Lock On: Flaming Cliffs フライトマニュアル
第2章:ロシア軍機のコクピット計器




Su-27, Su-33, MiG-29
HUD及びHDDの動作モード

基本的なHUDのシンボル表記
機種にかかわらず、ヘッドアップディスプレイ:Head Up Display (HUD)のシンボル表示はある程度同じです。例としてMiG-29の≪МРШ(ENR)≫-巡航路モードにおけるHUDを見てみましょう。

2-18:MiG-29の基本HUDシンボルマーク

HUDの中心に自機のピッチとロールを示す機体基準指標があります。
現在の機首方位はHUDの上部に示されます。(例:≪11≫は方位110度に相当します)
指示対気速度(IAS)は、方位計の左側に示されています。現在のIAS表示の上に目標対気速度が示されています。この値は飛行モードによって変わりますが、巡航路モードの場合は予定飛行速度が示されます。
速度指示計の数値の下に三角形のインデックスマークが表示されていますが、これは水平加速度を示しています。右側に動けば加速、左側に動けば減速となります。
方位計の右側には、現在の高度が示されています。地表面からの高度が1500m未満の場合は電波高度になり1m単位で表示され、1500m以上の場合は、気圧高度が10m単位で表示されます。現在高度表示の上には目標高度が表示されています。この表示は飛行モードにより変化しますが、巡航路モードの場合は、予め設定されたルートの高度が表示されます。
飛行方向指示マーク(大きな輪)は、次のウェイポイントへ向かう予め設定されたルートと高度に合流するための飛行方向を示します。このマークが機体基準指標の中心にある場合は、ルート上を飛行しているということを意味します。
HUDの右側にはピッチ計があり、現在のピッチ角を表示します。
左下部隅に現在の飛行モードが示されています。
HUDの中央下部には、選択したウェイポイントまでの距離がkm単位で示されています。
航法モードでは、ルートに関する情報(ルート方位、ウェイポイント、空港位置)がヘッドダウンディスプレイ:Head Down Display (HDD)に表示されます。

2-19:航法モードのHDD表示

ウェイポイントは円形マークで表示されます。
ウェイポイント番号はウェイポイントマークの隣に表示されます。
グライドスロープに合流する初期地点は菱形マークで示されます。
滑走路は細長い長方形で示されます。
今現在向かっているウェイポイントは四角形で囲まれます。
全てのウェイポイントは経路線で結ばれます。
航法モードでは、航法情報はHUDとHDDに表示されます。航法モードには3つのサブモードがあります。≪МРШ(ENR)≫-巡航路、≪ВЗВ(RTN)≫-帰還及び≪ПОС(LNDG)≫-着陸です。[1]キーを繰り返し押すことでサブモードの切り替えができます。

次に向かうべきルートとウェイポイントがHDD上に表示されます。

≪МРШ(ENR)≫-巡航路サブモードでは、経路線は予め設定されたウェイポイントを全て通過するようになっています。[~] キーを使用してウェイポイントを切り替えることができます。すると現在の自機位置から選択したウェイポイントまで経路線が引かれます。

≪ВЗВ(RTN)≫-帰還サブモードでは、グライドスロープ合流地点に向かって経路線が引かれます。

≪ПОС(LNDG)≫-着陸サブモードでは、希望する飛行場までの経路線が引かれます。飛行場の切り替えは[~] キーを繰り返し押すことで可能です。


航法モード
≪МРШ(ENR)≫-巡航路サブモードの場合、円形の飛行方向指示マークがHUD上に表示されます。これは現在選択しているウェイポイント地点に到達するための方向を示しています。対気速度表示と高度表示の上部には、設定ルートの予定速度と予定高度が表示されます。現在のウェイポイントに到達すると、飛行方向指示マークは自動的に次のウェイポイントを指し示します。予定経路とウェイポイント群はHDD上に表示されます。
≪ВЗВ(RTN)≫-帰還サブモードの場合、飛行方向指示マークはグライドスロープ信号受信地点の方向を示します。HDD上にはグライドスロープ合流地点への最短経路が表示されます。飛行場を手動で選択したい場合は[~] キーを繰り返し押します。グライドスロープ信号の受信地点に到達すると、帰還サブモードは自動的に着陸モードに切り替わり、管制塔からの着陸指示が無線で入ってきます。

