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南シナ海
■ 隠しても現わるる中国の軍事的野心 「万国時事周覧(2018-08-30 16:24:22)」より
(※mono....前後略、詳細はサイト記事で)
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 中国を軍事大国に押し上げた推進力は改革開放路線による経済大国化にあり、この経緯こそ同国の躍進が‘平和的台頭’と称される理由でもあります。しかしながら、その本質において中国が共産主義国家であり、経済よりも政治的支配の拡大を本能的に追求する傾向にあることを考慮しますと、早晩、‘軍事的台頭’への移行することはソ連邦の前例により疑いなきことです。それにも拘らず、13億の市場を有するその巨大な経済力に目を奪われている人々は、‘平和的台頭’から‘軍事的台頭’へのシフトについては半信半疑になりがちです。中国は、豊かさに満足し、覇権主義的な野心など忘れるに違いないと…。

 こうした平和国家としての中国に対する期待は、今や幻滅へと変わりつつあります。とりわけ南シナ海をめぐる常設仲裁裁判所による裁定を無視した態度は、国際的な対中認識を脅威へと転換させる分水嶺となりました。この海域における中国の行動は、既に侵略の域に達しているのです。そして、今般、さらに警戒すべき事案が持ち上っています。それは、ASAN諸国とともに作成を試みている南シナ海における「行動規範」です。

 同「行動規範」については、今年6月に草案が纏められましたが、8月29日付の産経新聞朝刊によりますと、中国側は、「参加国は域外国との共同軍事演習は行わない」とする一文を設け、「例外には通知を受けた関係国の賛同を義務付ける項目を提案」したそうです。領有権が争われている段階での軍事演習にまで踏み込んだ内容は、いささか唐突なように思えるのですが、この提案に、権謀術数に長けた中国の長期的戦略が潜んでいるとしますと、その意味するところが見えてきます。

 即ち、仮に上記の中国案を取り入れた形で「行動規範」が成立した場合、同協定が発効したその瞬間に、南シナ海は事実上‘中国の海’、あるいは、‘中国の海上要塞’となります。‘域外国’とは主としてアメリカを意味しており、たとえ中国による南シナ海全域の軍事的掌握や諸島の領土化に対してASEAN諸国が強く反発し、アメリカの支援の下で自らの権利を取り戻そうとしても、「行動規範」の条文に縛られて、もはや手も足も出せない状態となるからです。現在、フィリピンは、曲がりなりにもアメリカの同盟国でもありますが、この同盟も空文化するになりましょう。


米中関係
■ 中国、「脆弱」米国の技術封鎖でお手上げ「世界覇権論」瓦解 「勝又壽良の経済時評(2018-04-30 05:00:00)」より
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半導体「離陸」に大きな障害
緊急権限法で技術流出阻止

中国は、「大言壮語」が好きな国である。物事を大袈裟に言って相手を屈服させる。実力よりも大きく見せかけて、「戦わずして勝つ」という孫子の兵法の国である。習氏は、「中華復興」を打ち出して国家主席に就任した。2期目の今年は、「2050年に世界覇権へ挑戦」とまで示唆する勢いだ。この一言が、民主主義国から一斉に反発を受けている。習氏が、憲法を改正して「国家主席の任期制」を廃止。これで、習氏は「永久政権」が可能になったことも重なり、中国の存在を「第二のソ連」として危険なものと見るまでになっている。

習氏は、米国との対立を回避すべく緩衝帯として日本とインドに接近している。日本とは8年ぶりの経済対話を開催し、インドとは近く、昨秋以来3回目の首脳会談を開くという慌てぶりである。ここまで掌を返すように日印への融和策へ出るのであれば、「世界覇権論」など言わずに、黙って足下を固めるべきであった。「大言壮語」という身から出たサビで、米・欧が警戒感を強めている。

米欧日が、中国を警戒する上で最初に行える手段は、重要技術を渡さないことである。知財権を守って、中国に盗まれないようにガードするのだ。米国が先に、中国の世界的な通信機メーカーの中興通訊(ZTE)へ7年間、製品輸出を禁じたのは、米国の「対中警戒論」の第一弾である。これと同時に、ZTEと並んで世界的は通信機メーカーに発展した華為技術(ファーウェイ)製品も米国内での販売を禁止した。ZTEもファーウェイも安全保障上の理由だ。換言すれば、両製品ともスパイ行為の疑いがあるとしている。

(※mono....中略、詳細はサイト記事で)
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半導体「離陸」に大きな障害

『ロイター』(4月23日付)は、「焦る中国、半導体開発を加速、対米貿易摩擦重く」と題する記事を掲載した。

この記事では、中国の半導体産業がまだ「テイク・オフ」していない実情がよく分かる。日米貿易摩擦時では、日本の半導体産業が米国を上回って世界一の座についていた。これに比べると、中国の半導体は外国技術によって「呱々の声」を上げたばかりである。肝心の米国技術が封鎖されれば、それでお仕舞いという状況だ。元々、外国技術に依存して旗揚げした「中国製造2025」である。他人の褌(ふんどし)で相撲を取り横綱(世界覇権)になろうとしていたからお笑いである。習氏は、「世界覇権論など言わなければ良かった」と臍(ほぞ)をかむ思いに違いない。

