ギップリャアアアの謎 ◆tcG47Obeas
暗鬱だった。
陰鬱で、憂鬱で、沈鬱だった。
鬱々とした沈黙が部屋に満ちていた。
陰鬱で、憂鬱で、沈鬱だった。
鬱々とした沈黙が部屋に満ちていた。
レベッカ宮本は何も言わない。
トマに話すべき事は話し終えたし、濡れた体もシャワー浴びさせてまあそれなり対処した。
後は時間をかけてでも、受け止めれば良い。
シェルターの通話装置に通話記録が有った事と、その内容について。
白との会話で気付いた事だけは隠して、それ以外は隠しもせずに。
ククリの死は、隠してもどうせ朝の放送で告げられるのだ。
冥王の悪辣な宣告で知るよりも、今知っておいた方がマシだったろう。
トマに話すべき事は話し終えたし、濡れた体もシャワー浴びさせてまあそれなり対処した。
後は時間をかけてでも、受け止めれば良い。
シェルターの通話装置に通話記録が有った事と、その内容について。
白との会話で気付いた事だけは隠して、それ以外は隠しもせずに。
ククリの死は、隠してもどうせ朝の放送で告げられるのだ。
冥王の悪辣な宣告で知るよりも、今知っておいた方がマシだったろう。
それだけを話してレベッカは静かに待った。
自らも考えに耽り考察を立てながら、トマが起き上がるのを待つ。
仲間の死、親しい人の欠落による衝撃を受け止めるのを待つ。
目を合わせないよう、気を使わせないように適当な作業をしながら待つ。
自らも考えに耽り考察を立てながら、トマが起き上がるのを待つ。
仲間の死、親しい人の欠落による衝撃を受け止めるのを待つ。
目を合わせないよう、気を使わせないように適当な作業をしながら待つ。
茶化すように言葉を交わして、行動に次ぐ行動で前に進んでもよかった。
でも失われた人達に黙祷を捧げる時間くらい有っても良いと思ったのだ。
でも失われた人達に黙祷を捧げる時間くらい有っても良いと思ったのだ。
「ベッキーさん」
思ったよりは短く、トマからの言葉が返った。
レベッカは振り返り、トマと顔を合わせて。
お互いがふうと息を吐いて。
確認した。
「トマ。私達の目的はなんだ?」
「ジェダをやりこめてみんなでこの島から脱出する事です」
「満点だ」
思ったよりは短く、トマからの言葉が返った。
レベッカは振り返り、トマと顔を合わせて。
お互いがふうと息を吐いて。
確認した。
「トマ。私達の目的はなんだ?」
「ジェダをやりこめてみんなでこの島から脱出する事です」
「満点だ」
トマがどれだけククリの死に苦しんだかは見れば判るほどに明白だった。
声も無く泣いていたのだろう、瞳は拭き残した涙に濡れていた。
手は強張り、声は僅かに嗄れていた。
きっとジュジュの時もこうだったのだ。
それでもその答えが迷わず返ってきた事を、レベッカは良しと思えた。
声も無く泣いていたのだろう、瞳は拭き残した涙に濡れていた。
手は強張り、声は僅かに嗄れていた。
きっとジュジュの時もこうだったのだ。
それでもその答えが迷わず返ってきた事を、レベッカは良しと思えた。
「ありがとうございます、ベッキーさん」
「気にすんな」
そうやって、会話は再開された。
「気にすんな」
そうやって、会話は再開された。
トマはそっと、部屋の隅にあるジュジュの死体に目を向けた。
シェルター内に移動されていた、首輪を剥ぎ取るべき、大切な仲間の遺体。
だけどそれよりも先に情報を整理する事を選んだ。
シェルター内に移動されていた、首輪を剥ぎ取るべき、大切な仲間の遺体。
だけどそれよりも先に情報を整理する事を選んだ。
「まず気になる話はトリエラさんと、ヴィクトリアって名乗る人との会話です」
やはりかとレベッカは思う。
その会話の中で、ククリは金糸雀に殺されたという証言が出てくるのだ。
気にならないはずが無かった。
「ククリさんは、ここから北の街で死んだんですね」
「ああ。トリエラもそこに居る」
北東市街レベッカ宮本宅。
そこにはククリを保護していたらしきトリエラが居て、
話相手のヴィクトリアが居る『インデックス』もその近くの何処かだと予想される。
破壊された警察署と旅館。
こんな物が有りそうなのは市街地くらいだ。
片方が南西に居たと考えるにはお互いの情報が共有されすぎている。
「どうする、トマ。雨が止んだら朝までに向かうか?
なんで私の家が持ってこられてるのかはすっごく気になるけど、家の見分けは付くぞ。多分」
市街地の立ち並ぶ建物から僅かな情報から目的の家屋を見つけ出すには相当な苦労が伴う。
例えその面積が1平方km足らずだろうと尋常な労力ではない。
だが家の形を熟知している者なら、高台から探せば見つからなくもない広さだろう。
やはりかとレベッカは思う。
その会話の中で、ククリは金糸雀に殺されたという証言が出てくるのだ。
気にならないはずが無かった。
「ククリさんは、ここから北の街で死んだんですね」
「ああ。トリエラもそこに居る」
北東市街レベッカ宮本宅。
そこにはククリを保護していたらしきトリエラが居て、
話相手のヴィクトリアが居る『インデックス』もその近くの何処かだと予想される。
破壊された警察署と旅館。
こんな物が有りそうなのは市街地くらいだ。
片方が南西に居たと考えるにはお互いの情報が共有されすぎている。
「どうする、トマ。雨が止んだら朝までに向かうか?
