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12/16の意外な審判 - 民意は原発推進と国防軍を選択
マスコミが行っている政党支持率の数字は、各社各局によって少しずつ異なる。ただし、共通した傾向はあり、自民がポイントで民主を1.5倍から2倍近く上回って首位に立ち、その民主に維新が迫っているという構図だ。朝日NHKの数字は、ほぼ似たような状況となっているが、共同通信の11/24-25の世論調査では、維新が民主を追い抜く結果になっている。マスコミの世論調査は毎週1回のペースで発表され、そのときどきのマスコミの劇場報道がそのまま数字に反映される様相になっている。先週について言えば、石原慎太郎と橋下徹の第三極劇場の中継がそのまま数字に貼り付いた。今週の焦点は、嘉田由紀子が脱原発で一つの極を作り、リベラル勢力を結集できるかというところにあり、これに成功すれば、来週初めに発表される世論調査に若干の変動が生じるだろう。告示まで残り1週間、告示から投票まで2週間、告示を過ぎると、そこから大きく投票動向が変わることはない。これまでの選挙では、告示段階の情勢がバンドワゴン効果で拡大し、小選挙区制の特性で優勢側の圧勝という結果に導かれてきた。自民は11/21の選挙公約の発表で、改憲だの国防軍だのと極端な右翼路線を打ち出したが、マスコミはそれを平静に受け止め、世論調査に反映させることもしなかった。自民が公約した改憲の是非について、国民の反応を調査数字で示したマスコミはない。周到に隠している。


左派の者を含め、マスコミが演出する劇場報道の観客になりきり、第三極がどうの、脱原発がどうのとネットで野次を飛ばし、政局漫談に没入して耽っている風景がある。その者たちは、自分たちが死刑台のエレベーターに乗せられていて、3週間後の12/16には刑が執行される恐怖に気づいていない。危機感と緊張感がないのは社民と共産の党首や幹部だけではないようだ。12/16には国民の審判が厳然と下されるのであり、冷徹な民意が示される。テレビがひり出した汚物である極右小僧の橋下徹が、あれほどの権力を恣(ほしいまま)にできるのは、1年前の大阪ダブル選で民意を得ているからであり、正統性の根拠を持っているからだ。われわれは、狡猾なマスコミに誘導されるまま、今、「安倍カラー」の政策に権力の正統性を与えようとしている。極右に日本の針路を委ねようとしている。12/16の夜を想像しよう。極右(自民+維新)は300議席を取るだろう。場合によっては3分の2(320議席)まで。勝利者としてテレビで満面の笑みを浮かべるのは、極右の安倍晋三と石原慎太郎と橋下徹である。12/16の選挙結果は、安倍晋三の国防軍と石原慎太郎の核武装と橋下徹の赤狩りを支持し信認した民意の証明となるのであり、9条破棄と軍国日本の出発点となるのだ。選挙の勝利者は極右である。この瞬間、12/16の午後8時、戦後の平和憲法体制は死刑宣告され、来年7月の執行を待つ死刑囚の身となる。

それでは、選挙の争点の第一とされる脱原発はどうなるのだろう。民意はどう示され、原発政策について国民の審判はどう下るのか。答えは、原発の維持推進である。安倍晋三の自民党は、「原発の再稼働の可否は順次判断し、すべての原発について3年以内の結論を目指す」と公約している。つまり、電力会社と地元自治体の要請に応じて順番に再稼働し、3年以内に停止中の全原発を稼働させるという意味だ。石原慎太郎は原発の存続を明確に言っている。極右の場合、エネルギーの観点から原発の維持を求めているのではなくて、従来の保守の国家戦略である核保有の動機からそれを必要としているのだが、当然、安倍晋三も腹の中は同じだ。核開発のためのプルトニウムの生産と貯蔵である。今、原発については、世論は多数が維持存続に反対で、程度の差はあれ、国民は「原発ゼロ」を支持している。朝日の世論調査を例に出すと、原発利用に反対が50%、賛成が34%となっていて、マスコミの姿勢も基本的にこの世論に即している。「原発ゼロ」が国民的正論であるという事実は揺らいでいない。現状、民意は「原発ゼロ」にある。しかし、12/16の夜にこの事実が崩れる。覆される。原発についての民意は、原発稼働に賛成に切り換わる。無論、マスコミは現在の報道姿勢を変え、原発への立場を3.11以前に戻すだろう。官邸前デモの認識も変わり、再び「一部の左翼市民による行動」の定義に戻るはずだ。