(※mono....中略、詳細はサイト記事で)
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緊急権限法で技術流出阻止も

『ブルームバーグ』(4月21日付)は、「米財務省、中国の対米技術投資を制限、緊急権限法の活用検討」と題する記事を掲載した。

この記事では、米国の先端技術が中国へ流出する危険性を封じるために、米国への直接投資を制限する法的な措置を講じるとしている。これまでは、米国の開かれた市場という原則から、直接投資へ法的な制限を課すことに疑問の声が上がっていた。対米外国投資委員会(CFIUS)の権限拡大が、議会で論議を呼んだ理由がこれである。だが、中国政府のなりふり構わない技術窃取を見ると、そのような原則論では立ちゆかぬという危機感が出てきた。米国はそこで、国際緊急経済権限法(IEEPA)を活用するという。この「奥の手」を使ってまで、あくまで中国をねじ伏せる。米国の凄みが感じられるのだ。習氏の「世界覇権論」は、ここまで余波を生んだのである。

(※mono....中略、詳細はサイト記事で)
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国際緊急経済権限法(IEEPA)は、米国政府が「異例かつ特別な脅威」と判断した場合、大統領によって、中国企業がすでに米国企業へ投資したケースでも、取引の停止や資産接収が可能になるという。これは、戦時下で敵国企業に適応するような法律の印象だ。ここまで行なって、中国企業の技術窃取を完全遮断しようというのは、米国にとって相当な危機感の表れであろう。米中対立は、ここまで来ていることを知るべきだ。


■ 中国、「世界高利貸し」モルディブを借金漬けにして「土地収奪」 「勝又壽良の経済時評(2018-02-27 05:00:00)」より
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インド攻略目的で進出へ

高利貸し手口で担保狙う

中国の飽くなき領土拡張戦略がインド洋の島国、モルディブを揺るがせている。モルディブの与野党が激しく対立しており、その裏に中国が暗躍しているからだ。

領土拡張を巡る同じ話が、スリランカでも起こっている。中国が巨額の融資をして返済不可能と見るや、担保にスリランカの港湾を99年間租借で支配下に収めたのだ。これに味をしめて、中国はモルディブに返済不可能な資金を貸し付けている。返済不可能を見込んで、中国は担保としていくつかの島嶼を獲得すべく動いている。

モルディブといえば1987年、大規模な高潮が襲って国土の大部分を浸水に見舞われた事件がある。モルディブ政府は、直ちに日本政府へ緊急援助を要請した。日本はこれを受け入れ、ODA(政府開発援助)予算で首都(マレ)の周りに6キロメートルの防波堤工事を行なった。2002年に竣工した。この2年後、大規模な海底地震のスマトラ島沖地震が発生。津波が、太平洋西部とモルディブを含むインド洋のほぼ全域の沿岸部を襲う大惨事になった。マレでは防波堤が威力を発揮して、幸いにも一人の死者も出さずに済んだ。日本のODAによる防波堤工事が役立ったものだ。

日本は、ODAという形でモルディブに経済負担のかからぬ建設工事を行なった。中国は、最初からモルディブの返済能力を超えた巨額の工事を行なっている。その狙いは何か。言わずと知れた「悪徳高利貸し」である。返済不能を見込んで担保の島嶼を取り上げるのが目的である。19世紀に見られた植民地政策の踏襲である。


インド攻略目的で進出へ

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月20日付)は、「中国、『一帯一路』の被害者モルディブ」と題する社説を掲載した。

(※mono....中ほど略、詳細はサイト記事で)
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IMFによると、モルディブの対外債務は2021年に対GDP比51.2%に達し、16年の34.7%から大きく膨らむ。中国は、モルディブを借金漬けにする計画だ。仮に中国が、日本のようにモルディブの返済能力を考える立場になれば、このような無謀な融資をするはずがない。最初から島嶼を担保として、中国領に編入する目的なのだ。


高利貸しの手口で担保狙う

(3)「IMFは、対外債務の返済費用は今後4年間、年平均9200万ドルになると述べている。これに対し、政府の歳入はわずか約10億ドルだ。これらプロジェクトからのリターンが不十分であれば、モルディブはスリランカと同じような境遇に陥る可能性がある。スリランカは、中国の借款でハンバントタ港を建設したが、昨年12月、同港の運営権を中国国営企業に99年間のリースとして譲渡した。デフォルト(債務不履行)を避けるためだった。パキスタンも同様に、グワダル港の40年間の運営権を中国に譲渡した」