なんで私の家が持ってこられてるのかはすっごく気になるけど、家の見分けは付くぞ。多分」
市街地の立ち並ぶ建物から僅かな情報から目的の家屋を見つけ出すには相当な苦労が伴う。
例えその面積が1平方km足らずだろうと尋常な労力ではない。
だが家の形を熟知している者なら、高台から探せば見つからなくもない広さだろう。
トマは首を振った。
「いえ、ベッキーさんが動くのは厳しいでしょう」
「うぐ。ま、まあな」
レベッカ宮本は成り立ての吸血鬼である。
流れ水を渡れず、日の光に灼け死ぬ存在である。
今、彼女の移動範囲は極端に制限されていた。
「いえ、ベッキーさんが動くのは厳しいでしょう」
「うぐ。ま、まあな」
レベッカ宮本は成り立ての吸血鬼である。
流れ水を渡れず、日の光に灼け死ぬ存在である。
今、彼女の移動範囲は極端に制限されていた。
「いちおー、宇宙服着れば出ていけるんじゃないかなあとは思うんだけどさ。
重いし動きにくい襲われて破かれたらヤバイから、動きたくないのはほんとだよ」
「判ってます。無理はしないでください」
「それに実際、ここは私に向いた場所だからなー。禁止エリアに指定される危険も殆ど無いし」
「2エリアに跨っていますからね」
「それだけじゃないぞ。1時に発動するG-4の禁止エリアが決定的だ」
それは分からなくて、トマは聞き返した。
「え? どういう事ですか?」
「動線だよ」
レベッカは地図を広げた。
今彼女たちが居るシェルターはG-5とH-5に跨って存在している。
その横に無地の紙を並べて置き、幾つかのマス目を書き込んだ。
重いし動きにくい襲われて破かれたらヤバイから、動きたくないのはほんとだよ」
「判ってます。無理はしないでください」
「それに実際、ここは私に向いた場所だからなー。禁止エリアに指定される危険も殆ど無いし」
「2エリアに跨っていますからね」
「それだけじゃないぞ。1時に発動するG-4の禁止エリアが決定的だ」
それは分からなくて、トマは聞き返した。
「え? どういう事ですか?」
「動線だよ」
レベッカは地図を広げた。
今彼女たちが居るシェルターはG-5とH-5に跨って存在している。
その横に無地の紙を並べて置き、幾つかのマス目を書き込んだ。
F G H
4□■□
5□○○
6□□□
4□■□
5□○○
6□□□
レベッカ先生からの出題です。
「黒い四角が禁止エリア、○がシェルターだ。
だがこの表記の仕方だと見落としが有る。判るか?」
「黒い四角が禁止エリア、○がシェルターだ。
だがこの表記の仕方だと見落としが有る。判るか?」
トマはうーんと頭を捻り、しばらく地図と無地の紙を見比べた。
正確な表記には思える。
随分簡略化されているが、禁止エリアとエリア配置だけを見るなら間違ってはいない。
雑な表記だがシェルターも書き込まれている。
シェルター。
ランドマーク。
実際にそこにあるもの。
正確な表記には思える。
随分簡略化されているが、禁止エリアとエリア配置だけを見るなら間違ってはいない。
雑な表記だがシェルターも書き込まれている。
シェルター。
ランドマーク。
実際にそこにあるもの。
地形。
気づいた。
「あ、もしかしてこういう事ですか?」
マス目の上に重ねて線を引く。
「あ、もしかしてこういう事ですか?」
マス目の上に重ねて線を引く。
F G H
4┤■┤
5┼┼┤
6│└┤
4┤■┤
5┼┼┤
6│└┤
「正解だ。
この辺は禁止エリアだけじゃなく水場が移動を阻害しているからな。
G-5を禁止エリアに指定したら島の東端への移動が阻害されるし、
H-5を禁止エリアに指定したら北東部が孤立しちまう。
そしてジェダには、参加者をある程度は活発に移動させたい理由がある」
「殺し合いも何も、出会わなければ始まらないですよね」
「ああ。5時に発動するE-2の禁止エリアも有るから不安は有るけどな。
ジェダはしばらくの間、この辺りに禁止エリアを増やしたくないはずだ」
この辺は禁止エリアだけじゃなく水場が移動を阻害しているからな。
G-5を禁止エリアに指定したら島の東端への移動が阻害されるし、
H-5を禁止エリアに指定したら北東部が孤立しちまう。
そしてジェダには、参加者をある程度は活発に移動させたい理由がある」
「殺し合いも何も、出会わなければ始まらないですよね」
「ああ。5時に発動するE-2の禁止エリアも有るから不安は有るけどな。
ジェダはしばらくの間、この辺りに禁止エリアを増やしたくないはずだ」
5時に発動するE-2の禁止エリアは島中央部から島北部への動線を断ち切っている。
禁止エリアの中で移動を阻害しているのは今のところここだけだ。
とはいえ完全に断っているわけではない。
森の奥を抜ければ移動できなくもない。
しかし元より島の北部に施設は少なく、妙なオブジェを除けば北東部の市街地だけだ。
単に隠れるのでなければ、向かう理由は減っている。
禁止エリアの中で移動を阻害しているのは今のところここだけだ。
とはいえ完全に断っているわけではない。
森の奥を抜ければ移動できなくもない。
しかし元より島の北部に施設は少なく、妙なオブジェを除けば北東部の市街地だけだ。
単に隠れるのでなければ、向かう理由は減っている。
「1時と5時の禁止エリアの意図を合わせて勘ぐるなら、北東市街地への交通の阻害か。
完璧には閉じずに圧力を掛けて、しばらく出入を制限したいんだろ。
なんでそんな事をしたいのかはわかんないけどな。
人の分布具合が不味いのか、それとも別の理由か。
一時的な物で、次の放送の禁止エリアは北東に来るかもしれない。
だからまあ、家は気になるけどほんと言うと近づきたくない。
けど良いのか、トマ?」
「はい。もし行くならぼく一人で行きます」
「なら待ってた方が確率高いぞ。市街地の奴らが移動するとしたらここに来る可能性は高い」
「ええ。でもどちらも気になってますから、片方は調べに行きたいんです」
「もう一方は、あの記録の事か」
トマは頷いた。
