拭えぬ過去を振り返り(前編) ◆v5ym.OwvgI
「おい、トマ。そっちにはいたか?」
「いいえ。こっちにもいませんでした。」
「いいえ。こっちにもいませんでした。」
レベッカ宮本。通称ベッキー。
現在は同行者であるトマの知り合い――既に死んだ身であるジュジュのことである――から、
首輪を回収するため、トマの記憶で彼女のいた周辺を探っているのであるが
現在は同行者であるトマの知り合い――既に死んだ身であるジュジュのことである――から、
首輪を回収するため、トマの記憶で彼女のいた周辺を探っているのであるが
「本当にこの辺で間違いないんだろうな?」
「はい。このあたりに置いてきたはずなんですけど……」
「……まさかジュジュって奴まで生き返って動き回ったんじゃないだろうな?」
「……僕が見た時は完全に息を引き取ってましたが、完全に否定できないのが怖いですね……」
「はい。このあたりに置いてきたはずなんですけど……」
「……まさかジュジュって奴まで生き返って動き回ったんじゃないだろうな?」
「……僕が見た時は完全に息を引き取ってましたが、完全に否定できないのが怖いですね……」
そこにいるはずの彼女の姿はどこにもいなくなっていた。
記憶していた場所を間違えていたのかと、二人であまり見晴らしも悪くない場所を暗闇の中探していたが、
結果はやはり変わらず、死んだはずの彼女の姿はどこにも見つからなかった。
自分や明石薫のような存在がいることを考えると、自ら移動したことも考えられなくはない。
あるいはもしかしたら、参加させられている人の中にネクロマンサーだとかがいるんじゃないのか?
等とベッキーが考え始めていると、
記憶していた場所を間違えていたのかと、二人であまり見晴らしも悪くない場所を暗闇の中探していたが、
結果はやはり変わらず、死んだはずの彼女の姿はどこにも見つからなかった。
自分や明石薫のような存在がいることを考えると、自ら移動したことも考えられなくはない。
あるいはもしかしたら、参加させられている人の中にネクロマンサーだとかがいるんじゃないのか?
等とベッキーが考え始めていると、
「穢れなき幼子らよ――。
予期せぬイレギュラーの発生に伴い、予定を繰り上げての臨時放送を行う――」
予期せぬイレギュラーの発生に伴い、予定を繰り上げての臨時放送を行う――」
あの声が聞こえた。
「!? イレギュラー!?」
「ベッキーさん、これは!?」
「黙って聞け! 一言一句聞き逃すんじゃねえぞ!」
「ベッキーさん、これは!?」
「黙って聞け! 一言一句聞き逃すんじゃねえぞ!」
突然、予期せぬ放送に戸惑う二人だったが、即座にベッキーはトマに支持をし、
念のためにとメモとペンを取り出す。
念のためにとメモとペンを取り出す。
「実は、イレギュラーというのは他でもない。
君らもよく知っている我が部下、Q-Beeが死んでしまった。」
君らもよく知っている我が部下、Q-Beeが死んでしまった。」
(Q-Beeが死んだ!? ってことは、今は首輪の機能は……どうなってんだ?)
Q-Beeが殺されること自体は予想していたが、実際にそのことを聞くと、やはり驚く。
だがしかし、そのこと自体に関してはさほど重要ではない。
だがしかし、そのこと自体に関してはさほど重要ではない。
ベッキー達にとって重要な問題……首輪を解析した彼女たちにとって問題なのは、
この首輪の機能がどのようになっているのか、ということである。
Q-Beeがいなくなった今、どのような手段でもって首輪が機能し続けているのかというのが問題なのである。
この首輪の機能がどのようになっているのか、ということである。
Q-Beeがいなくなった今、どのような手段でもって首輪が機能し続けているのかというのが問題なのである。
この話に続くもの……それはおそらく、ご褒美の支給に代理人を立てるという話か、
もしくは今後ご褒美の支給は無しになるという話かのどちらかであろう。
もしくは今後ご褒美の支給は無しになるという話かのどちらかであろう。
その内容によっては、首輪の機能……すなわち「中の人」とのテレパシー云々の対象が変わる、
もしくは首輪の機能そのものが失われる可能性がある。
あるいはまったく別の首輪機能が追加される可能性も考慮にせねばなるまい。
最初の会場から飛ばされた技術や、トマの知り合いだったはやての持っていた支給品の効果なりで、
この首輪の中に何らかの別の生命体が入り込んだり、別の機械が入り込んだりする可能性も、
ないとは言い切れない。
そうなると、また首輪を調べ直す必要がでてくる。
もしくは首輪の機能そのものが失われる可能性がある。
あるいはまったく別の首輪機能が追加される可能性も考慮にせねばなるまい。
最初の会場から飛ばされた技術や、トマの知り合いだったはやての持っていた支給品の効果なりで、
この首輪の中に何らかの別の生命体が入り込んだり、別の機械が入り込んだりする可能性も、
ないとは言い切れない。
そうなると、また首輪を調べ直す必要がでてくる。
「――理知性にこそ欠けるものの、その本能のままの貪欲な戦闘力は、私も一目置くほどなのだ――」
(強いってことを言いたいんだろうけど、理知性に欠けるってようするにバカってことじゃねえか。
ん? てことはもしかして、この「中の人」の言うことをあまり理解できない可能性も……?)