2-20:ILS着陸進入

≪ПОС(LNDG)≫-着陸サブモードでは、HUD上の円形の飛行方向指示マークが着陸する飛行場を指し示します。着陸する飛行場の方角はHDD上にも表示されます。別の飛行場を選択したい場合は、[~] キーを繰り返し押します。着陸アプローチを行っている際には、空港管制塔から最終指示が出されます。HUDの右側には昇降計が表示され、航空機の降下率が判ります。

視程外距離(BVR)戦闘モード
視程外距離:Beyond Visual Range (BVR)戦闘モードには幾つかの種類があり、≪ОБЗ(SCAN)≫-スキャンモード、≪СНП(TWS)≫-スキャン中追跡モード、そして≪АТК≫-STT:単一目標追跡モード(攻撃モード)があります。


≪ОБЗ(SCAN)≫-スキャンモード
≪ОБЗ(SCAN)≫-スキャンモードは、[2]キーを押すと最初に起動します。これが基本のBVR索敵モードとなります。このモードでは24機までの目標を探知可能です。目標を探知し攻撃態勢に入るには、まず火器管制センサーのいずれか(レーダーまたはIRST)をオンにする必要があります。BVRモードでは自機のレーダーを通常用います。レーダーによって遠距離の目標探知が可能となり、さらにセミアクティブレーダー誘導ミサイルが使用可能になります。目標の探索とロックオンに必要な情報はHUDに表示されます。 [+] 及び [-] キーを用いて距離表示スケールを調整します。走査パターンは3方向の方位角位置:中央-右-左を不連続に切り替え可能になっています。走査パターンを仰角方向に回転させるには二つの方法があります。一つは仰角方向に直接回転させる方法で滑らかにパターンが動きます、もう一つは距離-高度設定法で不連続に動きます。距離-高度設定法を用いるには、まず予想される目標までの距離をkm単位で[Ctrl-+] 、[Ctrl--] キーを使って設定します。次に予想される目標と自機の高度差を [Shift-;] 、[Shift-.]キーを使って設定します。これもkm単位です。設定した予想距離はHUDの下部にある方位角走査範囲表示マークの下に示され、予想高度差はHUDの右側にある仰角走査範囲表示マークの右に示されます。

火器管制センサーが目標を探知すると、HUD上に小さく水平に並ぶドットマークが表示されます。目標が味方である場合は、敵味方識別装置(IFF)が応答してドットマークの並びが二重で表示されます。