通話記録に残されていた通話元も宛先も判らない二つのデータ。
完璧には閉じずに圧力を掛けて、しばらく出入を制限したいんだろ。
なんでそんな事をしたいのかはわかんないけどな。
人の分布具合が不味いのか、それとも別の理由か。
一時的な物で、次の放送の禁止エリアは北東に来るかもしれない。
だからまあ、家は気になるけどほんと言うと近づきたくない。
けど良いのか、トマ?」
「はい。もし行くならぼく一人で行きます」
「なら待ってた方が確率高いぞ。市街地の奴らが移動するとしたらここに来る可能性は高い」
「ええ。でもどちらも気になってますから、片方は調べに行きたいんです」
「もう一方は、あの記録の事か」
トマは頷いた。
通話記録に残されていた通話元も宛先も判らない二つのデータ。
「実を言うとあの片方、心当たりが有りまして」
「あー……あの、ずっこけた方か」
「はい、ずっこけた方です」
ひどい言いようである。
「ギップルさんというテントにもなる便利な方なんですけど、
臭い台詞を吐かれるとどこからでもツッコミを入れに来る習性がありまして。
多分それで偶然収録されたんだと思います」
「この場面じゃ役に立ちそうに無いけどな」
「そうですね」
「あー……あの、ずっこけた方か」
「はい、ずっこけた方です」
ひどい言いようである。
「ギップルさんというテントにもなる便利な方なんですけど、
臭い台詞を吐かれるとどこからでもツッコミを入れに来る習性がありまして。
多分それで偶然収録されたんだと思います」
「この場面じゃ役に立ちそうに無いけどな」
「そうですね」
そう言いつつも、二人は紙にペンを走らせ始める。
この辺りは“まだ大丈夫なはずの”会話だ。
だが念を入れるに越した事はない。
レベッカとトマは首輪関連の話題について、首輪の『覗き穴』を閉じた上で筆談する事にしている。
筆談は大変時間が掛かるので、聞かれては不味い事だけだが。
この辺りは“まだ大丈夫なはずの”会話だ。
だが念を入れるに越した事はない。
レベッカとトマは首輪関連の話題について、首輪の『覗き穴』を閉じた上で筆談する事にしている。
筆談は大変時間が掛かるので、聞かれては不味い事だけだが。
『でもギップルさんの声が、念話にせよなんにせよ残っていたという事は』
『もう一方も私たちが知らない参加者の知り合いか何か、恐らくジェダの自作ではないって事か』
『はい』
ここまでを素直に考えれば、あの少女の言葉は脱出の有力な手がかりになるのかもしれない。
しれないが、だが。
レベッカはある事に気がついた。
『トマ、確認するぞ。ギップルの念話は明らかにたまたま収録された物だ。そうだな?』
『はい、そうだと思います。あの内容ですから、まず間違いなく』
『するとつまり、ここの装置には念話を録音する機能まであるわけだ』
『そういう事になりますね』
そうでなければおかしい。
おかしいが、なら。
『もう一方も私たちが知らない参加者の知り合いか何か、恐らくジェダの自作ではないって事か』
『はい』
ここまでを素直に考えれば、あの少女の言葉は脱出の有力な手がかりになるのかもしれない。
しれないが、だが。
レベッカはある事に気がついた。
『トマ、確認するぞ。ギップルの念話は明らかにたまたま収録された物だ。そうだな?』
『はい、そうだと思います。あの内容ですから、まず間違いなく』
『するとつまり、ここの装置には念話を録音する機能まであるわけだ』
『そういう事になりますね』
そうでなければおかしい。
おかしいが、なら。
『トマ。放送がそれこそ念話みたいな物だったのには気づいてるか?』
『あ、そういえばそうですね。考えてみたら音って感じじゃありませんでしたし』
『私はさっき気づいたよ。この記録を調べててな。
おまえとアオイとの通話記録に放送が入ってなかったんだ』
『そうなんですか』
トマは見事な着眼点だと感心したように頷いてから。
レベッカがいやいや~と照れてるのを脇目に。
数秒の間を置いて。
『あ、そういえばそうですね。考えてみたら音って感じじゃありませんでしたし』
『私はさっき気づいたよ。この記録を調べててな。
おまえとアオイとの通話記録に放送が入ってなかったんだ』
『そうなんですか』
トマは見事な着眼点だと感心したように頷いてから。
レベッカがいやいや~と照れてるのを脇目に。
数秒の間を置いて。
あれ、と呟いた。
『それ、何かおかしくありませんか?』
『そう、おかしいんだ。
ここの録音機能にあの念話が記録されてるのはおかしい』
『そう、おかしいんだ。
ここの録音機能にあの念話が記録されてるのはおかしい』
トマはぞくりとした寒気を感じて、録音記録を振り返った。
何か得体の知れない謎がそこに有る。
『私は最初、あの音質に差が有る二つの声を聞いてこう考えた。
妨害が無い時期にギップルの声が混じり、通信妨害が強化された後に少女の物が入った。
つまりここの記録装置は念話も記録することができる。
この二つだけならこれでいい。
けど聞こえなかった放送まで含めるとおかしい。
あるいは聞こえなかった放送とあの少女の声だけなら説明は付いたんだ。
けど放送が記録されず、少女とギップルの声が記録されているのはどう考えてもおかしい』
『どういうことですか、それ』
『女の子の声にははっきりした意思が有った。
それなら意図的に吹き込んで特別に記録させることができたのかもしれない。
じゃあ偶然入ったはずのギップルの念話まで同じ形式で入っていたのに、
放送が記録されなかった理由はなんだ』
トマは考えを巡らせる。
道具に絡む話に限定すればトマの知性はこの島の誰にも引けをとらない。
幾つかの仮説が浮かんだ。
『内部から内部への声は記録できないとか』
『念話に限って外部からの通信だけ記録するのを会場内に置く理由って思いつくか?』
『念波妨害で放送が消えたとか』
『私たちに聞こえていた以上、念波みたいなのは正常に届いてるはずだ』