IMFの試算では、対外債務の返済費用は今後4年間で、年平均9200万ドルになるという。政府の歳入は年間で約10億ドル程度だ。実に、歳入の1割を元利金返済に向けることになる。プロジェクトから年間で約1億ドルの収益が上がらなければ、「第二のスリランカ」に陥る運命だ。あくどい商法である。スリランカでは、中国の借款でハンバントタ港を建設した。昨年12月、同港の運営権を中国国営企業に99年間のリースとして譲渡した。まんまと、中国の毒牙に引っかけられたのだ。パキスタンも同じ騙しのテクニックにはめられている。これで、「第三の被害国」はモルディブとなろう。

(※mono....以下略、詳細はサイト記事で)


中国の世界戦略
■ 軍事力さえ不行使なら植民地化は許されるのか?-中国の覇権主義 「万国時事周覧(2018-02-18 15:43:38)」より
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近年に至り、中国による対外経済協力とは、実質的には植民地化政策ではないのか、とする疑いが急速に広がるようになりました。その理由は、中国の支援を受け入れた諸国が、“借金の形”に中国の要求を呑まざるを得ない状況に追い込まれる事例が頻発しているからです。

 特に各国メディアが大きく報じ、注目を浴びたのは、昨年、スリランカが中国に対して南部ハンバントタ湾の運営権を貸出した一件です。インド洋に面したハンバントタ港は、海洋交通の要衝に位置しており、中国にとりましても、同港は“真珠の首飾り戦略”と称される海洋戦略を遂行する上での重要拠点となります。このため、2008年から開始された同港の整備事業は、その大半が中国からの借款によって賄われたのです。

こうして、スリランカ政府は、同プロジェクトを含むインフラ整備のために中国から80億ドルにも上る巨額の融資を高利(最高6.3%)で受けることとなったのですが、その返済が容易なはずはありません。返済に窮した同政府は、11億ドル余りで同港の運営権を中国に貸借する契約を結び(中国国有企業がスリランカ国営企業から同社の保有株の70%を取得…)、借金の返済に充てることで合意したのです。かくして、ハンバントタ港の港湾当局には中国の国旗がはためくこととなったのですが、この事件は、重大な問題を国際社会に問いかけております。それは、軍事力さえ行使しなければ、植民地化は許されるのか、という問題です。中国の行政権が及ぶ地域となったハンバントタ湾の事例は、まさしく、植民地時代における租借地と変わりはありません。

国際法では、定義等に関しては曖昧さが残されているものの、侵略等の行為は明確に国際犯罪とされております。その一方で、経済的手段を用いた他国に対する権利侵害については、国際社会の関心は必ずしも高くはありません。国際法としては、1907年に署名された「契約上ノ債務回収ノ為二スル兵力使用ノ制限二関スル条約」がありますが、この条約は、債務の返済を強制するために軍事力を使用してはならないと定めるのみであり、手段の禁止を定めているに過ぎません。しかしながら、第二次世界大戦後に至りますと、戦前の植民地支配に対する反省から、1974年12月には、国連総会において「国の経済的権利義務憲章」が採択され、その第16条において植民地主義は排除されています。今日においてなおも、植民地主義の終焉は、国際社会の基本的なコンセンサスであり、かつ、国家の行動規範であるはずなのです。

(※mono....以下略、詳細はブログ記事で)


■ 太平洋に覇権を拡張しつつある中国 「Michael Yon JP(2016.2.27)」より
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マイケル ヨン :中国は太平洋にまで覇権を拡げつつある
by JOHN HAYWARD26 Feb 2016


退役軍人の従軍記者であるマイケル・ヨンは、2/26 金曜日の朝、Breitbart News Daily ラジオ局 のステファン・バノン(Stephen K. Bannon)と、南シナ海で高まる中国の野望の脅威について話し合った。

アジアに住むヨン氏は、「中国はこの領域におけるアメリカの利益に対して(きわめて重大な) 脅威となっている」と述べた。また、環太平洋地域の人々は、中国の隆盛と米国の衰退について不安をおぼえている、と断言した。

以下、ヨン氏の発言の要旨。

中国は明らかに他国を侵攻している。
南シナ海の小さな島を人工的に巨大化して軍事基地島を建設していること、およびその地域を自国の防空領域と宣言していることを、米国海軍は航空の自由に対する攻撃的行為とみなしており、それは世界中の重要な海運事業にとって大きな脅威となり得る。

中国は自国の国境より外にある島の「所有権」を主張する根拠に、その歴史的前例を持ち出す。

もしも我々が中国の主張するそのルールに従うならば、中国は700年前にひとりの中国人がどこかの島に行ったという史料を見つけてきて「この島は中国の領土だ」と言い出すに違いない。

彼らはこのように全てのことをでっち上げる。

彼らのルールに従えば、米国は、月を含めた太陽系全てを所有できる。 最初に月に着陸して国旗をたてたのは米国だからだ。

中国の勢いは米国を追い抜いている。

バノン氏の発言: アジア各国では 政府高官からビジネスリーダー、街角の人にいたるまで、中国の影響はますます高まりつつある反面、 米国の影響力は衰退していると思うが。