2-21:BVR スキャンモード

距離表示スケールは [+] 、[-] キーで変更します。
予想される目標のアスペクト半球(自機に対する目標の速度ベクトルの向きが手前側=前半球、奥側=後半球)が前後いずれか、その想定に応じて [Win-I] キーの操作を行います。目標のアスペクトが不明な場合は≪АВТ(ILV)≫モードに設定します。アスペクト半球の如何によって自機レーダーが索敵モード時に使用するパルス反復周波数:Pulse Repetition Frequency (PRF)の設定が決まります。高PRFに設定するとHUDには≪ППС(HI)≫と表示され、目標のアスペクト半球が前半球でこちらに接近してくるような状況ならば、最大距離で探知することができます。一方、中PRFは目標のアスペクト半球が後半球でこちらから遠ざかっているような状況で用い、HUDには≪ЗПС(MED)≫と表示されます。≪АВТ(ILV)≫モードに設定すると、レーダー走査パターンの水平走査方向が切り替わる毎に高PRFと中PRFが交互に切り替わります。このことにより最大探知距離は25%減少するものの、アスペクト半球の如何に関わらずあらゆる目標を探知することができるようになっています。
航空目標はHUD上に水平に並ぶドット列で示されます。ドットの数はレーダー反射断面積:Radar Cross Section (RCS)に基づいており目標のおおよそのサイズに相当します。ドットが一つで目標のRCSが2平方メートル以下、ドットが二つで2~30平方メートル、ドットが三つで30~60平方メートル、ドットが四つで60平方メートル以上であることを示しています。戦術戦闘機は一般的にレーダー反射断面積が3~30平方メートルであり、機種や外部ペイロード、アスペクト角によって変化します。そのためほとんどの戦闘機は通常2ドットで表示されます。味方機はメインのドット列の上に第二列目のドット列が並ぶ表示で区別できます。
HUDの左側にある≪И≫シンボルは、レーダーが起動しており電波を発信している状態を示しています。
目標を指定するためのレーダーカーソルは、[;]、[,]、[.]、[/]キーを使って動かします。
目標の予想距離(しばしばAWACSやGCIからのデータで得られます)は[Ctrl-+]、[Ctrl--]キーによって設定され、HUD下部にある方位角走査範囲マークの下に表示されます。仰角方向のレーダー走査範囲はこのパラメーターから決定されます。
目標の自機に対する予想相対高度は、[Shift-;]、[Shift-.]キーによって設定され、HUD右側の仰角走査範囲マークの隣に表示されます。このパラメーターも仰角方向のレーダー走査範囲を決定するのに用いられます。
仮に自機が高度5kmにあり、目標が距離80km高度10kmにいるとの報告がAWACSからあった場合、自機を目標に向けて旋回させレーダーの予想距離を80kmに予想相対高度を5kmに設定します。するとレーダー走査範囲は、目標がいると予想される仰角方向に正しく向いているはずです。


仰角計もHUDの右側にあります。表示限界は±60度であり、その範囲が仰角計の上端と下端の内側にある印で示されています。上端下端以外の三つ目の内側の印は水平線を表します。外側の印はHUDの視野角を示します。動かない仰角計の隣にあるのが上下に動く仰角走査範囲バーであり、これは仰角方向の走査パターン範囲を示します。この表示によってパイロットはHUDに対する位置を参考にレーダー走査パターンと同一方向を目視確認することが出来ます。もし仰角走査範囲バーが仰角計上にあるHUD視野範囲印の間にある場合は、レーダーはHUD越しに見える仰角範囲の目標を探索しているということになります。
方位角走査範囲バーはHUDの下部に表示されます。左・中央・右の3つの固定位置があり、選択した走査パターン方位角と一致します。

≪СНП(TWS)≫-スキャン中追跡モード
もう一つのBVR戦闘モードとして、≪СНП(TWS)≫-スキャン中追跡:Track-While-Scan (TWS)があります。これはスキャンモードの状態から [Alt-I]キーを押すことで起動します。TWSモードでは、同時に10機の目標までの相対運動を追跡把握できます。スキャンモードとの主な違いは、レーダーで他の目標を探索し続けながら同時に攻撃対象となる目標の進行方向などの付加情報を獲得することが可能であるという点です。HDDを見ると、現在の戦術的配置状況が俯瞰図となっており、そこには全ての追跡中の目標がその位置と飛行方向と併せて示されています。

TWSモードでは、自動的な目標ロックオン(その時点でSTTに切り替わる)が可能です。レーダーカーソルを目標上に重ねるとカーソルが目標マークに「吸い付き」、それ以降その目標マークに追随します。自動ロックオンは目標の距離が選択兵器の最大有効射程距離の85%に至った時点で作動します。[Tab]キーを押すことでこの状態を待たずにロックオンへと強制的に移行することも可能です。

