★ 「助けてあげて、お父さん」 いじめで死ぬ子供たち 「msn.産経ニュース(2012.11.6)」の記事を全文コピペ

 9月4日、大津市役所2階の応接室。越(こし)直美市長を前に、いじめの責任究明を訴えるNPO法人「全国いじめ被害者の会」代表の大沢秀明さん(68)の要望書を読み上げる声は涙で震えていた。

 《学校、教育委員会は自殺後も責任逃れに終始した。そのような対応をしているかぎり加害者生徒が自分のやったことの重大さを考えるはずもない》

 大分県佐伯市に住む大沢さんは約15年前に、中学3年生だった四男をいじめによる自殺で亡くしていた。8年半に及ぶ裁判のなかで、いじめの事実と自殺の因果関係が認められた。「裁判が終わっても、なぜ学校はいじめを止めてくれなかったのかという思いは今も続いています」

■ あの日の声は小さかった 

 大沢さんは、警察で遺体を引き取る際、「自殺」と聞かされ呆然(ぼうぜん)とした。署員に「殺されたのではないのか」という大沢さんの手に、遺書が手渡された。

 「いつも大きな声で『行ってきます』と言うのに、あの日は小さな声だった」「ゲームソフトを売りに行くのに付いていったことがある。恐喝のお金の工面だったのかもしれない」。自殺を止められず、家族全員が思い悩んだ。「どんな姿でもいい、生きていてほしかった」

 大沢さんの妻は、四男からいじめられていると聞いていた。「妻はいじめを心配し、担任にたずねたんです。その時の『いじめはない』との言葉を信じていた。それだけに苦しんでいました」。四男が自殺した農業用水路の水門で妻の姿を見つけたこともある。妻が後追いするのでは、と何度も不安になったという。今も、大沢さん夫妻からは後悔の思いは消えることはない。

■ 加害者を助長する学校

 平成18年10月、結成された「全国いじめ被害者の会」。当初、大沢さん夫妻ら5人だけだった人数は現在、全国に約500人の会員がいる。

 大沢さんは、いじめの解決方法などの相談に乗る。しかし、被害が悪質で学校や教育委員会が隠蔽(いんぺい)したり、追及しない場合は、最終的には警察への被害届や刑事告訴という方法をアドバイスしてきた。

 「恐喝、暴行といった犯罪行為が、悪ふざけやけんか、トラブルとして扱われ、教師は加害生徒に必要な措置をとらない。加害者側を助長している」と訴える。

 最近、大沢さんは中学時代から約3年間、壮絶ないじめに遭っていた東京都内の高校1年生男子の自宅を訪ね、家族から話を聞いたという。

 「男子生徒は警察での説明の途中で、つらい経験がフラッシュバックし、パニック状態に陥りました。男子はプールで沈められたり、便器に顔を押しつけられていたんです。現在は精神科の病院に入院しています。そこまで追い込まれることもあるんです」

■ 連鎖を呼ぶ自殺 

 警察庁の調査で昨年の小学生から高校生までの自殺者は、353人。前年より66人増加し、過去10年間で最多。8月に見直し案が閣議決定された「自殺総合対策大綱」には、事態が深刻に受け止められ、未成年者に対する自殺対策の強化が明記された。

 連鎖を呼ぶといわれる自殺。大津市のいじめ自殺以降、兵庫県川西市の高校2年男子(9月2日)、札幌市の中学1年生の男子(5日)…。いま、その連鎖だと大沢さんは危惧する。大津の事件以来、電話やメールで寄せられるSOSは以前の10倍を超える。

遺書はもう見ることができない 

 《お父さんお母さんごめんなさい。…また、お金を要求された。しかしそのお金がないので死にます》

 便箋に書かれた四男の遺書。大沢さんは大切に保管しているが、つらくて、もう今は見ることができない。

 「いつも息子が見守っていて、『助けてあげて、お父さん』って言うんです。いじめで子供たちが死んでしまうのは、もう終わりにしたいのです」






 19年の策定以来の「自殺総合対策大綱」改正を受け、自殺対策は転換期を迎えている。命を救うために何ができるのか。第3部では繰り返される負の連鎖を断ち切るため、活動する人々の姿を追う。







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最終更新:2012年11月06日 15:08