■高速幹部「申し訳ない」


 山梨県の中央自動車道笹子(ささご)トンネルで2日に起きた天井板の崩落事故を受け、道路を管理する中日本高速道路は対応に追われた。会見に臨んだ幹部は「大変申し訳なく思っている」と謝罪。対策本部では、職員らが慌ただしく情報収集を行い、次々に入ってくる被害報告に表情を硬くした。

 「うわっ…。これはひどい」

 今回の事故現場周辺を受け持つ同社八王子支社(東京都八王子市)。各地の道路状況を監視する道路管制センターに入ってきた応援の職員は、数十台のモニターが並ぶ中、ひときわ大きいモニターに映る「笹子トンネル上り 21」と記された映像を一目見ると、絶句した。上り線入り口から約3キロ、出口から約1・7キロの事故現場付近に設置された監視カメラの映像だった。

 モニターには天井板がV字状に崩れ落ちている様子がくっきり。消防隊員らは落下したがれきの下に潜り込んだりしながら、捜索活動を続けた。がれきの除去の際に激しく粉塵(ふんじん)が舞うのか、映像は時折、霧がかかったように見づらくなる。

 「情報はどうなっている?」「早く資料を持ってこい」。道路管制センター脇に設置された対策本部には職員が駆け足で出入りし、怒号も聞こえてきた。広報担当者は報道陣に、トンネルや落下した天井の形状などを説明。事故の発生理由を問われると「現状では分からない」と繰り返した。

 名古屋市にある中日本高速道路の本社8階では、午後3時過ぎから金子剛(たけ)一(かず)社長(69)や吉川良一専務(63)らが会見。金子社長は冒頭、100人近くの報道陣を前に「中央道の通行止めで、多くの客に迷惑をかけていることをおわびする」と頭を下げ、「大きな事故を起こし、大変申し訳ない」と述べた。

 会見では吉川専務らが手元の資料に目を落としながら、硬い表情で対応。事故の状況について「確認中」と繰り返した。事故原因については近く学識経験者による調査委員会を設置し、調べるとした。

 最初の会見は約2時間半行われ、金子社長は目の辺りに手をやるなど疲れた様子。午後8時55分からも2時間にわたり吉川専務らが会見した。金子社長は3日午前0時25分、八王子支社の対策本部に入った。


■ドキュメント

 午前

 8時ごろ     中央自動車道上り線の笹子トンネル内で天井板が落下。複数の車両が巻き込まれ、車両火災が発生

 8時39分    消防が28歳の女性を救助

 9時38分    消防が37歳の女性を救助

 11時6分    消防が車両火災を鎮火

 午後

 0時20分    トンネル内のトラックの運転手から「苦しい。助けてほしい」と連絡があったと会社の同僚が119番通報

 0時48分    二次災害の危険があるため、消防が救助活動を中断

 1時40分    山梨県警、中日本高速道路、東山梨消防本部、大月市消防本部が合同指揮本部を設置

 3時すぎ     県警がトンネル内のワゴン車で、複数の焼死体らしきものを確認したと発表

 4時13分    がれきの撤去作業のため、重機がトンネル内へ。その後、消防も車でトンネル内に入る

 4時28分    県警から指揮本部に「遺体を確認」との連絡

 5時35分    消防がトラックの車内に人を確認

 10時7分    トラックから心肺停止状態の男性を救出。その後、死亡を確認

 11時40分すぎ 県警がトンネル内の乗用車で、焼死体らしきものを確認したと発表




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最終更新:2012年12月03日 07:46