TWSモードにおけるHUDの記号表示は、スキャンモードの場合と似ています。

2-22:BVR TWSモード

HUD下部左隅の≪СНП ДВБ(TWS BVR)≫は、現在選択しているモードを示しています。
選択した兵器を搭載しているステーションがHUDの下端に沿って表示されています。
選択した兵器はHUDの下部右隅、仰角計の下に表示されています。図の≪27РЭ≫という表記はR-27ERミサイルを示します。
HUDの左側にある距離計に、内側に面して三つの太線マークがあることに気づくと思います。上から順番に、Rmax:機動飛行を行っていない目標に対する最大有効射程距離、Rtr:機動飛行中の目標に対する最大有効射程距離(回避不能域)、Rmin:最小有効射程距離となります。
TWSモードでは、PRFの設定が≪ППС(HI)≫もしくは≪ЗПС(MED)≫のみ有効です。交互PRF:≪ABT(ILV)≫モードは利用できません。そのため、TWSモードは目標のアスペクトが対進状態であるのか、追尾状態であるかが予め判っている必要があります。

TWSモードでは、以下の情報がHDDに表示されます。

2-23:BVR TWSモードのHDD

方位角走査範囲は、暗緑色で表示されます。
設定した走査パターン仰角位置は、左側に表示されます。
設定した走査パターン方位角位置は、上端に表示されます。
三角マークは敵性目標を意味します。短いラインは進行方向を示します。
円形マークは友軍機を意味します。短いラインは進行方向を示します。
自機マークはHDD下端近くに固定して表示されます。
ディスプレイの距離表示スケールは右隅下部に表示されます。

≪АТК≫-攻撃-STTモード
スキャンモードもしくはTWSモードいずれかで目標をロックすると、レーダーは単一目標追跡モード(攻撃モード):Single Target Track (STT)に自動的に切り替わります。このモードでは他の全ての目標追跡が中止され、ロックした目標に関する付加的な情報がHUDに以下のような形で表示されます。

2-24:BVR 攻撃モード

Rmax:機動飛行を行っていない目標に対する最大有効射程距離
Rtr:機動飛行中の目標に対する最大有効射程距離
Rmin:最小有効射程距離
攻撃モードシンボルはレーダーロックが作動中であることを示します。ミサイル発射後は攻撃モードシンボル(レーダーロックオンシンボル)が毎秒二回の速さで点滅します。
アスペクト角は、HUDの垂直面を水平とみなして目標の速度ベクトルを示したものです。
モードが≪АТК ДВБ(ATK BVR)≫としてHUDの左下隅に表示されます。
距離計の内側にある矢印は、現在の目標までの距離を示しており、距離計に沿って動きます。
円形のドットは、機首の向きに対するレーダーアンテナの位置を示しています。
目標方向指示円はHUD上で目標位置に重なって表示されます。
目標が有効射程限界内に入り、他の発射条件が全て満たされた場合に≪ПР(LA)≫-発射許可シンボルが現れます。
STTモードでは、レーダー波エネルギーの全てを目標に集中させることで、より高精度な追跡を可能にし、目標からの対抗手段による追跡失敗の可能性を減じます。

ただし、このような電波放射を集約するモードは、「ロック」が完了してミサイル発射の準備が出来たということを敵RWRに判断されてしまいます。結果として、STTモードを用いたがために目標が回避行動をとったり、反撃してくる可能性が出てきます。

2-25:攻撃(STT)モードのHDD

STTモードにおいては、走査範囲は幅の狭い高指向性レーダービームとなります。
ミサイル発射中はレーダーが連続波照射に切り替わります。この状態は確実にミサイルが発射されたと敵の警報システムに判断されるため、通常だと敵は何らかの防衛手段を講じようとします。

セミアクティブレーダー誘導:Semi-Active Radar Homing (SARH)ミサイルを用いた場合は、ミサイルが命中するまで目標に対してレーダー照射を維持する必要があります。一方、アクティブレーダー誘導:Active Radar Homing (ARH)ミサイルを用いた場合は、目標に対してレーダー照射を維持する必要があるのはミサイルシーカーの誘導方式がアクティブ誘導に切り替わるまでであり、その切り替えは目標まで残り15kmの距離で作動します。


IRSTスキャンモード
赤外線索敵追跡:Infra-Red Search and Track (IRST)システムをセンサーとして選択すると、HUDの記号表示がそれに伴い切り替わります。