『この装置までは届かないけど放送の念波はそれぞれの首輪から出ているとか』
『放送の原理はそうかもしれないけど、そもそも会場内に念波妨害はありえない』
レベッカはとんとんと首輪を叩いて見せる。
以前の首輪考察を思い出せ、と。
何か得体の知れない謎がそこに有る。
『私は最初、あの音質に差が有る二つの声を聞いてこう考えた。
妨害が無い時期にギップルの声が混じり、通信妨害が強化された後に少女の物が入った。
つまりここの記録装置は念話も記録することができる。
この二つだけならこれでいい。
けど聞こえなかった放送まで含めるとおかしい。
あるいは聞こえなかった放送とあの少女の声だけなら説明は付いたんだ。
けど放送が記録されず、少女とギップルの声が記録されているのはどう考えてもおかしい』
『どういうことですか、それ』
『女の子の声にははっきりした意思が有った。
それなら意図的に吹き込んで特別に記録させることができたのかもしれない。
じゃあ偶然入ったはずのギップルの念話まで同じ形式で入っていたのに、
放送が記録されなかった理由はなんだ』
トマは考えを巡らせる。
道具に絡む話に限定すればトマの知性はこの島の誰にも引けをとらない。
幾つかの仮説が浮かんだ。
『内部から内部への声は記録できないとか』
『念話に限って外部からの通信だけ記録するのを会場内に置く理由って思いつくか?』
『念波妨害で放送が消えたとか』
『私たちに聞こえていた以上、念波みたいなのは正常に届いてるはずだ』
『この装置までは届かないけど放送の念波はそれぞれの首輪から出ているとか』
『放送の原理はそうかもしれないけど、そもそも会場内に念波妨害はありえない』
レベッカはとんとんと首輪を叩いて見せる。
以前の首輪考察を思い出せ、と。
『私が、電波じゃ水とかに遮られて困るだろうと推測したのをおぼえてるか?』
レベッカは中の人発覚以前から、首輪の機能全てが機械で行われてはいないと推測していた。
電波が様々な障害物に遮られるなど不都合があるからだ。
『会場内に通信が届かない場所なんて有ったらいけないんだ。
少なくとも会場内の念波は妨害できない。
もちろん中と外を隔てる通信妨害は有るんだろうけど、会場内にそんな装置は置いておけない』
レベッカは中の人発覚以前から、首輪の機能全てが機械で行われてはいないと推測していた。
電波が様々な障害物に遮られるなど不都合があるからだ。
『会場内に通信が届かない場所なんて有ったらいけないんだ。
少なくとも会場内の念波は妨害できない。
もちろん中と外を隔てる通信妨害は有るんだろうけど、会場内にそんな装置は置いておけない』
加えてレベッカは思う。
内部に念波妨害を行われていれば、手詰まりだと。
この会場内の念話を妨害されているとすれば、レベッカの立てた予定、
《念話による首輪解除法》は使えなくなってしまう。
先に妨害装置を壊してしまえば良いと思うかもしれないが、
恐らくジェダの本拠地に有るだろうそんな設備が禁止エリア指定されていない可能性は低い。
首輪を解除しなければジェダ側の設備に攻め込む事は難しいが、
ジェダ側の設備を破壊しなければ首輪を解除出来ないとなれば、打つ手が無くなる。
(頼むからそれだけは無しにしてくれよう)
ちょっと弱気になりながらも、自説の確かさを信じて考察を続ける。
内部に念波妨害を行われていれば、手詰まりだと。
この会場内の念話を妨害されているとすれば、レベッカの立てた予定、
《念話による首輪解除法》は使えなくなってしまう。
先に妨害装置を壊してしまえば良いと思うかもしれないが、
恐らくジェダの本拠地に有るだろうそんな設備が禁止エリア指定されていない可能性は低い。
首輪を解除しなければジェダ側の設備に攻め込む事は難しいが、
ジェダ側の設備を破壊しなければ首輪を解除出来ないとなれば、打つ手が無くなる。
(頼むからそれだけは無しにしてくれよう)
ちょっと弱気になりながらも、自説の確かさを信じて考察を続ける。
さてとレベッカは問いかける。
レベッカ先生からの第二問。
『それで、念話とかそういうの自体は機能してるとすればどうなる?』
『それで、念話とかそういうの自体は機能してるとすればどうなる?』
トマは頭を巡らせる。
中と外の念話が妨害されている可能性は十分有るだろう。
会場の外側には念波妨害装置の様な物が有るのかもしれない。あるいは単に特殊な壁か。
まあそこまで出て行けたなら逃げの一手だろう、それほど関係深い物ではない。
会場の外側には念波妨害装置の様な物が有るのかもしれない。あるいは単に特殊な壁か。
まあそこまで出て行けたなら逃げの一手だろう、それほど関係深い物ではない。
しかし内部から内部の念話が妨害されている可能性は低い。
よって放送も妨害などはされていないはずである。
にも関わらずここの装置に放送は記録されていなかった。
ここの装置には念話を録音する機能など無い。
ならば女の子の声だけならまだしもギップルの声はどこから入った?
よって放送も妨害などはされていないはずである。
にも関わらずここの装置に放送は記録されていなかった。
ここの装置には念話を録音する機能など無い。
ならば女の子の声だけならまだしもギップルの声はどこから入った?
やがて一つの答えが出た。
それが意味する事までは理解できないまま、トマは呟いた。
『あの声は、ここの設備で記録されたものじゃない?』
頷きが返った。
それが意味する事までは理解できないまま、トマは呟いた。
『あの声は、ここの設備で記録されたものじゃない?』
頷きが返った。
何処か別の設備で録音されたデータがここの設備に置かれていた。
あまりにも迂遠ではあるが、そう考えるのが適切に思えた。
二人はそれが何を意味しているのか考える。
ここの設備で記録できないデータが何故ここにある?
あまりにも迂遠ではあるが、そう考えるのが適切に思えた。
二人はそれが何を意味しているのか考える。
ここの設備で記録できないデータが何故ここにある?
