★ アメリカの殺傷兵器供与でウクライナ紛争は米ロ対決の場に? 「Yahoo!ニュース[ニューズウィーク](2015.2.5)」より
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 ウクライナ東部で政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘が激化するなか、アメリカはウクライナ政府軍を支援するため、対戦車ミサイル「ジャベリン」など殺傷力のある武器と弾薬を供与することを検討し始めた。

 ウクライナへの軍事援助を見直すにあたり、ホワイトハウスで議論されているのはロシアがどう出るかだ。殺傷性の武器供与で親ロ派の攻勢を押しとどめられればいいが、親ロ派を支援しているロシアの軍事介入がエスカレートすれば事態はさらに悪化する。「今の状況は予断を許さないが、言うまでもなくロシアの出方を見極めた上で(供与を)決定すべきだ」と、米政府高官はウォール・ストリート・ジャーナルに語っている。

 親ロ派はロシアから提供されたとみられる重火器を使用しており、ウクライナ政府軍がそれに対抗するには殺傷性の兵器が必要だとの声が米政府当局者の間で高まっている。一方で、殺傷兵器を供与しても、ウクライナ政府軍は親ロ派を撃退できず、ウクライナ東部の混乱が悪化するだけだという見方もある。

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 アメリカはすでにウクライナ政府軍にロケット弾迎撃システムや防弾チョッキ、双眼鏡、小型ボートなど、非殺傷性の装備を提供している。しかし、これまでは外交交渉による解決を重視し、殺傷兵器の供与を見合わせてきた。

 昨年9月にベラルーシの首都ミンスクでウクライナ政府と親ロ派の停戦合意が成立した後も、ウクライナ東部では散発的な戦闘が収まらず、今年1月末に行われた両当事者の協議も決裂。ドネツク州を中心に戦闘地域が拡大し、市民を含む犠牲者が多数出る状況を踏まえ、ホワイトハウスと米軍指導部は殺傷兵器の供与を選択肢に入れた。

 ジャベリンは自律誘導ミサイルで、重装甲の戦闘車両を破壊する能力を持つ。歩兵が肩に担いで発射できる携行式ミサイルだが、ウクライナの戦闘地域での使用では、車両に搭載して発射することで敵の戦車その他の車両をより迅速に攻撃できるとみられている。



 ワシントンに本拠を置く政策研究団体「大西洋協議会」は報告書を発表、ウクライナに30億ドルの武器と装備を提供するようアメリカ政府に提言した。供与の内訳はミサイル、無人機、装甲を施した軍用車両ハンビー、レーダーなどだ。この報告書はまた、ポーランド、バルト海諸国、カナダ、イギリスにもウクライナに軍事支援を行うよう働きかけることをオバマ政権に提案している。

「軍事的な解決を目指すべきだと主張しているわけではない。そもそもロシア軍が相手ではウクライナ軍に勝ち目はない」と、この報告書の執筆者の1人、元ウクライナ駐在米大使のジョン・ハーブストは言う。「しかし、今のところロシアは外交的な解決にまったく関心を示していない。実効性のある外交交渉を行うためにも、まずロシアに軍事的な解決の道を断念させなければならない」

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★ 次期米国防長官、ウクライナ政府への武器供与に前向き 「WSJ(2015.2.5)」より
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 【ワシントン】オバマ大統領が次期国防長官に指名したアシュトン・カーター前国防副長官は4日、上院軍事委員会での承認公聴会で、親ロシア武装勢力と戦闘を続けているウクライナ政府軍に武器を供与する提案を支持する公算が大きいと述べた。

 カーター氏は、ウクライナへの軍事支援を拡大する方向に「大きく傾いている」と語った。こうした考え方にはこれまでところ、ホワイトハウスが抵抗している。

 長時間にわたったこの日の公聴会は、来週にも就任すると見られる国防長官のポストを同氏がどうこなすのかについて、最初の方向性を示した。

 公聴会ではこれといった批判も出なかったことから、オバマ政権での4人目の国防長官への就任は上院で容易に承認されるとみられる。
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 カーター氏にとってはウクライナ問題が最初の大きな課題の一つとなると予想されている。親ロシア派が戦闘を激化させる中で、オバマ政権はジャベリン対戦車ミサイル、小火器、弾薬をウクライナ政府軍に提供することを検討している。

