星に手は届かない。
されど、星に憧れることは出来る。
人はその輝きを渇望するのだから。





◆◆◆◆



その日の夜空は、光の海だった。
空には、無数の天体―――――星が輝いていた。
それは地球の果て、大気圏を越え、その先の宇宙という大海に浮かぶ無数の光。
自らの手が届かぬ世界に存在する数多の煌めき。
まるで電飾のように輝きを放つそれらに、少女は心を奪われる。
銀色の髪を靡かせる少女は、小さな丘に座り込み夜空を眺めていた。

幼き日、父と母に連れられて夜の世界へと飛び出した。
冷たい風の吹く丘の上で、星の輝きを目にした。
思えば、あれが生まれて初めての『天体観測』だったのだろう。
幼き少女は神秘すら感じる無数の光に心を奪われた。
何度も手を伸ばして、掴み取ろうとした。
しかし、届く筈も無い。
宇宙の彼方にある星を、重力に引かれたちっぽけな少女が掴み取れる筈が無い。
天上で確かに輝き続け、されど決して届かぬ光。
少女は、そんな星々に憧れた。


「…綺麗」


少女―――アナスタシアは、星空を見上げてぽつりと呟く。
こうして静かに星空を視るのは、いつぶりなのだろうか。
東京では地上の光に遮られ、あまり星が見れなかった。
それ故にミナミと「いつか天体観測をしよう」と約束をしたこともあった。
都会でアイドルという星になってから、ゆっくりと天体観測をする機会など殆ど無くなっていた。
それが今、こうして静かに星を眺めている。

まるで御伽話のようだと思っていた。
自分は星を見る夢を見ているのかと錯覚してしまう程に、現状への実感が掴めなかった。

あらゆる願いを叶える聖杯を巡る、聖杯戦争。
サーヴァントという英雄の霊を従え、他の主従を倒して勝ち残る為の闘い。
何故自分がこんなコトに巻き込まれてしまったのか、見当も付かない。
自分はただのアイドルだ。
特別な資質など何も持っていない、普通の少女に過ぎないのだ。
今の自分に何が出来るのか、それさえも見つけられていない。
ただ今は、そんな現実から目を逸らすように星の輝きに見蕩れていた。
アナスタシアの恐怖を少しでも癒してくれるのは、夜空に輝く星だけだった。

大切な相棒であり、姉の様な存在でもある新田美波は此処にはいない。
そのせいか酷く心細く感じる。
いつの間にか拳をギュッと握る力が強くなっていた。

しかし、今のアナスタシアは決して孤独ではない。
そう、彼女はマスターとして召還された。
つまり彼女には自らの従者であるサーヴァントがいるのだ。



「……ドゥー、ドゥールドゥー……」



ふと、すぐ傍から口ずさむような歌声が聞こえてくる。
余り聞き慣れないフレーズの曲だが、どこか懐かしい感覚がする。
そんな不思議な歌を、従者はさえずるように口ずさんでいたのだ。
アナスタシアは、いつの間にか姿を現していた自らの従者――――『サーヴァント』へと視線を向ける。


魔術師のサーヴァント、キャスター。彼は自らをそう語っていた。
同時に自分は『魔術』とは無縁の存在であり、キャスターとして召還されたのは極めて異例な事態であるとも。
現に彼の姿は一般に連想される魔術とは程遠い外見だった。
スキンヘッドの頭髪。奇妙な装束。全身を覆うチューブ。太陽の意匠が描かれたプロテクター。
魔術師というよりも――――何故か、何故なのかは解らないが、アナスタシアはある存在を連想していた。

そう、ニンジャである。

日本に引っ越して以降、忍者は時代劇で何度も見たことがある。
自分の知る忍者とは余りにも掛け離れた姿であるのに、何故か彼の姿をニンジャであると連想せずにはいられなかった。

キャスターを召還したあの時。
彼は『自分は聖杯を欲している』と言っていた。
そして他の主従もまた聖杯を手にする為に襲ってくるだろう、とも。

キャスターが聖杯を欲する意図を聞き出すことは出来なかった。
彼の瞳に恐怖を覚えたからだ。
矮小な人間である自分を歯牙にも掛けないような冷酷な瞳を、恐れたからだ。
悪意に晒される経験のなかったアナスタシアはその時直感したのだ。
キャスターにとって、自分は勝つ為の駒でしかないのだと。

だが、今のキャスターの表情からは奇妙なものを感じていた。
彼もまた、自分と同じように星空を眺めている。


その姿はどこか寂しげで、悲しげにも見えた。


空を眺めている時の彼の目は、確かに『憧れ』のようなものを帯びていた。
宇宙の果ての輝きへの渇望が微かながらも感じられた。
しかし、同時にその瞳からは悲しみの様なものも感じ取れたのだ。
幾ら手を伸ばそうと決して届かぬ光への、乾いた悲しみ。
確信は無いが、キャスターがそんなものを感じている様に見えたのだ。


「貴方も…スヴェズダ、星を見るのは…好きですか?」


アナスタシアは、ぽつりと呟く。
彼女はキャスターの表情の意図が知りたかった。
冷酷な戦士という印象を抱いていた彼の悲しみに、確かな関心を抱いたのだ。
故に彼女は、曖昧で率直な質問を投げ掛ける。


