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★■ さらば、「ピケティ」:昨年末の日本語版発売以降、国内でもブームに火がついた仏経済学者トマ・ピケティ氏の世界的ベストセラー「21世紀の資本」。案の定、ブームに乗っかって政治的に利用する胡散臭い人々が現れた。彼らが大騒ぎするときこそご用心。まさに「ピケティブームの正体、みたり」である。 「iRONNA」より
(前後大幅に略、詳細はサイト記事で)
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 日本でピケティがもてはやされる背景に、近年言われる「格差の増大」への不安感があることは多くの識者が指摘する通りであろう。だが、日本で問題視されるべき「格差」とは、ピケティのいう「格差」なのか。「格差」とは何か、それは全否定されるべきものなのか。そもそもピケティ理論の核心は、人口に膾炙する「r>g」なのか――。
 こうした根本的な命題についてのコンセンサスや議論を抜きにした社会的言説は、特定のイデオロギーや価値観に流されがちだ。おそらくは本人の思考ともかけ離れてしまった日本のピケティ・ブームの「正体、みたり」である。


■ ピケティ氏は、日本の心配をするより欧州経済の処方箋でも書くべきだ! 「経済ニュースゼミ(2015.2.3)」より
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 ピケティ氏の注目度が増していますが、貴方は彼のことをどのようにお感じになっているでしょう?

 いいのです、本を読んでいなくても、単なる感想でいいのです。

 私、思うのですが…彼の主張を支持する人は本当はそれほど多くはないのではないか、と。

 だって、言っていることは、共産党や社民党と似たようなものではないですか。

 そうでしょう? 累進課税を強化すべきだとか金持ちから税金をもっと取れと言っているだけですから。

 要するにお金持ちの税負担を重くして、それによって得た財源を低所得層に回せと言っているのです。

 でも、実際にこれまで日本が歩んできた道はその反対。つまり累進課税は簡素化され、そして、消費税の依存度を高める政策が取られてきたのです。

 何故そんな政策が推進されてきたかと言えば、それが世界の流れだということでした。そうしないと日本は取り残されてしまう、と。

 今だって、日本の企業は声高に叫ぶのです。法人税率を下げないと企業は海外に逃げ出すぞと。お金持ちも同じです。所得税が高過ぎると、金持ちは海外に逃げ出すぞと。

 だから、仮にピケティ氏の主張に賛同する人がいたとしても、それを実行するのは至難の業なのです。どうやって実行することが可能なのでしょうか? それをピケティ氏に教えてもらいたいものなのです。
(※mono.--以下略、詳細はブログ記事で)

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 世界的なベストセラー「21世紀の資本」の著者、トマ・ピケティ氏が来日し、日本のメディアはこぞってかれに「日本はどうすべきか」と聞いた。メディアの多くは、日本の実情をよく調べもせず、ひたすらピケティ先生のご託宣にすがる。自国のことなのに、なぜ外国人に自国のことを聞きたがるのか。まさか、全知全能の神様じゃあるまい。米国や欧州のメディアなら「それはどんな根拠があるのか」という具合に、突っ込みを入れるだろうに。(夕刊フジ)

 この現象は戦後70年、脈々として流れる「欧米崇拝」のようでもある。自然科学や技術の分野ではすぐれた成果をどんどん取り入れればよいのだが、経済など社会科学で外国人専門家の言説をそのまま日本に当てはめてよいはずはない。
+ 続き
 経済の場合、日本は日本独自の伝統や文化に裏付けられた構造がある。それにアングロサクソン(米英)型の新自由主義を移植しようとしてきたのが、1990年代後半の橋本龍太郎政権による「金融自由化」や2000年代初めの小泉純一郎政権の「規制改革」路線である。

 メディアは「構造改革・自由化」のキャンペーンを展開してきた。その結果が「格差拡大」となると、今度はピケティ氏を招いて、英雄扱いだ。アカデミズムも、米国留学帰りの教授陣が新自由主義を焼き直す「知の府」東大がピケティ氏に頼んで、「公平な社会」について学生たちに講義してもらうという具合である。

