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★ ガメラレーダー 日本海の要、接近 中国重鎮の思惑 「産経ニュース(2014.4.6)」より (4808資料1
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 新潟県・佐渡島に中国の影がちらつく異変が起きている。航空自衛隊が誇る高性能警戒管制レーダー、通称「ガメラレーダー」があるこの島を中国要人が訪れ、中国と関係が深い男性が経営する学校法人が地元観光施設を1円で手に入れた。連載第1部で明らかにした長崎県・対馬の韓国経済への依存と同様、国境離島の深刻な“不安材料”がここにもあった。第2部は佐渡島の現状を報告する。(宮本雅史)

 沖縄・尖閣諸島沖で中国漁船による衝突事件が起きた直後の平成22年10月30日朝。背広姿の男たちが佐渡・妙見山(標高1042メートル)中腹の峠の茶屋「白雲台」で休息を取っていた。山頂にそびえ立つ航空自衛隊佐渡分屯基地のガメラレーダーとの距離はわずか3キロ。佐渡の市街地や両津湾も一望できる。

 一行の中心は中国の唐家●元国務委員。そのほか、中国在新潟総領事館の王華総領事(当時)、新潟で絵画教室を運営する学校法人新潟国際芸術学院(新潟市中央区)の東富有理事長兼学院長、そして佐渡市の甲斐元也副市長(現市長)の姿もあった。

 前日に佐渡に入り1泊した唐氏はこの日、佐渡金山を見学した後、観光道路として有名な「大佐渡スカイライン」で紅葉を楽しみながら白雲台に立ち寄った。スカイラインはここで、妙見山頂と麓を結ぶ自衛隊管理の「防衛道路」につながる。防衛道路沿いの標高450メートル地点にはレーダーをつかさどる重要施設「キャンプサイト」もあるが、4月下旬から11月中旬までは観光道路として一般にも開放されている。

 休息を終えた唐氏一行は防衛道路を使って山を下り、次の目的地のトキの森公園に向かった。


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 今年2月中旬、雪の佐渡分屯基地を訪ねた。

 分屯基地は、第46警戒隊と中部航空施設隊で構成。第46警戒隊はキャンプサイトからガメラレーダーを通して24時間、日本海上空を監視している。最大の敵は冬の暴風雪だ。「基地全体がすっぽり雪に埋もれてしまう。吹雪で視界が10メートル、ひどいときは1メートルを切るときもある」。源田進1等空尉はこう話す。

 キャンプサイトから雪上車で山頂に向かう途中、白雲台にも立ち寄った。ここからはガメラレーダーがはっきりと大きく見えた。

 そのレーダーの重要性は、拡大路線を続ける中国との関係悪化でさらに高まっている。

 中国吉林省の延辺朝鮮族自治州の日刊紙、延辺日報などによると、中国は日本海に面する北朝鮮の羅津港を租借して50年間の使用権を獲得、平成24年には羅津港から100キロ離れた清津港を30年間使用する権利も確保したという。

 当時と違い、北朝鮮は張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の処刑以降、中国との関係が悪化しているとみられている。ただ、羅津港と清津港はいずれも針路を東に取れば津軽海峡に、南下すれば佐渡島に行き着く。防衛省幹部によると、中国の空母・遼寧の動向が大きな懸念材料だという。「60機、70機の戦闘機を搭載できるので、1つの航空団並みの大きさになる。それがそのまま、日本海を動いているのと同じようになり、脅威になる。中国は今、太平洋進出を狙っているので気が抜けない」

 この幹部はさらに危険なシナリオも口にした。「中国が佐渡島や新潟に拠点を作ると、日本海が中国の内海化する危険性がある」


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 唐氏の佐渡訪問の目的は何だったのか。唐氏は白雲台に立って何を感じたのか。

 唐氏の同行メンバーで現在の佐渡市長、甲斐氏は「唐氏は金山とトキの森公園の見学が目的だった。佐渡を一望したいというので、白雲台に立ち寄って休憩しただけ。ガメラレーダーは話題にもならなかった。佐渡が乗っ取られるんじゃないかといわれるが、その形跡は全くない」と説明する。

 一方で、中国共産党に詳しい関係者はこう指摘する。「唐氏クラスになると党中央書記局の指示がないと自由に動けない」

 唐氏が佐渡を訪れたころ、新潟市と佐渡市では中国が絡んだ2つの“プロジェクト”が動いていた。





道の駅、研修施設に 「1円売却」 深まる中国依存


 佐渡島の表玄関・両津港から約3キロ。県道65号を車で10分ほど走ると、道の駅「芸能とトキの里」(佐渡市吾潟)に着く。ところが、目立つ場所に「学校法人 新潟国際芸術学院佐渡研究院」の看板が掲げられ、レストランも土産店もない。

 この施設はもともと、JA佐渡と佐渡汽船グループが設立した「佐渡能楽の里」が運営していたが、観光客の減少で経営不振となり解散。絵画教室などを運営する学校法人新潟国際芸術学院(東富有理事長、新潟市中央区)が、建物部分(延べ床面積約3600平方メートル)を1円で購入した。同学院は土地もJA佐渡から無償で借り受け、23年6月から研修施設として利用している。