 国防総省は以前からこの計画を支持しており、カーター氏の見解はホワイトハウスとの協議で軍事支援の必要性を訴え続けることを示唆している。

 カーター氏は公聴会で、オバマ大統領と大きく異なる見解は表明しなかった。同氏は、中東での米軍の作戦はイラクとシリア内の過激派組織「イスラム国」に「持続的敗北」を確実にもたらすものでなければならないとし、「彼らを敗北させたら、その状態が続くようにすることが重要だ」と語った。

 軍事委員会のジョン・マケイン新委員長(共和、アリゾナ州)は大統領の国家安全保障の優先順位を批判し、現在の中東での軍事戦略に疑問を呈した。カーター氏は、イスラム国打倒のための現在の取り組み姿勢やアフガニスタンでの軍事計画について吟味する用意があると述べた。米国はアフガニスタンでの治安の責任を同国軍に移譲している。

 同氏は、イランの脅威は過激派組織イスラム国と同じ程度に深刻だと述べた。米国はイランの核問題をめぐる国際交渉を主導している。イラン政府は否定しているにもかかわらず、西側のほとんどの国はイランが核兵器開発を目指しているとみている。

 オバマ大統領の下でのこれまでの3国防長官―ロバート・ゲーツ、レオン・パネッタ、チャック・ヘーゲル―は全員が、国防長官の権限に干渉するホワイトハウスとのあつれきに不満を抱いていた。ヘーゲル氏は昨年11月、米国がイスラム国、ウクライナの親ロ派、イエメンなどのテロ組織アルカイダの増大する脅威に直面する中で、オバマ大統領が新しい構想に突き進んだのを受けて辞任すると発表した。

 国防長官としての資質に関してはカーター氏への質問はほとんどなかった。同氏は国防総省でさまざまな任務を果たしてきた。1990年代にはクリントン大領の下で核政策策定に参画し、13年末まで国防副長官を務めた。

 同氏は知性と同省の抱える難問に対する処理能力の高さで知られている。同氏は、問題を抱えた新型戦闘機開発を統括していた陸軍少将を手際よく外し、時間のかかる国防総省の手続きを回避してイラクとアフガンで闘っている部隊に新型防弾車両を送ることにも成功した。

 パネッタ氏は、カーター氏について「心の底では彼は自然科学者だ。科学者は決まり切ったことを質問するばかな人が部屋にいることを嫌うものだ」と述べた。カーター氏は13年、パネッタ氏の後任候補として浮上したが、ホワイトハウスはヘーゲル氏を起用することに固執した。ヘーゲル国防長官の下で副長官を1年近く務めたあと、カーター氏は国防総省を去った。

 国防長官として承認されれば、同氏は現在の軍事予算の制限は米国に打撃を与えると議会に警告すること、深まりつつあるイスラム国との戦いの統括、アジアへの米軍事力シフト、といった一連の任務に対処しなければならない。
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★ オバマ演説が象徴するアメリカ外交の混沌 「Newsweek(2015.2.3)」より
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大統領が有終の美を飾るために必要なのは原則論だけでなく実効ある政策だ
2015年2月3日(火)15時59分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

 先週、オバマ米大統領にとっては最後から2番目となる一般教書演説が行われた。4分の3もの時間が割かれたのは国民の関心が高く、争点のはっきりした内政問題。特に格差是正への取り組みをオバマは強調した。

 対照的に、外交問題の扱いは随分軽かった。無理もない。昨今の国際政治は混乱を極め、世界におけるアメリカの役割や影響力、国益の定義もはっきりしない。「アフガニスタンにおける戦闘任務は終わり」と言いながら、同国やイラクでの米軍駐留が続いていることや、その最終的な使命や目的については触れずじまいだった。
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 冷戦終結後のアメリカ外交の原則についての説明はよくできていた。「情報に振り回された性急な判断」を慎み、「問題が発生してもすぐには」派兵せず、「軍事力を背景に外交努力を重ね」「他国との協調体制をテコにする」と言う。

 だが、オバマがアメリカの国力と外交力、結束力を総動員して対処したはずの紛争では、思わしい結果は出ていない。確かにアメリカは空爆を先導し、イスラム教スンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)のジハーディスト(聖戦士)がイラクやシリアで勢力を拡大していくのを「食い止めつつある」。しかし、これらの国々について最終的に何を目標としているのかは見えない。

シリアでは敵の敵も敵?

