかし、いったん韓国側の論理を否定し、その誤りを正したうえで、日本人としての気持ちを示すということであれば、日本が道義的に上位に立つことになり、韓国は二度とこの問題を提起できません。そういう形であれば、日本国民もやむを得ないと考えてくれるのではないでしょうか。

 いわゆる歴史教科書問題についての宮澤官房長官談話(昭和57年8月)でも、「(日本)政府の責任において(教科書の記述を)是正する」と書かれています。韓国や中国から批判されたのではなく、日本の判断で取り組むのだと明確にしています。


黒田 近隣諸国条項ですね。ですが大使、近隣諸国条項も本誌の読者には、自虐史観的教育を蔓延させたと思われています。むしろ「自虐史観に染まった外務省が近隣諸国条項を主導した」と思うでしょう。あれは韓国とはコトを荒立てないという、過去の事なかれ外交の典型例でしょう。

武藤 私は歴史問題について、韓国の主張する歴史認識に日本が妥協するのはもう止め、お互いに客観的事実を探究していくべきだと考えています。それが日本国民の嫌韓感情に応える道だと思います。今までのやりかたは日韓関係にプラスにならないと思っています。

黒田 なるほど。日韓が膝を詰めて議論をしてもなかなか出口は見えてきません。問題自体が国際化していて、国際世論を味方に付けることも重要です。その国際世論を動かせれば、挺対協を孤立させ、当事者能力を失わせることは可能だと思います。

 そのうえで、拡大版の女性基金を構想するのはどうでしょうか。アジアではなくて世界女性基金。安倍首相も国連やアメリカで女性の人権問題を取り上げています。その観点を入れて、紛争地域や戦地における女性の人権保護、あるいは将来に向けての女性の人権保護拡大といったように問題を拡大する。その趣旨の中に、過去の教訓として慰安婦問題を入れ込めば、国際世論を日本の味方にできるのではないでしょうか。脱北女性の問題を入れてもいい。

武藤 狭義の強制性はなかったのだという議論がありますが、強制性を日本が否定して国際的には理解を得られませんでした。黒田さんがおっしゃったような解決策を提示する一方で挺対協のアジア女性基金に対する歪んだ姿勢や、事実主張の誤りを国際社会に説得していけば、間接的な形ではありますが、強制性に関する日本の主張を理解してもらえるのではないでしょうか。

メディア発信を強化

黒田 慰安婦問題で新たな外交決着案を考えることに、日本の世論が「またか」と懸念するのはこれまでの経緯からすると当然だと思います。ただ今後、さらに問題が蒸し返されて第四次、第五次決着という事態になっても仕方がないと思う。外交は相手があることですから。韓国は実にやっかいな相手ですが。

武藤 これまでとの違いを明確にしたうえで決着させることが大切です。第一次、第二次は韓国政府から言われてやったという側面があった。しかし、挺対協には多くの事実認識の誤りがあり、第二次決着も妨害した。そのことを日韓双方で確認したうえであれば、第一次、第二次とは質的に違う決着が可能ではないでしょうか。

 ここまで日韓関係が悪化した以上、いったん関係を見つめ直して新たな次元のものにしていくべきです。この本の趣旨もそこにあります。日本が言うべきことは言い、韓国にもすべて自分が正しいと考える姿勢を改めていただく。いまのままでは対立は収まらないし、日本としても納得できません。

 彼らには自分たちの主張が国際社会では評価されていないと悟ってもらうことが大切です。だからこそ、挺対協の誤りを各国に理解してもらう努力が必要になってくる。今度の安倍総理のワシントンでの上下両院合同会議の演説は、韓国が要求していた慰安婦問題での謝罪はなかったのに、おおむね好意的に評価されていますね。

黒田 ええ。韓国マスコミは批判の声ばかり伝えてましたが。

武藤 中国でさえ、韓国のような大々的な批判は避けている。韓国は慰安婦問題で、朴槿惠大統領を先頭にいわゆる「告げ口外交」をあちこちでやって、各国を自分の味方に引きずり込むことで日本に圧力をかけようとしてきました。しかし、それが効果を上げていないことが分かれば、自らも姿勢を見直すでしょう。