 ピケティ氏が今回示した日本の処方箋については、筆者が以前から主張してきたものと一致する点が多い。若者や現役世代を優遇する税制への改革、賃上げの促進、多国籍企業や金融機関を一方的に利する税制への批判などである。筆者は「資本収益率rが経済成長率gを上回るとき、格差が拡大する」というピケティ理論に敬意を表し、「ピケティの定理」と名付けてもいる。

 しかし、この定理をうのみにするだけだと、「格差」にだけ焦点を合わせた民主党の党利党略や朝日新聞などのメディアの「売らんかな」戦略に乗せられてしまう。政策面では累進課税強化論や低所得者層へのバラマキ論へと議論が矮小(わいしょう)化されてしまう。

 これらの勢力は、消費増税を推進し、その結果、さんざん現役世代を痛めつけているという現実に目もくれない。デフレ下の消費税増税こそは、勤労者の実質賃金をマイナスにし、格差を拡大させているのに、消費増税支持政党やメディアが、ピケティ氏に「どうすればいいですか」と聞くのはまさに欺瞞(ぎまん)を通り越して、滑稽そのものではないか。

 グラフは、ピケティ氏の超長期的なデータに頼らず、筆者自身が調べ上げた、「r>g」の日米比較である。よくみると、日本は米国型に引き寄せられているようでいながら、これ以上突き進むかどうか躊躇(ちゅうちょ)している。日本は日本なりの経済成長を遂げて資本収益率との差を縮めるやり方があるに違いないのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

★■ ピケティ「21世紀の資本」は通貨発行権と信用創造特権を問題にしないため抜本的な問題解決にならない 「niconico(2015.1.22)」より
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社会の所得格差の問題を取り扱ったトマ・ピケティの「21世紀の資本」が話題である。

私もパラパラとだが読んでみた。
(700ページもある大著なのでまだ熟読はしていない)

この本の様々な評論も読んだ。

今のところの感想としては、
典型的な旧来型の社会民主主義的な理論である。

その特徴は以下のとおり。

  • 貧富の格差を無くすために累進課税の強化を求める
  • 資本課税・資本規制の強化を求める

上記の二つは現在の格差社会を是正するための良い意見である。

問題は以下のことを資本主義経済の矛盾として指摘していないことだ。

  • 中央銀行と民間銀行のみが通貨発行権を独占していること
  • 銀行業によって通貨が作られるため、社会が借金まみれになること
  • 国家が通貨を作れないため、財政赤字を抱えてしまうこと

貧富の格差を問題視することは良いことだが、
資本主義経済の根源的な矛盾である銀行業による
通貨発行権の独占(FRBの株主であるロスチャイルドやロックフェラーのような
国際銀行財閥群)については全く問題視していない。
また殆ど論じてもいない。

ピケティ氏の本を読んでも、現在の金融経済をバブル化
させ格差をもたらす量的緩和政策や、社会保障の削減や
増税をもたらす莫大な財政赤字の問題
については何も解決しない。

中央銀行と民間銀行による通貨発行権の独占
こそが、現在資本主義経済の最大の矛盾であり問題なのである。

ピケティ氏の本が驚異的に売れている理由はクルーグマン
やスティグリッツのようなノーベル経済学賞の著名人、
更には様々な経済誌や大手メディアなどが積極的に
プッシュしてるためだ。

新自由主義に対する社会のバランサーの役割として国際金融
権力の側が新たに提案してきたものであろう。

通貨発行権と国際銀行財閥・金融軍事権力の問題
を取り上げず無意識化してきた従来の政治経済学の焼き直しである。
(※mono.--以下図表などもあるが略、詳細はサイト記事で)