ヨン氏: 「完全に」同意する。

もっともそれを定量的に評価することは難しいが、中国の野望による脅威を アメリカ人は過小評価してはいけない。

そして、マイケルはこう警告した。
  • 中国は他国を侵略している。
  • 中国は弱い者いじめが得意だ。 いじめることができないものは 買収しようとする。
  • 中国は米国の大学にも深く浸透している。
  • 我々の前の世代のときにソ連がしたように、中国は 様々な手段をつかって米国をコントロールしようとしている。

「私はそのことについて(多くの証拠を持っており)何時間でも話すことができる」 とヨン氏は 述べた。




★ 米太平洋軍司令官「中国は覇権を求めている」 「NHK(2016.2.24)」より
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中国が南シナ海で造成している人工島について、アメリカ太平洋軍の司令官は、中国が軍事化を進めているのは明らかで、民間施設の名のもとに軍の前方展開基地を整備しようとしているとしたうえで、「東アジアで覇権を求めている」と述べて、強い警戒感を示しました。
アメリカ太平洋軍のハリス司令官は23日、議会上院の公聴会で東アジア地域の安全保障情勢に関する書面を提出するとともに証言しました。
この中で、ハリス司令官は、中国が南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で造成している人工島について、軍が新たなレーダー設備や通信施設を整備するなど軍事化を進めているのは明らかで、民間施設の名のもとに前方展開基地を整備しようとしていると指摘しました。
そのうえで、これらの中国の動きが「南シナ海の軍事的な環境を変えている」として、地域の安全保障環境に大きな影響を与えているという認識を示すとともに、中国の戦略的な目標について「東アジアの覇権を求めている」と述べて、強い警戒感を示しました。
アメリカなどは、南沙諸島の人工島について、軍事化をやめるよう中国に求めているのに対し、中国側は「自衛権の行使で完全に正当だ」としたうえで、軍事化の根源はアメリカ軍の行動にあると主張していて、南シナ海を巡る両国の対立が深まっています。


■ 【インテリジェンス・K】アメリカの動き 2月29日 中国の反撃 「二階堂ドットコム(2016.2.29)」より
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シリアとイラクの情勢は、峠が見えてきたといえるかも知れません。しかし、イスラム国が消滅するかと言えば、そうはならないというのが現在の判断です。ハリー太平洋軍司令官は、中国に対する強硬策を望んでいます。しかし、それを妨げているのがオバマ政権なのです。

今週すぐにでも米中衝突が始まるというわけではなさそうです。しかし、中国と対決することの困難さが徐々にワシントンでも認識されるようになってきました。G20でも中国は有効に反撃しています。今後否応なく徐々に中国に関する議論が増えていくことでしょう。

(※mono.--中略)
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↑全くクロンボはろくでもないな。さっさと米中開戦始めやがれと。


■ 中国の覇権主義に対して日本が取るべき「積極関与戦略」 「ダイヤモンドオンライン(2015.12.8)」より
(※mono.--文中リンクは略)
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 国際通貨基金(IMF)は、中国の人民元を「特別引き出し権(SDR)」の構成通貨に採用することを正式に決めた。2009年3月のG20サミット開催前に、中国人民銀行の周小川総裁が「米ドルに代わり主権国家の枠を超えた存在であるSDRを準備通貨にすべきである」と主張するなど、中国はSDRに対して特別な思い入れを持ってきた。「人民元の国際化」を推進してきた中国にとって、人民元がSDRの構成通貨の一角となることは悲願であったといえる。

 一方、当時日本は、G20で麻生太郎首相が「ドル覇権体制の永続」を主張したが、「SDR準備通貨化」の中国以外や、影響力拡大を目指すその他新興国、世界共通通貨を作る構想を示唆した英国、多極的な基軸通貨体制を視野に入れた仏露などの間で孤立した(前連載第11回)。「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の設立時に続いて、保守的な枠組みに拘った日本は、国際社会で急激に影響力を強める中国に対応できていないように見える(第103回)。

シーパワーの対中国戦略:中国沿岸部(リムランド)を取り込むこと


+ 続き
 今回は、急拡大する中国に、日本がどう対応すべきかを論じたい。日本政府は、AIIBで中国と距離を置いたことに加えて、10月に交渉がまとまったTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についても、安倍晋三首相が「自由、民主主義、人権、法の支配という普遍的な価値観を基礎とする(TPPという)構想の進展を歓迎したい」と発言した。TPPを、非民主的な中国を排除し、中国の経済面、政治面、安保面での拡大を抑える「防波堤」だと考えているようだ。

 しかし、この連載では地政学をベースに、日本は中国経済に対して積極的に関与する戦略を持つべきだと主張してきた。地政学的に考えると、日本、米国、英国など海洋国家(シーパワー)の戦略は、ユーラシア大陸中央部(ハートランド)に位置する大陸国家(ランドパワー)の拡大を抑止するために、ハートランドの周縁に位置する「リムランド」を取り込むことである(前連載第64回)。