ん? てことはもしかして、この「中の人」の言うことをあまり理解できない可能性も……?)
Q-Beeのことは最初に見たことしかわからないから何とも言えないが、
上司であるジェダがはっきりとバカだと言える台詞をいっているぐらいだ。
相当頭の弱い奴なのだろう。となればそのバカのそのまた部下である「中の人」も、同様である可能性はおおいにある。
となると、Q-Beeが死亡した時期にもよるが、
もしかしたら自分たちの行動――首輪の解析を行ったこと――がジェダにばれていない可能性もなくは……
上司であるジェダがはっきりとバカだと言える台詞をいっているぐらいだ。
相当頭の弱い奴なのだろう。となればそのバカのそのまた部下である「中の人」も、同様である可能性はおおいにある。
となると、Q-Beeが死亡した時期にもよるが、
もしかしたら自分たちの行動――首輪の解析を行ったこと――がジェダにばれていない可能性もなくは……
(……いや、流石にそれは期待しすぎか。
でも首輪を調べる人に対する忠告がなかったら、ありえるかも……)
でも首輪を調べる人に対する忠告がなかったら、ありえるかも……)
首輪解除をしようとする人間をジェダが想定している可能性も考えているが、
もし実際に調べてることが知られれば、警告ぐらいはあってもいいと思う。
それがなければ、あるいは、その事実をジェダが把握していないということもありえるのでは?
可能性の一つとして、考えておく。
もし実際に調べてることが知られれば、警告ぐらいはあってもいいと思う。
それがなければ、あるいは、その事実をジェダが把握していないということもありえるのでは?
可能性の一つとして、考えておく。
「――そこで、いささか世俗的に過ぎるが、ちょっとしたパフォーマンスをお見せしよう。
時刻はちょうど零時。天頂高く輝く、あの満月を見たまえ」
時刻はちょうど零時。天頂高く輝く、あの満月を見たまえ」
そういわれ、首を傾け、視界に月を写す。
常日頃住んでいたような街の中と違い、綺麗に輝く星空と、明るく輝く満月がそこにあった。
そして、その月が、見覚えのある生首を映し出した――
常日頃住んでいたような街の中と違い、綺麗に輝く星空と、明るく輝く満月がそこにあった。
そして、その月が、見覚えのある生首を映し出した――
(死者蘇生……ジェダにもできたか。まあ予想通りだな)
レミリアのいっていた冥界の底から妹を引きずりだすという発言。
レックスの言っていた、自身も使えるという回復の奥儀。
レックスの言っていた、自身も使えるという回復の奥儀。
二人とも、嘘を言っているように見えなかったし、
ベッキーもここでは自身の常識でありえないといえることが起こりうる場所だと認識したばかりだ。
だから二人の発言も信じられたし、あの二人ができることをジェダができるということも驚かなかった。
Q-Beeを、死者を蘇生すること自体を、ベッキーは驚かなかった。
ベッキーもここでは自身の常識でありえないといえることが起こりうる場所だと認識したばかりだ。
だから二人の発言も信じられたし、あの二人ができることをジェダができるということも驚かなかった。
Q-Beeを、死者を蘇生すること自体を、ベッキーは驚かなかった。
ここにきて、色々な感覚がマヒしてるんじゃないかとは思ったが。
レックス曰く、制限されている身では使えないらしいから、
この場においては「現在は」使用することができないみたいだが。
この場においては「現在は」使用することができないみたいだが。
「――それにもちろん、Q-Beeを倒しても殺害数を稼ぐことは出来ない。
今後、無益な行為は慎むよう期待する――」
今後、無益な行為は慎むよう期待する――」
(てことは制限を解除してしまえば、死んだ奴も生き返らせられるのか?