21世紀の資本(日本語音声)
『21世紀の資本』の著者であるトマ・ピケティ教授の東大特別講義の模様を配信します。(同時通訳による日本語音声)
1/1講義実施日2015年1月31日対象大学生 一般
(※mono.--動画は「東大TV」サイトで)
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授業について
2014年の英訳版の出版以降、世界的に注目を浴びている書籍『21世紀の資本』。著者である経済学者のトマ・ピケティ教授をお招きし、東大生をおもな対象に特別講義を開催しました。 貧富の差や所得の分配について膨大なデータを分析した研究の軌跡や、格差というテーマそのものについて、皆様の考えを深める一助になれば幸いです。

トマ・ピケティ東大講義「21世紀の資本」
主催:東京大学 附属図書館、大学総合教育研究センター
協力:みすず書房、日経BP社

★『21世紀の資本』(日本語訳)書籍情報:http://www.msz.co.jp/book/detail/07876.html
★ピケティ教授の研究データはこちら:piketty.pse.ens.fr/en/capital21c2
★後日、質疑応答(英語、日本語音声)を公開予定です。
Twitter (@UTokyoTV) または Facebook にて最新の更新情報をご確認ください。


★■ ピケティ氏語る「人口減の日本、富の集中進む」 「読売新聞(2015.2.3)」より
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 格差問題を掘り下げた世界的なベストセラー「21世紀の資本」を書いた仏経済学者のトマ・ピケティ氏(43)。日本に滞在した1日までの4日間、「人口減の日本と欧州は世襲社会に戻りつつある」「若者に有利な税制改革が必要」などの指摘は大きな注目を集めた。

 一方、「累進課税強化は世界に逆行する」「格差が拡大し続けるとの考えは無理がある」などの批判もある。

 ◇来日中のピケティ氏の主な発言は次の通り。(読売新聞とのインタビュー、日本記者クラブでの記者会見などから)

 【格差の状況】

 20世紀初頭まで、(各国の)貧富の差は大きかった。2度の世界大戦で(インフラなどの)資本が破壊され、格差はいったん縮小した。1970年代までは戦後復興の高度成長で格差はそれほど広がらなかったが、80年代以降、日米欧いずれも格差が拡大している。特に米国でその傾向が顕著だ。

 「資本の収益率(r)は経済成長率(g)を上回る」という数式が歴史的に成り立つ。富裕層の株や不動産などの財産が大きくなるスピードは、一般の人の所得が上がるスピードよりも速い。適切な政策がとられなければ、富の集中はさらに進むだろう。

 日本や欧州は、人口の減少によって、世襲社会に戻りつつある。富を相続する人の数が減り、富裕層の子供は以前より多くの財産を引き継げるようになった。一方、相続できる財産がなく、労働所得のみに頼る若い人が不動産を所有するのは難しくなっている。

 【格差の是正策】

 富裕層を対象に、不動産や株式などの資産に対する累進的な課税を世界的に強化すべきだ。日本は国内総生産(GDP)の規模で見ても世界で重要な国なので、大事な役割を担うべきだ。

 格差の縮小と経済成長は両立可能だ。そのためには、国民の幅広い層が適切な教育と職業訓練を受けられるような環境づくりが必要だ。

 【日本について】

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」は、格差を拡大する一方で、経済は低成長になるという最悪の事態に陥るリスクがある。金融緩和は資産のバブルを生むだけだ。取り組むべきは賃上げの強化だ。

 消費税率の引き上げは、幅広い層に影響するので、経済成長にとってはよくない。財政再建には、高齢者を中心とした富裕層から税金を多く取るべきだ。

 所得税の最高税率が高かったかつては格差が小さく、経済成長率も高かった。固定資産税に累進制を導入することも考えられる。人口減少社会となった日本では、相続財産が重要な役割を果たす。

 その一方で、低所得者層への課税を引き下げるなど、若者に有利な税制改革が求められる。(栗原健、山内竜介)


