川崎市中1男子殺害事件】 / 【名古屋で森外茂子さんを殺害した女子学生の事件】 / 【大津いじめ事件
★■ 無責任な“犯人”探し 「ネット捜査」が常態化 「産経新聞(2015.2.28)」より
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 川崎市川崎区の多摩川河川敷で同区の中学1年、上村(うえむら)遼太さん(13)が殺害された事件では、発生後から複数の人が真偽不明なままインターネット上で「犯人」と名指しされ、顔写真が拡散する異常事態となった。パソコンやスマートフォンは簡単な操作で投稿の共有、転載が可能だが、専門家は「名誉毀損(きそん)罪で処罰される可能性がある」と安易な取り扱いに警鐘を鳴らしている。

 “ネット捜査”と称して事件加害者の名前や住所、顔写真をインターネット掲示板などに掲載する行為は近年、常態化している。事件と無関係の人間を犯人として扱い、刑事事件や訴訟に発展したケースもある。

 大阪府茨木市のコンビニで昨年9月、来店客らが店長らを土下座させたばこを脅し取った事件では、土下座の動画がネット上で拡散し、視聴者が「こんなクレーマーは許せない」と“団結”。情報を共有しながら瞬く間に身元を特定した。恐喝罪で有罪が確定した男は警察署に出頭した際、「ネットで騒ぎになり、怖くなった」と供述した。

 今年1月、名古屋大の19歳の女子学生が名古屋市内のアパートで無職女性を殺害したとして逮捕された事件でも、女子学生の名前や顔写真に加え、学部や出身高校、趣味、特技など詳細なプロフィルがネット上で明らかにされた。

 一方、平成23年10月、大津市立中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺した問題では、男子生徒をいじめたとされる少年の「家族」として、実際には無関係の病院職員らの写真などがネット上にさらされた。誤った情報を掲載したとして男2人が書類送検され、うち1人が罰金30万円の略式命令を受けた。

 「母親」と誤解された女性に対しては、女性タレントがブログ記事にネット上で見つけた写真を添付し、「とんでもないのが母親」と意見を掲載。神戸地裁は損害賠償請求訴訟で名誉毀損を認定、165万円の支払いを命じた(控訴審で和解)。

 ネット捜査の参加者心理について、園田寿(ひさし)甲南大法科大学院教授(情報法)は「匿名のため安心して自分の正義感、義憤に酔うことができる」と分析。「正義を標榜(ひょうぼう)する暴力ほど厄介なものはない。無責任な情報の拡散がどれほどリスクの高い行為なのか、子供の時から法教育を徹底すべきだ」と話している。














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最終更新:2015年03月01日 18:15