黒田 日本側の主張が韓国でなぜまったく理解されてこなかったのか。私は以前から、日本政府や外務省のアピールや取り組みが不十分だと思っていました。韓国を刺激してはいけないという事なかれ主義に日本の過去の対韓外交は縛られていた。

武藤 外務省も日本の立場を主張してきました。しかし、韓国は自分たちよりの発言をする、いわゆる「良心的日本人」の言うことを取り上げ、一方的に日本は誤っているとの論理を作り上げますから、馬耳東風なのです。

黒田 しかし、その日本の事なかれ外交もすでに過去のものになったと思います。一つは民主党政権が政治主導を言い出して、外務省から外交の主導権を奪ったうえで、財務大臣だった安住淳氏が「対韓制裁」という言葉を使いました。日本の政府高官が韓国に「制裁」という言葉を使ったのは歴史的に初めてですよ。

 そして現在の安倍政権になって、対外発信に予算を随分とつけるようになった。韓国メディアでは最近、日本が対米世論工作やロビー外交に力を入れていて、韓国の脅威になっているという報道が目立ちます。俺たちも負けずにやるべきだというんですね。


 ですから、政治の姿勢は明確に変わった。官も、武藤大使の時代から、韓国のメディアに対して言うべきことは言うようになったのも確かですしね。

武藤 ええ、報道内容に事実関係の誤りがあれば、きちんと指摘するよう取り組んできました。ただ、訂正記事が載ることはなかった。反論を載せろといっても応じなかった。そこで大使館のホームページに載せたりはしました。ただ、論評記事は言論や報道の自由の範疇ですからコメントはしませんでした。

 メディアに抗議しても直接的な効果はあまりなかったのかも知れません。ただ、うるさいなとは思われたでしょう。それが報道の自制を促すよう今後も強化していくべきです。メディアだけではなく、有識者に対してもいろいろと言い講演でも言いましたが、「大使は全て韓国が悪いと言うのか」という反発が返ってくるだけでした。

黒田 分かります(笑い)。今回の安倍首相のアメリカ議会上下両院合同会議での演説も、早く韓国語にして韓国社会に発信すべきではないでしょうか。英語と日本語はあっても韓国語がない。それから昨年政府が公表した河野談話の作成経緯の検証報告書も韓国語で発信していただきたい。報告書を韓国の普通の人が読めば「日本も一生懸命やってきたんだ」と分かるはずです。

武藤 非常に重要な指摘ですね。外務省に言っておきます。ホームページに載せてもいい。

黒田 河野談話の検証報告書には、61人がアジア女性基金の償い金を受け取ったことも掲載されていますしね。これは韓国人にはぜひ知らせるべきです。

武藤 その点がもっと大きく報道されれば良かったと思います。

意図的な「日本隠し」こそ歴史歪曲

黒田 大使がこの本で強調されている一つが、国交正常化以降、日本が韓国に対して行った協力が韓国ではまったく知られていないという問題です。

武藤 黒田さんの本を少しクオートさせていただきました(笑い)。

黒田 その点は昔から大使と意見が一致しています。彼らが知らないふりをするなら、日本がアピールして韓国民に知らせるしかない。日韓の国交正常化50年は、先日のオバマ大統領ではありませんが「お互いさま」の歴史であり、韓国にとってもプラスがあった。その事実が韓国社会に知られていたら、日本は非情な国で過去をまったく償ってないという誤解や反日感情は生まれなかったかもしれません。

武藤 私は1975年に韓国に行き、韓国語研修のあと大使館で経済協力を担当しました。当時、日本は請求権・経済協力協定に基づくもの以外にも、毎年の定期閣僚会議を通じて新たな経済協力を実施していました。しかし、他の国々の協力は報道されましたが、日本の協力は報道されませんでした。あってもベタ記事程度。

 私は、国務総理や外交通商部長官らに大使離任の挨拶をしたときに、こう言って回りました。「私はなにも韓国に感謝しろと言うつもりはない。ただ日韓関係を改善させたいなら、日本が韓国に対して誠意をもって向き合ってきたことを韓国の人々に知らしむべきではないか。それは韓国の国民感情を和らげ、対日外交をやりやすくするはずだ」。みな嫌な顔をしていましたね。