いや、回復の奥儀だって言うぐらいだから色々と必要なんだろうな。
ジェダのように死体が必要だとか、なにか蘇生の儀式に道具が必要だとか)
いや、回復の奥儀だって言うぐらいだから色々と必要なんだろうな。
ジェダのように死体が必要だとか、なにか蘇生の儀式に道具が必要だとか)
(ジェダはQ-Beeを生き返らせた。自分の部下のリリスを殺し合いに送り出すぐらいだ。
ジェダが部下の命を大切にする奴には思えない。
これはつまり、Q-Beeには生きててもらわないと困るってことだよな?
てことは、やっぱりこの首輪の機能はQ-Beeがいないと機能しないってことでいいよな?)
ジェダが部下の命を大切にする奴には思えない。
これはつまり、Q-Beeには生きててもらわないと困るってことだよな?
てことは、やっぱりこの首輪の機能はQ-Beeがいないと機能しないってことでいいよな?)
(Q-Beeを殺した奴って誰だ? レミリアの可能性もありえるよな?
だったらまだ対処のしようはあるけど、
もしレミリアの他にQ-Beeと戦える強い奴がいたとしたら…)
だったらまだ対処のしようはあるけど、
もしレミリアの他にQ-Beeと戦える強い奴がいたとしたら…)
(Q-Beeをもう殺すなって忠告してるようなもんじゃねえか……
こりゃ、Q-Beeが死んだ時期によっては私たちのことがばれてないって言うのもあながち外れてないかもな)
こりゃ、Q-Beeが死んだ時期によっては私たちのことがばれてないって言うのもあながち外れてないかもな)
ジェダにとってもイレギュラーであろう、この放送にベッキーの頭はめぐるましく回転する。
蘇生について、首輪について、盗聴について、Q-Beeを殺した奴について……
蘇生について、首輪について、盗聴について、Q-Beeを殺した奴について……
「ああそうだ。ことのついでに教えておこう。
今夜零時過ぎから――つまりまもなくだが、4時間ほど雨が降る――」
今夜零時過ぎから――つまりまもなくだが、4時間ほど雨が降る――」
(雨が降るのか……そんなことしたら大抵の奴は動き回らなくなるぞ。
いや、動きまわらなくさせるのが目的か? ジェダもQ-Beeの蘇生で魔力やらが持っていかれるとか。
あるいは雨を降らせることでなにか……って、ちょっとまて、雨?)
いや、動きまわらなくさせるのが目的か? ジェダもQ-Beeの蘇生で魔力やらが持っていかれるとか。
あるいは雨を降らせることでなにか……って、ちょっとまて、雨?)
