● シェールガス〔Wikipedia〕
頁岩は浸透率が低いので、商用量のガスを生産するためには人工的にガス採取用のフラクチャー(割れ目)をつくる必要がある。過去、シェールガスは頁岩層に自然にできた割れ目から採取されていたが、2000年代に入ってから水圧破砕(英語版)によって坑井に人工的に大きな割れ目をつくってガスを採取する技術が確立し、更に頁岩層に接している坑井の表面積を最大にするために水平坑井掘削技術(英語版)という技法で10,000フィート (3,000 m)もの長さの横穴を掘ることが可能となった。これらの技術進歩の結果シェールガス生産量が飛躍的に増加しシェールガスブーム、シェールガス革命などと呼ばれるようになった。
シェールガスを含む頁岩は、泥岩の一種で硬く薄片状にはがれる性質をもち、粒子が細かく流体を通す隙間がほとんどないので、自然の状態では天然ガスの商用資源とはなりえない。また、貯留層が砂岩である在来型の天然ガスと異なり、泥岩に貯留することから、コールベッドメタン (CBM)、タイトガスサンド、メタンハイドレートとともに非在来型の天然ガス資源のひとつとされている。



■ シェールバブルの崩壊を予期すべき時が来た! 「岐路に立つ日本を考える(2014.12.17)」より
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 原油価格の下落を受けて、産油国でエネルギーの輸出比率が極めて高いロシアの経済状態が悪化するとの見方から、ルーブルの下落が続いています。ロシア中央銀行はルーブルの下落に歯止めをかけるために政策金利を10.5%から17%へ大幅に引き上げましたが、一部の銀行では外貨不足からルーブルから外貨への両替ができなくなる事態も発生し、ルーブル売りの動きは止まっていないようです。

 こうして見ると、アメリカの対ロ包囲網が大きな効果を挙げているように見えますが、しかし現実にはこの対ロ包囲網が肝心要のアメリカ経済にも大きな打撃を与えているようです。ロイターは2014年10月21日付の記事で「原油価格80ドル割れなら米シェールオイルの1/3が採算割れ」との記事を掲載していました。ところが原油価格はすでに60ドル割れも始まっており、米シェールオイルの収益性に大きなダメージを与えているはずです。

 採算割れが起こっているなら生産量を絞ればよいじゃないかと考えがちですが、そこはそう簡単にいかないわけです。というのは、米シェールオイルの業者は高利回りのジャンク債を発行して石油開発を行っているからです。利息と元本をしっかりと支払って行くためには、石油の生産を行って現金に換えるしか方法がないわけです。生産性の低い鉱床での生産を引き下げることは可能だとしても、その分を生産性の高い鉱床での増産で賄わなければ、資金がショートしてしまうわけです。2008年当時では、アメリカの産油量は日量700万バレル程度でしたが、シェールオイルの生産の急拡大によって日量1000万バレルを突破し、何とあのサウジアラビアに匹敵するほどの産油量を生み出すに至っているわけです。
(※mono.--以下略、詳細はブログ記事で)

★ 世界ではじけるシェールガスバブル 日本勢軒並み損失、堅実・住商をのめり込ませた焦り 「ビジネスジャーナル(2014.10.24)」より
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 9月30日の東京株式市場を激震が襲った。日経平均株価が前日比137円安の1万6174円まで反落し、取引時間中は下げ幅が250円を超える場面もあった。震源は住友商事が前日に発表した巨額の減損損失計上だった。このショックで同社株は一時1195円まで下落し、2月に付けた年初来安値1180円に迫った。これに誘発されて丸紅株が4%安、伊藤忠商事株と三菱商事株が3%安となるなど、総合商社株は軒並み売り一色になる余震も続き、市場は終日揺れ続けた。住商株の終値は、前日比12.1%安の1211円だった。
 9月29日、住商は「海外の資源・エネルギー開発事業で投資回収が見込めなくなり、15年3月期の連結決算で減損損失2700億円を計上する。最終利益予想も2500億円から100億円へと、2400億円の下方修正をする」との発表。損失計上は、米国のシェールオイル開発、豪州の石炭開発、ブラジルの鉄鉱石開発、米国のタイヤ小売事業と4事業にもわたっており、このうち資源・エネルギー開発分野で2500億円もの損失を出している。
 中でも最大の損失が、米テキサス州のシェールオイル開発の1700億円だ。これは2年前の12年9月に13億6500万ドルを投資し、米独立系石油開発会社のデボン・エナジー(オクラホマ州)社保有のシェールガス・オイル田の一部権益を取得した案件。権益取得後に試掘した結果、「ガス・オイルの採掘が難しく、投下資金を回収できる生産量が見込めないと判断した」(住商)という。
 これら3件の資源・エネルギー開発は、いずれも過去2―4年内に投資したばかりの案件であり、短期間で損失処理に追い込まれる計画の甘さだった。住商の資源・エネルギー開発事業に対しては、かねてから商社業界内で事業計画や投資リスク管理の甘さを指摘する声が上がっていたが、不幸にしてこの指摘が証明される格好となった。業界関係者は「同社の資源・エネルギー開発事業は、総合商社の中で相対的に遅れている。その遅れを取り戻そうとの焦りが、開発ブームのシェールガス・オイルにのめり込ませた」と指摘する。