黒田 このほど外務省のホームページで、戦後の日本のアジア各国への協力がアジアの発展に寄与したことを説明する「戦後国際社会の国づくり:信頼のおけるパートナーとしての日本」という約2分間の広報動画を、韓国語を含む10カ国語で流し始めたところ、すぐ朝鮮日報が「新たな歴史歪曲だ」と1ページもの特集を組んで非難キャンペーンをしました。さきほど日本の経済協力が「知られていない」と言いましたが、実態は「日本隠し」です。韓国は意図的に隠してきた。日本の支援・協力を否定することこそ歴史歪曲ですよ。

 そのことが分かるのが、教科書の記述です。約10種類の高校の近・現代歴史教科書のうち、日本の経済協力に触れているのは1点のみ。それも1行です。しかも保守派の教科書だとしてバッシングされ、採択したのは全国約2400校のうち僅か3校です。

 しかし実は、ある種の過去の償いの象徴である日韓国交正常化時の対日請求権資金、無償借款3億ドル、有償借款2億ドルの対韓経済協力資金はどのように使われたのか。韓国政府が1976年にまとめた「対日請求権資金白書」という500ページを超す報告書に克明に書かれています。釜山―ソウル高速道路や浦項製鉄所はもちろん、あらゆるインフラ建設に使われ、しかも個人補償にまで使われたことが記録されている。

 この白書はぜひ復刻されるべきだと言って回っていたら、ソウルの日本人会(SJC)が複製してくれました。韓国語ですし、是非韓国人に読んでほしい。

武藤 そうした事実を公にできないことが、韓国の問題でしょう。自分たちの考える正しさに沿ったものしか受け入れられない。結局、韓国の人たちに日本がらみの事柄を客観的に知ってもらうためには、当面は国際社会を絡ませることが有効でしょう。最初は反発するでしょうが、いずれ自分たちの主張は「大丈夫かな」という意識が出てくる。そこが出発点だと思います。

黒田 日本の支援・協力が韓国の現在の発展につながったというのは韓国を除く世界中の常識なんですがね。

武藤 そのためにも日本は感情的なことを言わずに冷静に対応して、韓国の側に問題があると国際社会に理解してもらうべきです。

黒田 アメリカに言ってもらうのがいちばんいい。

武藤 シャーマン国務次官が今年2月、歴史問題をめぐる日本と中韓の対立で、「指導者が旧敵国を非難することで国民の歓心を買うのは簡単だが、そのような挑発は機能停止を招くだけだ」と発言したことに韓国は大きく反発したのは相当に気にしていることの表れです。

黒田 アメリカ当局者も、日本を歴史問題で攻撃して日米韓の関係を揺るがす韓国の姿勢にうんざりしているんですよ。“Korea Fatigue”という言葉があるくらいでね、韓国疲労症。

竹島を世界自然遺産に

黒田 竹島問題は近年になって、韓国人の愛国のシンボルとして激しくなったと私は理解しています。大使もこの本で、その転換点は盧武鉉大統領時代だったと指摘されています。それより前に金泳三政権が竹島に埠頭を造った(1995年12月建設着手)ことも転換点の一つだったと思います。この大きな現状変更に、当時の外務省をはじめ日本は韓国に遠慮があったのか対応が十分でなかった。その後、韓国はやり放題になりましたからね。

武藤 外務省として相当抗議をしましたが、現実として建設を止められなかった。

黒田 あの頃、民主化をきっかけにそれまでの日韓関係を支えてきた古くからの知日派が後退し、日韓双方がお互いを忖度しながら交渉するということがなくなったことも影響した。

武藤 そうですね、通常の外交ルートでの交渉しかできなくなりました。これが普通の国家同士の外交であればいいけれども、日韓のように山積する課題を抱えている関係では普通の国同士の交渉でうまくいくのか。