雨。
空から落ちてくる水滴のこと。
地球上に水が存在する限り、必ず起こる自然現象。
地球上に水が存在する限り、必ず起こる自然現象。
雨が降れば大抵の人間は憂鬱になるし、
曇天広がる雲や、降り注ぐ水達。地面にできる水たまり。
外に出るのも億劫だ。
曇天広がる雲や、降り注ぐ水達。地面にできる水たまり。
外に出るのも億劫だ。
あまりに振りすぎると交通にも支障をきたすし、
もっとひどくなると川の決壊、浸水など災害にまで発展する。
もっとひどくなると川の決壊、浸水など災害にまで発展する。
だがそんな問題は彼女にとってチンケな話でしかない。
アンニョイな気分だとか、外にできる障害なんて、ものの数にはいらない。
降水が、降り注ぐ水が、流れる水が命の危険に伴う存在がいる。
数時間前新米吸血鬼となった彼女もそんな存在のうちの一人である。
アンニョイな気分だとか、外にできる障害なんて、ものの数にはいらない。
降水が、降り注ぐ水が、流れる水が命の危険に伴う存在がいる。
数時間前新米吸血鬼となった彼女もそんな存在のうちの一人である。
「トマ!! 魔導ボード借りるぞ!!」
「え? え!? ちょ、ベッキーさーーーーーん!!」
「え? え!? ちょ、ベッキーさーーーーーん!!」
その事実を把握した後のベッキーは素早かった。
自身が飛んだりするより、魔導ボードに力を注いだ方が早いという判断をすばやく下し、
即座にトマから魔導ボードを奪い去り、またがり、
限界スピードでシェルターに向かって飛び去った。
自身が飛んだりするより、魔導ボードに力を注いだ方が早いという判断をすばやく下し、
即座にトマから魔導ボードを奪い去り、またがり、
限界スピードでシェルターに向かって飛び去った。
「――再び太陽を拝める者が何人残るか、君らの奮闘を期待しよう。
これにて、臨時放送を終了する」
これにて、臨時放送を終了する」
「あ……」
(臨時放送、終わっちゃいましたね)
(臨時放送、終わっちゃいましたね)
ベッキーを唖然と見送りながら、トマはベッキーが急いでシェルターに向かう理由を理解する
(確か吸血鬼は流水を渡れないんでしたっけ。
そうなると、これから4時間はベッキーさんは外を出歩けないってことになっちゃいますね
水たまりとかも考えると、朝の放送までシェルターにいることになるんでしょうか……)
そうなると、これから4時間はベッキーさんは外を出歩けないってことになっちゃいますね
水たまりとかも考えると、朝の放送までシェルターにいることになるんでしょうか……)
そう考え、自分も急いでシェルターに向かうべきかと考える。
(でも、もう少しだけ、ジュジュさんを探しましょう。
もう一度殺してしまうにしても、死体の場所を移して、雨に濡れたりしないようにはしてあげたいし……)
もう一度殺してしまうにしても、死体の場所を移して、雨に濡れたりしないようにはしてあげたいし……)
しかし、雨が降るというのに仲間を……たとえ死んでしまっても大切な仲間だった人を、
放っておくことはできない。例え自身の手で首をはねることになっても。
そう考えたトマは継続してジュジュを探そう、ということで改めて周囲を探し出した。
可能なら、そのまま見つからないことを心の隅で祈りながら。
放っておくことはできない。例え自身の手で首をはねることになっても。
そう考えたトマは継続してジュジュを探そう、ということで改めて周囲を探し出した。
可能なら、そのまま見つからないことを心の隅で祈りながら。
ベッキー、全力疾走。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
もとの彼女ならば、決してできなかったであろうドリフト。
もうボードが壊れるんじゃないかとか、ブレーキきかねえじゃねえかとかそういう考えがあるのか疑わしい。
後のことなんて知ったことじゃないという風に魔導ボートでぶっとばす。
全ては自身の命のために。
もうボードが壊れるんじゃないかとか、ブレーキきかねえじゃねえかとかそういう考えがあるのか疑わしい。
後のことなんて知ったことじゃないという風に魔導ボートでぶっとばす。
全ては自身の命のために。
その甲斐あってか、雨が降り出す前に、シェルターの影が見えてきた。
「ま・に・あ・えーーーーーー!!」
依然トップスピードでシェルターに突っ込む。
だがそんなベッキーをあざ笑うかのように
雨がぽつりと、ベッキーの肩に当たる。
雨がぽつりと、ベッキーの肩に当たる。
「っ―――――!」
雨に触れた瞬間、身体がまるで金縛りにあったかのように動かなくなる。
だが勢い付いた魔導ボードは止まらない。