★■ 「格差があって何が悪い?」 “ピケティ人気”に焼きもち…米学者言いたい放題 「産経ニュース(2015.2.3)」より
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 1月初め、米ボストンで米経済学会の年次総会が開かれた。経済書としては空前の人気となった「21世紀の資本」の著者である仏経済学者、トマ・ピケティ氏も招かれ、格差問題に関するパネルが催された。司会役は、ハーバード大教授で米国を代表する経済学者、グレッグ・マンキュー氏である。(フジサンケイビジネスアイ

攻撃的な姿勢

 参加者の間で話題となったのが、マンキュー氏のピケティ氏に対する攻撃的な姿勢だ。資本利益率「R」が、経済成長率「G」を上回っているがゆえに格差が生まれていることを説明するピケティ氏を揶揄(やゆ)して、「R>G だからどうした?」という小論文を発表した。

 しかもだ。「格差があって何が悪い?」「彼(ピケティ氏)は金持ちが嫌いなのだ」とまでマンキュー氏は言い放った。

 「経済書がここまで人気になったのは珍しい」とマンキュー氏はほめたものの、「21世紀の資本」と比較した過去のベストセラーが「フリーコノミクス(ヤバい経済学)」だった。学問書というより、人気はあったが亜流の経済書で、「ピケティ人気」を半ばひがんでいるのだろう。

 マンキュー氏の立ち位置は「ニュー・ケインジアン」である。「市場の失敗」や「不完全競争」といった市場機能の不備を指摘するが、家計や企業がもつ「合理的な期待」という要素を取り込んだ点で、リベラルといっても伝統的な「ケインジアン」よりも自由主義に近い。マンキュー氏も「ある程度の自由な資本主義は人類が得た大きな成果の一つだ」としている。

米はジニ係数高水準

 それでも、彼がむきになって反論するのはわけがある。ノーベル経済学賞学者のジョセフ・スティグリッツ氏の言葉を借りるまでもなく、疑いもなく「米国は世界に冠たる格差社会」だからだ。米国には、マンキュー氏をむきにさせる「不都合な真実」があるのだ。

 米国は、格差度を示すジニ係数が先進国最高水準の0.47ある。富裕層上位1%の所得は社会全体の20%を占める。

 中間層は苦しい。フルタイムで働く男性の保有資産は1990年代初めと同水準のままである。

 底辺層は悲惨だ。ニューヨークの場合、ホームレスの数は昨年11月末時点で6万人超と過去10年間で約6割増えた。オバマ大統領が1月の一般教書演説で格差問題を取り上げるわけである。

 あえてマンキュー氏を擁護すると、格差「絶対悪」論者や反資本主義者といった左派が「ピケティ人気」に便乗して、論陣を張り始めたのも事実である。ピケティ氏は昨年に何回か訪米して講演したが、壇上で隣に座るのはマルクス経済学者だったケースがあった。

 ピケティ氏は資本主義も市場原理も否定していない。ある程度の格差が成長のための均衡状態である点は、多くの経済学者も認めている。1月末に訪日したピケティ氏は日本でも大人気だったそうだが、訪米時と同じく、左派を元気付けたようだ。仮にさらに累進課税を導入しても、それを再配分するのは政府であり、効率的な格差是正が約束されるわけではない。

 しかも、日本の根源的な格差は政府による再配分後に際立つ世代間格差である。米国の格差是正ブームを直接輸入するのは間違いなのだ。(松浦肇・産経新聞ニューヨーク駐在編集委員)


★■ ピケティ氏、なぜ注目? 定説覆す「富は富裕層に集まる」 「産経ニュース(2015.1.31)」より
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 2013年8月に出版された「21世紀の資本」は昨年、米国でベストセラーとなるなど、すでに世界で約150万部が発行された。昨年12月には日本版も発行され、税込み5940円の高価な専門書としては異例の13万部を突破した。著書の内容は国会でも議論され、格差解消の処方箋として富裕層に対する資産課税強化を訴えていることについて、安倍晋三首相が「執行面でなかなか難しい面もある」と発言している。