『一つ。すっごく好意的に考える。
外から私たちを助けようとしてくれている誰かが物理的に直接データを送りこんだ。
ギップルのデータは何かのおまけだ。
手紙とかじゃないのはジェダの目に付かないところに隠すため。
よりによって肝心の部分にノイズが入った原因は不明』
『ちょっとキビシイですね』
外から私たちを助けようとしてくれている誰かが物理的に直接データを送りこんだ。
ギップルのデータは何かのおまけだ。
手紙とかじゃないのはジェダの目に付かないところに隠すため。
よりによって肝心の部分にノイズが入った原因は不明』
『ちょっとキビシイですね』
『二つ目。かなり好意的に考える。
なんかの手違いでジェダの手元で管理するはずの外部傍聴記録がこっちに流出した。
念話の録音装置は数が少なくてここにまでは置いていない。
あと、私はそれが外部にだけ向いてる事を祈る。念話も記録されるんじゃキツイ。
QBはものすごくバカみたいだからな、もしかしてありえるかもしれない。
この場合はジェダによる検閲済みな可能性が高い上に、
通信はシャットアウトされてるわけだから外部と連絡できる見込みは薄いけど、
外から救助しようとしてくれてる奴が居るってのは救いだ』
『でもこちらからは何もできませんね』
『祈れ』
なんかの手違いでジェダの手元で管理するはずの外部傍聴記録がこっちに流出した。
念話の録音装置は数が少なくてここにまでは置いていない。
あと、私はそれが外部にだけ向いてる事を祈る。念話も記録されるんじゃキツイ。
QBはものすごくバカみたいだからな、もしかしてありえるかもしれない。
この場合はジェダによる検閲済みな可能性が高い上に、
通信はシャットアウトされてるわけだから外部と連絡できる見込みは薄いけど、
外から救助しようとしてくれてる奴が居るってのは救いだ』
『でもこちらからは何もできませんね』
『祈れ』
『三つ目。悪意があるとして考える。
外部傍聴記録には違いないけど、なんらかの理由で意図的にジェダが仕込んだ。
この場合は音質が悪かった部分も簡単に説明が付く。嘘とばれない為だ。
ノイズで欠落させた部分に“この島じゃ有り得ない条件”が含まれてたんだろう。
ギップルの声は安心感を増すためかな。
放送が録音されない事に気づけなかったらすっかり信じてたし。
一番有り得る気がしてきたけど、そうだとしたら意図が分からない』
『不気味ですね。なんていうか、あまり考えたくありません』
外部傍聴記録には違いないけど、なんらかの理由で意図的にジェダが仕込んだ。
この場合は音質が悪かった部分も簡単に説明が付く。嘘とばれない為だ。
ノイズで欠落させた部分に“この島じゃ有り得ない条件”が含まれてたんだろう。
ギップルの声は安心感を増すためかな。
放送が録音されない事に気づけなかったらすっかり信じてたし。
一番有り得る気がしてきたけど、そうだとしたら意図が分からない』
『不気味ですね。なんていうか、あまり考えたくありません』
『四つ目。もうすっごく好意的に考える。
二つ目の派生でギップルの物だけは外部傍聴記録がこっちに混ざった物。
あるいは単なる偶然で、明確な意思を持ってしてもあそこまで音質が劣化する
内外を隔てる壁を音質クリアなまま打ち破った挙句なんでか念話記録機能が無い媒体に記録成功。
女の子の声はそれとは全く別枠でジェダにも気づかれてない例外だ』
「………………」
思わず沈黙。
二つ目の派生でギップルの物だけは外部傍聴記録がこっちに混ざった物。
あるいは単なる偶然で、明確な意思を持ってしてもあそこまで音質が劣化する
内外を隔てる壁を音質クリアなまま打ち破った挙句なんでか念話記録機能が無い媒体に記録成功。
女の子の声はそれとは全く別枠でジェダにも気づかれてない例外だ』
「………………」
思わず沈黙。
それから顔を付き合わせて深い溜息を付いた。
『もしもそうだったら良いですね』
『そーだよなー』
『もしもそうだったら良いですね』
『そーだよなー』
それから、結論付けた。
『多分二つ目か三つ目。この記録はジェダ側の手違いか、あるいは意図してここに置かれた。
手違いよりわざとやった可能性の方が高いと思う。
というわけで私は、この記録それ自体は外れだ、と結論せざるをえない』
暗鬱な結論だった。
手違いよりわざとやった可能性の方が高いと思う。
というわけで私は、この記録それ自体は外れだ、と結論せざるをえない』
暗鬱な結論だった。
『けどギップルには礼を言うべきかもな。気づけないよりかずっとマシだ』
『そうですね。まんまとジェダの罠にはまっていたかもしれません』
『でもそれだって不思議な話だ』
『?』
レベッカは問う。
この記録がここに有ったわけを。
『もしかしたら理由も答えも無くて何かの手違いかもしれないけどさ。
ジェダが外部傍聴記録を改変した上でここにおいて惑わそうとしたんなら、
なんでわざわざそんな事をしたんだ?』
『脱出しようとか、ジェダを倒そうという人たちを罠にはめる為じゃないんですか?』
『そうだよな。多分、そうなんだけどな』
『そうですね。まんまとジェダの罠にはまっていたかもしれません』
『でもそれだって不思議な話だ』
『?』
レベッカは問う。
この記録がここに有ったわけを。
『もしかしたら理由も答えも無くて何かの手違いかもしれないけどさ。
ジェダが外部傍聴記録を改変した上でここにおいて惑わそうとしたんなら、
なんでわざわざそんな事をしたんだ?』
『脱出しようとか、ジェダを倒そうという人たちを罠にはめる為じゃないんですか?』
『そうだよな。多分、そうなんだけどな』
島の東端に有るシェルター内に、島の南端に脱出の鍵ありという示唆を残せば、
それを見た反ジェダの一派は安全性の高いシェルターを出て、南の塔に向かうだろう。
危険な野外を移動して。
魅力的な脱出の鍵に目が眩み時間を浪費して、手が届いたかもしれない可能性を見失うだろう。
狡猾極まりない悪辣な仕掛けだ。
ここまでは疑問を挟む余地も無い。
だけどレベッカは疑問に思う。
それを見た反ジェダの一派は安全性の高いシェルターを出て、南の塔に向かうだろう。
危険な野外を移動して。
魅力的な脱出の鍵に目が眩み時間を浪費して、手が届いたかもしれない可能性を見失うだろう。
狡猾極まりない悪辣な仕掛けだ。
ここまでは疑問を挟む余地も無い。
だけどレベッカは疑問に思う。
(多分、あの声は罠だ。更に罠は複数仕掛けられてるはずだ。
この島に有る物も、ジェダから支給された物も、どこまで信用出来るか怪しいもんだ。
けどすっごい違和感が有るんだ。
どこかおかしい気がする。
だって、他の部分じゃあんなに無茶苦茶で杜撰で投げやりなんだぞ)
たくさんの凄い奴らを集めた殺し合いである、執拗に安全策を取っていてもおかしくはない。
むしろ当然の話だ。
だがしかし、あの見るからに自信過剰なジェダが、どうしてここに限り完璧に対策しているのか。
この島に有る物も、ジェダから支給された物も、どこまで信用出来るか怪しいもんだ。
けどすっごい違和感が有るんだ。
どこかおかしい気がする。
だって、他の部分じゃあんなに無茶苦茶で杜撰で投げやりなんだぞ)
たくさんの凄い奴らを集めた殺し合いである、執拗に安全策を取っていてもおかしくはない。
むしろ当然の話だ。
だがしかし、あの見るからに自信過剰なジェダが、どうしてここに限り完璧に対策しているのか。
二人が以前にも考察した事だが、ジェダの管理体制ははっきり言って杜撰だ。
行き当たりばったりっていうか何も考えてないだろおまえと説教したくなるほどだ。
絶対的、圧倒的な優位性がそうさせるのだろうが、どうにも詰めが甘く思えてしまう。
なのに会場だけ徹底的な安全策を練っている理由は何なのか。
(目くらましをばら撒かなきゃならないぐらいシンプルな欠陥が何処かに有るのか?