硬直したままのベッキーはバランスを崩し、その体が魔導ボードから放り出される。
だが勢い付いた魔導ボードは止まらない。
硬直したままのベッキーはバランスを崩し、その体が魔導ボードから放り出される。
ベッキーはシェルターに勢いよく突っ込んだ。
「う………」
ここはシェルター、入口。
地面に転がる白い布切れ。
それに包まれる少女の名はレベッカ宮本。
それに包まれる少女の名はレベッカ宮本。
このたび数時間前に吸血鬼に血を吸われつくし、吸血鬼としてあらたに生誕した存在である。
「つあー……
あー水でこんなことになるとは。先に知っててよかったぜ。」
あー水でこんなことになるとは。先に知っててよかったぜ。」
水がかかることよりも重大な痛みを伴う事柄があったと思うのだが……
そんなことを気にかけず、水の当たった肩口をなでる。
シェルターに突っ込んだ外傷はなかったようなのは運がよかったのか、彼女が吸血鬼だからなのか。
そんなことを気にかけず、水の当たった肩口をなでる。
シェルターに突っ込んだ外傷はなかったようなのは運がよかったのか、彼女が吸血鬼だからなのか。
「たく……施設が近くにあったからいいものを……
場所によっちゃあ間違いなく雨で死んでたな。
……あれ? 雨の日もダメってもしかして学校に行くのにも支障が出んのか?」
場所によっちゃあ間違いなく雨で死んでたな。
……あれ? 雨の日もダメってもしかして学校に行くのにも支障が出んのか?」
……そこで学校のことを考えるのもある意味彼女らしいか。
「傘さすぐらいじゃだめだよなー。
レミリアは普段どうしてんだ? 昼間は外うろついてなさそうなのは確かだけど……
つーかこの豪雨、吸血鬼じゃなくてもぜってー外に出たくねーよ。
……ん?」
レミリアは普段どうしてんだ? 昼間は外うろついてなさそうなのは確かだけど……
つーかこの豪雨、吸血鬼じゃなくてもぜってー外に出たくねーよ。
……ん?」
ふと、足元に目をやる。
そこに土のついた跡がいくつか残る。
足跡が3つ、車輪跡が1つ。
そのうち二つは中に向かった足跡と外に向かう足跡がついていた。
そこに土のついた跡がいくつか残る。
足跡が3つ、車輪跡が1つ。
そのうち二つは中に向かった足跡と外に向かう足跡がついていた。
中に向かった足跡しかないものと、車輪と思しきものはおそらく中でヘルメスドライブとやらでワープした、
アリサの足跡とはやての乗った車いすの後だろう。
アリサの足跡とはやての乗った車いすの後だろう。
そしてひとつはトマのものだと思っていいだろう。
となると、あと一つは?
となると、あと一つは?
足跡の付き具合を見る限り、外に出ていった足跡は、二つとも車輪の跡よりも後につけられたものである。
となれば、この足跡は、車輪の跡の主であるはやてが中にはいるよりも後に来たということになる。
そうなると必然的にトマが外に出ていった後に中に入ったことになるだろう。
となれば、この足跡は、車輪の跡の主であるはやてが中にはいるよりも後に来たということになる。
そうなると必然的にトマが外に出ていった後に中に入ったことになるだろう。
そうしてよく見ると、一番新しいと思われる足跡は、左右にふらふらと揺れていて、危なっかしい。
帰りの足取りは割としっかり、そして歩幅的に急いでいるように見えることを考えると、
中でなにかあったのだろうか?
帰りの足取りは割としっかり、そして歩幅的に急いでいるように見えることを考えると、
中でなにかあったのだろうか?
足跡の主の行動が気になったベッキーは、その足跡を追い、やがて一つの部屋に辿り着く。
扉を開き、中を見てみると、そこには一人の少女が眠っていた。
扉を開き、中を見てみると、そこには一人の少女が眠っていた。
「これは……」
ベッドの上に横たえられ、しっかりと布団もかけられ、目を閉じた少女は、
顔に傷もなく、パッと見る限り、本当に眠っているように見える。
だが吸血鬼として生まれ変わったベッキーは、その少女が既にこと切れていることを、
布団の下は血まみれであるということに気付いてしまっていた。
幸い十分に血液を補充したからか、血が古かったか、吸血衝動が起こることはなかったが。
顔に傷もなく、パッと見る限り、本当に眠っているように見える。
だが吸血鬼として生まれ変わったベッキーは、その少女が既にこと切れていることを、
布団の下は血まみれであるということに気付いてしまっていた。
幸い十分に血液を補充したからか、血が古かったか、吸血衝動が起こることはなかったが。
「こいつがジュジュって奴なのかな……」
布団をめくって見ても、服装の特徴はなく、
金髪という特徴も、あまりこの世界ではあてにならないが、
