■ 中韓だけでなく、日本の法律も足を引っ張る…家電各社「スマホ遠隔操作ダメ」に異論 「msn.産経ニュース 経済(2012.12.18)」より
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 韓国、中国勢などに圧倒され、業績が悪化する日本の家電メーカーが自国の法律にまで足を引っ張られる事態に陥っている。パナソニックなどが計画していたエアコンの遠隔操作が50年前に施行された「電気用品安全法(電安法)」で認められず、商品化を延期したのだ。一方でエアコンを家庭内のシステムの一部と位置付ければ、遠隔操作が認められるという矛盾も生じ、家電各社からは不満の声も。電安法が家電の技術進歩に追い付けていないためで、事態を把握している経済産業省は「近く見直されるとみられる」としている。

■ 半世紀前の法律が新機能にダメだし

 9月上旬。パナソニックはエアコンの新製品(10月発売)について異例の発表を行った。
 《監督官庁と協議しました結果、電安法の技術基準への適合に課題があると判断、エアコン遠隔操作のオン機能を削除します》
 オン機能とは、外出先からエアコンの電源を入れることで、帰宅前にあらかじめ室内を暖めたり、冷やすことが可能となる。遠隔操作の機能はニーズが高いとみられ、一部の家電メーカーは「戦略」機能と位置付けるところもある。これに対し、メーカー側の期待を打ち砕いたのが「電気用品安全法(電安法)」だ。
 電安法は、電気製品が原因の火災や感電などを防止することを目的に、昭和37(1962)年に施行された法律。一部の製品を除き、遠隔操作によって電気製品の電源を入れること(オン機能)を禁じている。
 しかし、パナソニックでは「法律上問題ない」と判断し、8月中旬に報道機関向けに新製品の発表会を実施。その直後、電安法を管轄する経産省から指摘を受け、急遽(きゅうきょ)今回の措置に至ったという。
 ダイキン工業も12月20日に発売予定のエアコンの接続アダプターについて、遠隔操作のオン機能を削除した。同社担当者は「パナソニックと似たシステム」と話し、当初予定していたオン機能の見送りを決めた。
 経産省製品安全課の担当者は「見えないところで遠隔操作することの危険性を認識してほしい」と説明した上で、「事実上問題ないかもしれないが、ルールはルール」と述べる。

■ システムの一部なら「OK」の矛盾

 半世紀前に施行された法律で家電メーカーの商品化が阻まれる一方、実は同様の機能が認められているという矛盾が生じている。
 NTTドコモが販売している「ケータイホームシステム(宅内制御装置・家電制御アダプタ)」は、携帯電話を使って、自宅内のエアコンなど家電製品の電源をオン・オフ(入出力)できる。
 シャープが12月13日に発売した掃除ロボット「ココロボ」に装着する家電コントローラーも、同様にスマートフォン(高機能携帯電話)で家電製品のオン・オフが可能となっている。
 なぜ、電安法で禁止されている遠隔操作によるエアコンのオン機能が、ドコモのシステムでは認められるのか。

■ 経産省が規制緩和を検討

 「同じエアコンの遠隔操作だが、ドコモの場合、エアコンはシステム全体の一部と位置付けられる。つまり、エアコンではなく、別のものとみなされ、電安法の対象にはならない」。業界関係者はこう解説する。
 そもそも家電製品は先端技術を活用し、商品サイクルも短いなど最も動きの激しい分野であり、50年前の法律で対応するのは限界がある。前出の関係者も「電安法が施行されたときはインターネットも、遠隔操作もなかったはず。そのような古い法律で縛られていてはグローバル競争に勝てない」と指摘する。
 こうした声を受け、経産省は電気製品の遠隔操作について今年2月から議論を始めており、来年3月には規制緩和に向けた方向性が示される見通しだ。
 パナソニック7650億円、シャープ4500億円…。平成25年3月期連結最終赤字見通しだ。
 両社とも過剰な設備投資が収益を圧迫し、経営危機を招いた。判断を誤れば全体が傾く事態に陥いることがある一方、スピードの遅れが許されないのも家電業界だ。
 「1、2年で状況は一気に変わる。10年前と同じものを作っていることはあり得ない」(業界幹部)。
 移り変わりの激しい家電業界で半世紀前の法律はそぐわない。日本の家電各社が存在感をなくしつつある中、国は業界の将来を見据えた法整備に取り組む必要がある。(中山玲子)






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最終更新:2012年12月31日 19:40