もう一つの選挙の争点である消費税増税はどうだろう。朝日の世論調査では、消費税増税に賛成が39%、反対が52%となっている。マスコミ全社があれだけ執拗に増税翼賛キャンペーンを張り、湯浅誠を始めとする左派岩波系が増税必要論のエバンジェリズムをする中で、何度、世論調査をやっても、この比率以上に増税賛成の世論数値が出るということがない。NHKでも同じだ。マスコミは、国民の声と正反対の政策主張であることを承知しながら、「耳に痛いことを言うのが政治だ」とか、「決められない政治」などの詭弁を弄し、国民が拒絶する消費税増税の正当化をやってきた。解散後のマスコミの世論調査報道では、景気に対する関心が非常に高くなっている。7-9月のGDPが0.9%(年率3.6%)のマイナスと出て、中国向けの輸出が落ち込み、10-12月もさらに景気が悪化している中で、この感覚と要求は切実で当然と言える。この中には、不況下の消費税増税はやめてくれという要望が入っていることは否定できない。消費税増税の中止こそ最大の景気対策であり、庶民が政治に熱望するところだろう。しかし、マスコミは、決して「景気対策」の要望と「消費税増税」の政策を結びつけて報道しない。国民の言う「景気対策」の中身に、消費税増税の先送りが含まれている真実を語らない。そして、12/16夜の開票結果の後、選挙によって消費税増税は信認され、民意を最終的に得たと言うのである。何となれば、自民も維新も消費税増税が公約なのだから。

TPPについても同じで、自民が勝ち、維新が伸び、また、自民、民主、維新、公明で400議席も取れば、TPP交渉参加は国民が選挙で認めて背中を押した政策として確定する。TPPは2011年の秋から喧々諤々の議論が続いていたが、その是非が選挙で問われ、国民の判断が決まるのは今回の機会となる。TPP反対勢力は敗北し、民意においてTPP反対は少数という結果が確定される。政府はTPP推進のお墨付きを得る。こうして、(1)原発、(2)消費税増税、(3)TPPについて、民意が明らかとなり、(1)-(3)に国民は賛成だという判定が示され、政権と政府は(1)-(3)を積極推進するべしという結論となる。多数決だから当然であり、自民の政権公約が支持されたのだから当然だ。現在の予測では、自民は過半数の240議席を割る気配はなく、仮に嘉田新党が割り込んでも、自民に逆風が吹いて過半数以下となる公算は小さい。小選挙区で数を稼ぐのは自民だ。(1)原発ゼロを求め、(2)消費税増税の中止を求める国民の多数意見は、こうして選挙において少数派となり、恐るべき選挙結果の前に立場的正当性を否定される。改憲と国防軍の政策主張が多数派となる。以上のことを、われわれは客観的に正視し、想像なくてはいけない。マスコミは決して言わない。選挙戦の間は、原発の維持存続が正論だとは言わないし、改憲と国防軍と核武装が国のあるべき姿だとは言わない。口を噤んで言わず、今日と同じ明日が続くような素振りで国民を巧く騙している。騙しているのは、有権者に自民と維新に投票させるためだ。

もしもマスコミが、自民を勝たせたら原発推進ですよと言い、維新と極右が伸びれば核武装と徴兵制ですよと正しく言えば、国民は躊躇し、不安と危険を感じ、自民と維新の政党支持率はこのように上がることはないだろう。マスコミは国民を騙し、維新が国政に出れば官僚主導の政治が改善されるような期待(幻想)を振りまいている。多くの者は、この選挙を競艇のレースのように見物している。しかし、この選挙はただのレースではなく出来レースだ。野田佳彦は、民主が最も不利になる日程を選んで選挙を敢行した。安倍晋三の人気が下降する前に、また、橋下徹の評判が凋落する前に、わざわざ彼らの都合のいい時期を選び、民主が敗北して下野する選挙を打っている。総裁に就任して一時的にマスコミが人気を上げた安倍晋三に、政権をプレゼントするように解散に出ている。1年前の8月に、野田佳彦が自分で解散して選挙戦の指揮を執ると思った者は一人もいなかった。党関係者も、マスコミも、敵である自民や他の野党も、選挙は限度まで引き延ばして参院とダブルにし、ルックスのいい党首に切り換えるだろうと予想したはずだ。すなわち、この選挙は、政権を自民に返上するための、言わば大政奉還の選挙である。政権を自民に返還し、二大政党の一から格落ちの中小政党となり、公明と一緒に自民を支える役に下りるために機会を作った選挙だ。野田佳彦の思惑の中には、間違いなく改憲と国防軍の発想がある。最初から負ける選挙なのだから、民主が訴えるマニフェストには意味はなく、自民との「対立軸」など芝居のネタにすぎない。

こうして、12/16の夜、われわれは全てに気づくのだ。消費税増税については賛成の民意が明確になったこと。原発については維持推進を国民が選択したこと。来年7月に平和憲法は破棄されること。中国と戦争する準備が始まったこと。いずれも、現在の民意とは決定的に違うものと言える。しかし、選挙の投票で決せられた以上、後戻りすることはできない。民主主義は多数決が原則なのだから。心して12/16の夜を迎えよう。


by thessalonike5 | 2012-11-27 23:30 | Trackback | Comments(0)
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