 「持っていても税金がかかるだけ。二束三文でも手放したかった」。地元のベテラン市議は、“1円売却”の経緯をこう話した。

 東理事長自身の説明によると、同理事長は中国・瀋陽の魯迅美術大を卒業。平成3年に新潟大大学院に留学し、5年後に日本国籍を取得。21年1月に「中国などからの短期留学生に新潟の自然風景を描かせたい」と新潟国際芸術学院を設立した。道の駅については、市などから、芸術分野での活用を働きかけられ、“購入”を決めたという。

 道の駅での好条件は、建物と土地だけではない。道の駅本来の公的性格のある観光施設機能を兼ねており、市は一部の運営費の補助を以前通り続けている。これまでの3年間で、その額は、屋外トイレ付帯設備費511万円、駐車場維持費98万円、合併処理浄化槽費650万円、インフォメーション費241万円にのぼる。

 オープンから3年。「改装工事が進んでいる気配はなく、実態が分からない」(元県議)といぶかる声も出ているが、東理事長は「水彩画教室をメーンにダンス教室や料理教室、陶芸教室なども開いている。佐渡は観光客が減り元気がない。留学生が年間3千人来れば佐渡はよくなる」と地元への貢献を強調する。


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 新潟国際芸術学院が佐渡に進出したころ、新潟市内では、中国在新潟総領事館の移設問題が起きていた。

 新潟に総領事館が開設されたのは22年6月。当初、商業ビルに入居したが、同年10月に新潟市の学校法人NSGグループとの間で、専門学校の旧校舎を5年間借りる契約を結んで移転、現在もそこを使用している。

 ただ、この間、中国側は「単独使用できる土地と建物」の取得にこだわり、地元の活性化につながる「大中華街構想」も打ち出して新潟市に要望してきた。市が一度、市立万代小跡地の約1万5千平方メートルを候補地として提示したが中国への不動産売却に対する市議会などの反発で23年3月に頓挫したこともある。

 そして同年12月、中国側は突然、県庁近くにある新潟市中央区新光町の民有地約1万5千平方メートルを購入した。登記簿に経営内容が不明瞭な企業名が登場するなど、売買過程に不透明さも残る。関係者によると、簿価は7億円前後だが、売買価格は15億円前後と推定されるという。

 日本政府がこの売買を認知したのは翌24年1月。中国側はこの広大な土地に総領事館のほか、総領事公邸や職員宿舎、市民との交流施設、駐車場などをつくると説明しているが、所有権の移転登記はまだ行われておらず、建設時期も不明なままだ。

 この売買をめぐっては、国会で質問が行われたこともある。24年3月22日の参院国土交通委員会で、地元選出で自民党の中原八一議員が「安全保障の観点から、政府全体として土地規制の在り方について検討すべきだ」と外国資本の不動産買収に規制を求めた。その一方で、中原氏は新潟の問題に限っては「中国側からしっかり総領事館建設の中身を聞いて、それが妥当であるというのであれば外務省がしっかりと仲介に立ってぜひ進めていただきたい。新潟県としては建設に反対するものではない」と早期の総領事館移設を訴えた。

 新潟は日中国交正常化を実現させた田中角栄元首相の地元。佐渡にトキの提供も受けている。官民を問わず中国との交流は深い。「新総領事館が完成すると、治外法権で対応できない場所が拡大される」(元県議)と批判的な声も根強いが、大きなうねりにはなっていない。


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 総領事館の開設と不動産取得。佐渡での新潟国際芸術学院進出と唐家●氏の訪問。この時期、中国では有事の際に国と軍が民間のヒトやモノを統制する国防動員法が施行され、北朝鮮の羅津港や清津港の長期租借が決まった。

 東理事長は「私はもう日本人なのだから、中国とは関係ない。私は中国は好きじゃない。特に政府は好きじゃない」と中国政府とのかかわりを強く否定する。

 その一方で新たな動きもある。地元の大手ホテル会社の社長が説明する。「総領事館と東先生、市で、道の駅の場所に国際美術大学を作る計画がある。中国から学生を集めることが前提で、すでに中国の大学2校が学生を送り込むことが決まっている。佐渡を世界に発信できる」

 これについて佐渡市長の甲斐氏も「新しい大学は、東さんの学院の(中国の)提携校とも提携して学生を連れてくる」と中国との連携に期待している。地域振興のために中国を活用しようとする佐渡。その思いに歩調を合わせる中国。佐渡の中国依存が深まっている。




【用語解説】佐渡島

 総面積は東京23区の約1.5倍に当たる約855平方キロ。択捉、国後、沖縄本島に次いで国内で4番目に広い島。平成16年3月、島内10市町村が合併して佐渡市が誕生。人口は今年3月1日現在で6万593人。

●=王へんに旋













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最終更新:2014年04月06日 16:45