■ 江沢民最後の介入 「田中宇の国際ニュース解説 会員版(田中宇プラス)2012年11月16日」より

 11月15日、中国共産党の中央委員会総会が開かれ、今後5年間(再選の可能性が強いので実質的に2期10年間)中国の最高権力を握る政治局常務委員に習近平ら7人が選ばれた。
同時に、中国軍の最高権力を握る共産党中央軍事委員長も胡錦涛から習近平に代わり、習近平は、党総書記、国家主席、中央軍事委員長という中国の3強ポストを全て胡錦涛から譲られた。

 トウ小平は、1987年に権力から退いた後も2年間、中央軍事委員長の座にとどまった。02年に胡錦涛へ権力を移譲した江沢民も、トウ小平の真似をしてその後2年間、中央軍事委員長の地位だけ握り続けた。だから胡錦涛も前任2人の真似をして中央軍事委員長のポストだけ握り続けるとの事前予測が多かったが、胡錦涛は先例を踏襲せず完全引退した。

  • 以下部分引用。

 ここまで胡錦涛を評価する論調で書いてきたが、江沢民がなぜ胡錦涛のやり方に不満を持ったかに焦点を当てると、別の評価もできる。胡錦涛と江沢民の10年の対立はマスコミなどでよく言及されてきたが、2人の権力欲がぶつかって争いになったとか、江沢民が出しゃばりで後輩の決定に口を挟みたがるといった、人間性の問題ととらえられることが多かった。
 しかし実際のところ2人の対立の本質は経済政策をめぐる違いであり、市場経済の導入を急ぐべきだと考える江沢民が、市場経済導入に慎重な胡錦涛に対して不満を持ち続けた点にある。


 意志決定を迅速化するため9人から7人に減員した政治局常務委員に、下馬評では汪洋や李源潮といった胡錦涛派(改革派)といわれる人々が入りそうだったが、実際には2人とも選ばれず、代わりに兪正声や張徳江、張高麗といった江沢民の子分(保守派)といわれる人々が常務委員になった。


 日本のマスコミでは「今後も江沢民ら長老による政治介入が続き、習近平政権は強い政策を打ち出せず失敗する(だから中国は崩壊し、日本は対米従属一辺倒でぜんぜんかまわない)」という論調が強い。だがこの見方は、日本(の官僚機構)にとって都合の良いカミカゼ的な楽観だ。


 実際には、胡錦涛も江沢民も今回で完全引退し、江沢民も習近平の政権に影を落とさぬよう、今後は再び公式な場に姿を現さなくなるだろう。米マスコミで共産党敵視の論調を展開する在米中国人学者のミンシン・ペイですら、そのように予測している。
 半面、日本人の中国分析家の多くは、誰がどの地位につくかという人事の表層的な分析に終始し、中国の政治的ダイナミズムを見ない傾向が強い。(日本は対米従属が国是なので、中国のことを深く分析しない方が良いということなのかもしれないが、日本人の多くは自国の政治ダイナミズムにすら気づいていない)






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最終更新:2013年11月23日 15:46