例えば、ジェダ自身も割と普通に行ける場所に居るとか。
QBが何処かから来てるんだから、有り得ない話じゃないかもしれないけど)
悩みに悩んで、それから。
レベッカは書いた。
行き当たりばったりっていうか何も考えてないだろおまえと説教したくなるほどだ。
絶対的、圧倒的な優位性がそうさせるのだろうが、どうにも詰めが甘く思えてしまう。
なのに会場だけ徹底的な安全策を練っている理由は何なのか。
(目くらましをばら撒かなきゃならないぐらいシンプルな欠陥が何処かに有るのか?
例えば、ジェダ自身も割と普通に行ける場所に居るとか。
QBが何処かから来てるんだから、有り得ない話じゃないかもしれないけど)
悩みに悩んで、それから。
レベッカは書いた。
『塔を調べに行くのは有りかもしれないけどな』
『どうしてです?』
十中八九罠と見た場所を調べる余地などあるのか。
『どうしてです?』
十中八九罠と見た場所を調べる余地などあるのか。
しかしレベッカは違うものを見ていた。
『加工されたにせよあの声は外部の声である可能性が高いんだ。
この会場にあるE-8の塔を示しているなんて保障は一切無いけど、
外部から何かをしてジェダが後始末をした後だとか、
何かしようとしているのを意図を持って泳がせている可能性は有る。
もしそうなら、直接的では無いにしてもジェダ側を探る鍵が有るかもしれない。
『なるほど。でも死亡するような罠という危険性は?』
『罠で殺される可能性はほとんど無いと思う。
私たちに殺し合わせるのが目的なんだからな。
でも理由によってはわかんないから、調べるならぜったいに深入りするなよ』
『加工されたにせよあの声は外部の声である可能性が高いんだ。
この会場にあるE-8の塔を示しているなんて保障は一切無いけど、
外部から何かをしてジェダが後始末をした後だとか、
何かしようとしているのを意図を持って泳がせている可能性は有る。
もしそうなら、直接的では無いにしてもジェダ側を探る鍵が有るかもしれない。
『なるほど。でも死亡するような罠という危険性は?』
『罠で殺される可能性はほとんど無いと思う。
私たちに殺し合わせるのが目的なんだからな。
でも理由によってはわかんないから、調べるならぜったいに深入りするなよ』
リスクがどれだけあるかも判らない上に、大したリターンも見込めない。
いや、むしろリターン0の可能性が極めて高い。
それでも端から圧倒的劣勢なのだから、試してみる価値は有るかもしれない。
レベッカが出した結論はそんな所だった。
筆談を記した紙をくしゃくしゃに丸めて放る。
考察はここで終わりだった。
いや、むしろリターン0の可能性が極めて高い。
それでも端から圧倒的劣勢なのだから、試してみる価値は有るかもしれない。
レベッカが出した結論はそんな所だった。
筆談を記した紙をくしゃくしゃに丸めて放る。
考察はここで終わりだった。
「何にせよ、私はしばらく動けない」
「わかってます。次の夜まで待っていてください」
「悪いな。それでどうする?」
「どうする、というのは?」
「いつ、どっちを調べに行くんだ」
「ああ、いつかというなら雨が止んだらすぐです。それまでは休んで、あと……」
トマの視線が。
部屋の隅にある布を被せられた遺体に、向いた。
「わかってます。次の夜まで待っていてください」
「悪いな。それでどうする?」
「どうする、というのは?」
「いつ、どっちを調べに行くんだ」
「ああ、いつかというなら雨が止んだらすぐです。それまでは休んで、あと……」
トマの視線が。
部屋の隅にある布を被せられた遺体に、向いた。
ジュジュの遺体。
首を切り取り、首輪のサンプルを入手すると決めた、トマの仲間の遺体。
想いが交錯した。
筆談にするほどでもなく、言葉を伏せて想いを伏せずに話を交わす。
首を切り取り、首輪のサンプルを入手すると決めた、トマの仲間の遺体。
想いが交錯した。
筆談にするほどでもなく、言葉を伏せて想いを伏せずに話を交わす。
「私が一人でやっておくよ」
「いえ、これは」
「ムリすんな。心を病んだら何にもならないぞ」
「でもベッキーさんはベッキーさんで」
今は吸血鬼だから。
レベッカはあわあわとした様子で、だけどはっきりと否定する。
「ガマンするぞ、ちゃんと。血のパックだってあるし。さっきもいけたし」
「でも、それって大変じゃないんですか?」
「おまえよりはずっとマシだ」
「でも」
「だから」
レベッカは真っ向からトマの意思を否定する。
辛いを必ずしも自分でやる必要は無いのだと。
「いえ、これは」
「ムリすんな。心を病んだら何にもならないぞ」
「でもベッキーさんはベッキーさんで」
今は吸血鬼だから。
レベッカはあわあわとした様子で、だけどはっきりと否定する。
「ガマンするぞ、ちゃんと。血のパックだってあるし。さっきもいけたし」
「でも、それって大変じゃないんですか?」
「おまえよりはずっとマシだ」
「でも」
「だから」
レベッカは真っ向からトマの意思を否定する。
辛いを必ずしも自分でやる必要は無いのだと。
「自分がやるべきだ、やらなきゃならない、なんて考えは捨てろよ。
おまえがやるべきじゃないぞ。死体だからって、友達を、切り落とすなんてこと。
おまえがやらなきゃいけないワケでもない」
「わかってます」
「友達だから尚更なんてのも無しだからな。
友達は自分が切るべきだなんてちょっとじゃなく色々冒されてるぞ」
「わかってます」
「余裕を持って、張り詰めるなよ。
そういうのって、この島じゃイヤな方向にばかり転がるんだからな」
「わかってます」
「あとさっき一緒にやったから判ると思うけど人体の切断はすっごく疲れるぞ。
