音楽 / 音源


■ 今ふたたびカセットテープが注目される理由とは? 「Livedoornews-コネタ(2013.8.24)」より
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6月にリリースされた、DJ CAT FOOD「猫飯」カセットテープ。猫型のパッケージは、ひとつひとつ手作業で切り抜かれたもの
「CDが売れない時代」と言われるようになって久しい音楽業界。そんな中、国内外のインディーズシーンで密かに、カセットテープでのリリースが増えているという話を聞きつけた。

カセットテープ……80年代生まれの私にとっては、ノスタルジーを呼び起こすワードのひとつ。家族で「しーっ!」と言い合いながら息をひそめてテレビの音を録音したことや、CDをダビングしているときに、残り時間であと1曲ぎりぎり入るかどうかというときの緊張感などなど……みなさんもカセットテープにまつわる懐かしい思い出があるのでは?

そんなカセットテープ世代としては、リリースが増えているというのは、なぜだか理由もなく嬉しくなるニュース。けれど、実際にカセットテープで音源を出すことの良さって、どんなところなんでしょう? そこで、現在カセットリリースに力を入れているというインディーズレーベル「ZOMBIE FOREVER」オーナーの森幸司さんに聞いてみました。「なぜ今、カセットテープなんですか?」
+ 続き
「僕も80年代生まれで、カセットテープはいちばん愛着があるメディアなんです」と語り始めた森さん。彼の運営する「ZOMBIE FOREVER」は山形を拠点とするレーベル。地元のいい音楽を全国に伝えたいという思いから、以前はCDを全国流通していたそう。

「自主流通するところから始めて、大手レコード店への流通までこぎ着けたんですが……本当に届けたいところに届いてないんじゃないか? という違和感が生まれ始めて」。流通という形に疑問を感じ始めた森さんは、信頼関係の築けるレコード店だけに限定して、委託販売するよう路線を変更したという。

「不特定多数のリスナーに届く確率は減りましたが、反応がダイレクトに返ってくるようになり、自分たちの手で作ったものが直接届いているという感覚になりました。それまでの違和感は吹っ飛びましたね」

そんな試行錯誤の延長線上に、カセットテープでのリリースがあったそう。

「カセットテープは頭出しができないので、一曲一曲ちゃんと聴くようになりますよね。今の10代の子って曲名をほとんど覚えないし、誰が作詞作曲したのかなんかも興味がないらしく……。僕はなるべくレコーディングからパッケージングまですべての過程に関わるようにしているので、しっかり聴いて細かなところまで知ってほしいという想いも強くて、そのへんをカセットテープに託したいと思ったんです」

制作はかなりのDIYスタイル。まずブランクテープに音源をダビングし、ジャケットのデザインをA4版の厚紙に印刷、テープのインデックスシールもA4版のフリーシートに印刷し、それぞれカット。素材が揃ったところで組み立てていくという作業方式をとっている。パッケージングもひとつひとつホチキスでとめているのだとか。

「全国流通しているときはいろんな人が関わってくれていたので、自分たちの手作りだ、なんて口が裂けても言えませんでした。自分たちだけでやり始めてみたら、手作りじゃないと理想通りにならないことがわかって。業者に頼んだほうが安い場合もあるのですが、今はとにかく好きなように作るということを貫いています」

現在までに、レーベルからリリースされたカセットテープは3タイトル。8月24日には、初めてのカセットテープリリースとなるアーティスト、OBUTSUDAN-SUMINOさんの音源発売が控えている。アーティスト目線で、カセットテープというのは果たしてどんな意味を持つのでしょう?

「最初に森くんからカセットテープでのリリースを考えてみてほしい、と言われたときはピンとこなかったんですが、その後、具体的に音源のイメージを膨らませていったときに『曲と曲の間に明確な境目がなく繋がっている音源がいいな』というところに行き当たって、それこそカセットテープという形でならうまく実現できるのではないか? と。カセットテープって、早送りと巻戻しはできるけど、瞬時にトラックを変更したりとか、聴く部分を思い通りにコントロールできないじゃないですか。そういう、聴き方に制限のある音源を作りたかったんです」

自身もカセットテープ世代だというOBUTSUDAN-SUMINOさん。デジタル音源と比べて、カセットテープには形あるものとしての重みを感じるそう。

「手に取って『モノ』として聴いてもらいたい、大事にしてもらいたいっていう思いもありました。デジタルの音源は僕も便利に使っているんですけど、この半年くらいで立て続けにハードディスクが3台も壊れて、取り込んでいた音楽データが一気にほぼ0になったんです。でも、何百ギガっていう膨大な量の曲がなくなってしまったのに、あんまりヘコまなかったんですよね。だけど、たぶん同じ量のCDやカセットテープがいきなりなくなったら、めちゃくちゃヘコむと思うんです。だから、自分が作るなら、作り手としても思い入れがより深い形にして出したいなと」