+ 続き
 今回の住商の事業失敗について、伊藤忠関係者は「堅実経営の住商が、まさかシェールで」と驚きを隠さない。その伊藤忠も米シェールガス開発事業では、14年3月期に今回の住商と同様の理由で290億円の損失を計上している。三井物産も同期にシェールガス生産量の減少により325億円の減益を計上している。総合商社だけではない。大阪ガスもシェールガス開発に失敗したとして、同期に290億円の特別損失を計上している。つまり米シェールガス・オイル開発事業に投資した日本企業は、同事業で軒並み失敗しているのだが、損失が突出しているところに住商の特殊事情がうかがわれる。
●石油メジャーも二の足

「現代のゴールドラッシュ」といわれるシェールガス・オイル開発は、地下2000―3000メートルに分布している頁岩層から採掘するため、もともと有望田か否かの判断や埋蔵量の予測が難しい。このため、開発に失敗しているのは日本勢だけではない。例えば、石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルが13年10月に240億ドルを投資した米シェールガス開発事業も失敗と推測されている。

 エネルギー政策のシンクタンク関係者は「2000年初頭に米国で『シェールガス革命』が起きたが、その熱は数年前に冷えている。そんな事業に新規参入した日本企業勢が米国の石油開発ベンチャーに不良鉱区をつかまされて失敗するのは当然」と指摘、その理由を次のように説明する。
 日本では、シェールガスは在来型天然ガスより安いといわれているが、実際は違う。成分は在来型天然ガスと同じだが、掘削が困難なため採算性が悪く、石油メジャーですら大半が開発に関心を示さなかった。

 しかし、シェールガス革命ともてはやされ始めると、米国の石油開発ベンチャーが投資家から資金をかき集め、開発競争に走った。その結果、米国の天然ガスは大幅な供給過剰となり、ガス指標価格のヘンリー・ハブ価格が12.17ドル(08年6月現在)から2.68ドル(12年5月現在)に暴落した。それが日本では「シェールガスは安い」と映り、特に総合商社の間でシェールガス開発権益獲得熱が高まった。
 シェールガスの商用開発が始まって8年。この間の採掘経験により、今ではシェールガス産出量の減少が在来型ガスのそれより早い事実も明らかになっている。具体的には、シェールガス産出量は採掘開始から3年で75%以上減少するのが一般的。したがって、計画量のガスを採掘するためには次々と新しい井戸を掘削し続けなければならず、典型的な自転車操業になっており、米国全体で12年に420億ドルもの掘削コストがかかったとみられている。一方、米国全体で産出されるシェールガス売上高は325億ドル。差し引き年間100億ドルもの赤字経営を強いられている計算だ。
 そのため、シェールガス・オイル開発事業のリスクを警告するレポートが、数年前からエネルギー関連の各種研究機関や専門家により何度も発表されている。
●住商の焦り

 商社業界各社の特徴を表す、次のような喩え話がある。
「川を渡る時、三菱は財力にものを言わせて鉄橋を架ける。三井はスマートにヘリコプターをチャーターする。伊藤忠は気合だと泳いで渡る。住友は三菱が架けた鉄橋の安全度を確かめてから渡る」
 業界関係者は「堅実経営の住商が、伊藤忠も後じさりするほどの気魄で取り組んでいたのがシェールガス開発だった」と振り返るが、住商はなぜそこまで入れ込んだのか。

 2700億円の巨額損失計上を発表した29日の記者会見で、住商の中村邦晴社長はその理由を率直に述べている。
「当社の資源・エネルギー事業のポートフォリオは非鉄金属に偏っており、かねてから石油・ガスの開発事業強化は課題の1つだった。しかし同事業で後発の当社は、有望開発案件に参画しようとしても石油メジャーが相手にしてくれない。このため石油メジャーや他社がまだ本格参入していないシェールオイル開発事業に、当社の石油・ガス事業強化の夢を託した」
 つまり、シェールガス革命を誤信した住商は、他社が試験的に事業リスクを勘案しながら投資しているのをみて、チャンスとばかりに勝負に出て失敗したのだ。伊藤忠関係者は「住商がシェールオイルにのめり込んだ内部事情は、カナダの石油精製事業にのめり込んで経営破綻した、かつての安宅産業を想起させる」と顔を曇らせる。
●住商が抱える、もうひとつの爆弾