 経済成長著しい中国沿岸部は、「リムランド」の一部と見なすことができる。これをシーパワーが取り込むとは、「積極的に中国の経済発展に関与することで、中国を欧米ルールに従う市場経済圏として発展させること」であり、「中国が資源ナショナリズムに走らせず、海洋権益に手を出すことのデメリットを認識させる」ということになる。

中国に恩を売った英国の「積極関与戦略」


 シーパワーの「リムランドへの積極関与戦略」を実践してきたのが英国である。言うまでもなく、2015年4月に英国がAIIBに参加表明することで、フランス、ドイツ、イタリア、そして韓国、オーストラリアという米国の同盟国が相次いで参加表明し、トルコ、ブラジル、エジプトなど投資を受ける側となる国々が雪崩を打ったように参加する流れを生み出した。英国は「中国に透明度の高い投資をさせるためには、AIIBに入らず外から批判するのではダメで、創設時から加盟し、内側から監督し、経営を改善していく必要がある」と、AIIB加盟の正当性を主張した(英紙FT記事“'Accommodating' Beijing may be no bad thing”)。

 その後、9月にはジョージ・オズボーン英財務相が訪中し、逆に10月には習近平中国国家主席が訪英した。二国間で、ロンドン・シティでの人民元建て債券の発行、英国の銀行に対する中国での新たな事業認可など、数々の合意がなされた。特に、10月21日、習主席とディビッド・キャメロン英首相の会談で、英国南部のサマセットにあるヒンクリー・ポイント原子力発電所に、中国製の原子炉を導入することで合意したことは、世界に衝撃を与えた。

 英中の急接近は、厳しく批判されている。英国は「中国マネー」を得るために、中国の悪名高い人権問題や西側諸国や企業に対するサイバー攻撃、知的所有権侵害に対する批判を弱めているように見える。「英国は中国に屈した」という見方があるのは事実だ。

 だが一方で、英国はしたたかで強いとの指摘もある。AIIBは、英国という国の「信用」によって、多くの参加国を得ることができたからだ(英紙FT記事“Aso remarks show Japan dilemma over China-led bank”)。「英国は、中国に恩を売った」というのだ(英紙FT記事“How David Cameron lost, and then won, China”)。

英国経済の「オープンさ」と成り上がり新興国と対峙してきた「高い経験値」


 英国は中国の言いなりなのかどうかは、今後を見守っていくしかない。しかし、この連載では、2つのことが指摘できる。まず、英国では外資による国内企業の買収をポジティブに捉えていることだ(第43回)。これは、日本では一般的に、外資による企業買収を「敗北」と捉えがちなのと対照的である。

 例えば、以前紹介した英経済紙「The Economist」の「新興国企業と英国:新しい特別な関係」という記事では、『新興国は、自国の政治的リスクを避けるために英国市場に積極的に投資する。インドのタタ財閥は、コーラス(旧ブリティッシュ・スティール)、ジャガー・ランドローバーなどを総額150億ポンド(約1兆8000億円)で買収した。新興国からの投資で、英国市場の規模は急拡大している。これは、外国に比べて規制が少なく、企業買収が簡単なオープンな市場だからだ。また、新興国にとって、英国のブランド力と高度なノウハウ・知識の蓄積も大きな魅力的だ。その結果、新興国に買収されても、英国企業の本社・工場は国内に留まっている。英国と旧植民地である新興国との「新しい関係」は、「オープンな英国」の勝利を示すものだ』と論じられた。この記事では、外資の導入を「勝利」とまで言い切っていたのである。

 実際、キャメロン政権は、法人税率のEU最低水準への引き下げによる海外企業の誘致や投資の積極的な呼び込みを中心とする経済政策の成功により、2015年5月の総選挙で勝利している(第106回)。オズボーン財務相は、中国資本の呼び込みを経済成長につなげることに、相当な自信を持っていると考えるべきだろう。

 また、英国の「成り上がり新興国」と対峙してきた経験値の高さも無視できないものだ。エネルギーを巡って「外資導入による生産拡大」と「外資追放・国有化による停滞」を何度も繰り返すロシア・ソ連と、100年以上に渡って対峙してきた経験(前連載第10回、前連載第59回)、中東でのイランからのBPの追放など、石油産業の国有化とOPEC(石油輸出国機構)の台頭、南米・アフリカでの「資源ナショナリズム」と対峙した経験、そして、第二次世界大戦後に「成り上がり新興国」であった米国への国際金融の覇権移譲の経験である。英国はさまざまな「成り上がり新興国」に対して、したたかに振る舞い、国際社会での確固たる地位を維持してきた(第103回)。

 この「経験値」の高さは、英国の「中国に透明度の高い投資をさせるためには、AIIBに入らず外から批判するのではダメで、創設時から加盟し、内側から監督し、経営を改善していく必要がある」という主張に、一定の説得力を与えているのは間違いない。