IRSTで索敵を行う場合、HUD上の目標情報は方位角-仰角座標で表示されます(一方、レーダーによる索敵の場合は、方位角-距離座標で表示されます)。横軸が方位角、縦軸が仰角になります。

IRSTカーソルで目標をロックすると、HUDの表示は前述の攻撃モードに切り替わります。

2-26:IRSTセンサー使用時のBVR スキャンモード

HUDの左側にある≪T≫マークは、IRSTが作動していることを示します。
選択中のモード名は左下隅に表示されます。
目標マークは、方位角-仰角座標に従って表示されます。
目標のRWRは、IRSTシステムで用いるレーザー測距計を探知できないので、このセンサーを使えば敵に察知されない「隠密」攻撃が可能となります。この種の攻撃においては、赤外線誘導:Infra-Red Homing (IRH)シーカーを搭載した熱線追尾ミサイルのみが使用可能です。
(訳注:IRSTセンサーの場合は目標の敵味方識別が出来ません。敵味方識別のためにはレーダーの起動が必要です。レーダーで味方機をロックした場合«F»(ロシア語表記は«С»)が表示され、発射許可は出ません。)


デジタルデータリンク
Su-27及びSu-33では、音声による無線交信に拠らずに、自機搭載以外のセンサー(A-50 AWACSや地上早期警戒レーダー)から直接送られてくるデジタル目標情報を受信できる交信装置を搭載しています。戦闘司令所から空中戦の戦術的状況が戦闘機に送信されてくると、そのデータはHDDに俯瞰図として表示され、それによってパイロットの状況認識が高められます。この戦況表示画面では、自機搭載以外のセンサー類によって探知された全ての航空機の位置が、自機に対する相対位置として表示されます。デジタルデータリンク機能は[I]キーを押して戦闘機のレーダーがオンになると自動的に起動します。ただし味方のAWACSもしくは早期警戒用の地上レーダー基地がそのミッションにおいて利用可能な場合に限られます。その後は、たとえレーダーのスイッチをオフにしたとしても、データリンクは作動し続け、目標はHDDに表示され続けます。

2-27:AWACSデータリンク表示中のHDD

注意すべき点は、AWACSが探知した目標が、HDDの暗緑色の三角形の範囲内に表示されていたとしても、自機のレーダーからは見ることが出来ない場合があることです。それは目標が自機レーダーの仰角方向の走査範囲外にあるからです。その場合はHUD表示を見ながら戦闘機搭載のレーダーを操作する必要があります。


複雑な対抗手段が講じられている状況下での対応
複雑な対抗手段が講じられている状況下、つまり敵がパッシブ型やアクティブ型のレーダー妨害を使っている場合は、TWSモードは利用できません。代わりにスキャンモードを使います。強度の電子対抗手段が使われている状況下では、レーダーは目標までの距離を計測できず、HUD上には発信源の方向に沿って目標マークの距離表示が無秩序に点滅し、縦に並んだストロボ像のように表示されます。また、レーダーの走査パターン内にECMの存在を探知した場合は、HUDの左側にシンボルマーク:≪АП≫が表示されます。仮にこのような状況であっても、方角だけに基づいて妨害電波のストロボ像そのものをロックオンする「妨害電波方向:Angle-Of-Jam (AOJ)」 ロックを行い、セミアクティブレーダー誘導 (SARH)ミサイルを発射することが可能です。この場合のミサイル誘導は、パッシブ型の「妨害電波追尾:Home-On-Jam (HOJ)」 モードになります。

AOJロックは、[;]、[,]、[.]、[/]キーを使ってレーダーカーソルを動かし、妨害電波発信源のストロボ像上に重ね、[Tab]キーを押すことで有効になります。これにより戦闘機のレーダーはノイズ発信源の方向にアンテナを向け、追跡を行います。AOJロックが作動している場合は自機レーダーよる目標距離計測ができないため、HUD上に表示されている目標距離値はパイロット自身で(例えば無線で指示を仰ぐなどして)判断し設定する必要があり、初期値は10kmです。もし入力した目標距離が、選択したミサイルの現在高度での射程距離よりも大きい場合は、HUDに≪ПР(LA)≫-発射許可シンボルマークが表示されるまで[Ctrl--]キーを押して距離設定を手動で小さくするか、[Alt-W]を押して発射許可を無視すれば発射可能となります。