 オバマはISISと戦う一方、同じくISISと戦うシリアのアサド政権とは対立している。「シリアの穏健な反体制派への支援」も表明しているが、経験の浅い反体制派兵士が殺戮されるのは傍観していた。そこには明確な戦略は存在せず、引き延ばし戦術があるだけだ。

「幅広い協調体制にはアラブ諸国も含む」とオバマは言うが、それも心もとない。アメリカと国益が著しく異なる国々もあり、足並みはそろわないのだから。

 さらに「大国の小国いじめは許さない」という原則から、ロシアの軍事介入に抵抗するウクライナへの支持を表明。欧米が一致団結して行っている制裁の効果もあってプーチン大統領は孤立し、ロシア経済は窮地に立たされているとした(実は原油安の影響が大きいのだが)。

 しかし世界に目を向ければ、勇ましい言葉もむなしく響く。シリアやエジプトやアフリカの国々で続く暴力や弾圧にアメリカはほとんど打つ手がない。

 筋が通った外交政策もある。キューバに対する制裁解除は当然だろう。イランとの核交渉には大きな進展があり、「核開発計画を中止させ、核物質保有量を削減させた」とオバマは述べた。その上で、もし議会で追加制裁法案が可決される事態になれば「外交努力は確実に水泡に帰す」とし、拒否権を行使すると明言した。

「世界中から非難を浴び、テロリストの勢力拡大の口実になっている」グアンタナモ米海軍基地のテロ容疑者収容所の閉鎖に触れると、議場には不気味な静寂が広がった。ブッシュ前政権で行われていた拷問を禁止すると宣言した際にも、拍手はまばらだった。

 ここがアメリカ外交の情けないところだ。特定の重要な課題、特に予算が絡むとなると、議会が進展を阻む。最近の議会は極めて偏狭でタカ派的だ。オバマが演説であまり外交問題に触れないのも不思議ではない。

 しかし、好むと好まざるとにかかわらず、アメリカは今後も世界に関わっていかなければならない。

■ 中東と北東アジアにおいて、米国の外交が破綻した背景を読み解く。米国は政治的トリレンマに囚われ、泥沼から抜け出すことができなくなった? 「白髪頭でズバリと斬る -じじ放談-(2014.8.22)」より
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ロバート・マンデルは(1)自由な資本異動、(2)為替相場の安定(固定相場制)、(3)独立した金融政策の3つの政策を同時に実現することができない「金融政策のトリレンマ」について問題提起した。2007年、ダニ・ロドリックは(1)経済のグローバル化(国際経済統合)、(2)国家主権、(3)民主主義の3つの政策が「金融政策のトリレンマに対応する」との仮説を提起した。(以上、ウイキペディアを参照)

トリレンマの面白さは二者関係の矛盾と対立(ジレンマ)ではなく「三者間の並立できない矛盾」を論じる点にある。「あれか?これか?」ではなく、より複雑な「あれ、これ、あちら」の三者間の並立は不可能という点が面白い。「二兎を追う者一兎も得ず」、ではなく「三兎を追う者一兎も得ず」に帰結する。

米国外交がダブルスタンダード(二重基準)であることは世界の常識となった。米国は他国を評価するとき「時と場所及び米国の国益」を勘案して判断基準を変える。覇権国家として世界に君臨した米国の二重基準こそ普遍的原理であったといってよい。米国のダブルスタンダード外交又はプラグマチズム外交によって世界は翻弄され、米国は中東においても、北東アジアにおいても「あちらを立てればこちらが立たず」のトリレンマの呪縛にからまれ身動きがとれない。

(※ 以下略、詳細はブログ記事で)















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最終更新:2015年02月09日 20:47