 著書が注目を集めたのは、「資本主義の発展とともに富が多くの人に行き渡って所得分配は平等化する」という、従来の経済学の定説を覆したためだ。

 ピケティ氏は新たに、株式、預金、不動産などの資本の収益率(r)は、所得や産出の年間増加率である経済成長率(g)を上回る「r>g」という不等式が成り立つと主張。親からの相続などで得た資本を持つ人ほど収入が増え、そうでない人は不利になるとした。解決には、世界規模で富裕層に対する資産課税を強化することを提案する。

 その画期的な内容に加え、1870年代までさかのぼった古文書などを10年以上かけて集めデータ化したこともあり、反響を呼んだ。ただ、統計の選択をめぐっては「恣意的」と疑問を投げかける声もある。

 ピケティ氏は、パリ郊外生まれの43歳。米マサチューセッツ工科大の助教授などを経てパリ経済学校教授。2007年の大統領選では、社会党のロワイヤル氏の経済顧問を務めた。


■ トマ・ピケティ氏、「民主主義は闘争。誰もが関わらなければならない」と日本の若者にメッセージ 「BLOGOS(2015.1.31)」より
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30日午後、来日中の経済学者、・トマ・ピケティ氏がニコニコ生放送に出演、萱野稔人氏(津田塾大学教授)と日本と世界経済の今後について語り合った。

番組は、視聴者からの質問にピケティ氏が回答する形で進み、最後はピケティ氏が日本の若者に「戦ってください。民主主義というのは戦いです」とエールを送った。番組の様子を書き起こしでお伝えする。

過去の歴史を見れば格差が成長に寄与しなかったことがわかる

萱野稔人氏(以下、萱野):ニコニコの皆さん、こんにちは。萱野稔人です。今日は著書「21世紀の資本 で欧米圏を中心に、大変大きな反響を引き起こしているトマ・ピケティさんをお迎えしています。ユーザーの皆さんの質問を中心に短い時間でありますが、お話を伺っていきたいと思います。ピケティさん、今日はよろしくお願いします。

ここにコメントが出てますけれども、これは今インターネットを通じて、この対談を見ている視聴者の皆さんが書き込んでいるものです。視聴者の皆さんに一言お願いします。

トマ・ピケティ氏:(以下、ピケティ)日本に来ることが出来て、とても喜んでいます。日本語で私の本を読んでいただくことができるようになって、きわめて重要だと私が考えている問題について、議論が進んできているのを見ることが出来て、とても喜んでいます。

萱野:ありがとうございます。こちらも来ていただいて、本当に嬉しいです。ここからはユーザーの質問を交えつつ、お話を伺っていきます。最初に、鹿児島県・30代男性からの質問です。

日本では現在、経済成長を達成するために、成果主義などの競争原理が導入されつつあります。その結果、労働者の中で格差が広がっています。成長のために格差を許容すべきでしょうか。

ピケティ:そうですね。格差拡大、過去20~30年ぐらい日本で格差が拡大したというのは成長にとってもあまりよくなかったと思います。つまり、低成長の中で格差が拡大してきたということなので、格差を許容するというのは、あまり効果がなかった。

経営者と労働者の間の賃金格差あるいは所得格差というのは、あまり成長に役に立ってこなかったということが出てきている。なので、「もう少し格差があったほうが成長にいい」ということがよく言われるのですが、過去の歴史を見るとそうなっていなかったということです。

萱野:その点で言うと、かつて日本には定年まで雇用を保証するような終身雇用という制度がありました。こうした社会的、もしくは社会主義的とも時々言われますが、労働者保護の政策を格差が広がる現代において、再評価すべきでしょうか?