黒田 埠頭の建設は上陸や往来を容易にするということです。そして盧武鉉政権時代に民間人の往来が現実に自由化された。それまではなかなか行けなかったのが、観光地化され、いまや年間20万人以上が上陸しています。一日500人ですよ。盧武鉉政権時代に竹島問題は一気に大衆化、国民化したのです。

武藤 盧大統領は「過去の不当な歴史で取得し、侵略戦争で確保した占有地に対する権利を主張する(日本の)人々がいる」と言って歴史問題にしたのです。

黒田 日本は、かつて奪った島を再び奪おうとしていると曲解され、竹島への関心が一気に広がった。その背景にも韓国社会の変化があったと思います。盧大統領は戦後生まれで、解放後世代が初めて中心になった政権でした。過去の体験がない彼らは日本に侵略されたとか“独立戦争”を戦ったとか、そんな教えられた知識だけであの時代を見ています。その彼らの対日イメージが「独島は日帝侵略によって奪われ、再び奪われようとしている」という図式にぴったりと合致した。そこから竹島が対日ナショナリズムのシンボルとして局部拡大された。

武藤 そのとおりです。日本にも「日本が軍国主義化している」「右傾化している」などと非現実的なことを言う人々がいて拍車をかけた。

黒田 今や竹島は宗教化していますよ。国民宗教としての「独島教」ですね。日本の言い分などまったく聞こうとしません。


武藤 日本が何をやってもけしからんという反応が返ってくる。領土問題としてみると、「竹島の日」を制定したり教科書に記述したりという日本の取り組みなど穏健なものですよ。中国が尖閣諸島、あるいは南シナ海で何をやっているか見てほしい。それでも韓国が反発するのは、歴史問題になっているからです。

 私は、竹島問題が将来解決に向かうためには、幾つかの要素が必要だと思っています。一つは、韓国に日本は重要な国だと再認識してもらうこと。この問題で激しく日本と対立するのは韓国の国益に反すると悟らせること。二点目は、歴史問題から領土問題に戻すことです。ここでも慰安婦問題が鍵になると思います。慰安婦問題をきっかけに韓国の人たちに歴史問題で自分たちの考えがすべて正しいわけではなかったと認識をあらためてもらう。そのことが竹島問題にもよい影響を与えると思います。

黒田 かつて朝日新聞の論説主幹が日韓友情の島として竹島を韓国に譲れと書いて批判されました。韓国は大喜びでしたが、友情の島といいたいなら日韓共同でユネスコの世界自然遺産として登録すればいい。自然遺産になると、韓国がつくった施設は自然環境保護のため全部撤去しないといけませんからね。あの島は「まず自然に返せ」ですよ。

武藤 おもしろいアイデアですね。

黒田 あの小さな島は、韓国の各種施設で満身創痍ですが、不思議なことに韓国では自然保護地域なんですよね。

大人同士の関係構築に向けて

黒田 嫌韓・反韓感情が高まっている日本では、韓国が何を言っても放っておけという雰囲気が支配的です。付き合うメリットはないと考える国交断絶論者も珍しくない。ここで改めて日韓関係が大切である理由を考える必要があるでしょう。その一つが中国問題ではないかと思うんです。これまで日米の側にいた韓国が、中国との距離を縮めている。このまま中国の側に追いやらないよう、日米の側にとどめることが必要だという機運が生まれたら、日韓関係の改善につながるかもしれません。

 そこで大使にうかがいたいのですが、韓国が中国の側につく、たとえば米韓同盟を手直し、後退させたり、中国に軍事的に依存したり、といったことはあり得るのでしょうか。韓国人に聞くと、米中の間でバランスを取ろうとしているにすぎず、「そんなことはあり得ない」と言います。一方、日本では昔のイメージで、韓国が華夷秩序にまたも組み込まれようとしている、新たな朝貢外交の始まりだとしきりに言われています。

武藤 日本もアメリカも、韓国がごねると折れてなだめてきた。韓国はそれが当たり前になっていて、中国を怒らせるよりも、「アメリカさん、日本さん、すこしだけ我慢してくださいよ」という状況でしょう。

 ただ、朴槿惠大統領は明らかに中国に寄り過ぎています。本にも書きましたが、就任前の彼女の頭の中は中国で埋め尽くされていた。彼女を大統領にするための準備組織にいた人はそう言っていましたね。