ただし、妨害電波を発している目標に向けてのミサイル発射は、距離情報がないため発射するタイミングの判断が難しくなります。というのは目標が有効射程圏外にいる可能性もあるからです。加えて、パッシブモードで飛行しているミサイルの場合、目標への命中確率もより低くなります。

妨害電波発信源までの距離が25km以下になると、自機レーダー出力が電波妨害を「バーンスルー(突破)」し、正確な目標位置が距離情報含めて得られるようになります。HUDの表示は通常のスキャンモードに戻り、目標までの距離が示されます。

自機レーダーが発したレーダー波の反射信号を妨害電波と区別可能となり、目標の動きに関する情報を得られるようになった瞬間のことを「バーンスルー(突破)」と言います。ECMノイズの存在下でも目標に関する全情報を供給し始めた時点で、レーダーは妨害を「突破」したのです。




2-28:妨害電波探知時のスキャンモード

縦に並んで点滅している妨害電波のストロボ像の位置は、妨害電波発信源の方位を示します。目標ロック後は、HUD上の情報はSTTモードと似た状態になりますが、目標距離はパイロットが予想して設定した値になります。
≪АП≫:妨害電波探知表示は、戦闘機のレーダー走査範囲内に妨害電波の存在を探知した場合に表示されます。

≪BC(VS)≫-垂直スキャン 近接戦闘モード
このサブモードは、近接距離における空中戦闘機動において最も頻繁に使われるモードです。このサブモードにおけるレーダーもしくはIRSTの走査パターンは、幅3度、仰角-10度から+50度までを範囲とする垂直の帯状になっています。HUDには二本の垂直線が表示されており、走査範囲の境界を示しています。走査範囲はHUDの下端から始まって上方にHUD面の長さを二倍余り延長した付近までとなっており、その範囲内に目標が入ると自動的に目標をロックします。照準方法は、目標が走査範囲内に位置するように機体を操縦する事によって行います。

2-29:垂直スキャンモード

自動ロックオンは走査範囲内に目標が入って1~3秒内で作動します。目標ロック後は、HUDの表示が攻撃(STT)モードに切り替わります。

垂直スキャンモードでは、IRSTセンサーがデフォルトで選択されます。デフォルトの兵器はR-73近接戦闘用ミサイルです。代わりにレーダー誘導によってミサイルを発射したい場合には、[I]キーを押してまずレーダーを起動し、それから任意のミサイルを[D]キーを押して選択します。


≪СТР(BORE)≫-ボア近接戦闘モード
このサブモードは垂直スキャンモードと似ていますが、その違いは、この照準システムは走査を行わずに機体の前後軸に近い一方向に対して円錐形(約2.5度)に広がる照準範囲を持つという点です。この照準範囲はHUD上に2.5度の拡がりを持つ円形で表示されます。目標のロックは、機体の姿勢を制御するか、目標指示操作キー[;]、[,]、[.]、[/]を操作して、この円を目標上に重ね、[Tab]キーを押して行います。目標をロックするとHUDの表示は攻撃 (STT)モードに切り替わります。このモードを使うと照準を正確に行うことができ、若干ですがロック距離が垂直スキャンモードよりも長くなります。

2-30:ボアモード

ボアモードでは、IRSTセンサーがデフォルトで選択されます。デフォルトの兵器はR-73近接戦闘用ミサイルです。代わりにレーダー誘導によってミサイルを発射したい場合には、[I]キーを押してまずレーダーを起動し、それから任意のミサイルを[D]キーを押して選択します。