成り立てだけどいちおー吸血鬼の私がやるなら、手伝いの有り無しなんて大差無いぞ」
「わかってます」
「それでも、やるのか?」
おまえがやるべきじゃないぞ。死体だからって、友達を、切り落とすなんてこと。
おまえがやらなきゃいけないワケでもない」
「わかってます」
「友達だから尚更なんてのも無しだからな。
友達は自分が切るべきだなんてちょっとじゃなく色々冒されてるぞ」
「わかってます」
「余裕を持って、張り詰めるなよ。
そういうのって、この島じゃイヤな方向にばかり転がるんだからな」
「わかってます」
「あとさっき一緒にやったから判ると思うけど人体の切断はすっごく疲れるぞ。
成り立てだけどいちおー吸血鬼の私がやるなら、手伝いの有り無しなんて大差無いぞ」
「わかってます」
「それでも、やるのか?」
返答はかなりの間をおいて。
僅かに震える声で、ゆっくりとした答えが返った。
「はい」
僅かに震える声で、ゆっくりとした答えが返った。
「はい」
即答ではなかった。
きっぱりとした決断などではなくて、迷いに悩んで、考えて、苦しんだ答えだったのだろう。
(なら、止められないよなぁ)
レベッカはそう思うと。
深い溜息を吐いて。
幸せがいっぱい逃げていきそうな溜息だと思ってから、そもそも幸せが残ってないと自嘲した。
少しだけ笑えた。
不幸や落胆でも笑えた事が、少しだけ可笑しかった。
きっぱりとした決断などではなくて、迷いに悩んで、考えて、苦しんだ答えだったのだろう。
(なら、止められないよなぁ)
レベッカはそう思うと。
深い溜息を吐いて。
幸せがいっぱい逃げていきそうな溜息だと思ってから、そもそも幸せが残ってないと自嘲した。
少しだけ笑えた。
不幸や落胆でも笑えた事が、少しだけ可笑しかった。
「なんでだ?」
「ベッキーさんに押しつけた、なんてイヤな思いを抱えたまま行くよりはマシです。
逃げるみたいで」
「逃げていいんだよ。正面から壁に頭ぶつけるのは勇気って言わないんだからな」
「でも、仲間なんですよね、ベッキーさん」
「まあな。私はおまえの仲間だ」
「仲間を置いて逃げるのってひどい事したら、後々までずっとクやみます」
「う。ちょっと前に『ここは任せて』やった身としては耳が痛いな」
「す、すみません」
「まあ、ほんと私のワガママだけどな。
あいつら、自分たちのせいで私が殺されたなんて思ってないだろうな。
守れた私は大満足だけど」
「なんだかズルいです」
「わるいか」
「わるくないんですか?」
「良いんだ」
軽妙な言葉を交わし、息を合わせて気持ちを整える。
「ベッキーさんに押しつけた、なんてイヤな思いを抱えたまま行くよりはマシです。
逃げるみたいで」
「逃げていいんだよ。正面から壁に頭ぶつけるのは勇気って言わないんだからな」
「でも、仲間なんですよね、ベッキーさん」
「まあな。私はおまえの仲間だ」
「仲間を置いて逃げるのってひどい事したら、後々までずっとクやみます」
「う。ちょっと前に『ここは任せて』やった身としては耳が痛いな」
「す、すみません」
「まあ、ほんと私のワガママだけどな。
あいつら、自分たちのせいで私が殺されたなんて思ってないだろうな。
守れた私は大満足だけど」
「なんだかズルいです」
「わるいか」
「わるくないんですか?」
「良いんだ」
軽妙な言葉を交わし、息を合わせて気持ちを整える。
「トマ。また吐きそうだったら今の内に吐いておけよ。バケツも用意しておくからな」
「ベッキーさんは今の内に『補給』済ませておいた方がいいですよ」
「わかってるよ」
「わかってます」
「ベッキーさんは今の内に『補給』済ませておいた方がいいですよ」
「わかってるよ」
「わかってます」
それから、二人はジュジュの遺体からも首輪を取り外した。
首輪解除法研究用の、スペア。
一つあれば良いという物ではない。解除の実験を行うなら何個有っても足りない。
更にトマとレベッカが別行動をとる予定も考えると、少なくとも二つは欲しかった。
それぞれの行先でも調べることができるからだ。
だから野上葵の首輪はレベッカの荷物に移り、トマはジュジュのそれを持つ事にした。
首輪解除法研究用の、スペア。
一つあれば良いという物ではない。解除の実験を行うなら何個有っても足りない。
更にトマとレベッカが別行動をとる予定も考えると、少なくとも二つは欲しかった。
それぞれの行先でも調べることができるからだ。
だから野上葵の首輪はレベッカの荷物に移り、トマはジュジュのそれを持つ事にした。
首の切断は、野上葵から取り外す時に学習していたから二人ならそれほど困難な作業ではなかった。
トマがまた気持ち悪くなったり、レベッカが吸血衝動を誤魔化すため陰で輸血パックを飲んだ程度。
その後は交代でシャワーを浴びてさっぱりして。
しばらくの休憩に入った。
トマがまた気持ち悪くなったり、レベッカが吸血衝動を誤魔化すため陰で輸血パックを飲んだ程度。
その後は交代でシャワーを浴びてさっぱりして。
しばらくの休憩に入った。
彼ら、彼女らは一歩ずつ進んでいた
手と手を取り合って。
闇の中をゆっくりと、着実に。
手と手を取り合って。
闇の中をゆっくりと、着実に。
遥か遠く淡い希望の光に、いつかたどり着けると信じて。
【H-5/シェルター地下/2日目/黎明】
【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:吸血鬼化(肉体強化、弱点他)。シャワーでさっぱり。休憩。
[服装]:普段通りの服と白衣姿(服は少し血などで汚れているが、白衣は新品)
[装備]:木刀@銀魂、ヒラリマント@ドラえもん(ボロボロだが一応使える) 、魔導ボード@魔法陣グルグル!