しかし、カセットテープを再生できるプレーヤーを持っていないという人も多そう。お二人はそのあたり、どう考えているのでしょう。

「普段ライブを観てくれるお客さんの中にも『聴きたいのにカセットプレーヤーがない!』という方も当然いるので、初回生産盤には同じ内容のCD-Rを特典として付けることになりました。一方で『実家にカセットプレーヤー取りに帰ろう!』とか『カセットプレーヤー買おう!』という反応もあって、そういう声がめちゃくちゃ嬉しかったです」(OBUTSUDAN-SUMINOさん)

「誰もが再生機器を持っていないのはマイナスですが、本当に聴きたい人はプレーヤーを買うでしょうし、いい音楽をリリースしていれば、リスナーがちゃんとついてきてくれるという手応えはあります。実際、これまでにリリースしたタイトルでCDよりも売れているものもありますし、この先テープも自然と広がっていくと思います」(森さん)

現在の生産スタイルだと、初回に用意できる数は100~200本が限度だとか。しかし「量産はできないですが、まだまだ紹介しきれていないバンドやアーティストが全国にいっぱいいるので、これからもテープを巻き続けます!」と森さんは力強く宣言。そんな姿勢はきっと、リアルタイムでカセットテープを使っていた人たちはもちろん、カセットテープを知らない若い世代の人たちにも魅力として伝わるはず。

CDが売れない時代、それはデジタルの方向だけではなく、アナログ回帰の方向にも可能性が広がっているということ。実際に経済産業省の統計で、音楽用、映像用、データ用を含む「磁気テープ」の国内生産量が3年連続で増加というデータも発表されている。特に東日本大震災後は、データ保存媒体としての価値が見直されているとのこと。

カセットテープには、まだまだ秘められたポテンシャルがありそう。みなさんももう一度、その魅力を見直してみませんか?
(tomoe imazu)

OBUTSUDAN-SUMINOさんのカセットテープリリースを記念して、イベントが開催されます
『どろにんげん 東京編』
日時:2013年8月25日(日)OPEN: 16:30 / START: 17:00
場所:南池袋ミュージックオルグ
チケット:前売2300円 当日2500円(ドリンク別)
LIVE:oono yuukiソロ/chanson sigeru/Qurage/キスミワコ/OBUTSUDAN-SUMINO
FOOD:サテライトキッチン
出店:雑貨屋arinko
http://doroningen.wix.com/doroningen-tokyo

『第2回ニョキニョキインタラ祭』
日程:2013年9月8日(日)
場所:南船場・地下一階[chika-ikkai]+epok
時間・料金未定
LIVE:OBUTSUDAN-SUMINO/ときめき☆ジャンボジャンボ/マッカーサーアコンチ and more...!!
PA:カトウ ミキヒロ
FOOD:ピンポン食堂
SHOP:ほぐし亭さと芋/ニョキニョキフリーマーケット
http://www.nyokinyoki-fes.net/

■ 日本だけでCDが売れている理由 「BLOGOS(2013.8.24)」より
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 ハフィントンポストが「CD売上げ増は日本だけ? ストリーミング全盛の世界に逆行」という記事を配信しており、いろいろ思うことがあったので、これについて少し。


1 記事の紹介
 「世界各国で音楽CDの売上が減少している一方、日本ではCDの売上が増加している」という記事です。「日本レコード協会によると、2012年の音楽ソフト(CD・DVDなど)の売上は約3108億円で、前年比110%だった。」としています。

 他国と比較するとかなり顕著な違いがあったようで、「日本の音楽ソフトの売上比率は80%で、英国(49%)、米国(34%)に比べ、極めて高かった」としています。

 「一方、日本の有料配信の売上は17%と低く、多くの国では増加傾向にあるのに対し、前年比75%と減少」おり、違いはかなり顕著な様です。

 この原因について、アイドルとの握手券に代表されるように、「日本の音楽ファンは、音楽だけが目的ではなく、ライナーノートやディスクジャケット、非売品などの『おまけ』を求めている」という意見が紹介されています。

 ほかにも「30代後半以上の年代は、若いころに慣れ親しんだCDを購入する傾向があるようだ」という意見もありました。


2 本とデータ
 CDの話として紹介されておりますが、話としては、本と電子書籍にも通じるところはあるかと思います。理屈から言えば本やCDなどは本当に場所をとるので、データでもっていればそれで十分だし、何より便利ではないかといわれればそのとおりです。

 よくある話でしょうが、そこに置いてあったはずの本が見つからなくて探すのに結構な時間をかけてしまうことが私的には、よくあります。暇つぶし用に持ってきて本がはずれで、他に読む本もなく、結局寝てしまったという経験もあります。