≪ШЛЕМ(HMTD)≫-ヘルメット近接戦闘モード
このユニークなモードは、旋回戦の際に便利なモードであり、[5]キーを押して選択します。Schel- 3UMヘルメット搭載式照準:Helmet-Mounted Sight (HMS)システムにより、パイロットは単に目標の方向に頭を向けて視野に納めるだけで、兵器の照準を目標に合わせることができます。画面上の照準リングは、パイロットの右目の前にあるHMS照準システムのファインダーを模しています。パイロットは視界を移動させて目標上にファインダーを重ねます。ファインダーはHUD上のシンボルではないため、視界がHUD上を離れた場合でも常に画面中央に位置するようになっています。このモードは接近戦で用いられ、目標方向に機体自体を向けなくとも、HMSにより高オフボアサイト角からのロックオン及びミサイル発射が可能なので、誘導ミサイル発射に際して優位に立てます。照準リングを目標に重ね、[Tab]キーを押してロックすると、全ての発射条件が満たされた段階でリングが毎秒2回の割合で点滅を開始し、発射許可の合図≪ПР(LA)≫が出されます。目標がミサイルシーカーの可動範囲外に移動してしまった場合はXマークがリング上に現れます。

2-31:ヘルメットモード

HUD表示は目標ロック後に攻撃(STT)モードに切り替わります。

HMSモードは「パドロック」視点と一緒に使うと効果的です。まず[テンキーのDel]キーを押して目標をパドロックし、それから[5] キーを押してHMSモードを選択します。HMSの照準リングは自動的に目標上に重なった状態になるので、そのまま[Tab]キーを押して目標をロックできます。


≪ФИ0(LNGT)≫-前後軸照準 近接戦闘モード
前後軸照準モード(ファイ・ゼロ)は、戦闘機の火器管制システム:Weapons Control System (WCS)のレーダー及びIRSTセンサーが故障した場合のバックアップ用のモードです。このモードは [6] キーを押して選択しますが、戦闘機のセンサーに頼らない独自の目標捕捉能力を備えたアクティブレーダー誘導(ARH)ミサイルかもしくは「熱線探知式」赤外線誘導(IRH)ミサイルしか使うことができません。このモードではミサイル本体軸に沿って角度2度の視野範囲を持つミサイル自身のシーカーで目標をロックします。目標上に照星が重なるように機体を操縦する必要があります。目標までの距離如何に関わらずミサイルシーカーが目標をロックするとすぐさま≪ПР(LA)≫-発射許可シンボルマークが表れます。パイロットは目標までの距離を目視で判断して、ミサイルが迎撃を完遂するのに充分なエネルギーを持つようにする必要があります。特に追跡中の目標が遠ざかっていくような状況ではなおさらです。

赤外線誘導(IRH)ミサイルを前後軸照準モードで使用すれば、攻撃目標のRWRが反応しないので、パッシブ式の「隠密」攻撃が可能になります。目標がミサイル発射を探知できる方法は目視以外にありません。

R-77のようなアクティブレーダー誘導 (ARH) ミサイルは、ミサイル自身のレーダー発信が攻撃目標のRWRによって探知されてしまうため、隠密攻撃には使えません。

2-32:前後軸照準モード


≪ВПУ(GUN)≫-機関砲モード
内蔵機関砲はいずれの火器管制センサーモードでも使用できます。それには[C]キーを押して≪ВПУ(GUN)≫-機関砲モードを起動します。目標が照準装置によってロックされ射程距離内に入ると見越し計算式照準モードに切り替わります。

2-33:射程距離内の機関砲モード

目標距離が1200m以下になるとHUD内を動く照準ピパーが表示されます。
照準の周りの円弧は距離計で、0~1200mまでの範囲で目標距離を示します。
目標距離はHUD左側の距離計にも表示されます。距離表示スケールは5kmです。
残弾数は4段階に分けて4~1の数値で表示されます。
照準し発砲するには照準ピパーを目標に重ねて[スペース]キーを押します。