[道具]:支給品一式×2、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
輸血用パック×19、クーラーボックス、保冷剤、野上葵の首輪
[思考]:しばらくは休憩して、それから。
第一行動方針:雨と日光を避けるため、基本的にはシェルターで待機する。
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)
第三行動方針:レミリアを止め、ジェダにぶつける。そのために首輪を外す方法などを模索する。
第四行動方針:もし三宮紫穂に会ったら、野上葵の死体を辱めたことを改めて謝る。
基本行動方針:主催者を打倒して元の世界に帰る。
参加時期:小学校事件が終わった後
[備考]:吸血鬼化したレベッカの特殊能力として、魔力の存在と飛行能力を確認しました。
トマと時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せします。
宇宙服を着れば日中の行動が可能になる可能性に思い至りました。まだ真偽の程は分かりません。
シェルター内の通話記録により、この会場の全ての電話上の会話を聞きました。
【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:吸血鬼化(肉体強化、弱点他)。シャワーでさっぱり。休憩。
[服装]:普段通りの服と白衣姿(服は少し血などで汚れているが、白衣は新品)
[装備]:木刀@銀魂、ヒラリマント@ドラえもん(ボロボロだが一応使える) 、魔導ボード@魔法陣グルグル!
[道具]:支給品一式×2、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
輸血用パック×19、クーラーボックス、保冷剤、野上葵の首輪
[思考]:しばらくは休憩して、それから。
第一行動方針:雨と日光を避けるため、基本的にはシェルターで待機する。
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)
第三行動方針:レミリアを止め、ジェダにぶつける。そのために首輪を外す方法などを模索する。
第四行動方針:もし三宮紫穂に会ったら、野上葵の死体を辱めたことを改めて謝る。
基本行動方針:主催者を打倒して元の世界に帰る。
参加時期:小学校事件が終わった後
[備考]:吸血鬼化したレベッカの特殊能力として、魔力の存在と飛行能力を確認しました。
トマと時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せします。
宇宙服を着れば日中の行動が可能になる可能性に思い至りました。まだ真偽の程は分かりません。
シェルター内の通話記録により、この会場の全ての電話上の会話を聞きました。
【トマ@魔法陣グルグル】
[状態]:健康、ずぶ濡れ
[装備]:麻酔銃(残弾6)@サモンナイト3、アズュール@灼眼のシャナ
[道具]:基本支給品、ハズレセット(アビシオン人形、割り箸鉄砲、便座カバーなど)、
参號夷腕坊@るろうに剣心(口のあたりが少し焼けている・修理済み)
はやて特製チキンカレー入りタッパー、手術道具の一部(のこぎり・メス・のみ等)、ジュジュの首輪
[思考]:しばらくは休んで、それから。
第一行動方針:シェルターでしばらく待機。雨が止んだら一人で外に出て調査遠征? 一緒に待機?
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)。
第三行動方針:他の参加者と情報と物の交換を進める。必要ならその場で道具の作成も行う。
第四行動方針:『首輪の解除』『島からの脱出』『能力制限の解除』を考える。そのための情報と物を集める。
第五行動方針:トリエラと再び会いたい。それまでは死ぬわけには行かない。
第六行動方針:レベッカ宮本が会った「明石薫」(実はベルカナの変身)について詳しく知りたい
基本行動方針:アリサとニケたちとの合流。及び、全員が脱出できる方法を探す。
[備考]:「工場」にいる自称“白”の正体は「白レン」だと誤解しています。
レベッカ宮本と時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せ。
[状態]:健康、ずぶ濡れ
[装備]:麻酔銃(残弾6)@サモンナイト3、アズュール@灼眼のシャナ
[道具]:基本支給品、ハズレセット(アビシオン人形、割り箸鉄砲、便座カバーなど)、
参號夷腕坊@るろうに剣心(口のあたりが少し焼けている・修理済み)
はやて特製チキンカレー入りタッパー、手術道具の一部(のこぎり・メス・のみ等)、ジュジュの首輪
[思考]:しばらくは休んで、それから。
第一行動方針:シェルターでしばらく待機。雨が止んだら一人で外に出て調査遠征? 一緒に待機?
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)。
第三行動方針:他の参加者と情報と物の交換を進める。必要ならその場で道具の作成も行う。
第四行動方針:『首輪の解除』『島からの脱出』『能力制限の解除』を考える。そのための情報と物を集める。
第五行動方針:トリエラと再び会いたい。それまでは死ぬわけには行かない。
第六行動方針:レベッカ宮本が会った「明石薫」(実はベルカナの変身)について詳しく知りたい
基本行動方針:アリサとニケたちとの合流。及び、全員が脱出できる方法を探す。
[備考]:「工場」にいる自称“白”の正体は「白レン」だと誤解しています。
レベッカ宮本と時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せ。
首を切断されたジュジュの死体は布を掛けられシェルターのどこかに安置されています。
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