「積極的関与戦略」の重要性を示す、人民元のSDR構成通貨入りのプロセス


 中国経済への積極的関与戦略の重要性は、人民元のSDR構成通貨入りのプロセスが証明している。中国人民銀行は、中国国債市場を諸外国の中央銀行に開放し、人民元の対ドルレートの決定方式を変更して市場の役割を高めるなど、さまざまな対策を打ってきた。特に10月には、IMFからの指摘に基づき、これまで基準金利の1.5倍としてきた預金金利の規制を撤廃する思い切った措置を講じた。

 また、習主席が断行する「反腐敗運動」は金融界にも及んでいる。11月に入り、ヘッジファンド業界の著名人をインサイダー取引と株価操作の疑いで取り調べるとともに、証券監督管理委員会のナンバー2も「重大な規律違反の容疑がある」として中央規律検査委員会で調査している。更には、中国人民銀行にまで汚職調査のメスが入り、同幹部3人を厳重警告処分にした。この事例は、経済・金融制度の不備を理由に中国を排除するのではなく、むしろ積極的に国際ルールに引き込むことで、中国に制度改革を促すことができることを示している。

シーパワー・日本の「積極関与戦略」:「海上」を守り、「陸上」に関与する


 さて、シーパワー・日本が中国に対して「積極関与戦略」を取るならば、どうすべきであろうか。この連載では、「シルクロード経済圏(一帯一路)構想」への、積極的関与を提唱した。

「一帯一路」とは、中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」の意味)と、中国沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(「一路」の意味)の2つの地域で、鉄道やパイプライン、通信網などのインフラ整を援助することで、中東や中央アジアからの資源輸入の輸送ルートを整備することを目的としている(WSJ日本版記事「シルクロード経済圏構想でアジアの地政学的中心目指す中国」)。

 しかし、「21世紀海上シルクロード」(「一路」)については、米軍が南シナ海に進軍し、中国が自国の領土と主張しているスプラトリー(南沙)諸島のミスチーフ(美済)岩礁とスービ(渚碧)岩礁の12海里(約22㎞)内を航行させる「航行の自由作戦」を展開中だ。米国や日本のようなシーパワーにとって、ランドパワー(中国)を海上に進出させることは致命的であり、米国の行動には戦略的合理性がある(第67回)。従って、「一路」については、日本は中国に協力できない。

 一方、「シルクロード経済ベルト」(「一帯」)については、積極的な関与が可能だ。ユーラシア内陸部に、英国などの多国籍資源企業は既に多数入ってビジネスをしている。日本も積極的に入っていくべきだ。資源開発、インフラ整備に日本企業が貢献できることは少なくない。例えば、安倍首相は10月末に、中央アジア5ヵ国・モンゴル歴訪し、「日本は中央アジアの自立的な発展を官民で連携して支えていく。民間企業の意欲はすでに高まっている。日本政府も公的協力、民間投資の後押し、インフラ整備、人づくりを支援する。今後、3兆円を超えるビジネスチャンスを生み出す」と発表した。

 これは、日本にとってのビジネスチャンスであると同時に、中国の「シルクロード構想」推進を支援することにもなる。だが、日本は躊躇なく進めていくべきだ。以前論じたように、ユーラシア内陸部の開発が進めば、中国のエネルギー資源確保の安定につながる。そうなれば、中国の海洋権益への拡張主義が収まっていくことになる。尖閣諸島や南シナ海を巡る中国の挑発的行動も鎮まっていく。軍事的な緊張を和らげ、領土問題の間接的な解決策にもなりえる(第103回)。

 そして、それ以上に重要なことがある。それは、日本や英米などがユーラシア内陸部で中国、ロシア、モンゴル、中央アジア諸国などに積極的に関与してビジネスを展開することで、ユーラシア内陸部に市場経済に基づいたビジネスのルールを確立し、民主主義を広げていくことである。ビジネスマンや労働者に市場ルールや民主主義の理解が広がっていくことは、中国に内側からの経済制度、社会制度の変革と、民主化を迫ることになると確信する。

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■ マイケル・ピルズベリー「中国は2049年の覇権国家を目指す」は本当か?「世界制覇100年の計」日本は中国を侮ってはいけない 「プレジデント(2015.11.25)」より
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アメリカは中国を過小評価した

――ニクソン政権下での国交回復以来、アメリカは約30年にわたり中国に騙され続けてきたという『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』の記述は非常に衝撃的だ。

最大の理由は、対中諜報活動に失敗して、中国という国を見誤ってしまったことだ。朝鮮戦争では、アメリカに敵対した中国だが、1972年のニクソン訪中を機に「遅れている中国を助けてやれば、やがて民主的で平和的な大国になる。決して、世界支配を目論むような野望を持つことはない」とアメリカの対中政策決定者に信じ込ませてしまった。しかし、彼らの本当の戦略はまったく違い、中華人民共和国建国から100年に当たる2049年に世界に君臨する「覇」を目指している。それを私は「100年マラソン」と名づけた。

つまり、私自身を含めてアメリカは、相手を過小評価してしまったのだ。それまで蓄積されてきた反米感情を正しく把握できなかったというしかない。中国とソビエト連邦の関係が、53年のスターリン死後に悪化し、60年代に入ると国境付近で緊張感が高まっていた。そうした状況から、中国はアメリカ寄りだと思っていたところに間違いがあった。