一方、照準装置が作動しない場合や目標を探知できない場合には「ファンネル」モードで機関砲を使用する事ができます。

2-34:ファンネルモード

このモードでは、HUD上に砲弾の予測弾道を示す「ファンネル(漏斗)」が表示されます。2本の「弾道線」の間の幅が目標サイズに相当します。航空機の場合、目標サイズは翼幅が目安になります。目標サイズの設定を10m単位で大まかに変更する場合は[Ctrl--]、[Ctrl-+]キーを、連続的に細かく変更する場合は[Alt--]、[Alt-+]キーを操作します。目標サイズの初期設定値は20mです。

ファンネルモードで機関砲を発砲するには、目標の両翼端が2本の「予測弾道線」に接するように自機を操縦する必要があります。この場合、目標サイズの設定が正しければ命中を期待できます。また目標と自機の機動平面を合わせると命中率がより向上する事を覚えておくと良いでしょう。例えば目標がバンク角30度の旋回に入ったら自機も同じ旋回に入るべきです。ファンネルモードでは、目標の飛行コースの未来位置に機首を向ける事で射撃が可能になります。


≪ЗЕМЛЯ(GND)≫-空対地モード
MiG-29, Su-27及びSu-33ジェット戦闘機は、種類が限られるものの空対地兵器を搭載可能です。その中には無誘導「通常」爆弾やロケット弾が含まれます。

これらの兵器は[7]キーを押して空対地モードで使用します。空対地用照準シンボルがHUD上に表示されます。このモード名:≪ОПТ ЗЕМЛЯ(IP GND)≫-「目視照準 空対地」がHUDの左下隅に表れ、HUD右下には選択兵器が表示されます。照準の仕組みは全ての兵器で似たようなものであり、目標上に照準ピパーを重ね、発射条件が満たされ≪ПР(LA)≫-発射許可シンボルマークが表示されたら兵器を発射もしくは投下します。

2-35:空対地モード

距離表示スケールは、HUDの左上隅にあります。
距離計にはRmax(最大射程)及びRmin(最小射程)を表す太線が表示されます。
空対地モードを選択すると≪ОПТ ЗЕМЛЯ(IP GND)≫という表記がHUDの左下隅に表示されます。
降下(ピッチ)角度はHUDの中央右側に表示されます。
HUD上を動く照準ピパーは兵器の予想着弾地点を示します。
遅延落下爆弾やコンテナ収納式クラスター子爆弾のような高抵抗兵器は、通常よりもさらに低い落下軌道を描くため、たとえ急降下攻撃を行っていたとしても照準ピパーがHUDの下端よりもさらに下に位置したままになってしまう可能性があります。このような場合には投下点連続算出:Continuously Computed Release Point (CCRP)爆撃モードを使うと良いでしょう。このモードの詳細な解説は第12章「兵器運用法」に記載されています。


固定式グリッド照準
「固定式グリッド」とは、戦闘モードの一つを指すのではなく幾何学的に較正された目盛付の光学投影像のことであり、[8] キーを押せばHUDに表示させる事ができます。戦闘機の火器管制システム(WCS)は[8]キーを押す前のモードのまま引き継がれており、HUDの表示がこの固定式グリッドに置き換わるだけです。

このグリッドは、WCSが故障したりダメージを受けた場合のバックアップ用の照準機器にもなります。

HUDに表示されているグリッドは単純なコリメーター照準器に相当します。見越し照準とその補正量計算はグリッド上の各目印を使うかもしくは直接「目分量」で行います。

グリッドの中央照星は、機関砲の砲身軸方向に合致しています。前後軸照準モードを選択している状況ならば、ミサイルシーカーの照準中心位置は中央の照星から幾分下がったところの≪X≫型の照準マークになります。
(訳注:ミサイルシーカー照準位置を示すXマークは機体前後軸方向と合致しています。つまり機関砲の砲身軸を示す中央照星は機体前後軸方向よりも若干上向きに設定されています。)

2-36:固定式グリッド照準

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最終更新:2009年11月22日 22:44