ピケティ:まず最初に言っておきたいのは、私は日本の労働市場についてよく知っている者ではありませんし、「日本がどうすべきか」というような教訓を述べられるような、そういう立場にある人間ではありません。

しかし、例えば非常に保護主義的な状況があったとして、またいわゆるパートとか臨時雇用とかそういう人たちがたくさんいるというような状況になると、これはもちろん格差、不平等にはいい状況ではありません。

日本の労働市場における不平等というのは特に大きいことになると、若い世代にとってはダメージが大きいということになると思いますし、特に女性には非常に問題であるということだと思いますので、若い世代が将来的に非常に状況が厳しくなってしまうということがあると思います。

なので、労働市場の環境として、保護主義的すぎるといけないと思いますけれども、より人口の多くの人たちをカバーするような保護的な、つまり一部だけを保護するのではないものをつくる必要があると思います。

萱野:経済成長のために格差を許容すべきではないのであれば、経済が停滞することで逆に格差が開いてしまうのではないでしょうか?

ピケティ:完全な平等を得るべきだと言っているわけではありません。つまり、成長のために、インセンティブのために、イノベーションのために、ある一定の格差は必要だと思いますけれども、不平等が広くなりすぎると、最早それは成長に資さないという状況があると思います。

例えば、日本の場合には、非常に何十年にもわたってといってもいいと思うのですが、この成長に対してポジティブなインパクトがない中で格差だけが広がってきたという状況があるとするならば、これ以上、格差が広がったからといって成長すると考える理由はないと思います。

どんな場合でもトリクルダウンが起こるわけではない

萱野:なるほど。これは富山県の40代の男性からの質問なのですが、そもそも格差は悪いことでしょうか?底辺層の生活水準さえ、全体として上がるなら格差が広がっても問題はないんじゃないでしょうか?

ピケティ:もしも、底上げということで、一番底辺の人たちの所得が上がるのであれば、格差というのは正当化できると思います。

私の本を見ていただきますと、一番最初のところ、これはフランス人権宣言、1789年のものが書いてあって、共通の利益があった場合のみ、この社会的差別というものが許容されるんだと。

ですから、格差というのも、いろいろな社会における社会集団すべてに貢献するのであれば、格差というのは認められるべきであると私も思います。

日本の場合には、上位所得層、つまり上位の10%の富裕層というのが、30~40%ぐらい全体の所得を取るようになってきていると思います。しかし、その間、成長はほとんどゼロに近かった。つまり、成長なき、あるいは非常に低成長の中で、トップに行く分け前が増えていくということになりますと、絶対的な、それ以外の所得層に対して行くものがなくなっていくことになります。

という場合には、この格差というものは正当化できない。社会全体にとって良いことだとは言えない。もちろん、いわゆるトリクルダウン効果といわれるような、最終的に格差があったとしても一番底辺にまで富が行くのだからいいという意見に反対ではないんですけれども、毎回必ずそうなるとは言えないというのが、過去のエビデンスを見ても言えることです。

この格差と成長がどう進展してきたのかということを、過去を見ると、そういう主張が果たして当たっているのかどうか。民主主義ということが逆に阻害されていないかということが、重要な点になります。

経済ゲームにおいて、勝者、高所得層というのは、「最終的に社会全体にメリットがあるんだからいい」というのですが、それが「真」であった時期も場合もあるかもしれませんが、そうでない場合もあって、誇張されて主張されているところがあると思います。

萱野:次は、島根県・30代男性からの質問です。日本では今、政府債務がGDPの200%あります。 これはどれぐらい深刻な問題だと、ピケティさんは考えますか。それともあまり深刻でないと考えていますか?

ピケティ:ここで重要なのは、公的債務とそれから民間資産の伸びが、どういう関係にあったかということです。日本の場合を考えると、民間の資産、つまり家計が例えば不動産であるとか、金融資産をどのように持っているか。これは対GDPでドンドン伸びていて、それは公的債務の伸び率よりも上回る伸び率で伸びてきたわけです。

別の言い方をすると、次世代に、つまり日本の次の世代、ヨーロッパの多くの国もそうなのですが、相続したものよりも多くのものを残せるようになっていると。少なくとも、そういった私有財産ということで残せるものをもっている人は、これを大きくして次の世代に残しているということになります。