 中国の現在の存在感を考えると重視するのも分からないではない。いまや韓国の最大の貿易相手で、北朝鮮に向き合う上でも重要な存在です。しかしこれまで、北朝鮮との関係で韓国を助けてきたのはアメリカと日本です。中国が東シナ海に一方的に設定した防空識別圏でも韓国のことは無視でしたでしょう。中国と仲良くすれば、結局は取り込まれます。

 そのことを理解していれば、中国の側につくことはないと思いますが、韓国の人たちが希望的観測を抱きがちであることは気になります。すべて自分たちが正しいと考えるのもその傾向のためだと思いますが、国際情勢評価を間違えるとたいへんなことになります。

黒田 日本には執拗なのに中国とは歴史の清算をしなくても平気でいるのも不思議ですよ。韓国が中国に対し朝鮮戦争介入について謝罪や反省をしろと要求したことなどありません。

武藤 中国に対しては面と向かって言えない。

黒田 韓国はとにかく日本が絡む問題になると国際的常識に合わない行動を取る。日本大使館前の慰安婦像問題にしても、アメリカ大使館前に不法な反米記念像ができたら韓国当局が放置することはあり得ないでしょう。

武藤 そうですね。

黒田 なぜそうなのか。批判すると必ず韓国の外交当事者や政治家は「わが国には特殊な事情がある」と言う。日本に対する厳しい国民感情があるからだ、と。韓国には《国民情緒法》という、憲法より上位の特殊な法律があると自嘲気味に語る人もいます。

武藤 憲法裁判所の慰安婦判決がそうでしょう。

黒田 実際の法体系ではあり得ない判決が、国民感情に沿って出される。その根拠が《国民情緒法》だというわけですね。NGO国家化した韓国内で日本だけ適用される《法律》ですが、なぜ日本にはそれが通用するのか。結局、これまで韓国の無理難題に日本が応じてきたからでしょう。

 しかし、民主党政権末期から安倍政権になって、日本はもう無理難題を受け入れなくなりました。私は、これは長期的にみると日韓関係正常化には必要なことで、《国民情緒法》も効果がないという経験が積み重なれば、撤回されるかもしれないと思っています。

武藤 安倍首相が4月のバンドン会議やアメリカ議会での演説で謝罪しなかったのも、これ以上韓国の言いなりにはならないという姿勢の表れだと思います。

 私は1975年に韓国に初めて赴任して以来、韓国が強くなれば日韓関係は成熟するだろうと期待してきました。韓国は経済先進国となりましたが、「相変わらず」です。いい加減に大人になってもらわないと日韓関係は改善しません。事実は事実として受け止めて、大人同士の関係を築いてほしい。この本には、そんな希望を込めています。嫌韓で書いたわけではない。

 日本が韓国をけしからんと考えるのも仕方がない面があります。しかし、感情的に行き過ぎた発言やヘイトスピーチの類いは控えたい。韓国の国民レベルでは反日感情はほとんどありません。韓国に対して倫理的に優位に立つ。そして慰安婦問題など懸案事項は国際社会を味方につける。この姿勢が対韓国では大切だと思います。


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むとう・まさとし 昭和23(1948)年、東京都生まれ。横浜国立大学卒業後、外務省入省。韓国語研修の後、駐大韓民国日本国大使館勤務。参事官、公使を歴任。前後してアジア局北東アジア課長、駐オーストラリア日本大使館公使、駐ホノルル総領事、駐クウェート特命全権大使などを務めた後、2010年、駐大韓民国特命全権大使に就任。2012年退任。

くろだ・かつひろ 昭和16(1941)年、大阪府生まれ。京都大学経済学部卒。共同通信社に入社後、韓国延世大学校に留学。ソウル支局長などをへて平成元年から産経新聞ソウル支局長を務める。日韓関係の報道でボーン・上田賞、日本記者クラブ賞、菊池寛賞を受賞。著書に『韓国人の歴史観』『・日本離れ・できない韓国』『韓国 反日感情の正体』など。




















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最終更新:2016年10月19日 22:03