――本によると、中国のタカ派は、国家戦略を古典的な戦術書である『戦国策』や『資治通鑑』を研究して、知識ではなく実践的に練り上げているという。

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毛沢東が1934~36年、国民党軍と交戦しながら延安に向かった、あの長征に抱えていったのが『資治通鑑』だ。しかも生涯を通じての愛読書にしている。これは、中国の戦国時代(B.C.403~B.C.221年)の兵法の指南書で、その核になるのは、相手の力を利用して、自分の勝利に結びつける戦法といっていい。戦国時代を統一した秦にしても、最初は「同盟を結びたい」と相手に持ちかけ、それ以外の国を1つずつ倒し、最後は同盟国も裏切って勝者になったのである。

中国は、こうした先例をしっかりと現代の外交に生かしてきた。ソ連とアメリカを反目させることは、その好例といえよう。米ソに比べて国力が劣る中国は、自らの戦略を見直し、アメリカとソ連がデタント(緊張緩和)だったにもかかわらず、「ソ連はならず者国家なので一緒に戦おう」と近づいてきた。超大国2つを競い合わせながら、一方でアメリカから経済的、技術的援助を受けるという"漁夫の利"を狙った実にしたたかなやり方だ。

これはまさに『三国志演義』に描かれている赤壁の戦いの現代版にほかならない。魏、呉、蜀の三国が鼎立していた時代(184~220)、強大な魏の侵攻を警戒した蜀の軍師である諸葛亮が、呉と組んで、魏の大軍を破った。この合戦で、戦いの舞台である長江を挟んで戦ったのは主に魏と呉の軍勢で、蜀はほとんど兵を失っていない。いうまでもなく、魏がソ連、呉がアメリカ、蜀が中国だが、こんなところからも、中国が古来の戦術を徹底して研究していることが分かる。

米中は一触即発の危機だけは巧みに回避

――中国の戦略の核心にあるのが「勢」だと書いている。その意味では、諸葛亮はあえて勢いのある魏との直接対決を避ける戦略をとったと。

そうだ。ソ連からの攻撃に備えて、アメリカという切り札をどう使うかを考えたはずだ。その結果、まずアメリカを味方につけることを選択した。すなわち、アメリカの「勢」で、ソ連の「勢」を牽制するというわけだ。有名な『孫子』には「敵の操縦に長けた人々は、敵が従わずにいられない状況を作り出して、敵を動かす」とある。結果として、ソビエト連邦の崩壊が早まったことは歴史が証明している。

実はこの間、アメリカと中国は綿密に協力し合ってきた。なかでもトウ小平は、彼の外交方針として改革開放を打ち出し、文化大革命によって荒廃した国土に4つの経済特区を指定することで経済成長を促した。それをアメリカは、他国との摩擦を避け、経済建設に専念する施策だと理解し、最恵国待遇での援助を続けたのである。いってみれば、トウ小平は、アメリカから強力な支援を取り付けることに最も成功した共産党指導者だったと考えてさしつかえない。

――文字どおり、中国は身を低くして「覇」になる機会をうかがっていたわけだ。しかし、ここに来て、南シナ海での人工島建設など強い姿勢に出てきた。

10月下旬、南沙人工島12カイリの海域に、米国イージス駆逐艦が航行したのは記憶に新しい。とはいえ、この問題は3年前にさかのぼる。構造物の建設が、その頃にはじまったのだが、黙認していたアメリカが、今年に入ってから事実を公表した。6月にカーター国防長官が、フィリピンで中国に対し、建設の中止を要望している。中国側は「近々やめる」と返答したものの実行はしなかった。

こうした状況下で9月25日にワシントンでオバマ大統領と習近平国家主席の首脳会談が行われた。結論からいえば、中国にとっては成功、アメリカが得たものはゼロに近い。もちろん、南シナ海の問題も俎上にのぼった。けれども、習近平は東シナ海を含めた島々の領有権を主張し、共同会見でも「南沙諸島は古来、中国の領土たった」と発言している。さすがにアメリカも、そのまま手をこまねているわけにもいかず、今回の「航行の自由作戦」を実施したのだろう。

ただし、一触即発の危機だけは巧みに回避している。アメリカにしてみれば、この海域に入るための許可を中国に求めるわけにはいかない。そんなことをすれば、中国の領有権を認めてしまうことになる。そこで、アメリカは航行の2カ月ぐらい前から、マスコミを通して「行くかもしれない」という情報を盛んに流していた。それは「アメリカ艦船が航行しても反撃するな!」とのメッセージにほかならず、中国が短兵急な反応をしなかったのも、それが功を奏したからだ。この米艦派遣は、しばらく継続するにしても衝突にはいたらないと見る。