なので、その民間資産マイナス公的債務で残ったものを見ると大きくなっているわけです。結果として、ヨーロッパ各国、日本というのは、どんどん民間は豊かになってきている。政府はどんどん貧乏になってきていますけれども、全部あわせると国として、どんどん豊かになってきているわけです。

公的な富と民間の富。これをどう配分するかということは、課税、つまり税制をどうするのか。例えば、労働所得に対して、どう課税をするのかということで決めることが出来ると思いますし、若い人たち、例えば相続した資産がない、自分が提供できるのは労働だけであるということになると、これは非常に厳しい情勢ということになるかもしれません。

特に不動産に対して、地価が非常に高いということになると、なかなかアクセスができないということになってしまうかもしれません。なので、問題はどう税制をリバランスするのか。若い人たちにメリットがあるように、どう作り変えていくのか、ということになると思います。

この公的債務というのは分配の問題で、それ自体が問題ではないと思います。何故かというと、日本の国の富、民間部門に蓄積された富も考えると、全体としてはGDPに対して増えていってるからです。

民主主義は闘争。誰もが関わらなければならない

萱野:時間がないので、これが最後の質問になるのですが、山形県の30代からの質問で、今政府債務を返済するために、日本では二つの意見がするどく対立しています。

一つの意見は歳出削減によって緊縮財政をすべき。それによって、政府債務を返していくべきである。もう一つが、金融緩和によってインフレを誘導することで債務を小さくすべきだという意見。 この2つが議論されていますが、ピケティさんはどちらを支持しますか。

ピケティ:まず3つ目の可能性もありますよね。

特に過去でいろいろ使われた、いわゆるデッドリスケといわれているものです。これは、私有財産に対する累進性の課税ということで、これが文明的に使われてきたものです。過去すべて使われてきて、成功した例もあると思います。

歳出削減という選択、公共において富を蓄積するというのは非常に時間が掛かるという問題があると思います。歴史から学べる教訓の一つとして、おそらく混合させる、つまり若干インフレに誘導をし、若干債務のリストラクチャリングをやりという風に、組み合わせていくというのが一番いいと思います。

歳出だけを削減して、債務返済をする。その際に成長もインフレ率も非常に低いままということになりますと、50年、100年というような影響が出てくるということなので、本の中にも書きましたけれども、唯一挙げられるのは、19世紀の英国の例です。

まるまる一世紀掛かって、ようやく公的債務を返済しました。そのかなりの金額を国内の金利生活者に対する利払いに使ってしまって、教育に回すお金をどんどん減らしてきたということなので、日本にとっても、ユーロ圏にとっても、これはあまりいい解決法とは考えられません。

歴史を見て、今までの公的債務危機と呼ばれているものを、どういう風に対応してきたのかというのを学ぶことで、一番いいやり方というのを模索するのが重要だと思います。GDPの200%という公的債務水準になったのは、日本が初めてではありません。1945年のドイツやフランスでも、それぐらいありました。200%。しかし、これは今言ったとおり、債務のリストラクチャリングとインフレ誘導によって、あっという間に解消したわけです。

やはり成長に投資をし、教育に投資をし、次世代に投資をすることによって、公的債務を急激に減らしていく方法がいいと思います。

萱野:ありがとうございます。あっという間に時間が来てしまいました。今日はピケティさんにいただけた時間というか、スケジュールが本当に詰まっていますので、この時間しかありませんでしたけれども、時間が来てしまいました。

ピケティさん、ありがとうございました。最後に一言だけ、日本の若者にメッセージをいただければと思います。

ピケティ:そうですね。戦ってください。民主主義というのは戦いです。つまり、社会、財政制度、若者にとって、公平、今のところあまり待遇がよくないようなんですけれども、待遇改善のための闘争だと思います。

民主主義はもっと強化できる。しかし、民主主義というのは、闘争です。誰もが関わらなければなりません。

萱野:ありがとうございます。視聴者の皆さんも最後までご視聴ありがとうございました。











最終更新:2015年03月05日 19:00
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