山梨県の中央自動車道の笹子トンネルで発生した事故は、天井板の崩落という国内で初めてのケースで、複数の死者を出す惨事となった。なぜ崩落は起きたのか。専門家は東日本大震災の影響でひずみが発生した可能性を指摘。天井をつっていた鋼鉄製の金具の腐食が原因につながったとの見方を強めている。

 「天井が『ズドン』と落下し、下敷きになった車から炎が上がった。(天井は)中央で割れてV字のようになっていた」。間一髪で難を逃れた男性会社員(37)はこう証言する。

 中日本高速道路によると、天井は路面から約4・7メートルの高さに位置。強化コンクリート製の天井板をトンネル最上部から延びた直径約2・4センチの金具でつり下げて固定している。

 天井板は1枚の幅が5メートル、奥行き1・2メートル、厚さ8センチで、重さ約1・2トン。道路の中心を境に、左右に1枚ずつ連続して設置され、それぞれの板は金属板で連結。崩落した範囲から推定すると、計約150枚が落下したとみられる。天井板は昭和52年12月のトンネル完成当時から使われていたといい、大手ゼネコンの大成建設と大林組が設置した。

 天井裏の空間は換気ダクトの役割を果たしており、中心部分には、きれいな空気と汚れた空気を分けるコンクリート製の中壁(重さ約1・4トン)が連続して設置されていた。構造的に中心が重くなっており、天井がV字型に折れた要因につながったとみられる。同社の金子剛一社長らは、国内の高速道路で天井板が崩落した事故は過去になかったとしたうえで、天井板をつり下げている金具の劣化を示唆。しかし劣化の原因については「調査中で分からない」とした。

 トンネル工学に詳しい大阪大の谷本親伯名誉教授は、「しみ出した地下水などによって金具が腐食し、天井の重みに耐えられなくなった恐れがある」と指摘。車の排ガスに含まれる窒素や亜硫酸ガスなどには金属の腐食を促す作用もあり、天井裏の金具にダメージを与えた可能性のほか、「固定するボルトが緩んでいた可能性も否定できない」と説明する。

 平成8年2月に北海道の豊浜トンネルで崩落した岩盤が路線バスを直撃、乗客ら20人が死亡した事故では、地震で緩んだ岩盤の隙間に地下水が浸透。凍結して亀裂を押し広げたことで崩落が起きた。

 防災システム研究所の山村武彦所長は、「東日本大震災や翌日に発生した長野県北部地震で生じたひずみが、事故に影響した恐れもある」と指摘。「トンネル事故で火災が発生し、煙が充満すると、救助は非常に困難になる。全国的なトンネルの調査が必要だ」と指摘した。


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最終更新:2012年12月03日 07:59