「嫌いではないが、好きという訳でもない」


返ってきたのは、平坦で曖昧な返答。
アナスタシアは何も言わず、彼の答えを耳にする。
淡々とそう答えたキャスターは、彼女の疑問を遮る様に言葉を続ける。


「…マスターよ、お前が矮小なモータルであることは理解している。
 しかし、だからと言ってお前はこうして星を眺めながら踞るだけか?
 既にイクサの火蓋は落とされている。自ら戦えとは言わぬが、聖杯戦争のマスターとしての覚悟は引き締めろ」


キャスターの表情が、冷酷な戦士のものへと変貌する。
彼の表情に再び恐怖を覚え、アナスタシアの顔に不安が浮かぶ。

キャスターの言う通り、既に聖杯戦争は始まっているのだろう。
自分と同じ様にサーヴァントを従え、聖杯を獲得する為に戦う者達が襲い掛かってくるのだろう。
その時になったら――――自分は、どうすればいいのだろう。
荒事とも闘いとも無縁だった少女に、その答えを導き出すことは出来なかった。

自分に願いなど無い。
ただ一つ、望むとすれば。
生きて帰りたい。ただそれだけだ。


恋い焦がれたステージの上にまた立ちたい。
星空の様な舞台の上で、また歌いたい。
アイドルという星として、精一杯輝き続けたい。
ただ、それだけだった。



【クラス】
キャスター

【真名】
スターゲイザー@ニンジャスレイヤー

【パラメーター】
筋力A+ 耐久B(EX) 敏捷B+ 魔力C+ 幸運C 宝具B++

【属性】
中立・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:E+
宝具で召還した『静止衛星』を常時展開する陣地として扱い、スターゲイザーに恩恵を与える。

道具作成:E+
カラテ粒子と静止衛星からのデータ送信によってスターゲイザーの肉体を『構築』する。

【保有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。

カラテ:A+
ニンジャの基本的な戦闘技術。
ランクが高いほど体術や戦術眼に優れ、更にあらゆる判定におけるクリティカルの成功率が増す。
カラテとは一種のエゴ。卓越したカラテは道理すらも跳ね除け、クリティカル判定を押し通す。

カリスマ:C
軍団を指揮する才能。
前線で戦闘部隊を指揮する能力に長ける。

電子の遺産:A
喪われし技術の遺産たるスターゲイザーの肉体がスキルへと昇華されたもの。
常時発動する宝具「無到の桃源、星の観測者(スターゲイザー)」の魔力消費を大幅に減少させる。

【宝具】
「無銘(ニンジャソウル)」
ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
スターゲイザーに憑依したニンジャソウルそのもの。
ニンジャソウルに憑依された者はニンジャと化し、超人的な身体能力を獲得する。

「無到の桃源、星の観測者(スターゲイザー)」
ランク:B++ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
宇宙に存在する『静止衛星』、およびそれによって齎される不死技術『ナノカラテエンジン』の宝具。
かつてスターゲイザーが所属していたメガトリイ社の遺産とも言えるテクノロジー。
静止衛星は陣地作成スキルによって常時展開されており、スターゲイザーの肉体のデータを絶え間なく送信し続けている。
送信された肉体のデータをスターゲイザーの魔力によって再構築することで、如何なる負傷や欠損を負おうと瞬時に再生することが可能。
更にスターゲイザーの霊核が破壊された際、即座に霊核の修復を行い宝具を機能させる。
この宝具によってスターゲイザーは不死身と化しており、実質的にEXランク相当の耐久値を発揮している。
ただし固有結界などの「外界から隔離された異空間」では静止衛星の電波が届かず、不死性は無効化される。

【Weapon】
カラテ(体術)。

【人物背景】
邪悪ニンジャ組織「アマクダリ・セクト」の幹部であり最古参メンバーの一人。
部下を率いて前線に赴くことの多い武闘派であり、戦士としても指揮官としても卓越した能力を持つ。
かつて電子ネットワークを専門とするメガトリイ社に所属していたが、会社消滅後はそのロストテクノロジーを軍事企業オナタカミに持ち込み強い影響力を発揮している。
宇宙開発を行っていたメガトリイ社の遺産を受け継ぐスターゲイザーは宇宙や星を『放逐された楽園』と捉えており、手が届かぬことに乾いた悲しみを抱く。

【サーヴァントとしての願い】
日本を支配するテック(科学技術)の浄化。

【方針】
聖杯を獲る。


【マスター】
アナスタシア@アイドルマスター シンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
なし

【weapon】
なし

【能力・技能】
歌と踊りが出来る。

【人物背景】
北海道出身、15歳のアイドル。愛称はアーニャ。
ロシア人の父と日本人の母を持つハーフであり、銀髪とロシア語混じりの口調が特徴。
素直で純粋な性格。天体観測を趣味としている。
いつか新しい天体を見つけて名前を付けるのが夢らしい。

【方針】
生きて帰りたい。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2015年12月08日 02:28