恐らくは彼女がジュジュであっているだろう。
金髪という特徴も、あまりこの世界ではあてにならないが、
恐らくは彼女がジュジュであっているだろう。
となると、この足跡の主はジュジュをわざわざこの場に運んできたことになる。
危なっかしかった理由はジュジュを背負っていたからであろう。
首輪がそのままであることを考えると、死者を死者と扱わず、
恐らく無関係の死んだ人間に対して悲しむことができる心優しい人間であると想像できる。
時期的に考えても、何度か危ない目に会ってるだろうし、放送を聞いた後だ。
それでも尚そういう心を持っているのだから、ゲームに乗っている可能性は恐らく低いだろう。
危なっかしかった理由はジュジュを背負っていたからであろう。
首輪がそのままであることを考えると、死者を死者と扱わず、
恐らく無関係の死んだ人間に対して悲しむことができる心優しい人間であると想像できる。
時期的に考えても、何度か危ない目に会ってるだろうし、放送を聞いた後だ。
それでも尚そういう心を持っているのだから、ゲームに乗っている可能性は恐らく低いだろう。
時間がなくとも恐らく精一杯の善行で葬られたジュジュ首輪を回収するのをやめようかとも考えたが、
それは偽善だ。道具がないからトマを待たねばならないが、いずれ彼女の首も切り落とさねばなるまい。
それは偽善だ。道具がないからトマを待たねばならないが、いずれ彼女の首も切り落とさねばなるまい。
「ごめん、な……」
そう言って、布団をかけ直し、ふた度足跡を追う。
そうすると、今度は足跡は「機械室」の中にはいっていった。
「ここは……!」
機械室の名の通り、その中にはパッと見ただけではわからない機械がたくさんあった。
なんらかの映像を映すらしきスクリーン、
多数のスイッチの存在するパネル。
無論ベッキーならば少し触ればそれがなんなのか大体理解できるだろうが、
見たこともないものを触りもしないでわかるほどベッキーも万能ではなかった。
なんらかの映像を映すらしきスクリーン、
多数のスイッチの存在するパネル。
無論ベッキーならば少し触ればそれがなんなのか大体理解できるだろうが、
見たこともないものを触りもしないでわかるほどベッキーも万能ではなかった。
それはともかく、追っていた足跡はその多数の機械の中の通信装置と思しき所の前でとまり、引き返していた。
そこからわかることは、恐らく足跡の主もトマと同様どこかと連絡をして、
慌てて出ていったということぐらいか。
そこからわかることは、恐らく足跡の主もトマと同様どこかと連絡をして、
慌てて出ていったということぐらいか。
そして通信装置をじっくりと見ることでベッキーは気付く。
この通信装置に、通話記録が存在することを。
この通信装置に、通話記録が存在することを。
トマは電話を始めてみたのだし、イエローは機械よりも自然と共にいる人間だ。
それに加えて、二人とも出ていくときにはあわてていたため、
これがただの電話だとしか理解できなかったのだが、この情報は大きい。
それに加えて、二人とも出ていくときにはあわてていたため、
これがただの電話だとしか理解できなかったのだが、この情報は大きい。
というのもこの通信装置の通話記録に残っていたのはこの電話を通してのものだけではない。
この島の全通信記録がここに集まっているのだ。
どうやら一定時間ごとに更新されているようだ。6時間といったところか
この島の全通信記録がここに集まっているのだ。
どうやら一定時間ごとに更新されているようだ。6時間といったところか
発信と着信を示す場所が、どちらもシェルターではないところのものも多数ある。
「「北東市街レベッカ宮本宅」から「インデックス」!? はあ? なんで私の家がここにでてくるんだよ!?」
(いや! ジーニアスにあそこの塔が救いの塔に似てるって話は聞いてたし、
ここにある短縮ダイアルにも「E-8 救いの塔」とは書いてある。
てことは、建物も人間みたいにどこかから持ってきたこともありえなくない。
っておいおい、ここから帰ってもちゃんと私の家あるんだろうな?)
ここにある短縮ダイアルにも「E-8 救いの塔」とは書いてある。
てことは、建物も人間みたいにどこかから持ってきたこともありえなくない。
っておいおい、ここから帰ってもちゃんと私の家あるんだろうな?)
そう考えながらも、これは参加者の情報を得られるチャンスだ、と思う。
ベッキーは履歴の情報の一番上、「北東市街レベッカ宮本宅」から「インデックス」に手を付けた。
ベッキーは履歴の情報の一番上、「北東市街レベッカ宮本宅」から「インデックス」に手を付けた。