無垢なる神さまのお話の一部分をお見せしたいと思います




この生活が始まって5ヶ月が経つ。
別に、何か理由があったわけじゃないが、なんとなく兄の家に押しかけた。
・・・いや、違うな。
多分、漫画のような高校生活に憧れていたのだろう。
親のいない状態で生活するなんて、高校生にしては珍しいだろ?
実際、初めの1ヶ月は、さっきのやり取りが楽しかった。
でも、今では日常になってしまい、
『こんな生活もやり取りも、意外とどこにでもあるんじゃないだろうか?』
とまで思うようになってきていた。
いくら奇怪な生活になろうと望んでいても、所詮、現実なんてこんなもんだ。
・・・なんか自分で認めると悔しいな。
気分も下がってきたとこで、この話を終わりにしよう。





「拓・・・起きてるか?」
目の前で振られている手を止めさせて、顔を確認する。
「ん、悪い」
別に確認しなくても分かる、昔から聞いていた声だ。
「悪い癖だぞ、スイッチオフる所」
嫌味の無い爽やかな微笑みを見せ、隣に腰掛ける。
幼馴染の斎藤 陸は、世話焼きでリーダーシップをとるタイプだ。
幼馴染の俺が言うのも悪いが、なんというか・・・中途半端だ。
顔もかっこ悪い・・・訳ではないのだが、言うほど男前でもない。
頭も特別良い訳ではないが、平均以上をキープしている。
しかし、存在感とカリスマ性と・・・老け度はずば抜けている。
「うるさいな~陸兄に言われたくないよ」
俺は、僅かに陸兄を見ると、小さなため息をつき、本を読み直す。
言っておくが、一歳年上。
たまに俺と親子に間違えられる陸は、残念そうに苦笑いし、前に見直った。





「・・・なぁ、めちゃくちゃ聞きにくい事なんやけど・・・」
ふと視線を戻せば、逢人は視線を泳がせながら俺の様子を伺っていた。
「メンバーって今何人おんの?」
「1人だけど・・・」
そう。
現在俺のサークルに入っているメンバーの数は・・・。
俺1人のみだ。
活動内容が分らないためか、はたまた問題は俺なのか・・・。
考えるのもめんどくさいし、ここらで話はやめよう。
「悪い事言わん。今すぐやめた方がいいと思うで?」
「お前に迷惑かけてないだろ。犬公は大人しくしてろ」
犬公というのは、もちろん逢人の事だ。
仕草や、笑ったときにでる犬歯が特徴的だし、何気に従順だし・・・。
「犬公言うな!俺はお前の事を心配してやな~・・・」
くどくどと始まった逢人の説教を聞き流しながら、携帯を取り出す。







これだけで、内容が少しでも伝わりましたでしょうか?
最終更新:2007年02月15日 14:53