 それだけではない。住商は、他社より弱体な資源・エネルギー事業で、もう1つ爆弾を抱えている。東アフリカのマダガスカルでカナダと韓国企業との合弁で進めているニッケル開発事業の「アンバトビー・プロジェクト」だ。
 07年8月の発表では、住商は同プロジェクトに14億ドルを出資、10年後半から商用生産を開始する予定だった。しかし現地政権の交代、精錬の難しさなどから商用生産開始は延期が続き、今年1月からやっと生産開始にこぎ着けた。この間に開発投資は総額で約3000億円(14年3月末)まで膨らんでいる。
 同社は15年6月にプロジェクト稼働率が90%に達する予定としているが、業界関係者の一人は「生産開始から半年以上たった今年夏の生産量が、計画の40%程度の様子。来年6月の90%は到底無理な数字。今後の進捗次第では、こちらも巨額損失発生の可能性がある」と危惧している。
 商社業界では近年まで最終利益ランキングで「住商3位、伊藤忠4位」がほぼ定着していたが、12年3月期の業績で、この地位が逆転した。このままでは「住商5位陥落」の恐れもある。住商は、事業精神である「堅実経営」の意味を改めて問い直す必要に迫られているといえよう。
(文=福井晋/フリーライター

★ 「世界最大の産油国」米シェール革命はバブル 「NewsWeek(2014.8.1)」より
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 アメリカは石油開発ブームの真っただ中にある。今月バンク・オブ・アメリカが発表した報告書によると、今年アメリカはサウジアラビアもロシアも抜いて世界最大の産油国になった。地下深いシェール(頁岩=けつがん)層にある原油や天然ガスを掘削する技術が、エネルギー生産に革命を起こしたのだ。

 だが革命が永遠に続くとは限らない。テキサス州のエネルギーアナリスト、アーサー・バーマンや、カナダの地球科学者デービッド・ヒューズは、これは既にバブルだと警告する。

 例えば国際エネルギー機関(IEA)の予測では、カナダを含む北米の産油量は19年にピークを打ち、他の国々が追い付いてくる30年代初頭には世界一の座を譲ることになるという。

 シェール革命は、エネルギー供給の予測がいかに難しいかを示す典型例だ。数年前までは、中東原油への依存がアメリカの大きな政治課題だった。ブッシュ前大統領は06年、「アメリカの石油中毒」は「世界の不安定な地域」への依存を意味すると危機感を募らせていた。当時誰が、シェール革命でアメリカが世界最大の産油国になるなどと予想しただろう。

 シェール産業の将来も同様に予測は難しい。地下に膨大なシェールガスとシェールオイルが埋蔵されていることは間違いない。だがその量を知るのは困難だ。例えば米エネルギー省は最近、カリフォルニア州モンテレーのシェールオイルの推定可採埋蔵量を140億バレルから6億バレルへ大幅に下方修正した。

原油安なら赤字に転落

 埋蔵量より重要なのは採算性だ。初期投資の回収にどのくらい時間がかかるのか、リスクに見合う利益は出るのか。シェール革命が本格化した08年頃、アメリカの産油量は1946年以降で最低の水準にあった。シェールオイルを比較的安く採掘できる技術が確立される一方、原油価格が高騰して利益が期待できるようになったのもこの頃だ。

 すべては価格次第だ。シェール層の岩盤を破砕して原油やガスを取り出す「フラッキング(水圧破砕法)」という掘削技術はコストが高いので、採掘した原油・ガスが高く売れなければ利益は出ない。今の国際価格は1バレル=100ドル超だからいいが、90ドルを下回れば採算割れになるかもしれない。

 原油価格下落の要因はいくらもある。アメリカとイランの関係が改善してイランの原油輸出が解禁になるとか、イラク情勢が安定するとか、あるいは中国の景気が悪くなれば世界的な原油需要も減るだろう。

 価格が上がり続けたとしても、この数年維持してきた規模の生産量を続けるのは容易ではない。シェール油田の寿命は7〜8年。次々と新たな鉱脈を探す必要があり、しかも後になるほどより採掘困難な場所が残される。

 在来型の油田は数十年の寿命がある。20世紀半ばに操業を開始したサウジアラビアのガワール油田は、今も日量500万バレルを産出し続けている。
アメリカはシェールの落日に備えるべきだと、バーマンやヒューズは言う。数十万の雇用が失われ、アメリカは再び中東原油と原油価格の乱高下に翻弄されることになるかもしれない。

 被害を小さくする1つの方法は、燃費効率を高めること。そして太陽光発電や燃料電池などの再生可能エネルギーの開発に本腰を入れることだ。

 シェール革命はかつて万能薬と歓迎されたが、実際は代替燃料の開発を後回しにする口実になったのではないか。この革命はあくまで応急処置にすぎない。時間を稼げる間に持続可能なエネルギーの開発を急ぐべきだ。

[2014年7月29日号掲載]















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最終更新:2014年12月18日 22:00