 こうしたとき、確かに電子書籍があれば便利ですし、実際使って見たこともあるのですが、正直いまいちしっくりこなかったというのが正直なところです。

 ただ、慣れの問題もあるので、慣れてしまえば上に書いたように便利なのは間違いないので、以前書いたように、本(本屋)という形態が、いつまで維持できるかは確かに疑問ではあります(減少する本屋とマスコミとインターネット)。


3 オタク
 確かに、AKB48に代表されるように、熱狂的なファンの影響というのは間違いないかと思います(AKB商法と戦術論)。

 DVD(ブルーレイ)にしてもアニメであれば、本放送がある意味視聴であり、見て気に入った方が買うという商法なわけですが、たぶんこうした行動も熱狂的なファンでなければ、とれない行動かと思います(普通の人であれば、録画すれば良いのではないかという発想になります)。

 熱狂的なファンは海外にいないわけではないわけですが、こうした商品を海外に売り出すまでにはなっていないことを考えると、やはり海外でもここまでのファンというのは、一部の方に限定されてしまっているのかと思います(日本語を世界に普及させるためには何が必要か2)。

 結果、日本だけが他の国とは売れ方が違うという話になっているのかもしれません。


4 付喪神(つくもがみ)
 他の要因としては、日本の伝統思想などもあるのではないでしょうか。日本の民間信仰に、長い年月を経て古くなった道具や長く生きた生き物には、神や霊魂が宿るいう思想(つくも神思想)があります。

 百鬼夜行などが典型でしょうが、「神」という名称がついていながら妖怪に近い状態で、私的にはいかにも日本的という気がしてなりません(『妖怪学の基礎知識』、日本の神々について)。

 半分こじつけのような気もしないではありませんが、私的には本やCDといった形の伴った「もの」を重要視するのは、こうした伝統と無関係ではないと思っております。


5 最後に
 他にもデータで保存していると、確かに場所をとらなくて便利ですが、ハードディスクのクラッシュが典型な様に、壊れたときの損失の大きさなども比べ物になりません。

 当然物事には一長一短があるわけで、そこの中から好きなものを選んでいけば良いだけの話です。そいう意味でも選択肢の多いのはありがたいわけです(うつになる可能性と「逃げる」こと)。

 ただ、元記事でも30代以降が「慣れ親しんだ」ものにとあったように、正直年をとると、新しいことに挑戦してみることが億劫になるのも確かで、そういう意味でもいろいろ興味深かったが故の今日のエントリーでした。
■ 記事へのコメントから
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Galaxy3500

不勉強かもしれないので、間違いがあったらスミマセン。
CD(コンパクトディスク)って、ハード・スペックは16bitでサンプリング周波数は44.1KHZしかないんですか?
たぶんこれしかないとすれば、昨今のPCオーディオ、24とか32ビット、サンプリング周波数は96KHzどころか、192・384KHzが出回ってるのに、何周遅れの感が否めません。
たしかにCDはSONYとフィリップスが開発したものですが、アップルのダウンロード文化で、よりハイ・クオーリティー・オーディオの世界に入っており、いまやA/Dコンバータを介しての世界が世界標準。
CDってガラパゴスにも及ばない、単に時代遅れだと思いますけど・・・
バックアップはPCのディスク・バックアップで十分、媒体管理が不要なだけ助かります。
08月24日 22:15
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tsuchiyakoji

 仰るとうりで、商業ハイレゾ音源配信サービスがもう始まり、CDを遥かに上回る高スペックが楽しめるようになっています。再生専用の媒体にデーターを記録して売るのは「スペック」上はもう時代遅れは自明ですね。CD以上の性能が有っても音質の違いは分からないという、従来の音楽~オーディオ産業の常識なら出てくる筈は無い商売なのですが。
 ハイレゾ音源の個人的な利用はまだですが、LPのデジタル化に96.000Hz,24bitのプロセッサーを利用していますが、やはりCD規格の44,100Hz,16bitとはかなり違うなという印象です。
08月24日 22:48
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orange_lemons

CDというメディアの話しと「音質」という話しは
切り離して考えた方がいいと思いますよ。

ハイレゾもピュアオーディオと同じくあくまで「ニッチな層」の話しであり
決してコンシューマーに向けた企画ではありません。

PC内では24や32bitと書かれていますが32bit「フロー」です。
あくまで浮動演算であって現状では24bitがMAX。

サンプリングに対しても同じで仮に画面内では192で再生されていたとしても
結果それが出力されているアナログの出口はなんでしょうか。
そもそも音が出ているスピーカー自体がそれを再生できるのでしょうか。

CDはガラパゴスというのはスペックだけ見たナイーブな発想でして、
実際再生されているスペックと同等のクオリティで視聴者が聞いている企画は
現状では16/44.1のCD企画がむしろ最前線と言えます。

それ以上のスペックはもはや「選択制」で、ポピュラーミュージックには向かず
ハイレゾが一般化する事はまずありえないでしょうね。
08月25日 00:34

最終更新:2013年08月25日 17:19