中国を過大評価してもいけない

――それにしても、GDPの伸び率こそ鈍化したとはいえ、最近の中国の国際的な動向には目を見張るものがある。2049年まで、あと34年なのだが。

ただ逆に、中国を過大評価してもいけない。確かに、中国が提唱したAIIB(アジアインフラ投資銀行)にイギリスが参加したことは意外で、それだけ中国を巡って世界的な構造変化が起きているということなのだろう。また、米誌『フォーチュン』が毎年、時価総額の世界上位500社を紹介しているが、14年には国営企業を含めた中国の会社が95社もランクインしているのも驚きだ。

私がいいたいのは、これらを含めて中国の国力を把握すべきだということだ。そのうえで、日米の国会議員や政府関係者に、この本に書かれていることが本当なのかどうか検証してほしい。あえて、中国の名言を使わせてもらえば「彼を知り己を知れば百戦危うからず」と『孫子』にある。少なくとも、日本はもっと中国の情報をできれば原文で読み、その真意を解釈したほうがいい。そして、自身の主張は中国語で世界に発信していくことが必要だろう。
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マイケル・ピルズベリー(Michael Pillsbury)
1945年米カリフォルニア生まれ。米スタンフォード大学卒業(専攻は歴史学)後、米コロンビア大学にて博士課程を修了。1969~70年国連本部勤務を経て、73~77年ランド研究所社会科学部門アナリスト、78年ハーバード大学科学・国際問題センターのリサーチフェロー、81年国務省軍備管理軍縮庁のディレクター代行、84年国防総省政策企画局長補佐、86~90年議会上院アフガン問題タスクフォース・コーディネーター、92~93年国防総省総合評価局特別補佐官、98~2000年国防総省特別公務員(米国国防科学委員会)、1997~2000年米国防大学客員研究フェロー、2001~2003国防総省政策諮問グループメンバー、2003~2004年米中経済・安全保障検討委員会シニア調査アドバイザー、2004年以降、ハドソン研究所中国戦略センター所長を務める。

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■ なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか 「アゴラ(2015.5.27)」より
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安保法案について野党は、海外派遣された自衛官の安全ばかり心配しているが、自国の安全はどう考えているのか。原発については「安全神話」を批判してゼロリスクを求める彼らが、軍事的には「日本が仲よくすれば戦争は起こらない」という安全神話を信じているらしい。

いまアジアの最大のリスクは、中国の急速な軍備拡大である。習近平主席は「民族の偉大なる復興」をとなえ、中国が政治的にもアジアの中心になることをめざしている。2000年にわたって世界の最先進国だった彼らが、経済的にめざましい成長を遂げたあと、政治的な覇権を求めるのは当然だが、問題はそれが軍事的な覇権に発展するのかどうかである。
著者が「覇権の妄想」と呼ぶのは、中国が世界を支配するという中華思想のことだが、それはローマ帝国もオスマン帝国も同じだった。西洋の主権国家が植民地支配を全世界に拡大する前まで、帝国は平和共存の秩序だったのだ。帝国は自国の支配権が脅かされない限り他国を侵略することはないが、他国の脅威が強まると攻撃的になる。

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中国も基本的には防衛的だが、自国の支配権が脅かされると攻撃的になる。その一例が6世紀から7世紀にわたって行なわれた隋と高句麗の戦争である。220年に後漢が滅亡してから、中国では南北朝の戦乱が続いている間に高句麗が朝鮮半島を統一し、中国の東北地方まで勢力を拡大した。これに対して中国を統一した隋は100万の大軍を派遣したが敗れ、逆に隋が滅んでしまった。

1949年に建国したばかりの中華人民共和国が50年に朝鮮戦争に出兵し、100万人近い犠牲者を出したのは、この隋の故事に似ている。毛沢東は自分が「天命」を受けた支配者であることを示すために、朝鮮半島を支配下に置く必要があったのだ。それは19世紀末の日清戦争と同じく、朝鮮を支配して華夷秩序を守るための戦争だった。

朝鮮戦争には失敗したが、中国はその後も華夷秩序の再建を進めてきた。特に鄧小平の時代に海洋戦略を策定し、習近平は「海洋強国の建設」を政策理念に掲げた。その後も尖閣諸島での挑発や日本の防空識別圏への侵入、あるいは日本の護衛艦へのレーダー照射など、ジャブを繰り出して日本やアメリカの反応をうかがっている。

それに対してアメリカは、フィリピンに米軍基地を再配置するなど「封じ込め戦略」をとっている。習近平もアメリカが中国の太平洋における「核心的利益」を尊重する限り、アメリカの権益を尊重すると表明しているが、この新型大国関係は、太平洋を米中で分割支配しようということだ。

アメリカは中国の野望を聞き流しているが、アジアの軍事バランスは大きく中国に傾いてきた。いわばアジアに局地的な冷戦秩序ができつつあるともいえる。だから戦争のリスクが切迫しているとはいえないが、北朝鮮の崩壊などでバランスが大きく崩れたときは危険だ。安保法制で第一に考えるべきなのは自衛官の安全ではなく、このような軍事バランスを維持することである。















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最終更新:2018年04月30日 13:15